紫源二日記

2008-11-08 人間はだまされることを望んでいる動物なのか?

 

 

ヒュー・ミルン著『ラジニーシ 堕ちた神』を読んだ。

 

この本が出版されたとき、当然僕は書店でこの本を見た。

手にとって中の写真もめくってみた。

でも、読もうとは思わなかった。

どうせ、アメリカに行ったバグワンをこき下ろすためのプロパガンダだと思ったのだ。

著者は、CIAかなにかに買収されているのだろうと思ったものだ。

 

それから、数年後、バグワンはこの世を去ったが、CIAに毒を盛られて殺されたたのだという噂を信じていた。

 

著者のヒュー・ミルンは、1970年代始めからのバグワンの側近で、シヴァムルティというサンニャーシだ。

黄金のプーナ時代には、バグワンのカメラマン兼ボディー・ガードとしていつも彼のそばに仕えていたという。

そして、オレゴンでのラジニーシプーラムが失敗するまでの10数年間、ラジニーシの側近としてグルの活動の裏表を見てきた。

この本は、バグワンの暴露本としてだけではなく、彼の体験談でもあるのだ。

そして、実際に、彼の体験したことだけが語られていて、単なるうわさ話などは書いていないという。

 

改めて驚いたのは、フリーセックスは、バグワンが事実奨励していただけでなく、実際彼も行っていたらしいことだ。

そして、僕の思い込みで、アシュラムにいた子供たちはアシュラムで温かく歓迎されていたと思っていたが、実際はそうではなったらしいということだ。

フリー・セックスを行えば、当然、だれが親だかわからない子供が大勢生まれる。

そうした子供たちがアシュラムでは温かく見守られていたと僕は勘違いしていた。

プーナのアシュラムには小さい子供たちもいて、みんな可愛がられていたからだ。

ところが、バグワンは、子供が生まれることを極度に嫌っていたらしい。

そして、妊娠すると、中絶をすることが、いわばアシュラムの無言の掟のようになっていたらしい。また、女性が不妊手術をするよりも男がパイプカットをする方が安全なので、そうすることを奨励されていたという。

もうひとつ驚いたのは、バグワンは催眠術を使っていたということだ。

シヴァムルティは、”催眠術と超能力”と書いているが、どちらにしても、バグワンは人心をコントロールする術を知っていたということだ。

僕も、ダルシャンでバグワンに眉間のチャクラ(アジナー・チャクラ)に親指を当てられ、バグワンの大きな眼で見つめられたときは、一種の催眠状態に陥ったように恍惚となったのは事実だ。

そして、時と空間を超えて、彼からのメッセージを受け取っているように感じることもあった。

”心”が時空を超えたものならば、それをコントロールすることを会得したマスターならば、たとえそれが催眠術でも、弟子を遠隔で操作したり、彼の波長に合う弟子たちに、彼から召喚されているように感じさせることができたのかもしれない。

バグワンがアストラル次元で弟子に会いに行くことができると語ったのは、まんざら嘘ではないかもしれないと僕は思う。

 

もう一つ思ったのは、バグワンがアメリカのオレゴンに行ったことと僕がカリフォルニアに行ったのがシンクロしていたことだ。

バグワンがアメリカに渡る1年くらい前、僕はカリフォルニアの山の中にいた。

そして、実際に、その山の中の仲間に語ったものだ。

「バグワンがここに来ればいいのに。この山の中にアシュラムを作ってコミューンにすればいいのに!」

ところが、オレゴンでのラジニーシのコミューン、ラジニーシプーラム建設は失敗に終わる。

それが、10数年後の日本でのオウム真理教のコミューン建設にそっくりだったから、カルト・コミューンの辿る行動パターン必然的に同じようなものにならざるを得ないのだろうかと思った。

つまりは、武装して、地元の住民と闘争を始め、カルトはあらゆる政治的陰謀をたくらみ始め、当局からマークされ、訴訟を起こされ、しまいには国家権力によって追放されるのだ。

でも、若かった僕は、当時は、どっちもどっちだと思っていた。いや、むしろ、国家権力のほうが、汚い陰謀を張り巡らして理想共同体建設をつぶしにかかったのだろうと思っていた。

