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2017-07-20

第36回 探偵が許される中国世界『超能力偵探事務所』(執筆者・阿井幸作)

 

 6月30日に「中国網絡視聴服務協会(中国ネットワーク視聴サービス協会)」が発表した『網絡視聴節目内容審核通則(インターネット視聴番組の内容審査通則)』により、ネット番組の内容に今まで以上に厳格で多岐に渡る禁止事項が敷かれ、中国のネットは騒然となりました。これではサスペンスドラマが作れなくなるのでは?と思うほど暴力表現や警察捜査手段の暴露、現実離れした事件の描写が禁止された他、「非正常の性関係や性行為、例えば近親相姦、同性愛、性的倒錯、性犯罪、性的虐待及び性暴力などの表現や描写」を禁止し、尊重されるべき権利と犯罪行為を同列に扱っていることも非難の的になりました。

 また「先審後播(審査してから放映する)」の規則も加わり、今後は自主規制の風潮が更に厳しくなります。ネットドラマは今まで「自審自播(自己判断で審査し放映する)」制度だったから地上波ドラマよりも自由という風潮がありましたが、2016年10月にネットで放映中だったサスペンスドラマ『暗黒者2』『心理罪』がネットから撤去される事態も起きた当時すでに業界も視聴者も表現規制の波を感じていました。しかしこうして明文化されるとは思っていなかったのではないでしょうか。あくまでも一協会が定めた規則でありますが、これにより制作サイドが萎縮するのは明白であり、審査に通らず放映されない恐れのある内容のドラマを敢えて制作することはなくなるでしょうから、冒険的だったり刺激的だったりする内容のドラマは今後ますます減っていくでしょう。

 

 と言うかこの処置、現在の中国のIPブーム(原作のある作品の映像化ブーム)に冷水をぶっかけて自分で自分の首を絞めることになると思うのですが、そこらへんどう考えているんでしょうかね。

 

 今回の件はネット番組業界のみに通達された規則ですが、規制の影響が小説業界に波及しなくても、例えば自分の作品を映像化して稼ごうとしている作家にとって原作がサスペンスやミステリだとそれだけで対象外になる可能性があるので、今後はこの規則におもねる作品を創る、もしくは規則に合わない作品は創らないことを選択するかもしれません。

 規制の中でも面白いものが生まれる余地は十分にありますが、さすがに環境を根本から変えてしまうような規制にはもう頭を抱えるしかないです。例えば「未成年を殺人事件に巻き込んではならない」みたいな規則ができたら学園ミステリの終焉です。もし将来、ミステリが育ち、名作が生まれる土壌を完全に死滅させられた場合、作家は翻訳を通して海外で作品を発表することを選ぶのでしょうか。しかし、作家にとって母国語で作品を発表できないことは何よりの屈辱だと思うので、結局はやはりこの世界で生き残ることを選ぶのでしょう。またはもう諦めるのか。

 

 長々と最近起きた表現規制について書いてしまいましたが、今回は発想のスケールの勝利と言える中国ミステリ『超能力偵探事務所』(著者:陸華)を紹介します。

 

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 私立探偵事務所の開設が認められている中国の架空都市「幻影城」。そこのサーカス団で働くナイフ投げの葉飛刀はナイフが対象に絶対「当たらない」という超能力を買われ、超能力探偵事務所にスカウトされる。その事務所には同じく超能力を持っているメンバーがいたが、葉飛刀を含めた彼らに言えることは、彼らの超能力が決して万能ではなく、捜査にあまり使えないということ。「幻影城」の探偵事務所ランキングで下から数えたほうが早いほど何の成績も残していない彼らは、同じく個性的な他事務所の協力を借りて都市で次々発生する事件の解決に乗り出すが、徐々に「幻影城」の転覆を謀る秘密組織の存在にたどり着く。

 

 シリーズ1巻(写真左)が2016年8月、2巻(写真右)が2017年6月に出た本作は、ジャンル分けをすると「ユーモアミステリ」あるいはバカミスに分類されます。このシリーズをより魅力的にしているのは一つがテンポの良い会話の掛け合い、そしてもう一つが個性的なキャラクターです。

 

