自治体法制執務雑感

2014-10-04

[]公契約条例 13:07

半鐘さんが公契約条例について取り上げ、そのタイプを野田市型と川崎市型に分類して、その違いを述べられている。

それぞれの条例野田市公契約条例川崎市契約条例)において、契約上の賃金の最低額を定める規定は、次のとおりとなっている。

野田市公契約条例
適用労働者賃金
第6条 受注者等は、適用労働者に対し、次に定める1時間当たりの賃金等の最低額以上の賃金等を支払わなければならない。
(1) 工事又は製造の請負の契約 契約を締結した日の属する年度の農林水産省及び国土交通省公共工事の積算に用いるため決定した公共工事設計労務単価(以下この号において「労務単価」という。)に規定する職種ごとに、千葉県において定められた額を8で除した額に100分の85を乗じて得た額(労務単価に規定されていない職種又は千葉県において額が定められていない職種にあっては、労務単価を勘案して市長が別に定める額)
(2) 工事又は製造以外の請負の契約及び指定管理協定 野田市一般職の職員の給与に関する条例(昭和26年野田市条例第32号)別表第1及び別表第1の2に定める額、国土交通省が国の建築保全業務を委託する際の費用の積算に用いるため毎年度決定する建築保全業務労務単価その他の公的機関が定める基準等並びに本市が既に締結した工事又は製造以外の請負の契約に係る労働者賃金等を勘案して市長が別に定める額
2・3 (略)
川崎市契約条例
(作業報酬下限額)
第7条 市長は、毎年、次の各号に掲げる契約の種類ごとに当該各号に定める者(以下「対象労働者」という。)に対して支払われるべき1時間当たりの作業報酬(賃金又は請負代金のうち規則及び地方公営企業法昭和27年法律第292号)第10条に規定する企業管理規程(以下「規則等」という。)で定めるものをいう。以下同じ。)の下限の額(以下「作業報酬下限額」という。)を定めるものとする。
(1) 予定価格600,000,000円以上の工事の請負契約(以下「特定工事請負契約」という。) 次に掲げる者であって市が工事費の積算に用いる公共工事設計労務単価に掲げる職種に係る作業に従事するもの
ア 労働基準法昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。以下同じ。)であって特定工事請負契約に係る作業に従事するもの
イ 自らが提供する労務の対償を得るために請負契約により特定工事請負契約に係る作業に従事する者
(2) 予定価格10,000,000円以上の業務の委託に関する契約のうち規則等で定めるもの又は地方自治法第244条の2第3項の規定により市の指定を受けたもの(以下「指定管理者」という。)と締結する公の施設の管理に関する協定(以下「特定業務委託契約」という。) 労働者であって特定業務委託契約に係る作業に従事するもの
2〜4 (略)

半鐘さんは、上記の書きぶりの違い、すなわち、野田市条例は、「受注者等は、……しなければならない」というように受注者に義務を課すような書きぶりにしているため、これを公権力的構成とし、川崎市条例は、「市長は、……定めるものとする」というように市長がその締結する契約に関する事項を定めることとしているため、これを契約的構成とされているのではないかと思う。

しかし、とりあえず野田市条例に限っていえば、条例違反の行為に対して遵守命令を行ったり、罰則を科すこととするなどの公権力を行使するような規定はないため、あくまでも契約の枠内のものであると考えてよいと思う。

私は、一般的に公契約条例と言われているものは、以前(2012年5月19日付け記事「最低賃金法と公契約条例の関係に関するメモ 」)記載したように、契約の相手方がその雇用者の賃金の額を契約の条件にしているに過ぎず、いわば契約約款のようなものに過ぎないと考えている。つまり、一般的に公契約条例で規定している事項は、そもそも条例事項ではなく、あえて条例としなくても規則等で十分ということになる。

では、条例とすることにどのような意味があるかだが、ある学者の方*1は、自治体の契約の基本的事項を定めることになるため、自治体にとって重要な事項であり、議会の議決を経る条例という形式が望ましいと言われていたということを聴いたことがある。

もちろん、条例を遵守することを罰則で担保したりすれば、公権力的な条例となるのであろうが、公契約条例が上記のようなものであるとすれば、これも以前(2014年6月7日付け記事「公契約条例に罰則を設けることについて」)記載したが、このような条例に罰則を規定することが適切でない、つまり、公契約条例を公権力的なものとすることがよくないのではないかと感じている。

逆に、そのようなものでない限り、公契約条例は、その書きぶりによって法律と抵触する云々といったことは、あまり考えなくてもよいように思っている。

しかし、野田市条例では、他に気になる規定がある。それについては、次回取り上げることにする。

*1自治体財務については、第一人者の方である。