C78感想


>>Captain!>>
白上さん家
村紗水蜜が救いを手にするまでの物語。
真っ直ぐな小説でした。作者の人柄が文章に表れる好例。
封印→復活のように年月経過を伴う展開でありながら、急ぎ足にならず丁寧に描かれてる点は素晴らしい。



東方コミュニティ白書
久幸繙文
色付配置図の人でお馴染み、久樹さんの送る東方界隈の「求聞史紀」。
評論ジャンル全てに言ってますが「こういった作品が世に出ること」自体に意義があると思っています。資料の重要性という観点で。
きめ細やかな解説と共に東方界隈の動向を数値化、定量化しており、色地図作成をこなす著者ならではの「データ的分析」とでも言う強みが見て取れます。
実際、数年単位の間であれば東方界隈の統計的資料はこの本一冊で済んでしまうんではないかと。それほどの強度があります。
第四章「東方のこれから」では東方界隈の多様性や課題、また即売会が開催されるまでの流れを説明するなど、データだけではない部分を補完しています。
東方関連の評論本として、現状では間違いなく最高の本です。



PLANETS vol.7 ZUN・竜騎士07特別対談「同人ゲームが起こした「奇跡」の真価」
第二次惑星開発委員会
対談の柱は「ゲーム性とは何か」「音楽の強制力」「二次創作という磁場」「コミュニケーションからの想像」の4点。


・「ゲーム性とは何か」
「ゲームの外側と内側」という言葉から、内側(ゲーム内)でプレイヤーがどのように遊ぶか(クリア目標や稼ぎプレイに走ったり)といった選択性に触れている。 ゲームの外側ではプレイヤーがその作品の設定で議論をすることは十分にゲーム的だと論じており、ノベル系作品などに見られるプレイヤーの考察に関連付けている。
また、東方作品において自機や敵が従来のSTGのようなメカではなく少女であることの理由がゲーム・キャラクターデザインの観点から語られており、その必然性が確かな説得力を持っている。
他方、キャラクターはあくまでゲームを盛り上げる要素であって、最初からキャラありきで狙うことの危険性についても警鐘を鳴らしている。


・「音楽の強制力」
ZUN氏・竜騎士07氏ともにゲームにおける音楽の重要性を強く強調している。ひぐらしでは平和だった日常が反転する場面での不安を煽るBGMであったり、東方であれば反魂蝶の演出などが顕著かと思われる。


・「二次創作という磁場」〜「コミュニケーションからの想像」
両氏ともに二次創作の誘発を狙ってはおらず、意図せず二次創作の現場が拡大していったとのこと。ここでも、意図的に狙うことの危険性(狙ったものは面白くならない)について触れており、これは「ゲーム性とは何か」でゲーム・キャラクターデザインについて語っていた内容と共通する。
各作品の二次創作に対しては非常に好意的。ZUN氏は自身の作品自体ですら二次創作である(神話などの元ネタがあるという意味で)と発言し、あまりオリジナルや二次創作という分類は考えていないとのこと。
二次創作の増えた背景には、技術的なハードルが下がったことにより送り手側が増えてきた。また、物を作るという行為を通して「私はここにいる」というメッセージの発信、コミュニケーションの形成が挙げられていた。


ゼロ年代を代表する同人ゲームの担い手への対談を通じて、ゲームとは何か? 物を作るとは何か? といったことの一端が見えてくるかと思います。
音楽に関する話題が特に濃かった印象。
この対談に限らず他の誌面も素晴らしい出来。