■超「無用な」能力

 葉飛刀の絶対「当たらない」という超能力はあらゆるところに発揮され、投げたナイフは当たらず、選択問題も当たらず、推理も絶対に当たりません。則ち、彼が推理によって導き出した答えは絶対に外れているのです。事務所の良心で、本シリーズで一番探偵らしい活躍をする左柔は他人の左のポケットだけ「透視」できる能力を持っています。そして少年の幽幽は「動物と会話」できる非常に有用な能力を持っていますが、彼自身が人間と喋ることは全くなく、意思の疎通はもっぱら絵です。各々、人知を超えた力を持っていますが、それが探偵活動において決定打にはなりません。

 

 物語は主に葉飛刀と左柔の2人で進みますが、超能力を多用したアンフェアな展開になるのではなく、もっぱら左柔の綺麗に組み立てられた推理によって事件が解決します。決して葉飛刀に手当たり次第に犯人を当てさせ、消去法で犯人を導くというものではありません。とは言え、考えるよりも先に言葉が出る葉飛刀のデタラメの推理からヒントをもらうのも左柔のやり方で、彼女にとって「透視」とはなくても良い能力であり、細かな事実から事件像を組み立てて真相にたどり着くというのが彼女の真価です。だから、本作は作者の創造力やスケールの大きさによって生み出された現実離れした人物、組織、場所などが出てきますが、そもそも舞台となる「幻影城」自体が作者によって生み出された架空の世界なので、その世界で発生するどのような事件も一概に「リアリティがない」とは言えないのです。一見するとどれほどおかしいと思える事件や真相であっても、「幻影城」という犯罪をするために用意された都市での出来事と思えば、探偵や読者は受け入れられるのです。実際、とあるホテルに少年漫画でも描けないほどの驚くべき大仕掛けがあるのですが、発生場所が「幻影城」だからそういうこともあっても不思議ではないのです。本作においては、事件が発生する場所一つ一つがミステリ小説には欠かせない完全犯罪のために造られた「館」として見た方が良いです。

 

バカミス特有のテンポ

 もう一つの魅力はキャラ同士の掛け合いです。一部を抜粋して翻訳してみます。

 

・2巻30ページから

「なんだって?」韓決教授は呆気にとられた。

「何で周を殺したんだと言ったんだよ」葉飛刀はさっきのセリフを繰り返した。

「なんだって?」

「ちょっと!山彦が反響してるんだけど!」葉は焦って「頼むからもうちょっとリズム良くいきませんかね?延ばされるとさっき推理したことを忘れちゃいそうなんで」

「わかったわかった」韓教授は姿勢を正して椅子に座り直した。「じゃあ君の推理を聞かせてくれたまえ。何故私が周を殺害した犯人だと?」

「いや、アンタじゃない!」葉は言い返し、「さっきは指を差し間違えた。俺が聞きたかったのは准教授の蘇鳳梨さんだ。何で周を殺したんだ?」

「お前は何を言っているのかわかってるのか?!」韓教授は突然椅子から立ち上がり葉の前を見下ろして彼の胸ぐらをつかんだ。

 

(中略)

 

「うん。ここからが最も重要なポイントだ。犯人は何故殺害前に女子トイレに行ったのか?何故髪の毛が濡れていたのか?」

「そうね。確かにそれがこの事件で一番重要なポイントね」左柔が珍しく葉の意見に賛同した。

「トイレに行って髪が濡れていたのだから答えは簡単だ!犯人は髪を洗っていたんだ!」

「なんだって?か、髪を?!こんなに驚かされたのは久しぶりだ」教職にある韓教授もこの時ばかりは葉のロジックの前に阿呆のように成り果ててしまった。

「ふふふ、男のアンタには女の子の気持ちなんかわからないだろうな」葉は自分がどれほど馬鹿なことを喋っているのか気付かずに話を続けた。

 

 葉飛刀は始終狂言回しとしてストーリー中を自由に駆け回り、推理が「当たらない」という超能力のせいで失敗ばかりしますが、裏表のない性格の直情型の正義漢ですし、悪気はないのでいくら推理を間違えても読んでいて不快感はありません。

 

