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reviews of lights and sounds

2016-12-09

キャプテン・フィリップス

| 00:08


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★film rating: A

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


2009年4月。救援物資を運ぶアメリカの貨物船マークス・アラバマ号は、ムセ(バーカッド・アブディ)をリーダーとする武装した4人組のソマリア海賊に執拗に狙われ、やがて乗っ取られてしまう。船長フィリップストム・ハンクス)やクルーらは、何とか危機を打開しようとするが。


数年前の実話を基にした映画だ。日本では安い感動実話路線、美談路線に見える宣伝で大いに損をしていると言わざるを得ない。何たって監督は硬派のポール・グリーングラス。『ボーン・アルティメイタム』、『ユナイテッド93』、『ボーン・スプレマシー』といった、臨場感満点のハイテンションなアクション・スリラーを連発している名手である。ドキュメンタリタッチの映像と無駄の無い話運び、感傷に流されずに冷静な視点を維持しながらも、怒りを抱えた作風が身上の監督だ。その彼がお涙頂戴の安っぽい人情ドラマを作る訳がないではないか。だからこの映画は本来、アクション・スリラー好きにこそお勧め出来る作品なのだ。


本作は序盤から不穏な気配を湛え、やがて緊迫感満点の展開へと移行する。実話ベースとはいえ辛気臭さは微塵も無い。誤解を恐れずに言えば徹頭徹尾、娯楽アクション・スリラーであろうとする。はっきり言って面白い。海上から襲い来る海賊との攻防戦、船内に侵入されてからの虚々実々の駆け引き。後半にはアメリカ海軍特殊部隊まで投入される救出作戦にまでスケールが広がる。実物の軍艦が登場する画は、やはり衝撃的なものだ。しかも余計な会話場面や説明場面など無くても、人間が描けている。いわゆるドラマ場面が無くとも、人物言動を描く事でその造形がくっきり浮かび上がるのだ。私は観ながら70年代のハリウッド娯楽アクション映画を思い浮かべていた。行動のみを描く事により、その人物像を浮かび上がらせる秀作の数々を。少なくとも『フレンチ・コネクション』や『ブラック・サンデー』等はそうではなかったか。事件とそれにまつわる人々のアクションしか描かれていないにも関わらず、あれらの映画をドラマ性が希薄だと批判をする者は居ないだろう。本作もそうなのである。徐々に加速していく映画は、事件の経緯を描きつつ、同時にフィリップスとムセという2人のリーダーに焦点を当てて行く。フィリップス家の状況は序盤でしか触れられないが、彼には既に独立した男の子が2人いるらしい。それが彼の海賊への視線にも影響しているのが分かるようになっている。一方、ムセは元々は漁師だ。それが何故海賊になったのか。映画同様にここでくどくど述べるつもりはないが、ドラマ性と社会性を盛り込みつつ、それでも映画は緊迫感を限度いっぱいまで上げて行く。これは全く見事であった。


と、同時に、こんな事も考えてしまった。もし日本でも同じような題材を映画化したら、こうなっただろうか、と。フィリップス家の実情、海賊らの境遇をお涙頂戴に描きつつ、皆悪くない、悪いのは社会であるとばかりになるのではないか。少なくとも、このようなジャーナリスティックな視点での娯楽スリラーには出来なかっただろう。まぁ妄想ではあるが、ふとそんな風に思ってしまった。


もっともこのジャーナリスティックな、しかし怒りが込められた視点は、ポール・グリーングラスならではとも言える。例えば娯楽アクション・スリラーの傑作である『ボーン・アルティメイタム』。序盤の駅構内の場面に、言論抹殺に対する怒りを感じるのは難しい事ではない。しかもあの場面は、アクションとしてもスリラーとしても屈指ではなかったか。グリーングラスは、現代では珍しくなってしまった、娯楽アクション・スリラーと社会性を共存させられる骨太な監督なのであるのだ。


トム・ハンクスの終始耐えつつも、終盤の感情の爆発を見せる演技もまた、素晴らしかった。私はその演技に感動してしまった。人間の剥き出しになった原始の感情が観られたようで。宣伝会社の意図と全く違って、私がこの映画に感動したのは、何よりも素晴らしい映画であるという事、そのハンクスの演技が素晴らしい事に対してである。そこには美談や涙とは一切関係の無いものだ。そしてハンクスは間違いなく現代の名優だと、改めて感じた。一方、これが演技初体験という、ソマリア出身のバーカッド・アブディも素晴らしかった。徐々に海賊となっていく、度胸と頭脳を備えた漁師。だが彼もまた、追い詰められていくのである。


映画は映像設計も見事で、舞台の広さや大きさだけではなく、人物の位置関係もきっちりと観客に分かるようにされている。単なる手振れ撮影の細切れ編集映画ではない。緊張感を上げつつ、最低限の情報の伝達が抜群に上手いのだ。グリーングラスの右腕編集者、クリストファー・ラウズの名前は覚えておこう。


『キャプテン・フィリップス』は観終えた後も、心に何かが残る映画である。それは娯楽アクション・スリラーとして以前に、良い映画の証しでもあるのだ。是非、お見逃しなきよう。


キャプテン・フィリップス

Captain Phillips

  • 2013年|アメリカ|カラー|134分|画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA (USA): PG-13(Rated PG-13 for sustained intense sequences of menace, some violence with bloody images, and for substance use.)
  • 劇場公開日:2013.11.29.
  • 鑑賞日:2013.12.6.
  • 劇場:新宿ブルク9 シアター7/デジタル上映鑑賞。平日金曜日、13時50分からの回は半分の入り。
  • 公式サイト:http://bd-dvd.sonypictures.jp/captainphillips/ 作品紹介、予告編、作品情報、パッケージソフト情報等。

2016-05-06

ボーダーライン

| 00:06


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★film rating: A

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


FBI誘拐即応班リーダーのケイト(エミリー・ブラント)は、人質救出の為にアリゾナの一軒家に隊を率いて突入する。そこはメキシコの巨大麻薬組織ソノラ・カルテルの最高幹部ディアスの持家なのだが、虐殺犠牲者が数多く残されている腐臭漂う場所だったのだ。しかも警官2名が死亡し、ケイト自身も負傷してしまう。同日、FBI会議室にて、彼女はソノラ・カルテル撲滅とディアス追跡の為の特殊部隊にスカウトされる。リーダーは特別捜査官マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)。謎めいたメキシコ人コンサルタントアレハンドロベニチオ・デル・トロ)もメンバーだ。作戦の全容を明らかにされないままケイトは部隊と共に行動し、カルテルの惨たらしい殺害の実態と、部隊の超法規的なやり口を目の当たりにする。


カナダの監督ドゥニ・ヴィルヌーヴには前作『プリズナーズ』(2013)にも感銘を受けたが、こちらはさらに素晴らしい。キビキビした演出、鋭い映像、役者陣の小気味よい演技。全編を通して淀みなく緊迫感が続き、場面場面ではさらに心臓に悪いくらいに盛り上げる。映画はアクション・スリラーの形態を取っているが、アクション場面自体は強烈でも時間にしては短い。あっという間にカタが付いてしまう。むしろ主眼はアクションに向けての盛り上げだろう。とにかく無駄がなく、ドラマやアクションですら最小限。1970年代にはこういうくどくどしない映画が多数あった。巨大麻薬カルテル対特殊部隊という、幾らでも大作にできる題材だというのに、そうはせずにむしろ凝縮させたのが本作の成功の要因だ。


今まで法に則って行動してきた正義漢のケイトは、苛烈な現実を目の当たりにして精神的に追い込まれていく。映画序盤ではタフで経験豊かな優秀な捜査官として登場するのに、翻弄されてしまうのだ。エミリー・ブラントは主人公の心理的ストレスを上手く演じていた。特殊部隊のリーダー、マット役ジョシュ・ブローリンは、始終軽口を叩き笑みを絶やさないが、一方で何を考えているのか、本当に信じて良いのかどうか分からない男を好演している。だが何と言っても強烈なのは、アレハンドロ役ベニチオ・デル・トロだ。あの目つきも迫力があるが、出ているだけで緊張感があり、しかも微かに温もりもあって。アレハンドロには彼自身を覆い尽くさんばかりの闇を抱えており、それが明らかになる終盤には圧倒された。しかも大袈裟な演技ではなく。このさじ加減はもはや名人芸だ。


撮影はコーエン兄弟作品や、『007スカイフォール』(2012)などの巨匠ロジャー・ディーキンス。『プリズナーズ』でもドゥニ・ヴィルヌーヴとは組んでいる。ここでも光と影を効果的に使った映像を作り出していた。正直、このようなシリアスなアクション・スリラーにディーキンスの映像は浮いていないかとも危惧していたのだが、それは杞憂だった。編集の上手さもあって映画に奉仕している。装甲車内に差し込む光と影、夕闇に影絵のように浮かび上がる特殊部隊など、美麗な1ショット1ショットが素晴らしい。また、ヨハン・ヨハンソンスコアは時に心臓の鼓動のような打楽器、時にノイジーなチェロを駆使して、心休まらない楽曲が効果的に映画を下支えていた。映像も音響も相まって、これは1つの体験だろう。


