改正規定の特定の仕方〜条の移動と追加が混在する事例

洋々亭さんのサイトから*1

例えば、次のような一部改正条例と附則があったとします。

第5条中「○」を「×」に改め、同条を第6条とし、同条の次に次の1条を加える。
第7条 ……
附 則 
この条例は、公布の日から施行する。ただし、第6条の次に1条を加える改正規定は、平成22年4月1日から施行する。*2

改め文の本則中「同条の次に1条を加える。」とした改正規定を附則の中で、「第6条の次に1条を加える改正規定」と引用しています。
これは「第5条の次に1条を加える改正規定」ではないのかな??との指摘を受けたのですが、どうなのでしょうか?

一般的に改正規定を特定する場合には、改正前の規定をとらえて表現するので、「第6条の次に1条を加える改正規定」という特定の仕方はないのではないかと思っていたが、そうでもないようである。例えば、次のような用例がある。

中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)
    (略)
第14条を第17条とし、同条の次に次の1条を加える。 
(事務の区分)
第18条 (略) 
   (略)
附 則 
(施行期日)
第1条 この法律は、平成20年1月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。 
(1) 第14条を第17条とする改正規定及び第13条の次に3条を加える改正規定(第16条に係る部分に限る。)並びに附則第5条、第7条及び第8条の規定 公布の日 
(2)・(3) (略) 
(4) 第17条の次に1条を加える改正規定及び第13条の次に3条を加える改正規定(第14条に係る部分に限る。)並びに次条から附則第4条まで及び附則第6条の規定 平成20年4月1日

この用例では、第14条を第17条とし、その次に第18条を追加している改正について施行期日を書き分けているが、後者について附則第1条第4号において「第17条の次に……」と特定している。
これは、第18条を追加する改正の施行期日が、第14条を第17条とする改正の施行期日よりも後であるため、旧第14条は第18条を追加するときには既に第17条になっているので、これでもいいというところなのだろうか。しかし、これだとどうしても気持ちの悪さは残ってしまう。
ところで、改正規定の特定の仕方については、統一したルールはないように見受けられる。そして、条の語句の改めとその条の移動がある場合の特定の仕方については、2007年8月5日付け記事「一部改正の例規を改正する例規の立案(4)」で触れたが、最近の用例では、次のようにする場合が多いように感じる。

郵便貯金法の一部を改正する法律(平成6年法律第72号)
   (略)
第66条の2中「及び前条」を「、第66条及び前条第2項」に改め、同条を第66条の3とし、第66条の次に次の1条を加える。
第66条の2 (略)
附 則
(施行期日)
第1条 この法律の規定は、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
(1)〜(3) (略)
(4) 第66条の2の改正規定、同条を第66条の3とし、第66条の次に1条を加える改正規定及び第67条の改正規定並びに附則第4条の規定 公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日

そうすると、上記の事例の改正規定は、「第5条の改正規定」と「第5条を第6条とし、同条の次に1条を加える改正規定」というように特定することになる。
そして、後者のような条の移動とその条の次に条の追加を併せて行う改正規定について、施行期日を書き分けた例として、次のような用例がある。

沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律(平成10年法律第21号)
    (略)
第18条の2を第18条の7とし、同条の次に次の1条を加える。
(輸入品を携帯して出域する場合の関税の払戻し)第18条の8 (略)
   (略)
附 則
(施行期日)
第1条 この法律は、平成10年4月1日から施行する。ただし、第18条の2を第18条の7とし、同条の次に1条を加える改正規定(第18条の2を第18条の7とする部分を除く。)及び第25条の2の次に1条を加える改正規定は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

この書き方のほうが、私にはしっくりくる。そして、この例にならうと、上記の事例の附則は、次のようになるであろう。

この条例は、公布の日から施行する。ただし、第5条を第6条とし、同条の次に1条を加える改正規定(第5条を第6条とする部分を除く。)、平成22年4月1日から施行する。

かっこの部分は、「(同条の次に1条を加える部分に限る。)」としてもよいのではないかと思う。

*1:改正規定の特定の仕方については、半鐘さんが多くの実例を取り上げておられる。

*2:一部字句を補っている箇所がある。