中国ミステリと「幻影城」の行方

 新刊の2巻では「幻影城」を混乱に陥れようとする「神秘組織」の構成員が探偵事務所に潜んでいることが明らかになりましたが、物語はまだ続きます。1巻を読み終わったときは「神秘組織」の目的も内容も全然わからなかったので消化不良の感が強く、中国の小説ってシリーズだからといって1巻ずつ読者を納得させるストーリーの終わらせ方をする気がないなと思いましたが、こうやって続巻が出てくれて本当に嬉しかったです。

 

 ところで、現実の中国は私立探偵が禁止されています。それは本作も同じで、あくまでも「幻影城」だけ特例として探偵事務所の設立を認める規定が定められているだけで、その結果事務所が乱立して超能力探偵事務所のような弱小組織から、ミステリ小説家だけの組織「三巨頭探偵事務所」、上述の韓決がトップで教授だけで構成される「教授探偵事務所」、頭も良ければ腕っ節も強い「鷹漢組」(鷹漢とは中国語でハードボイルドを意味する硬漢と同じ発音)など実力のある組織が一つの都市にひしめきあっています。

 

 2巻の出版は今年の6月であり冒頭の「通則」とは無関係のわけですが、「私立探偵を認める規定が施行されている世界」を描いた本書の設定が秀逸である一方、現実世界で深刻な表現規制が敷かれていていつミステリ小説の規制がより強化されるのかわからない現在、本シリーズの終わりにはやはり上記の規定が関わってくるのではと考えられます。

 

 実際、2巻になると犯罪者の口から「幻影城」に探偵事務所があるから犯罪を行うという『バットマン』の「ゴッサムシティ」みたいな論理が語られているので、作中で「平和のために探偵事務所を解体する」という展開が描かれる可能性は高いです。

 

 一人の作者に期待を背負わせるのもどうかと思いますが、作者が今後「幻影城」という世界をどのように描くのかが、中国ミステリ小説家の表現規制に対する生き方の表明になると思うので、無事にシリーズが終わってほしいですね。

 

阿井 幸作(あい こうさく)

f:id:honyakumystery:20131014093204j:image:small:left

中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。

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現代華文推理系列 第三集●

(藍霄「自殺する死体」、陳嘉振「血染めの傀儡」、江成「飄血祝融」の合本版)

 

現代華文推理系列 第二集●

(冷言「風に吹かれた死体」、鶏丁「憎悪の鎚」、江離「愚者たちの盛宴」、陳浩基「見えないX」の合本版)

 

現代華文推理系列 第一集

(御手洗熊猫「人体博物館殺人事件」、水天一色「おれみたいな奴が」、林斯諺「バドミントンコートの亡霊」、寵物先生「犯罪の赤い糸」の合本版)

  

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2017-06-14

第35回 社会派中国ミステリ『長夜難明』(執筆者・阿井幸作)

 

 ネットでネタを探していたら『流言偵探:活着的死者』(デマ探偵:生きている死者)なる中国産ノベルゲームのニュースを見つけました。

(参考サイト: http://xin.18183.com/201706/867675.html

 

f:id:honyakumystery:20170613092758j:image:w180 f:id:honyakumystery:20170613092759j:image:w300

 これは、8人の若者が大学時代に亡くなった友人を偲ぶために雲南省の僻地にある村に集まろうとしたところ、全員が死んだはずの友人から奇妙なショートメールをもらい、村に来てからはその友人が生きているとしか思えないような事件に立て続けに遭遇するというストーリーです。プレイヤーは名探偵Nとなって、8人のうち誰が死んだ友人を騙っているのか、彼らと対話をして真相を明らかにする、と言った内容のようです。

 

 興味深いのは、プレイヤーが微信(Wechat・中国版LINE)に似たアプリを使ってNPCのAIと自由(?)に会話ができるという点です。ノベルゲームだと、ゲームから提示される決められた選択肢からプレイヤーが回答を選んでストーリーを進めるのが一般的だと思いますが、これは各キャラクターと会話をする中でそこから嘘や矛盾点を見つけていくのだと思います。

 