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ヒロインによって観客を導き入れた映画は、終幕には「主人公」という概念を取っ払うかのような展開を見せ、衝撃を与えた後に虚無を感じさせて幕を閉じる。現実の麻薬戦争は今でも夥しい犠牲者を出しながら続いているのだ。映画が終わった後に疲労を感じつつ、だがそれでも彼らはまだ戦い続けるのであろうか?と考えて少々気を取り直した。そこで思い出したのが『セブン』(1995)のラストにおける、モーガン・フリーマンのモノローグだ。

Hemingway once wrote, "The world's a fine place and worth fighting for." I agree with the second part.」(ヘミングウェイは書いた。「世界は素晴らしい。戦う価値がある」。後半に賛成だ)


そんな訳で私の脳内では『セブン』と『ボーダーライン』は地続きなのである。作品の出来もさることながら、人間の暗い側面をも描いていて。かなり重い映画だが、同時に良く出来た娯楽映画でもあるので、多くの人に観てもらいたい。


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ボーダーライン

Sicario

  • 2015年アメリカ|カラー、モノクロ|121分|画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):R15+(刺激の強い数々の殺傷・出血、及び死体のフルヌードの描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): R(Rated R for strong violence, grisly images, and language.)
  • 劇場公開日:2016.4.9.
  • 鑑賞日:2016.5.6.
  • 劇場:渋谷シネパレス2/デジタル上映鑑賞。連休谷間の平日金曜日、10時50分からの回は8人ほどの入り。
  • 公式サイト:http://border-line.jp/ 作品紹介、予告編、プロダクション・ノート等。

2014-07-08

アメリカン・ハッスル

| 22:23


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


1970年代後半。詐欺師アーヴィン(クリスチャン・ベイル)と、その愛人兼ビジネス・パートナーのシドニーエイミー・アダムス)は、とうとう年貢の納め時を知る。自分達を逮捕したFBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に、自由の身と引き換えとして囮捜査への協力を強いられたのだ。偽のアラブの富豪をでっちあげ、カジノ建設の利権に群がる政治家に金を渡し、次々捕まえようという捜査だ。ターゲットとなった善良な市長カーマイン(ジェレミー・レナー)に近付くアーヴィンだったが、マフィアの暗躍も始まり、またアーヴィンの若妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)も危なっかしい動きを見せるようになる。


大物政治家が次々逮捕されたという1979年に起きたアブスキャム事件は知りませんでしたが、これはかなりフィクショナルな映画のようです。史実との違いを言われているようですが、ここはまず、演技の出来る美形スター達の異形振りを楽しむのが先でしょう。でっぷり太り、頭髪がかなり薄くなったベイル(冒頭から笑わせてくれます)。常に胸の谷間が露わになっているアダムス。パンチパーマクーパー。リーゼント・ヘアの変種のレナー。ローレンスのセクシー・ブロンド。彼ら彼女らの普段とは違うルックスと70年代衣装で目を楽しませてくれます。


狡猾で見栄っ張りなのに、善良な部分も持ち合わせている憎めない男役ベイルも、かっとなってキれやすいクーパーも、人を信用し切っている善良なレナーも良い。しかしこの映画で主導権を握っているのは2人の美女達です。アダムスはパートナーよりも強気で、いざとなったら度胸でも勝負出来る詐欺師として映画を引っ張ります。ローレンスは混沌とした状況を混ぜっ返し、時に頭の冴えを見せ、さらに混迷度を深めます。この2人の善悪好悪など気にせず、活き活きと男達の間を泳ぎ回る姿は痛快でした。特に実質の主役はアダムスと言って良く、これは間違いなく彼女の代表作です。華やかでありながら孤独感を抱えている女。頭脳と度胸、センスで生き延びてきた女。ローレンスも出番は左程多くないものの、出て来るだけで画面が華やぎます。女優2人の輝きを観るのがこの映画最大の楽しみと言えます。


デヴィッド・O・ラッセル演出は、珍しくマーティン・スコセッシ調でした。動き回るカメラ、素早いカッティングやクロースアップ、そして当時のポップスの氾濫。スコセッシの『グッドフェローズ』、『カジノ』といった傑作を思い出せば良いでしょう。あの過剰なスタイルへのオマージュを捧げながらも、温かみのある眼差しで欠点だらけの人間達を見つめ、愛でているのがラッセルの個性です。とある大スターのカメオ出演も嬉しい驚きでした。音楽ではポール・マッカートニーウィングスの『007死ぬのは奴らだ』の使い方に笑わせられます。


物語としても非常に面白い。詐欺師映画としての痛快度も高い。特に終盤は爽快感があり、軽やかな足取りで劇場を後に出来ました。『アメリカン・ハッスル』はスター達のアンサンブルや、リッチな映像と音楽、ひねくれた物語で、映画的興奮が詰まっています。お勧めの映画です。


アメリカン・ハッスル

American Hustle

  • 2013年|アメリカ|カラー|138分|画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA (USA): R(Rated R for pervasive language, some sexual content and brief violence.)
  • 劇場公開日:2014.1.31.
  • 鑑賞日:2014.2.1.
  • 劇場:TOHOシネマズ横浜ららぽーと 3/デジタル上映鑑賞。公開2日目の土曜日、12時15分からの回は映画の日だからか、401席の劇場はほぼ5割の入り。
  • 公式サイト:http://american-hustle.jp/ 作品紹介、予告編等。

X-MEN:フューチャー&パスト

| 22:08


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


2023年。人類は自らが作ったロボット・センチネル軍団の暴走により、滅亡の危機に瀕していた。元々センチネルは、ミュータントの氾濫が人類を追いやるとの危機感により、科学者オリヴァー・トラスク(ピーター・ディンクレイジ)が作ったものだった。しかしセンチネルはミュータントのみならず、人類に対しても攻撃して来たのだ。ミュータントと人類の共存を唱えるミュータントのリーダー、プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)は、人類への徹底抗戦を唱えるかつての親友であり宿敵であるマグニートーイアン・マッケラン)と手を組み、事態を阻止しようとしていた。彼らはキティ・ブライド(エレン・ペイジ)の能力を使って、ウルヴァリンヒュー・ジャックマン)の魂をトラスクがセンチネルを開発する前の1973に送り込む事にする。2人と袂を分かったミスティークジェニファー・ローレンス)によるトラスク暗殺未遂が1973年に起こり、それによりミュータントに対してのセンチネル開発が実現化するのだ。ミスティークを探し出し、暗殺未遂自体を阻止しなければならない。過去に送り込まれたウルヴァリンは、反目しあう若き日のプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)とマグニートー(ミヒャエル・ファスベンダー)に出会う。センチネルによる苛烈な攻撃を受ける隠れ家での2023年における攻防戦と、1973年における暗殺計画阻止の2つが同時に進む。


前作『X-MEN:ファースト・クラス』は、X-MENシリーズのリブート編として、彼らの若き日々を描いた作品でした。しかもシリーズ中で1番面白く、1番出来が良かった映画でした。監督と脚本(ジェーン・ゴールドマンと共同)を担当したマシュー・ヴォーンは、『キック・アス』に続いての金星。ですから本作でスケジュール上の都合でヴォーンが降板し、過去2作品を担当していたブライアン・シンガーが再登板とのニュースを聞いたときには、落胆したものでした。


いや、シンガーはダメな監督ではないのです。暗い情感を根底に湛えたシリアスな作風と、強烈な緊張感の持続が出来る技術力を持ち合わせた、優れた監督だと思います。出世作である『ユージュアル・サスペクツ』など、その最たるものでしょう。でもその資質は、燃えるアクションが重視される爽快系アメコミ映画とは合っていないように思えたのです。シンガー監督によるアメコミ映画群である『X-メン』『X-MEN2』『スーパーマン リターンズ』などをご覧になれば納得される事でしょう。どれもアメコミ娯楽映画としての爽快感に欠ける映画でした。しかしシンガーの前作である家族向けファンタスティック・アドベンチャー映画にして、初の3D映画だった『ジャックと天空の巨人』を観て、ちょっと考え直しました。明るく爽快感のある特撮全開のスペクタクル映画もいけるのでは?と。


長々書きましたが、要は本作『X-MEN:フューチャー&パスト』は、シンガーのアメコミ映画としてもっとも成功した作品だと言いたいのです。2つの時代をタイムリミットのある危機的状況としてスリリングに同時進行に描き、人物の暗い情念を織り交ぜ、つまりアクション主体ではなく、シンガーの得意なスリリングなドラマ映画として成立していたのです。ですから時にケレンのある奇想天外なアクション(特に前半に用意されている、クイックシルバー大活躍の場面)によって映画にメリハリがつき、非常に面白いものとなっていました。文字通り過去のキャスト総出演映画で嬉しいのだけど、ウルヴァリンを狂言回しに、マグニートー、プロフェッサーX、そしてミスティークを巡るドラマを、映画の中心に据えたのが成功しています。シンガーの演出も力の入ったものでしたが、サイモン・キンバーグによる脚本がとても良かったと思います。


役者では、さすがに大スターになったヒュー・ジャックマンに目が行きますが、ジェームズ・マカヴォイ、ミヒャエル・ファスベンダーの2人にも役者として見どころがあります。誰かが図抜けて目立つのではなく、巧者が見せるアンサンブル演技が楽しました。


3D映画としては前半で感心させられ、特にクイックシルバー大活躍場面は立体効果、奥行き効果も存分に使われており、観ていて楽しい。もっとも映画が上出来ゆえ、映画が進むに連れて3D効果に注意が行かなくなるのですが。


