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マルチプレート使用時のバランスのとり方

こちらに書いたように、先日、ガイド鏡をマルチプレートで並列同架するシステムを組んだんですが、ちょっと困ったのがシステムの重量バランスをどのように取ればいいのかという点でした。

以前、私がガイド鏡を使っていたときはいわゆる「親子亀」方式…つまり下の写真のように、メインの望遠鏡の上に直接ガイド鏡を載せる方法をとっていました。

この場合、基本的には極軸周りのバランスと赤緯軸周りの前後のバランスを取ればよく、バランスウェイトの重さや位置、望遠鏡位置の前後を調節するだけで大体は十分です。

しかし、マルチプレートを使った並列同架のシステムでは、特に赤緯軸周りのバランスをしっかり合わせる必要があります。赤緯軸周りは、マルチプレートの位置や望遠鏡の取付位置の前後など調節するべきパラメータが多く、考えただけでも面倒そうです。

このあたりの手順をしっかり解説した記事がなかなか見当たらなかったので、備忘録的なメモも兼ねて方法を紹介しておきます。なお、この方法は「天文ガイド」1988年6月号で紹介されていたもの。いやはや、古い雑誌も取っておくもんですねぇ。

(1) 使用状態に望遠鏡を組み立てたら、赤緯体、鏡筒ともに水平にしてから赤緯軸のクランプを締める。そしてバランスウェイトの重さや位置を調節して、おおまかに極軸周りのバランスを合わせる。バランスがおおよそ合ったら、極軸のクランプを締める。
(2) 赤緯軸のクランプを緩め、鏡筒を水平にしたままで機材の位置を調節して視線方向のバランスをとる。鏡筒バンドを緩めて鏡筒をスライドさせたり、アリガタごと鏡筒をスライドさせるとよい。
(3) そのまま赤緯軸だけ回転させて鏡筒を垂直に立て、左右のバランスをとる。機材の取り付け位置をずらしたり、マルチプレートそのものをスライドさせるとよい。
(4) 赤緯軸のクランプをフリーにした状態で、望遠鏡が任意の位置で止まることを確認。クランプを締める。
(5) 極軸のクランプを緩め、バランスウェイトの位置を調節して丁寧にバランスを取る。
(6) 両方の軸のクランプをフリーにした状態で、望遠鏡が任意の位置で止まることを確認。

これで、おおよそ実用に問題ない程度のバランスをとることができます。普段使う装備でバランスを取ったら、マルチプレートや鏡筒にマジックで取り付け位置の目印をつけておくと、次回以降の設置が楽になります。

ただし、接眼部が鏡筒の横っ腹についている、ニュートン反射などを使っている場合は要注意。バランス調整後に接眼部の向きを変えようと鏡筒を回転させると、鏡筒の重心位置が移動するためにバランスが崩れてしまいます。バランス調整後は鏡筒を回転させないのが原則です*1

鏡筒を回転させる必要がある場合は、接眼部の反対側におもりを取り付ければ鏡筒の回転軸周りのバランスが取れ、赤道義のバランスが崩れることはなくなります。昔は、吸盤で鏡筒に取り付けることのできるおもり*2が売っていましたが、ニュートン反射の退潮した最近では見かけませんね。もし今これをやるなら、自作で何とかするしかなさそうです。

*1:接眼部の方向が光軸と一致している、屈折式やシュミットカセグレンなどでは問題ありません。厳密に言えばファインダーの重さがあるので同じ問題が生じますけど、そもそも鏡筒を回転させる必要まずないですよね。

*2:アトムで販売していた「カウンターバランス・ミニ」など。私も持っていました。