 ニュースにはこのゲームの開発者の「彼は逆転裁判シリーズの大ファンで、遊べるミステリノベルゲームを自分でも作ってみたかった」というコメントが掲載されています。

 私は日本のゲーム業界にも疎いので自信がありませんが、このゲームのようにキャラクターと自由に会話ができるノベルゲームとは珍しいのではないでしょうか。

 このゲームの発売日はまだ未定ですが、環境が許すならちょっと遊んでみたいです。

 

 さて、今回は久々に衝撃を受けた作品のレビューを掲載します。

今回のレビューは作品のネタバレを含みます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その作品は紫金陳『長夜難明』(2017年)。タイトルを日本語訳するなら「長い夜は明けない」とかシンプルに「長い夜」だけでもいいかもしれません。

 

 タイトルから察せられる通り未解決の冤罪事件を扱った本作は事件を解決するために活躍する警察官なり検察官なりが出てきますが、その模様が決してスマートではなく、また努力が必ず報われるといった因果応報や勧善懲悪を書いているものでもないので、読書中は一体誰のための捜査なのかという虚しさに襲われます。

 

◆あらすじ

 2013年、地下鉄で酩酊した男の持っていたスーツケースから死体が発見される。スーツケースの持ち主は敏腕弁護士の張超で、死体は彼の元教え子で、賄賂や賭博などの黒い噂が絶えない検察官の江陽だった。取り調べに協力的な張超の自白によって事件はスピード解決を見せたが、法廷で張超は供述を翻すとともに鉄壁のアリバイを提示し、自分がやった犯罪は死体遺棄だけで江陽の殺害には関与していないと主張する。

 思わぬ難関にぶち当たった公安の趙鉄民は元公安のエリート刑事で現在は数学教授の厳良の助けを借りて事件を捜査する。そこで彼らは10年前にある田舎で起きた冤罪事件解決に向けて江陽が並々ならぬ努力を払っていたことに気付き、その事件の再調査をする。

 

◆なりふり構わない正義の執行人

 今作も紫金陳『推理之王』『無証之罪』『壊小孩』)シリーズに登場する数学教授・厳良が登場しますが、今作では彼の推理パートは特になく、主人公はあくまでも江陽です。2013年の現代を舞台にしたストーリーでは厳良らが張超や江陽の事情を探る中で10年前の事件の真相を解き明かし、10年前を舞台にしたストーリーでは若かりし江陽らが友人の冤罪を晴らすために土地のヤクザやヤクザの手下になっている警察官、そして共産党員を相手に勝ち目のない戦いを挑みます。

 本書を途中まで読んだ読者は二つのことに気付くはずです。一つは、正義感溢れる江陽が10年後に賭博や賄賂で問題になる悪徳検察官で有名になり、誰かに殺される結末を迎えることになるとは到底思えないということ。もう一つは、江陽らが冤罪を晴らすために行動したことは10年後何も実を結ばなかったということです。

 

 紫金陳の作品には「目的のためなら手段を選ばない」極端な思考の犯罪者が出て来てきます。例えば『無証之罪』(2014年)では誤って人を殺してしまったカップルを助けるために、駱聞という元法医学者の男が彼らのためにニセのアリバイを用意しますが、実はその行為は単なるボランティアや献身ではなく、駱聞のある目的を成就するためだったことが明らかになります。また、『高智商犯罪』(高IQ犯罪)シリーズの『化工女王的逆襲』(化学工場の女王の逆襲)(2014年)では『化工女王』の異名を持つ甘佳寧が夫を殺した警察官らに復讐するために自分もろとも彼らを爆殺し、彼女の同僚である陳進が彼女の遺族を守るために警察官の遺族を殺していくという話でした。

 

 これらの作品から明らかになるのは、彼らがもはや警察組織や社会正義に絶望し、正当な手段を使って世間に訴えることを諦めているということです。

そして本作の江陽もまた「目的のためなら手段を選ばない」人間であり、江陽が取り組んでいる冤罪事件の背後には警察やヤクザばかりか省の人大代表(共産党員)までいて、生半可な証拠は全て握り潰されてしまうことを理解した江陽は最後、世論を味方につけるしかないと考え、犯罪者を法律で裁くという正義を実現するために自らの命を差し出したのです。

 