先日観て感心させられた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』といい、本作といい、アメコミ映画は円熟期に入ったようです。大人も子供も楽しめる単なる特撮満載アクションではなく、しっかりしたテーマをがっちり描きつつ、シリアスで大人の鑑賞にも耐えうる娯楽映画に仕立ててあって。


過去作品、特に『ファースト・クラス』を観ていないと分かりにくいという欠点はありますが、過去のシリーズが苦手だった人でも、これはお勧め出来る映画です。


X-MEN:フューチャー&パスト

X-Men: Days of Future Past

2014-07-02

ラッシュ/プライドと友情

| 22:53


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


1970年代初頭。オーストリア資産家の息子ニキ・ラウダダニエル・ブリュール)は、跡取りにと考えていた親の猛反対を押し切り、自力で資金を集めて資金難のF1チームに飛び込んだ。ラウダは傲慢とも言える態度だが、図抜けたメカの知識でマシーン改造を指示し、オーナーやチームメイトの信用を得る。一方、イギリスジェームズ・ハントクリス・ヘムズワース)は享楽的な性格。荒々しいドライヴィング・テクニックの持ち主の伊達男だ。やがてライヴァル関係となった2人は猛烈な対抗意識を抱くようになり、1976年の伝説的なシーズンを迎える事になる。


F1には余り興味も知識も無い私ですが、私の幼少時は、毎年のように死人が出ていて、派手に報道されていた記憶があります。またニキ・ラウダの名前は知っています。ジェームズ・ハントは初耳でした。ロン・ハワードは、個人的には『スプラッシュ』や『バックマン家の人々』といった小品が良いと思っている監督でした。『バックドラフト』『遥かなる大地へ』『アポロ13』『ダ・ヴィンチ・コード』といった映画は、大画面映えしてそこそこ楽しませてくれたものの、盛り上がりに欠け、内容が空疎に思えたものです。それでも私はこの大作映画を十分に楽しめたし、気に入りました。この『ラッシュ/プライドと友情』は、ハワードの集大成、過去最高作と言っても良い出来栄えです。エンジンの轟音と素早いカッティング映像だけのこけおどし映画ではなく、濃密な映画になっていました。


何より、2人の男達の描き方が良い。毎年死者が出る当時のF1界において、方やありとあらゆる施策を事前に行い、死の確率を20パーセント以下にしようとするニキ・ラウダ。方や死の恐怖を忘れる為に、レース前夜に酒を浴びるように飲み、女を抱き、レース前に嘔吐するジェームズ・ハント。このハントは、目の前の女という女を抱いた伝説のカサノヴァだそうです。この一見すると対照的な2人は、しかしスピードと勝利に魅入られた男達、死神と争う男達でもあります。珍しくプレイボーイを演ずるマイティ・ソーことヘムズワースも悪くありませんが、特にダニエル・ブリュールが素晴らしい。複雑で一筋縄ではない、文字通り簡単にへこたれない、しぶとい男を、観客の興味を引くという点で魅力的に演じています。必ずしも共感できない男2人以外は全員脇役という中で、野生児ハントとは対極の人間を演じていて心に残りました。


この2人の激突と化学反応も非常に面白く描いたハワードの演出は、レース場面では珍しく短いショットを繋ぐ手法を駆使。その結果、緊張と恐怖、スピードと熱狂の渦に観客を取り込むのに成功しています。文字通りの迫力満点で、猛スピードの世界での視界の悪さまで再現していました。ハワード作品には珍しくセックス場面も出てきて、ナタリー・ドーマー、アレクサンドラ・マリア・ララといった女優達も潔く脱ぐのも良い。また、短いながらも生々しい人体破壊描写も、当時のレースの残酷さを端的に描いていました。死の恐怖だけではなく、花形レーサー達の死をも売りだったF1界をも表しているのです。かように映画全体で生と死を映画的に描写し、印象付けていました。これらの要素もあって、大作らしいスケール感と、小品での細やかな人物描写というハワードの長所を持ち合わせた、集大成的な映画となっていると思います。ハンス・ジマーのメカニカルな音楽も効果的でした。


『ラッシュ/プライドと友情』は、1970年代当時のレーサーの激突を主軸に、臨場感溢れるF1界をも描いた秀作です。死のはざまで生きる男達の姿を描いたこの映画を、機会があれば是非、大画面と大音響でご覧下さい。


ラッシュ/プライドと友情

Rush

  • 2013年|アメリカ、イギリス、ドイツ|カラー|123分|画面比:2.35:1
  • 映倫PG12(簡潔な性愛描写及びマリファナ吸飲の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。)
  • MPAA (USA): R(Rated R for sexual content, nudity, language, some disturbing images and brief drug use.)
  • 劇場公開日:2014.2.7.
  • 鑑賞日:2014.2.7.
  • 劇場:TOHOシネマズ横浜ららぽーと 3/デジタル上映鑑賞。金曜日の20時40分からの回は40人程の入り。
  • 公式サイト:http://rush.gaga.ne.jp/index.html 予告編、作品紹介など。

グランド・ブダペスト・ホテル

| 22:36


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★film rating: A

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


1932年、今は無き欧州の国家ズブロウスカ。美しい山々を背景に立つ由緒ある高級ホテル、グランド・ブダペストは、上流社会の客人たちで引きも切らなかった。ホテルを仕切るのは辣腕コンシェルジュのグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)。彼は老マダム達の夜の相手も辞さない、文字通りの徹底したサーヴィスを心掛けている男だ。ところがグスタヴの長年のお得意様であるマダムD(ティルダ・スウィントン)が、何者かに殺害されてしまった。しかも遺言で貴重な絵画がグスタヴに贈られたと判明、グスタヴは容疑者となって追われる身となってしまう。愛弟子であるベルボーイのゼロ(トニー・レヴォロリ)と共に逃避行を続けながら、グスタヴは仲間たちの手を借りて真相を追求しようとするが。


オフビートな笑い、独特の画面構成と色彩で、近年、益々人気が高まりつつあるウェス・アンダーソンですが、前評判の高かった前作『ムーンライズ・キングダム』は私は余り乗れませんでした。意図している事が見え見え過ぎて白けてしまったのです。しかし本作は心から楽しめました。スケールは大きい物語なのに、映画全体はチマチマせせこましく、ミニチュアへの偏愛も含めてその作り込まれた箱庭世界が楽しい。そもそも映画の構造自体が入れ子の入れ子でマトリョーシカ状態です。現代ではとある少女が作家の墓参りをします。その作家の晩年(トム・ウィルキンソン)が物語のインスピレーションについて語り、時代はインスピレーションを得た1960年代へと飛び、若き作家(ジュード・ロウ)はかつて栄華を誇ったグランド・ブダペスト・ホテルに滞在中。彼は富豪であるオーナーのゼロ(F・マーレイ・エイブラハム)と出会い、富豪は自分のベルボーイ見習い時代に居たコンシェルジュであるグスタヴとの冒険譚について話し出す…という構造になっています。


シンメトリーの画面に氾濫する明るくカラフルな色彩に、デフォルメされたキャラクター達が賑やかに動き回り、映画は非常に活き活きとしています。わき役に至るまで文字通りのオールスターキャスト映画で、各人が単なる顔見世ではなく、個性に合った役なのも楽しい。しかし綿菓子のように甘くは無く、時折ドキリとさせられる悪意のある映像が挿入され、適度に毒気があるのでピリリとしています。映画はにぎやかしミステリ調冒険映画になっており、終盤には明らかに特撮なのにスリリングで手に汗握る大アクションまで用意されています。娯楽映画のフォーマットの中で自己の個性を最大限に発揮しているアンダーソンの才気が、この映画で1番のお楽しみと言えましょう。観客を余り選ばない、観やすいものとなっています。


役者では何と言ってもレイフ・ファインズです。仕事は有能、しかし目的のためならば手段をいとわない面もあり、客人である老女達との逢瀬である枕営業も楽しんでいるらしい男。身だしなみは常に完璧で、何かあると詩を詠み、自分の優雅さに酔いしれている男。そんなどこかいかがわしい、ナルシスティックで優雅な、でもどこか憎めない男を、ファインズは複雑な人間味と純粋さでもって表現しました。『ハリー・ポッター』シリーズのヴォルデモートなどと言った役柄より、やはりファインズは2枚目の役が似合います。失われた栄華への想いを馳せ、痛みを感じるのがこの映画のテーマだとして、それを体現していて素晴らしい。語り部役である壮年のゼロを演じたF・マーレイ・エイブラハムも、滋味溢れる演技で、こちらも素晴らしかったです。若き作家役ジュード・ロウ、暗殺者役ウィレム・デフォー、老女メイクで登場のティルダ・スウィントン、スキンヘッドの囚人役ハーヴェイ・カイテル、遺産管理人役ジェフ・ゴールドブラム、グスタヴを追う軍人役エドワード・ノートン、事件の鍵を握る執事役マチュー・アマルリック、富豪夫人の悪質な息子役エイドリアン・ブロディ、若きゼロ役のトニー・レヴォロリ、その恋人役シアーシャ・ローナン等、配役もとても良かった。


