組織に関する規定の位置

条例で、実体的な規定と併せて審議会のような組織に関する規定を置く場合、通常は雑則の前辺り、つまり後ろの方に置くのが通常である。
法律の例を見ると、例えば、総合特別区域法では、内閣に総合特別区域推進本部を置くこととしている。同法の章名は次のとおりであるが、総合特別区域推進本部の規定は、第5章として雑則の前に置かれている。

第1章 総則
第2章 総合特別区域基本方針
第3章 国際戦略総合特別区域における特別の措置
第4章 地域活性化総合特別区域における特別の措置
第5章 総合特別区域推進本部
第6章 雑則

このような例が圧倒的に多いのだが、若干の例外もある。
例えば、新型インフルエンザ等対策特別措置法では、内閣に新型インフルエンザ等対策本部を置くこととしているが、同法の章名は、次のとおりである。

第1章 総則
第2章 新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画等
第3章 新型インフルエンザ等の発生時における措置
第4章 新型インフルエンザ等緊急事態措置
第5章 財政上の措置等
第6章 雑則
第7章 罰則

章名に新型インフルエンザ等対策本部という文言はないのだが、同本部に関する規定は、第3章にある。第3章は、第14条から第31条までで構成されているが、新型インフルエンザ等対策本部の設置規定は、第15条である。その前の第14条は、厚生労働大臣新型インフルエンザ等が発生したと認めた旨を公表する場合の内閣総理大臣に対する報告の規定であり、第15条で、内閣総理大臣は、その報告があった場合には新型インフルエンザ等対策本部を設置することとしている。
以下第3章は、インフルエンザ等対策本部が新型インフルエンザ等への基本的な対処の方針を定めるものとする規定、都道府県が対策本部を定めなければならない規定、その他新型インフルエンザ等の発生時における措置の規定となっている。
このような構成にしたのは、インフルエンザ等対策本部は、インフルエンザ等が発生した場合に置かれる臨時的な組織であり*1、臨時的に置かれる組織に関する規定は、一連の手続における流れの中で規定したほうが適当との判断によるのではないかと思われる。
「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」も同様の構成となっており、同法は、第2章に武力攻撃事態等への対処のための手続等の規定を置いているが、その中で武力攻撃事態等対策本部の規定を置いている。
次に、都市再生特別措置法の例を取り上げる。
都市再生特別措置法の章名は、次のとおりであるが、同法に基づき内閣に置かれる都市再生本部の規定は、総則の次に置かれている。

第1章 総則
第2章 都市再生本部
第3章 都市再生基本方針
第4章 都市再生緊急整備地域における特別の措置
第5章 都市再生整備計画に係る特別の措置
第6章 立地適正化計画に係る特別の措置
第7章 市町村都市再生協議会
第8章 都市再生推進法人
第9章 雑則
第10章 罰則

もちろん、組織の設置がその法律において最重要事項ということなのであれば、このような構成もあり得るところではある。しかし、都市再生特別措置法は、少なくとも条文を見る限り、そうしたことは窺うことはできない*2

*1:新型インフルエンザ等対策特別措置法第15条第1項は、「内閣総理大臣は、……閣議にかけて、臨時に内閣に新型インフルエンザ等対策本部……を設置するものとする。」とされている。

*2:例えば、第1条の目的規定は「この法律は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に我が国の都市が十分対応できたものとなっていないことに鑑み、これらの情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び都市の居住環境の向上(以下「都市の再生」という。)を図り、併せて都市の防災に関する機能を確保するため、都市の再生の推進に関する基本方針等について定めるとともに、都市再生緊急整備地域における市街地の整備を推進するための民間都市再生事業計画の認定及び都市計画の特例、都市再生整備計画に基づく事業等に充てるための交付金の交付並びに立地適正化計画に基づく住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化を図るための都市計画の特例等の特別の措置を講じ、もって社会経済構造の転換を円滑化し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。」となっており、都市再生本部という文言は記載されていない。