◆希望のない『人民的名義』

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 中国では今年、『人民的名義』(原作小説は2017年出版)という汚職官僚を取り締まる反腐敗をテーマにしたテレビドラマが大ヒットしました。この作品では侯亮平という高潔で有能な人物が仲間や党上層部の助けを得て党内部の腐敗を一掃する模様、および共産党は絶対に腐敗を許さないというポーズを見事に描いています。

 

 

 しかし『長夜難明』に侯亮平はおらず、人一人の命を使ってようやく虎(汚職官僚)一匹を退治したに過ぎません。『長夜難明』『人民的名義』も出版時期が同じなので影響を受けたということはないでしょうが、『長夜難明』『人民的名義』ブームに盛り上がる中国人へ冷静に現実を見せつけていると言っても過言ではありません。

 

 

◆中国の「恐ろしさ」を描いたミステリ

 私がよく恐怖する中国人の特徴の一つに、彼らの粘り強さがあります。

 例えば、「上訪」(陳情)のために村から北京に来て何年も居座り、ついにはコミュニティすら作って集団で暮らす農民たち、人買いに攫われた子供を取り戻すために自分がホームレスになっても探し続ける母親など、傍目から見たら絶対に叶わない夢のために自分の全人生をかける彼らには狂気を覚えます。本作の江陽も冤罪事件解決のために自身の青春、家庭、将来、名声など全てを犠牲にしますが、何が何でも正義を求める姿には読んでいて恐怖を感じました。

 

 本書は中国社会の矛盾、民衆の怒り、何事にも諦めない人間の良心と正義の他、絶対に妥協しない中国人の性格を描いた中国大陸的な社会派ミステリと言え、またトリックはまったく書いていないものの、中国ミステリが現在どの程度まで表現することができるかその発展度合いを知る上での良い資料でもあります。

  

阿井 幸作(あい こうさく)

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逆転裁判6 - 3DS

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逆転裁判5

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逆転裁判4(通常版)(特典無し)

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現代華文推理系列 第三集●

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(冷言「風に吹かれた死体」、鶏丁「憎悪の鎚」、江離「愚者たちの盛宴」、陳浩基「見えないX」の合本版)

 

現代華文推理系列 第一集

(御手洗熊猫「人体博物館殺人事件」、水天一色「おれみたいな奴が」、林斯諺「バドミントンコートの亡霊」、寵物先生「犯罪の赤い糸」の合本版)

  

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2017-05-24

第34回 中国ミステリ界で活躍する人々(後篇)(執筆者・阿井幸作)

 

第34回 中国ミステリ界で活躍する人々(前篇)はこちら

 

 

■中国ミステリ・ラインナップ

 

 それでは、中国大陸にはどのような作品があるのでしょうか。これまで、私自身もこのコラムで中国ミステリを幾度も取り上げて来ましたが、今回は張舟氏に2000年以降に出版された様々なジャンルの作品を紹介していただきましたので、張舟氏のコメントとともにここに載せたいと思います。なお、一部作品には日本語のタイトルを付けていますが、ほとんどの作品が未邦訳であるため、それらは仮訳であることをご了承ください。

 

【1】本格ミステリ(現代もの)

  • 周浩暉 『死亡通知単』(長編)

→中国本格ミステリの最高峰と思われる作品。サスペンスとしても抜群。

 

  • 紫金陳「謀殺官員」(官僚謀殺)長編シリーズ

→本格ミステリと社会派ミステリの融合。人物描写が冴える。

 

  • 水天一色『盲人与狗』(盲人と犬)(長編)

『我這様的人』『おれみたいな奴が』稲村文吾氏により邦訳済み)は倒叙もので、どちらかというとコメディー風の社会派ミステリの性格が強い。その一方、『盲人と犬』は作者の恐ろしい本格ミステリの才能を披露してくれる傑作で、三津田信三にも劣らない伏線の量と質に圧倒される。真相が分かった時、作者の淡々たる語り口に人をひどく悲しませる力が潜んでいることに気付く。

 

  • 鶏丁 密室ものの作品すべて

→密室ものの創作に専念する、非常にユニークな作者。カーにはまだ及ばないだろうが、「中国のカー」という称号には恥じない。初期作品にはもちろん稚拙なものがあったが、そこから順に読んでいくと作者の成長ぶりが見える。