アレクサンドル・デプラのコミカルで躍動感のある音楽も、作品世界の作りに貢献していました。これはお勧めの映画です。


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グランド・ブダペスト・ホテル

The Grand Budapest Hotel

  • 2014年アメリカドイツ|カラー|100分|画面比:1.37:1、1.78:1、2.35:1
  • 映倫:G
  • MPAA (USA): R(Rated R for language, some sexual content and violence.)
  • 劇場公開日:2014.6.6.
  • 鑑賞日:2014.6.27.
  • 劇場:TOHOシネマズ横浜ららぽーと 10/デジタル上映鑑賞。公開4週目の21時45分からの金曜レイトショウは15人ほどの入り。この手のアートフィルム系では珍しく客が入っているよう。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/gbh/ 予告編や人物紹介、劇中に登場するレシピなどの映像の数々、作品紹介など。

2014-06-30

ウルフ・オブ・ウォールストリート

| 22:33


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★film rating: B+

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


1990年代初頭。ウォール街にやって来た無垢な若者ジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、一般人から金をむしり取る術を身に付け、やがて26歳で自ら証券会社設立。アコギな商売で次々収益を増やし、会社の規模を大きくして行く。若き億万長者となった彼は豪邸に住み、モデルのような美女ナオミ(マーゴット・ロビー)を妻にし、豪華クルーザーを買い、セックスとドラッグにまみれ、人生を謳歌するのだ。だがウォール街の寵児となったベルフォートにも、落日が近付いてくる。FBI捜査官デナム(カイル・チャンドラー)に目を付けられるようになったのだ。


演技過剰、ナレーション過剰、映像過剰、音楽過剰、札束過剰、ドラッグ過剰、セックス過剰。上映時間だって2時間59分もあります。これは何もかもが過剰な、痛快ブラック・コメディ映画でした。


マーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオのコンビ作品、そう『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』『ディパーテッド』『シャッター アイランド』といった作品群にどこか首をかしげる人が多いそうです。かくいう私もその1人。もっとも私は『ディパーテッド』だけは支持しますが。そして『タクシードライバー』や『レイジング・ブル』といった、往年のスコセッシ&デ・ニーロ作品に想いを馳せ、「あぁ何でスコセッシはレオとコンビを続けるのだろう。早く別れてしまえば良いのに」、と嘆息する向きもありましょう。しかしその嘆息も過去のものとなりました。ここのところ暫く、持ち前のパワーと輝きを失いつつあったスコセッシ作品としても、これは会心作でしょう。『グッドフェローズ』の疾走感こそ薄いものの、ぐいぐいと太いタッチで人物を中心に映画を進めるのは、スコセッシならでは。久々の本領発揮です。


モラルのかけらもない自己中心的な登場人物が殆どという、スコセッシのギャング映画と似通った異世界を描いたこの映画は、ウォール街に巣食う、搾取を生業とした男達の映画でもあります。映画の冒頭で描かれているのは、オフィスで行われているパーティ。そこでは、小人を的に向けて投げつけて点数を競い、嬌声を上げている男女達が大勢います。このオフィスではストリップや乱交パーティ、ドラッグの吸引が行われるのは日常茶飯事。狂乱ここに極まれりの異空間なのです。めまいがするような会社ですが、主人公ベルフォートの周囲では、それが当たり前なのです。


そんな世界で異彩を放つのが、これも異様な造形の登場人物ばかり。うぶだったベルフォートを金儲けの権化に変えた上司ハナ役のマシュー・マコノヒーは、近年、すっかり目が離せない役者となりましたが、ここでも妙な歌を聞かせてくれ、笑わせてくれます。若者を毒すには十分に魅力的な、そして毒気たっぷりな男役を、マコノヒーは怪演していました。副社長としてベルフォートの右腕となるドニー役のジョナ・ヒルは、出っ歯にメガネの外見と耳障りなしわがれ声を武器に、見るからに不快で、ずるがしこく、ねちっこく、とても友人にしたくないヤツ。しかしヒルは、間抜けでどこか憎めない暴走男を演じています。オフィスで見せる彼のとある奇行は、『ワンダとダイヤと優しい奴ら』のケヴィン・クラインへのオマージュでしょう。他にも見るからに頭の悪そうなベルフォートの忠実な部下達等も笑わせてくれます。脇役で特に気に入ったのは、ベルフォートの父親でした。近年は監督としてすっかり冴えないとの評価を受けているロブ・ライナーが、温和且つかっとなりやすく口汚い父親を演じていて、これもたっぷり笑わせてくれます。ウディ・アレン映画でも笑わせてくれた元々コメディアンだった彼を、今後もスクリーンで観てみたいものです。


ここ10年ばかりのディカプリオには、常に深刻ぶって眉間に皺を寄せてばかりのワンパターン演技で、少々辟易させられていました。『華麗なるギャツビー』に本作と、最近は柄に合った役と出会えて良かった。ここでは自らの悪に自覚的でありながら、享楽的な人生の謳歌を続けるべく七転八倒する男を快演しています。露悪的なまでの性格の悪さや往生際の悪さ等、近年の役柄と似通っている部分が気には掛るものの、普段よりもオーヴァーアクト気味なのが、このスケールの大きく、しかし結果的に個人に収斂していくブラックコメディに似つかわしいものでした。


ウルフ・オブ・ウォールストリート

The Wolf of Wall Street

  • 2013年|アメリカ|カラー|179分|画面比:2.35:1
  • 映倫R18+(大人向きの作品で、極めて刺激の強い性愛描写、各種麻薬の常用、及びヌード表現、性的台詞がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): R(Rated R for sequences of strong sexual content, graphic nudity, drug use and language throughout, and for some violence.)
  • 劇場公開日:2014.1.31.
  • 鑑賞日:2014.2.10.
  • 劇場:横浜バルト9 シアター11/デジタル上映鑑賞。飛び石連休の谷間、平日月曜11時半からの回は30人程の入り。
  • 公式サイト:http://www.wolfofwallstreet.jp/ 予告編、作品紹介など。

ローン・サバイバー

| 22:11


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


2005年6月。アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズに対して、極秘任務が下される。アフガニスタン山岳地帯に潜むビン・ラディンの側近でタリバンのリーダー、アフマド・シャー殺害をせよ、というのだ。実行部隊は4人。リーダーのマイケル・マーフィ大尉(テイラー・キッチュ)、マーカス・ラトレル二等兵曹(マーク・ウォールバーグ)、マシュー・アクセルソン二等兵曹(ベン・フォスター)、ダニー・ディーツ二等兵曹(エミール・ハーシュ)がメンバーだ。エリック・クリステンセン少佐(エリック・バナ)指揮の元、電波の悪い険しい山岳地帯に降り立ったシールズだが、隠密作戦の最中、羊飼い達に見つかってしまう。民間人を殺害すれば、倫理に背くだけではなく、世界中からの非難を浴びて国際問題へと発展するのは明らかだ。しかし見逃せばタリバンに通報され、追われる危険が非常に高い。無線が通じない孤立した中で、4人は激論し、遂には羊飼い達を解放する。その結果…200人ものタリバン兵らが四方八方から攻撃して来るのであった。徐々に追い詰められる4人を待ち受ける運命とは。


アメリカ軍に大損害をもたらしたというレッド・ウィング作戦の映画化です。私はこの作戦自体知らなかったのですが、孤立無援で絶体絶命の中、奇跡的に生き延びた兵士の手記を基にしています。


映画の幕開けは、シールズの過酷な訓練模様を捉えたドキュメンタリ映像です。常人だったらとても耐えられないような、文字通りしごきとしか言いようのない、理不尽なまでの訓練の数々。当然ながら脱落者も続々出て来ます。この試練をくぐり抜けられた者達だけが持ち得る一心同体の精神は、必然でしょう。これが映画中盤以降の戦闘場面で効いて来ます。


監督と脚本はピーター・バーグ。近年は俳優としてよりも、監督&脚本家として活動中の人です。特に『キングダム/見えざる敵』『バトルシップ』での歯切れの良いアクションが印象的でした。本作は作戦開始と同時に緊張感が澱み無く続き、アクションも観ていて痛い描写が満載です。一般人ならばとっくに死んでいるであろう状況でさえ、シールズ隊員らは戦い続けるのですから。観客を実戦に放り込んだかのような、臨場感満点で力強い演出が目を引きます。私はバーグ作品全部を観た訳ではありませんが、これは監督としての技術力が最高に発揮された作品ではないでしょうか。


一方で、観ている間に気になる点も出て来ます。冒頭のドキュメンタリ映像から、仲間同士の強固な結束、自己犠牲等が強調されるので、これは余りに海兵隊万歳の映画ではないのか、と。しかしこの映画での山場は、実は好戦性とは対照的な場面である事に気付かされます。映画序盤の最初の山場は、捕えた羊飼い達をどうするか、という場面です。シールズ隊員同士での、生かすか殺すかの大激論。しかし最終的に彼らは、自分達を死地へと追い込むであろう選択を行います。そして後半の山場。生き残った兵士に思わぬ助けの手が差し伸べられるのです。


苛烈な戦闘場面が強烈な映画です。が、劇中で最も重きを置かれているのは、「殺す」のではなく「生かす」「助ける」行動であり、その精神の気高さでした。バーグは軍事マニアだそうですが、そのような視点を持っているところが単なるマニアではない、優れた映画監督である証し。これは中々に骨太な映画なのです。