ところが、オウムを見ればそうではないのが誰の目にも明らかだ。

むしろカルト側が、社会に対して敵対し、破壊工作をしかけるのだ。

ラジニーシプーラムでも同様だった。

当時、権力を一手に握ったシーラという女性が武装して、アシュラムを砦のようにしていることは当時から僕も知っていた。

ところが、バグワンは自分はそうしたことは何も知らないと語っていたそうだが、シヴァムルティは、彼はすべてを知っていいたはずだという。

 

結局、バグワンは死んでしまったが、この本にはそこまでは書かれていない。(当然その真相も書かれていない。)

なぜ彼は死んだのか。

僕にはよくわからないが、バグワンの許を訪ね、バグワンに出会って日本に戻ってからぼくは、一種の熱病のような状態になった。

その時、見た夢によって、僕は正気に戻ったのだ。

その夢は今思えばとても不思議な夢だった。

僕が3つの時から通っていた日曜学校礼拝堂に行くと、バグワンが現れる。そして、僕に言う。

「おまえは28才で悟る。だから、もう心配しなくていい」

ぼくは、悟り病にかかっていたのだ。

そのリアルな夢を見たあと僕は思ったものだ。

「28才だって! 28になるまで待ちきれないよ!」

 

28才になる頃には、バグワン熱もすっかり冷めていたが、

その年は、あの夢で見た年であることは覚えていて、何が起きるのだろうと気にしていた。

ところが、実際に起こったことは、バグワンの死だった。

僕は夢のお告げのように悟りはしなかったが、その年、バグワンと永遠におさらばしたのだ。

彼からもらったマラと彼の眉毛が入ったボックス、そして、バグワンがぼくの目の前で書いてくれたぼくのサンニャース・ネームが書かれた高級な便箋(シヴァムルティの本にこの高級便箋のことも書かれていた)をゴミ箱に捨てた。

 

バグワンとは、前世からの何らかの縁があったのだろう。

催眠術を使っていたインチキグル。

でも僕は、その彼の写真の崇高な顔と目に一目惚れした。

そして、その写真を撮った弟子がこの本を書いたシヴァムルティだったことを知った。

バグワンはカメラマンに目を強調して撮るように指示していたという。

バグワンは稀代の演出家でもあったのだ。

 

サイババが手品師だったように、バグワンも催眠術師だったというわけか。

インドには、世界を惑わすような一流のマジシャンがいるということか。

そして、世界は巧く騙されることを望んでいるというわけだ。

  

歴史を見ればわかるように、人間は集団で洗脳されることを幸福と感じるらしい。

戦争がそうだ。

ヒットラーにしても現人神にしても同じだ。

誰かに指示され、指図され、はじめて自分の存在意義を見出すことしかできない哀れな動物なのだ。

そして、集団ヒステリー状態になっているときが唯一幸福を感じることができ、自分の存在意義を確認することができる生物なのだ。

世界は常に洗脳されるべき指導者を待望している。

自分一人では何もできなと感じているし、誰か指導者が集団を強力に牽引してくれることを期待しているのだ。

そうしたら、自分もその集団に加わろうと考えている一匹蟻が、大勢右往左往しているのだ。

 

アメリカ大統領選挙があんなにも盛り上がったのはそのためだろう。

オバマ新大統領にあんなに期待が集まるのはそのためだろう。

 

野生動物でも渡り鳥やカモシカのように何万頭の群れを作るものもいる。

だから、人間もそのような統制のとれた群れをつくりたいと本能が要求しているのだろうか?

はたして、アメリカが、そのような統制のとれた群れになるだろうとは、僕にはとても思えないのだが…。

そして、世界が一つの統一された平和な群れになることも、想像するだけでも難しいかもしれない。

それが、だれか一人のリーダーに統率されるピラミッド型の群れだとしたらなおさらそんなのは胡散臭いと思うのだが…。

大集団をつくっている野生動物は、たいていみな平等で、ボスらしきものはいない。

反対に、ボスのいるピラミッド型の群れは、常に他の群れと敵対し、闘争している。

人間社会はいったい、どんな型の群れをつくるのが理想なのだろうか?