 

  • 時晨 『黒曜館事件』(長編)

→お得意のクイーン流ミステリに不可能犯罪の趣向。「島田流!クイーン!新本格!」という非現実的なガジェットてんこ盛りの作風。

  

  • 陸華 『超能力偵探事務所』(超能力探偵事務所)(長編)

→ふざけたキャラクターと飛び合うギャグがあり、時々赤川次郎先生の作品を思い出させる。ストーリーは笑えるが、ミステリの部分は笑えない(侮れない)。

  

  • 河狸 『瑞亜的遊戯』(レアーの遊戯)(短編集)

→ギリシャ神話の神々の名前を題名に取り入れた端正な本格ミステリ短編集。現代中国本格ミステリの黎明期の秀作。個人的にお気に入りの一冊。

 

 

【2】時代ミステリ(古代中国を舞台にしたミステリ)

 

  • 馬伯庸 『風起隴西』(長編)、『三国配角演義』(三国端役演義)(短編集)

→いずれも三国時代が背景となっている。『風起隴西』はスパイもので、スリラーの傑作。『三国端役演義』は中国で数少ない歴史ミステリの傑作。各作品の末尾に作者による入念な解説が付いている。三国時代の史実も少し分かっている日本読者ならもっと楽しめる一作である。

 

  • 遠寧 「大唐狄公案」短編シリーズ

→ロバート・ファン・ヒューリックのミステリ小説に登場する探偵役・狄仁傑(ディー判事)を主人公とする短編連作シリーズ。ミステリとストーリーのバランスがよく取れていて、安心感を与えてくれる作品集。遠寧氏はミステリ専門誌『歳月推理』の看板作家だった。

 

  • 陳漸 『大唐泥梨獄』(大唐の奈落)(長編)

→中国古典小説『西遊記』をモチーフとした本格ミステリ「西遊秘史」シリーズの第一弾。どこがどう『西遊記』に絡んでいるかは衝撃の真相が明らかになった瞬間に分かる。

 

  • 冶文彪 『清明上河図密碼』(清明上河図コード)(長編)

→六部構成の大長編で現在未完結。2017年6月に第四部が刊行される予定。スケールの大きい「真相」を作り上げるとともに、北宋時代の社会全貌図を完成させようとする趣向を持つ野心作。

 

  • 陸秋槎 『元年春之祭』(元年春の祭)(長編)

→緻密な伏線、驚愕な真相、意外な動機、どんでん返し、ペダンティズム、美少女趣味などなど、作者のミステリへの追求と個人趣味がふんだんに注ぎ込まれた渾身の一作。

 

 

【3】武侠ミステリ(武侠小説と融合した中国独自のジャンル)

 

  • 楊叛 「雲寄桑」長編シリーズ

→特にシリーズ最高作『傀儡の宮』は本格ミステリと武侠小説の激烈なハイブリッド。武侠ミステリオールタイムベスト級の傑作。結末の派手なアクションシーンも見所。

 

  • 呉 『冥海花』(長編)

→ミステリと武侠の融合は少々ぎごちないが、トリック好きの読者は十分堪能できる長編本格ミステリの傑作。

 

  • 三月初七 『緑林七宗罪』(短編連作)

→舞台設定の妙/強烈なサスペンス/衝撃のどんでん返しなどで読者に痛快感を与える。

 

 

【4】その他

 

  • 午曄 「罪悪天使」短編シリーズ

→中国では数少ない、現代工作員(しかも女性)を主人公にしたスリラー/謀略小説。

 

  • 秦明 『法医秦明』(鑑識官秦明)短編シリーズ

→中国では数少ない、鑑識官を主人公にして鑑識現場や微物検査、司法解剖などをリアルに描写するミステリ。それもそのはず、作者本人が現役の鑑識官である。

 

 

 主に4つのジャンルに分けて紹介してもらいましたが、分けようとすれば更に分けることができ、例えば『元年春の祭』は「少女ミステリ」のジャンルを開拓し、『超能力探偵事務所』は「ユーモアミステリ」に分けられます。細分化するとまだ1ジャンルにつき1作家のような先駆者しかいないような現状ですが、作家の想像力のたくましさには国によって違いがないことが伺えます。