主要人物が皆髭面、戦闘場面もカタルシスがまるでない臨場感重視という映画ですが、静と動の音響デザインも含めて細部まで丁寧に作られていました。俳優達も皆、熱演しています。


ローン・サバイバー

Lone Survivor

  • 2013年|アメリカ|カラー|121分|画面比:2.35:1
  • 映倫PG12(戦闘における銃器による殺傷・鮮血の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。)
  • MPAA (USA): R(Rated R for strong bloody war violence and pervasive language.)
  • 劇場公開日:2014.3.21.
  • 鑑賞日:2014.3.21.
  • 劇場:TOHOシネマズ横浜ららぽーと2/デジタル上映鑑賞。公開初日の金曜日、3連休初日の23時40分からの回は20人程の入り。
  • 公式サイト:http://www.lonesurvivor.jp/ 予告編、作品紹介、コラム「池上彰が解説。」といったコーナー等々。

2014-06-29

オンリー・ゴッド

| 23:30


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


バンコクキックボクシング・クラブのオーナーをしているジュリアン(ライアン・ゴズリング)は、麻薬組織を仕切っている青年だ。ある日、実兄ビリーが惨殺された。売春をしていた14歳の少女を殺害し、その父親に復讐されたのだ。復讐を促したのは元刑事のチャン(ヴィタヤ・パンスリンガム)。彼は独自の基準で苛烈な制裁を行う男でもある。やがて兄弟の母クリスタル(クリスティン・スコット・トーマス)がアメリカ本国から乗り込んで来る。組織のボスでもあるクリスタルは、チャンへの復讐をジュリアンに命じるが。


氾濫する色彩。じわり観客を責め立てる暴力。物言わぬ無表情な主人公。『ドライヴ』でコンビを組んだ、監督ニコラス・ウィンディング・レフンと主演ライアン・ゴズリングの2人が作り上げた犯罪映画で基調と成すのは、それらの要素です。前作は定番の犯罪映画のプロットを風変りに仕立ててありましたが、本作はそれ以上にユニークな作品となっています。特に目を引くのは過激でどんよりとした徹底的な暴力と、人工的な照明も含めた映像です。血を血を洗う復讐の連鎖は目を背けたくなるような肉体損壊描写で満たされ、それらは赤、青、黄といった照明に照らされた夜のバンコクの街に、幻想の一部として埋没していきます。私が映画を観ながら想起したのは、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』と、ラース・フォン・トリアーの『エレメント・オブ・クライム』でした。唐突に挿入される幻想場面の効果もあり、映画を観ている間、外宇宙と内宇宙を行き来するかのような感覚に襲われます。


超暴力的な描写が強烈な印象を残しますが、必ずしもリアリスティックな作りではありません。凄惨な描写は頻発するものの、この世の出来事ではないかのような撮り方。これはあの世とこの世を繋ぐ幻夢的映画です。


そもそもチャンという男がユニークです。白い襟に真っ黒な半袖シャツを着ている彼は、制裁を加えるときに服の背中のどこかに隠し持っていた剣を抜き出します。これだけで非現実的ではないですか。チャンは時に他者の復讐を担い、時に悪への制裁を下します。しかしその基準は判然としません。チャンは無慈悲な神そのものと思って良いでしょう。こちらの声は決して届かず、また公平・不公平など気にせず、気まぐれにしか思えないような行動を取る神。一方で幼子を可愛がる面も持っている神。東南アジアが舞台であるものの、その神としての像は非常に西欧的です。神は制裁を下した後、カラオケに興じます。いや、興じてはいないのでしょう。日本のカラオケボックスやカラオケバーと違い、能面のような客が聴衆となっている店内で、真摯そのものに歌うのですから。あたかも儀式のように。


そんなチャンに挑むのがジュリアンです。世界一後頭部が美しいライアン・ゴズリングは、無表情で無口な、でも淡々と神に挑む男を演じています。ジュリアンは能動的ではなく、運命を受け入れる男として描かれています。となると、彼は神に挑むのではなく、神に触れたいだけなのかも知れません。


彼を支配する怒れる母親役クリスタルが強烈です。明るい基調の服にブロンド・ヘア。兄ビリーを贔屓してジュリアンには冷たく、情け容赦ない文字通りのボス。クリスティン・スコット・トーマスは『イングリッシュ・ペイシェント』での気品あるヒロイン役が印象的でしたが、本作では肉付きと共に貫禄が増した怪物役を怪演しています。彼女もまた理不尽な神に、そうとは知らずに戦いを挑むのです。


プロットは犯罪映画のそれでも、全体的に神話的色彩を帯びている映画は、冒頭から幻想的です。そしてここには、己の描きたい事を己の世界観で描き尽くそうという、作者の強い意志が感じられます。台詞は極端に削ぎ落とされた無口な映画なのに、映像や音楽など饒舌ですらあります。だから90分という短い時間は濃密そのもの。その独特な世界に私はすっかり魅了されてしまいました。しかもその饒舌さは攻撃性とは全くかけ離れたもの。となるとこの映画は、神に挑んだ男の物語ではなく、神と対話したかった男の物語なのかも知れません。


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オンリー・ゴッド

Only God Forgives

  • 2013年|フランス、タイ、アメリカ、スウェーデン|カラー|90分|画面比:1.85:1
  • 映倫R15+(刺激の強い殺傷・鮮血飛散、肉体損壊、拷問及び惨殺死体の描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): R(Rated R for strong bloody violence including grisly images, sexual content and language.)
  • 劇場公開日:2014.1.25.
  • 鑑賞日:2014.2.10.
  • 劇場:横浜バルト9 シアター8/デジタル上映鑑賞。公開3週目の飛び石連休の谷間、平日月曜15時40分からの回は20人程の入り。過半数が中高年女性客だったのは、ライアン・ゴズリング目当てだったのかな。
  • 公式サイト:http://onlygod-movie.com/ 予告編、作品紹介、各界著名人のコメント等。

プリズナーズ

| 22:39


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


ペンシルヴァニア州工務店を営むケラー(ヒュー・ジャックマン)は、妻グレイス(マリア・ベロ)と共に郊外の住宅街で幸せな家庭を築いていた。感謝祭の日、近所に住むフランクリンテレンス・ハワード)とナンシー(ヴィオラ・デイヴィス)の親友夫妻の家に招かれて祝っていたところ、それぞれの夫婦の幼い娘達のアナとジョイが行方不明になってしまう。警察も含めて必死の捜索にも関わらず見つからない子供達。やがて10歳の知能しかない青年アレックスポール・ダノ)が容疑者として逮捕される。自白もせず、証拠もない為に釈放されたアレックスが何か知っていると睨んだケラーは、彼を拉致監禁。自らの拷問にかけて自白させようとする。一方、冷静沈着な刑事ロキ(ジェイク・ギレンホール)は、少しずつ事件の真相に迫って行くのだが。


「囚われ人たち」とは、何と意味深なタイトルなのでしょうか。行方不明の少女2人の事かと思って観始めると、それが色々な意味を帯びてくると分かってきます。愛する娘を探す必死さ余りに、容疑者に対して一線を越える父親ケラー。彼は敬虔なクリスチャンで明らかに宗教に囚われていますが、同時に自らの罪にも囚われていきます。そのケラーに囚われるアレックス。彼もまた、あるものに心を囚われています。今は優秀な刑事ロキも、少年時代に恐らくは問題児だったようですが、過去に囚われているのでしょう。全身タトゥーだらけのようですが、ワイシャツのボタンは常に1番上まで留めて隠しているのですから。椅子に縛り付けられたままミイラ化した男も囚われ人の1人です。迷路に取りつかれた男は、人心の闇のメタファーでしょう。全ての人は、何がしかの囚われ人だと言えるのかも知れません。ある者は宗教に、ある者は親の教えに、ある者は…というように。


ミステリとしてあちこちに伏線が張られており、後半にはそれらが次々と回収されていく作り込みになっていますが、それらが嫌味になっていません。捻りの効いた非常に完成度の高い娯楽スリラー/ミステリでありながら、ドゥニ・ヴィルヌーヴ演出アーロン・グジコウスキーの脚本が、ずっしりとした密度の濃いドラマとしても成立させているからです。


映画は観る者に「あなただったら、どうする?」と突き付ける挑発的な内容も併せ持っています。事件に巻き込まれてしまう各人の反応はとても人間味があり、その誰かに自分自身を重ね合わせられるのが可能です。必死さの余り暴力に訴える者。寝込んで臥せってしまう者。罪と知りながら止められない者。ヒュー・ジャックマンは愛する娘を見つける為に暴走していく父親を大熱演しています。もう一人の主人公であるジェイク・ギレンホールも素晴らしい。常に感情を抑えている冷静な刑事で、人間味も温かみも静かに演じていて。容疑者役ポール・ダノはこういう役が上手い。他にもヴィオラ・デイヴィス、テレンス・ハワード、マリア・ベロ、メリッサ・レオらが、見事な演技を見せてくれます。


忘れてならないのが、名匠ロジャー・ディーキンスによる美しい撮影です。近年の『トゥルー・グリット』や『007スカイフォール』等のような、1ショット1ショットが痺れるような構図はかなり控え目。その分、映画の語り部として貢献しています。HD撮影ならではのコントラストがはっきりした、しかも陰影に富んだ映像の数々。特にクライマクスの激走場面。あの美しさは何でしょう。登場人物の必死さとあの映像でもって、忘れえぬ場面となっています。


忘れえぬ場面と言えばあのラスト。救いはあるのか、どうなのか。深い心の闇と余韻を画面に残したままで、ばっさり終わるタイミング。素晴らしい。


プリズナーズ

Prisoners

  • 2013年|アメリカ|カラー|153分|画面比:1.85:1
  • 映倫PG12(銃による殺傷・出血、拉致監禁がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。)
  • MPAA (USA): R(Rated R for disturbing violent content including torture, and language throughout.)
  • 劇場公開日:2014.5.3.
  • 鑑賞日:2014.5.5.
  • 劇場:TOHOシネマズららぽーと横浜4/デジタル上映鑑賞。公開3日目のゴールデンウィーク月曜0時10分からの回、113席の劇場は15人程の入り。
  • 公式サイト:http://prisoners.jp/ 予告編、映画紹介等。

2014-06-06

アナと雪の女王

| 22:11


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★film rating: A

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


王国アレンデールの幼い王女姉妹エルサとアナは仲良しだった。だがある夜、姉エルサの触れたものを凍らせる能力によって、妹アナは命の危険にさらされてしまう。責任を感じたエルサはその能力を封印し、自室に閉じこもり、アナと距離を置くようになる。命と引き換えに姉の能力に関する記憶を消されたアナもまた、孤独に成長して行く。年月が経ち、国王・女王である両親の死去により、成人したエルサ(声:イディナ・メンゼル松たか子)は女王として王位を継承する事になる。久々に姉妹で気まずい再会をした戴冠の日だったが、自らの力を制御出来ずに王国を雪と氷の国に変えてしまったエルサは、動揺し、山へと逃亡してしまう。アナ(声:クリステン・ベル神田佐也加)は、姉と王国を救うべく、山に向かうが。


かつては面白い作品を連発していたピクサーが、このところ自己再生産を繰り返してばかりで凋落が止まりません。一方、そのピクサーを買収して自社に取り込んだディズニーは好調です。昨年の『シュガー・ラッシュ』といい、これといい、古典的ディズニー・アニメ映画のフォーマットに則りながらも、現代的な内容の優れて面白い作品を連発しています。いや素晴らしいと思っていたら、どちらもジェニファー・リーの脚本によるものでした。本作は彼女の初監督作品でもあります(クリス・バックとの共同監督)。リー個人の功績も大きいので、ディズニーのさらなる黄金期が続くのかどうかは、まだ見守る必要があるとして、これは間違いなく傑作です。


映画を観ながら、「アンデルセンの『雪の女王』を原作にしていた筈なのに」など難癖つけるのは野暮というもの。私もこんな話だったっけと思っていたのですが、実際のところはオリジナル作品と言って良いでしょう。ここはアナとエルサの数奇な冒険と運命、そして彼らの旅で出会う愉快な仲間達を純粋に楽しみましょう。短時間で観客の心を掴む話術、個性豊かな人物造形、随所に挿入されるユーモアと、古典的なディズニーアニメ映画のノウハウが生かされています。ここら辺は老舗の伝統の強さを感じました。


人物造形で1番目を引くのは、やはりヒロインの2人です。明るく行動的、強気な…でもやや短絡的な性格のアナと、内省的で思慮深く、だが自らをコントロールできないエルサ。しかし山に逃亡したエルサは、孤独になって初めて自己を解放していくのです。ここで歌われる「Let it Go」の場面は、映画史に残る事でしょう。ドラマと映像と歌が一体となり、壮観でカタルシス満点で感動的です。映画のハイライトを前半に持って来る作者達の度胸も満点。ロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペス夫妻による魅力的な楽曲と、イディナ・メンゼルの熱唱もあって、何度でも繰り返して観たくなる数分間となりました。実のところ、ミュージカル場面は殆どが前半から中盤にかけて集中しており、後半はミュージカルは排除されたドラマ色、アクション・アドベンチャー色が強くなってきます。ミュージカル好きとしては少々物足りなく感じますが、これは現代的な映画として致し方ありません。しかしここで聴ける楽曲の数々は、極上の楽しさに溢れています。序盤に歌われる「生まれてはじめて」は、戴冠式での舞踏会を心待ちにする解放感溢れるアナと、誰にも自分の能力を知られたくないエルサの歌が交わり、対象的な心情が同時進行で歌われる、これぞミュージカルならではのドラマティックさ。アナと、知り合ったばかりの王子ハンスとのコミカルなデュエット「とびら開けて」は楽しいし、エルサが創り出した雪だるまのオラフが歌う「あこがれの夏」は愉快です。ミュージカル映画の、そしてアニメーションならではの、誇張や省略が活かされた作りが嬉しい。


この作品が多くの支持を集めているのは、恐らく人物造形にもあるのではないか、とも思います。アナとエルサだけではありません。トナカイの相棒スヴェンと共に氷を運ぶ生業をしている、不器用で無骨な、でも心根優しい青年クリストフ。あるいは夏を夢見る雪だるまオラフ(当然、夏には雪だるまは溶けてしまいますが、そんな事は思いも寄らないのです)。彼らの誰かに感情移入する人は多い事でしょう。


物語は起伏に富み、ディズニー映画としては予想を裏切られる展開も終盤に幾つか用意されています。その最大のものは、ディズニー映画で取り上げられる事の多い「真実の愛」でしょう。この視点こそが現代ならではの映画にしている最大のものです。だから一部で言われている「最後まで救世主(王子)が現れない」といった批判は、むしろ古色蒼然たる視点だと思いました。


ディズニーアニメでも傑作の部類に入る本作。これを劇場で見逃す手はありません。


尚、同時上映の短編映画『ミッキーのミニー救出大作戦』もスラプスティックな楽しさに溢れた作品です。


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アナと雪の女王

Frozen

  • 2013年|アメリカ|カラー|102分|画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):G
  • 劇場公開日:2014.3.14.
  • 鑑賞日:2014.3.21.(1度目)、2014.3.23.(2度目)
  • 劇場:イオンシネマ港北1(1度目)/TOHOシネマズ横浜ららぽーと1(2度目)デジタル上映鑑賞。公開2週目の3連休初日の金曜14時40分からの英語2D版上映の回、388席の劇場は6割程の入り(1度目)。/公開2週目の日曜9時00分からの日本語吹替え2D版上映の回、401席の劇場は7割程の入り(2度目)。
  • 公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/anayuki/ 予告編、作品情報など。BD/DVD発売の宣伝告知となってからは、かなり簡素な作りになっている。

32643264 2014/07/02 15:53 前略
 「アナと雪の女王」は、公開後、比較的早いタイミングで
劇場(翻訳版)で鑑賞しました。
 劇中歌の「Let it Go」が、25ヶ国語でリレーして歌われ、
日本語パートの松たか子さんが国際的に評価、米国では、
当該曲が、劇場内で一斉にコーラスするケースが頻発 等、
公開前から話題が豊富で、内容・ストーリ等とは関係なく、
とりあえず、話題作は観ておこうというスタンスでした。

 当該作の内容については、Horkalsさんが簡潔に紹介されて
いるので、あえて追記することもありませんが、戴冠式での
アクシデントから、エルサの「Let it Go」の熱唱までは、ほぼ
半日のできごとで、アナの冒険(エルサの救出)から、凍結した
雪の女王の救済(姉妹の再会)までが、1.0〜1.5日のできごとの
設定になっていると、鑑賞後、気が付きました。
 終盤のどんでん返しを含め、イベントがぎゅっと詰まった
内容・構成で、TVドラマ「24」を思い出しました。

 なお、「最後まで救世主(王子)が現れない」といった批判に
ついては、古典的な王子様の登場はないものの、「心根優しい青年
クリストフ」の活躍は、王子様の役割をしっかり代替しているので
はと、思いました。(王子ハンスとは対照的な役割、人物像)
 
 また、「Let it Go」は米国内に止まらず、日本でも劇場内で合唱
される他、サントラ版も大変なヒットとなり、エンディングを担当
した「May J.」も映画紹介とは関係ない番組でも、引っ張りだこの
状態で、各局の番組内で唐突な感じで、「Let it Go」を熱唱したり、
「ひとりエコー:残響音」のギミックな歌唱テクニックを披露したり
しています。

 「Let it Go」の世界的なヒットは、困難に立ち向かうヒロインの
前向きなポジティブソングとしての評価・共感と推察しますが、
Horkalsさんは、どのように評価・感じていますか?
 私は諸々の事情で、ふるさと(城)から出奔・逃亡し、一人で生活
していかなくてはならない境遇に、一時的な開放感は味わいながらも、
寂しい気持ちが内在した、複雑な気持ちながら、一生懸命、自身を奮い
立たせている。というのがエルサの心情と思います。
 したがって、松たか子さんは、劇中の歌唱では、「一寸、緊迫感が伴
う、張り詰めた感じを含めて、歌唱しているように感じました。」
 当該作品はアニメーションで、かつ、ヒロインが特殊な能力を保有する
設定です。エルサは幼少期から成人するまで、一般社会から隔絶された環境
で、家族さえも、特殊能力を保有する為に、距離をおいた生活環境です。

 エルサは出奔先の山中に氷の城を築きますが、見方を変えると、諸々の
問題を抱えた少女が、自閉症に陥り、仮想の「氷の城、王国」を築いて、
社会から隔絶した状態になっているという解釈・設定も想定できます。

 世間知らずのアナを純朴なクリストフが応援・サポートし、姉妹の再開、
姉妹愛による「雪の女王」の救済というのが、作者(脚本家)の意図・狙い
だったのではと推察しています。(ハンスの役割は、一寸した薬味・苦味で
すね!)