 

 現在の中国ミステリの特徴の一つに作家が「若い」という点が挙げられます。また、これは金沢在住の中国ミステリ小説家・陸秋槎氏がトークショーで話していたことですが、日本の新本格ミステリ小説家が自身のミステリ好きが高じて自分も作者になるという成長を遂げたように、陸秋槎氏を含む上述した時晨陸華らもまた元々熱心な海外ミステリファンであり、読書で培った経験をもとに新本格ミステリを書いています。

 

 上の紹介を読めば「中国にもミステリがあるんですか?!」という質問に答えられるとともに、「何故面白い海外ミステリがあるのに、わざわざ中国ミステリを読むの?」という、まるで変人を見たかのような疑問にも「中国ミステリならではの魅力があるからだ」と答えることができるでしょう。

 

 しかし面白い作品とは言え、大部分の作品は中国語がわからないとその妙味を味わうことができません。もっと手軽に中国ミステリを楽しむ手段はあるのでしょうか。その点に関しては稲村文吾氏の活躍が非常に大きいです。氏は中国大陸、香港、台湾の短編ミステリを収録した作品集『現代華文推理系列』を電子書籍の形で現在3シリーズ目まで出しており、上述の水天一色鶏丁を含む個性的な作家の作品を日本語で読むことができます。

(参照:第29回:『華文推理系列』第三集で気付かされた中国ミステリーの魅力

 

 また、中国語がわかり、そして最新の中国ミステリを読みたいという方にオススメなのが華斯比氏が編集し、毎年刊行されている『中国懸疑小説精選』です。

(参照:第32回:2016年版、読むべき中国短編ミステリ

 

 

■終わりに

 

 本稿ではなぜ「中国にミステリはないのか?」という誤解が生じる原因、そしてその実際の状況を識者のコメントを引用して書きましたが、それでは今後、中国ミステリはどのように成長して行くのでしょうか。

 稲村文吾氏は大陸と台湾の状況を比較し「刊行点数の豊富さに支えられた、いわゆる『本格ミステリ』の扱い方の多様性──台湾ミステリの現況をこうまとめると、ここ最近の大陸ミステリにも同じ流れを感じる私は、『中国にミステリはない』問題もそう悲観的に捉えることはないのではないかと思っています」と述べています。

 

 しかしそれには依然として作者、読者そして出版社の努力が不可欠です。張舟氏は「年末に当年度刊行されたミステリのベスト10を選出するイベントを起こす、業界を盛り上げる推理小説賞をいくつかつくる(現在0というわけではなく、島田荘司推理小説賞や華文推理大賞賽などがある)、毎年どのような作品が刊行されたのか情報をまとめる機構をつくるなどのような業界内の活動を提案しています。

 

「中国にはミステリはない」という思い込みが蔓延(はびこ)っている現在、張舟氏、稲村文吾氏、華斯比氏らのような「物好き」の体系的な活躍は思い込みをなくすのに一役買っているのは間違いなく、彼らの存在が即ち中国ミステリの存在を実証しています。作家も作品も存在しているのにあまり顧みられていない現在において、彼らのような「物好き」の数を増やして「中国にもミステリはある」という認識を常識に変えていくことが、今の中国ミステリに求められているのです。

 

 ちなみに、私事の報告でありますが5月11日に西日本新聞で中国ミステリに関する記事を掲載していただきました。中国ミステリが今後どのように発展を遂げるのか、表現規制などの問題と合わせて日本からミステリ業界以外でも考えられていけば幸いです。

『今天中国〜中国のいま(33)「名探偵」はご法度?』(西日本新聞サイト)

 

今回の協力者のみなさま
 張 舟

  • 上海出身、福岡在住の日本ミステリ翻訳者
  • 訳書:麻耶雄嵩『翼ある闇』、『隻眼の少女』。三津田信三『首無の如き祟るもの』、『凶鳥の如き忌むもの』、『水魑の如き沈むもの』。吉永南央『名もなき花の』。松本清張『強き蟻』。岡嶋二人『クラインの壷』。権田萬治『日本探偵作家論』など

 華斯比

 稲村 文吾

 

 

阿井 幸作(あい こうさく)

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中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。

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