                               草々

2014-05-24

アデル、ブルーは熱い色

| 22:39


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★film rating: A

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


17歳の高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)は、上級生トマとの初デートに向かう途中ですれ違った、青い髪の女に目を奪われる。トマと付き合い出したアデルは、やがて彼に別れを告げ、ゲイ同級生に誘われて夜の街へと出掛け、偶然入ったゲイバーで青い髪の女と再会する。彼女はエマレア・セドゥ)という美大生だった。やがて2人は付き合い出すのだが。


日常の中で一瞬訪れる、息が止まるような一目惚れ。そんな場面に至るまで、映画ではアデルの家庭や高校での生活などが、延々と執拗に、現実味を持って描かれています。だからいわゆる普通のラヴロマンス映画を期待すると、かなり違うのでしょう。実際、私も「普通のドラマ映画」を期待していました。ところが3時間ものこの映画は、いわゆる映画音楽の類は一切使われず、全編ドキュメンタリ・タッチで押し通します。アブデラティフ・ケシシュ演出は1つ1つの場面を長く、こってりと、肌感覚で描き出しました。しかも偶然にカメラが捉えたかのような錯覚を、観客に覚えさせます。


物語だけ追えば、ハリウッド映画ならば2時間も掛からないであろう内容です。しかしこの映画は、本筋に関係無いであろう会話場面でさえも長く描き出します。日常の一コマである授業場面でさえも、教師の問いに対する各生徒の回答を延々撮るのです。主人公アデルはその場にいるだけで、絡む絡まないにも関わらず。これは1人の少女の性と生を数年に渡って綴った映画に相応しいタッチとペースです。何故ならこの映画は、その数年間の場面場面を丸ごと抜き出したかのような作りになっているから。原題の「アデルの時代」はそんな意味も込められているのでしょう。だから何の変哲もない日常でさえ執拗に描かれているのです。


まるでアデルの私生活を覗き見するかのような作りの映画ですが、ただそれだけではありません。これは綿密に映像が計算された映画でもあります。青が至るところに配置され、またその使われ方も効果的でした。例えば髪を青く染めなくなったエマの心。あるいは青いドレスを着るアデルの心。そんな色使いも読み解きたくなります。


話題になっているリアルなセックス・シーンの数々も、欲情とか激情とか肉体のぶつかり合いをとかを描いていて、息を呑むよう。特にアデルとエマの最初のセックス・シーンは、アデルの人生を変えてしまうような経験として、延々と強烈に描かれていました。日本ならではの検閲の爪痕であるボカシが入るのは大変残念ですが、それも最小限だったのが幸いです。


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現実味のある描写と言えば、劇中に頻繁に登場する食事もそう。食べ方も皆、上品ではない、普通の食べ方で面白い。中でも食欲旺盛なアデルがナイフまで舐める序盤の描写は印象に残りました。食も性も生きる上での要素ですから。


燃えるような恋や嫉妬等を描きつつ、かといって単純な成長物語にはなっていません。様々な体験をしつつも、辛い事を癒し、受容していくには時間が掛かるもの。そんな経験をしても、自分が変わるのはほんの少し。時間が掛かった割りのほんの少しの変化こそが、本当の成長なのでしょう。そこもまた現実的で、とても良かったです。


アデル役のアデル・エグザルコプロスは全編出ずっぱりで、非常に強い印象を残します。これが初の大役だそうですが、素晴らしい逸材がいたものです。彼女には今後も注目して行きたい。レア・セドゥも今までの映画とは全く違う印象で、こちらもとても良かった。これはこの2人の女優を観る映画でもあります。お勧めです。


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アデル、ブルーは熱い色

La vie d'Adèle - Chapitres 1 et 2

  • 2013年|フランスベルギースペイン|カラー|179分|画面比:2.35:1
  • 映倫R18+(極めて刺激の強い性愛描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated NC-17 for explicit sexual content.
  • 劇場公開日:2014.4.5.
  • 鑑賞日:2014.4.28.
  • 劇場:Bunkamura ル・シネマ1/デジタル上映鑑賞。平日月曜12時15分からの回、150席の劇場は7割程の入り。
  • 公式サイト:http://adele-blue.com/ 予告編、スタッフ&キャスト紹介、レヴュー等。

2014-05-20

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

| 23:01


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★film rating: A-

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


2年前にアベンジャーズの一員として、異星人種族チタウリの地球侵略を退けたキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースクリス・エヴァンス)は、共に活躍したブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフスカーレット・ヨハンソン)と一緒に、諜報機関S.H.I.E.L.D.で働いていた。ジョルジュ・バトロック(ジョルジュ・サンピエール)に統率されているアルジェリア系海賊にシージャックされた船舶から、人質に取られているS.H.I.E.L.D.隊員達を救出を任されたロジャースとロマノフは、これをきっかけに巨大な陰謀に巻き込まれて行く。今まで仲間だったS.H.I.E.L.D.隊員らに襲い掛かられ、さらには長官ニック・フューリーサミュエル・L・ジャクソン)までもが襲撃を受けてしまう。そして彼らの前には、無敵かつ正体不明の殺し屋ウィンター・ソルジャーが立ちはだかる。


自らが所属する巨大諜報機関の陰謀を知った職員が、追手から逃げ回りながら真相に近付いて行く。このプロットでまず思い出されるのが、ロバート・レッドフォード主演の1975年の名作スリラー『コンドル』です。リベラルで人間味のあるヒーローを多く演じて長年活躍してきたそのレッドフォードが、本作ではS.H.I.E.L.D.トップとして配役されているのがとても面白い。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、1970年代風の政治スリラーを、現代アメコミ・ヒーロー映画として映画化するとこうなる、という好例になりました。こう書くとアナクロなスリラーに思えるかも知れません。しかし我々には、CIA末端職員だったエドワード・スノーデンオバマ政権の諜報活動をバラし、追われているのを知っています。また映画に活かされているネタとして、オバマ政権が無人機を多用して「テロリスト」と目した人々を攻撃しているのも知っています。つまりこの映画は、同時代性を盛り込んだスリラーとして作られているのです。この脚本を書いたクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーのコンビには、称賛を送りましょう。


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キャプテン・アメリカは純情すぎるくらいに真っ直ぐな性格の、名前通りに愛国心溢れる男です。その彼が、愛してやまない国家への疑問を抱き、忠誠心を試されます。しかし彼は悩みません。自らに正直に決断し、行動します。近年の苦悩するヒーロー映画群に比べて、何と潔いのでしょう。136分と長尺の、しかし緊張感満点のこの映画にスピード感をもたらしているのは、間違いなく主人公の真っ直ぐさです。荒唐無稽そのもので、一歩間違えれば大笑いになりそうな設定のヒーローを、今回もクリス・エヴァンスは真摯に、高潔さを持って演じています。見逃せないのはエヴァンスと共演者達との相性の良さです。ロマンスではない感情が芽生えるブラック・ウィドウ役スカーレット・ヨハンソンとも、退役軍人にしてカウンセラーでもある、後のファルコンことサム・ウィルソン演じるアンソニー・マッキーとも、です。彼ら3人の関係には居心地の良さ、リラックスしたものが見て取れ、緊張感のある映画の清涼剤ともなっています。


そして何より、この映画は優れたアクション・スリラーです。映画には素晴らしい、文字通り息を呑むようなアクション場面が幾つも用意されています。序盤のシージャック制圧場面からしてスリリングですが、市街戦へと展開していく2つの場面は、近年のアクション映画の中でも屈指の出来栄えでしょう。ニック・フューリーが襲撃を受ける場面と、キャップ、ブラック・ウィドウ、ファルコンらが、ハイウェイでウィンター・ソルジャー率いる傭兵軍団から襲撃を受ける場面がそうです。絶体絶命の状況下での緊張と、反撃のカタルシスを盛り込んだアクションの引っ張り方が見事だし、文字通り手に汗握る迫力満点の展開となっています。もしこれがアクション映画の基準になったとしたら、ハードルはかなり高くなったと言わざるを得ません。私にはこれがお初のアンソニー・ルッソとジョー・ルッソの兄弟監督は、マーベルの起用に応えて、思い切りの良さと緻密さを兼ね備えた演出を見せてくれました。映画後半での加速度的な盛り上がりと、目もくらむような大アクションも力感に溢れています。ユーモアの配分も良い。注目の兄弟監督です。


『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、幾つものモラルの問題を織り込みながら同時代性を抱き、優れたアクション・スリラーでありながらも、スーパー・ヒーロー映画として成立しています。アメリカン・コミック映画の中でもかなり上出来の部類に入りました。お見逃し無きよう。


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

Captain America: The Winter Soldier

  • 2014年|アメリカ|カラー|136分|画面比:2.35:1|2D撮影、2D/3D上映作品
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for intense sequences of violence, gunplay and action throughout.
  • 劇場公開日:2014.4.19.
  • 鑑賞日:2014.4.26.
  • 劇場:TOHOシネマズららぽーと横浜/デジタル上映鑑賞。公開2週目の土曜0時15分からの回、劇場は15人程の入り。
  • 公式サイト:http://www.marvel-japan.com/movies/captain-america2/ 予告編、キャラクター紹介、ニュース、関連商品紹介など。

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2014-03-07

ゼロ・グラビティ

| 21:52


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★film rating: A

※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


高度600kmの軌道上で、スペースシャトルがスペース・デブリ(宇宙のゴミ)に当たり大破、船外活動中だった医療技師のライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)と、ヴェテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)だけが生き残ってしまう。地上との通信は途絶え、2人を繋ぐのは命綱のみ。残っている酸素はわずか。絶体絶命の状況下、2人は必死に地球への生還を目指すが。


上映時間91分。舞台は殆どが宇宙空間。登場人物は殆ど2人のみ。これだけ聞くと地味な小品に思える向きもありましょうが、冒頭の10分程(しかも1ショット映像)を除いては危機また危機のアクション・スリラー映画としても観られる映画なのです。無駄な人物やドラマ、場面やショットですら削ぎ落としたかのような作りですが、サンドラ・ブロック演ずるストーン博士のドラマも描かれており、密度の濃い1時間半でした。


何よりも壮大な映像が物凄い。ドキュメンタリ調に臨場感あふれるものとする為に、極力1場面を1ショットに収めようという強い意志で作られた映画は、何しろ冒頭の船外活動から事故に至るまでの十数分が1ショット(に見えるように)撮られているのです。キャメラは何百キロもの遠くから、時にはヘルメットの中にまで入り込み、また主観映像にすらなります。最新技術を投入した映像体験は他に代えがたいもの。3D効果によって宇宙空間の「深さ」がより体感出来るようになっているし、また無重力空間に浮かぶ物体も、時にはドラマを効果的する役目すら担っているのです。強烈なのは宇宙空間の恐怖です。上下左右も分からず、ただ深淵に投げ出されたヒロインおののきが体感できます。まずは3D上映での鑑賞を、出来れば高画質大画面・大音響のIMAX上映を強くお勧めします。


そしてサンドラ・ブロックです。正直に言って彼女が、演技者としてこんなに素晴らしい女優だとは思いもしませんでした。感情の起伏や人物の変化を見せつつ、多面的な人物像を見せてくれるし、しかも感動的な場面は彼女の演技によるところも大きい。文字通りこの映画を背負って立っています。軽妙なクルーニーの好演も見逃せません。ブロックとの対比にもなっていて、儲け役で印象に残るものとなっていました。映画は1人の女性の死闘を描きつつ、普遍的な「生と死」に関するドラマになっており、こちらも面白い。劇中で幾度か登場する再生もしくは誕生のメタファーは、本作に大きな影響を与えている『2001年宇宙の旅』とリンクするもの。実際、あちらや『バーバレラ』を想起させるイメージは幾つもあり、それらに気付いて微笑みを浮かべられるのも、SF映画ファンならではの楽しみです。そして終始続く緊張感の後、原題の「重力」の意味が明らかになる力強いラストに感動が待っています。


現実の宇宙空間では音はありませんが、本作は独自のルールを設けています。基本的に人物が触れたものしか音がしません。つまり触感を音で表現しているのです。もっとも、物語が進行するに連れてルールは破られ、効果音が大きくなっていきます。後半の劇的効果を盛り上げる為なのでしょうが、『2001年』以来の宇宙では音がしない映画を期待していたので、少々残念でありました。


脚本はいささかのご都合主義に彩られ、おかしな描写も散見されます。余り科学的、現実的に見るのはお勧めできません。しかし強烈なスリルとサスペンスで引っ張る演出と、演技によるパワーによる世界に、ここは浸りたいものです。


スティーヴン・プライスの音楽は、マイケル・ナイマンの『ガタカ』を思い出させる哀愁を帯びた旋律もあるものの、こちらもヒロインの心理を描こうとしていて効果的でした。

ゼロ・グラビティ

Gravity

  • 2013年|アメリカイギリス|カラー|90分|画面比:2.35:1|2D撮影、2D/3D上映作品
  • 映倫(日本):G
  • MPAA (USA): Rated PG-13 for intense perilous sequences, some disturbing images and brief strong language.
  • 劇場公開日:2013.12.13.
  • 鑑賞日:2013.12.20.(1度目)、2014.1.4.(2度目)
  • 劇場:ユナイテッドシネマとしまえん8(1度目)、109シネマズクランベリーモール7(2度目)/デジタルIMAX 3D鑑賞。公開2週目の金曜16時15分からの回、345席の劇場は30人程の入り(1度目)。年始土曜10時5分からの回、361席の劇場は6割程の入り(2度目)。
  • 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/ 予告編、壁紙、「宇宙遊泳を体験しよう」など。

32643264 2014/03/10 18:15 前略

 「ゼロ・グラビティ(原題:Gravity)」はアカデミー賞でも7冠と
大変、高い評価を受けましたが、作品賞を逃したのは、当該作品の評価、
位置づけ(映画としての評価ポイント、脚本に対する評価)を反映して
いるのではと推察致します。

 horkalsさんは、映画をエンターテイメントとして、やや距離を置いた
俯瞰した位置、視点からの評価として「A」のレイティングとされている
ように推察いたしました。

 私は下記(再掲載)した通り、昨年、当該作品を鑑賞した際は、前半の
緊張したストーリ展開から、後半の「幌馬車ムービ」さながらの偶然、幸
運の連続に、やや拍子抜けした印象・感想になってしまいました。

                             草々

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 昨年(2013.12.14)、掲載したコメントを再掲載しました。


3264 2013/12/14 12:36

前略思いましたが、もう3D映画を3D撮影をする必要はなさそう。2D撮

 残念ながら、私は「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を、まだ観ていません。
 文末で「今回のIMAX 3D鑑賞で影でも3D効果が考慮された撮影と、注意深い変換技術があれば全く問題無いのですね。」というご指摘があり、投稿しようと思いました。

 実は昨日(2013.12.13)、前評判の高かった「ゼロ・グラビティ(原題:Gravity)」を観てきました。

 映画評に掲載されていた「2D撮影で、3D映画を作製し、今後、3D撮影をする必要はないのでは。」というコメントに興味を刺激されたからです。

 本編は地上600kmの宇宙空間が舞台の二人芝居のような展開で、実質的には大物俳優二人のみのストーリ展開に設定の面白さがあります。(主人公二人と応答する地上スタッフの声が、エド・ハリスである事は後で知りました。本編は翻訳版を視聴)また、宇宙空間の表現が素晴らしく、何気ない宇宙船内の無重力状態の表現も、実際のスペースシャトル等の衛生中継の画像をライブで見てるような臨場感があります。
 
 さらに、宇宙空間の映像も、地球表面の映像が大陸の形や夜間の都市部の輝き(照明等)が実際のライブ映像の迫力もあり、これらの映像表現、映像技術だけでも、当該映画の魅力の一部を構成しているのは認めざるを得ませんが、本編がドキュメンタリではなく、エンターテイメントの映画である事実の前では、あまりにも中盤以降のストーリ展開が陳腐で、緊迫した前半部の緊張感が台無しになっていることは、指摘せざるを得ません。

 限られたシチュエーション、限定した登場人物で展開される映画、舞台では、緻密な舞台設定、隙のないストーリ展開が伴わないと、限定された舞台・条件での劇・映画が維持できません。(「激突」、「ダイハード1」等は、低予算の制約という以上に、限定された舞台・条件の緊張感を最後まで維持しています。)

 主人公のライアン(サンドラ・ブロック)は、船外活動中の事故遭遇から、マット(ジョージ・クルーニ)のサポートで一旦、破壊されたシャトルに帰還致しますが、これ以降のストーリ展開は、無理に無理を重ねた偶然と幸運の連続で、一挙に緊迫した空気が萎んでしまう残念なことになっています。

 後半の腰砕け具合は、「プロメテウス」と良く似ています。主人公が女性科学者であること、大変、気弱な女性が、劇後半から不死身のスーパーウーマンに変身するところも酷似しています。

 本作品は、新しい撮影技術の導入(2D撮影後、3D映像にデジタル編集)や優れた宇宙空間の映像美、宇宙船等の表現も、太陽パネル等の脆弱感(アルミホイルの様な頼りなさ)等、従来の宇宙を舞台にした映画とは一線を画すライブ感を達成しながら、ストーリ展開としては、スパイヒーロー映画の様なご都合主義、駅馬車ムービとなってしまい大変、残念な結果となりました。

                           草々

32643264 2014/03/10 18:26 3264 2013/12/14 12:36






追伸

 先ほど、コメントを投稿しましたが、再掲載したコメントに、誤って
文章がコピーされていました。

 「前略」以降の以下の文章です。

 「思いましたが、もう3D映画を3D撮影をする必要はなさそう。2D撮」

 大変、お手数ですが、該当部の文章を削除、掲載いただくと助かります。
       
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(誤)

前略思いましたが、もう3D映画を3D撮影をする必要はなさそう。2D撮

 残念ながら、私は「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を、まだ観ていません。


(正)

前略

 残念ながら、私は「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を、まだ観ていません。