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ガイドシステム再考

EdgeHD800での直焦点撮影ですが、ある程度覚悟はしていたものの、ドブテイルバーを強化したりなんだりしているうちにシステム全体の重量がかなり大きくなってしまいました。

試しに手持ちの機材で並列同架のシステムを組み上げてみると、3.7kgのウェイト2個でなんとかバランスが取れましたが…これすなわちSXPの積載重量ギリギリということで、あまり望ましい状況とは言えません。やはりアリガタ・アリミゾをすべてビクセン規格から幅広のCGE規格(ロスマンディ規格)に変えたことが効いています。とはいえ、こうしないと強度的に不十分なのは明らかなので、いまさら戻すわけにもいきません。




元々、この足元強化策を考えた時点でガイドシステムを親子亀化することは決めていました。ただ、それは上の図のように「EdgeHD800の上にもドブテイルバーを渡し、そこに今のガイド鏡を同架する」というもの。実際に入手してみるとCGE規格のドブテイルバーはそれなりの重量*1があり、また現在使用しているガイド鏡(D=60mm, f=540mm, F9)も総金属製で、これも結構重いです*2。このままでは、腰高でモーメント的に不利なシステムになってしまいます。


そこで、少しでも重量を軽減するために、まずはガイド鏡の軽量化を考えました。

先日記事にもした通り、現在の高解像度なオートガイダーを使えばガイド鏡の焦点距離は500mm以下…さらに言えば200〜300mm程度でも十分なはず。ということで、候補に挙がったのが以下の面々です。

これらのうち、ノーブランドのF4ガイドスコープは最近あちこちのショップでQHY5L-IIMなどのCMOSカメラとセットで販売されており、ちょっとしたブームになっている感があります。しかし、調べてみるとヘリコイドにガタがあるなどの報告が散見され、価格なりの作りなのだろうと思われます。ZWOのガイドスコープも、写真を見る限り作りが華奢で強度的に不安が残ります。

笠井のGuideFinderは上記のブーム以前より販売されているもので、実績的には安心感があります。一方、上記のガイドスコープもそうですが、アクロマートの短焦点ということで像が甘いだろうことは容易に想像がつくところ。ガイドの精度からするとやや不安です。


となると、残るのは結局定番のミニボーグということになります。

価格はミニボーグ50が圧倒的に安いのですが、焦点距離がやや短い印象。また、どうせミニボーグを買うなら、ゆくゆくは撮影鏡としても使いたいのが本音*3で、となるとアクロマートは分が悪いです。

ミニボーグ45EDIIはシステムが軽量で済むのが魅力ですがF値が暗く、もし焦点距離が足りずにバローレンズを使うケースを考えた場合、かなり苦しいことになります…。

*1:2ポンドとのことなので、約900g。

*2:約25年前に、今は亡き望遠鏡販売店アトムで購入したガイドスコープ。広告上では一応1kgということになっていますが、それ以上ありそう。

*3:期待していたEF70-200mm F4L USMが、ウチの環境ではゴースト発生しまくりで使い物にならなかったのでなおさら…

禁断のボーグ沼

…というわけで、スターベースで買ってきてしまいました。ミニボーグ60EDです*1


当然、鏡筒だけではピントが出ませんので、筒外焦点(100〜145mm)を考慮して【7757】M57ヘリコイドS(光路長19〜29mm)、【7604】M57/60延長筒L(光路長60mm)、【7602】M57/60延長筒S(光路長20mm)、【7522】M57→M36.4AD(光路長9mm)、【7317】31.7ミリアイピースホルダー(光路長20mm)を組み合わせました。これで光路長は128〜138mmとなり、ASI120MMを装着して無限遠にピントが合います。しかも、この組み合わせならミニボーグ鏡筒の摺動部を動かすことなく、ヘリコイドだけでピントが出せるので、強度的にも安心です。重量はカタログ値で計688gとなり、ちゃんと軽量化できています。


ヘリコイドについては、接眼部に【7315】直進ヘリコイドS、もしくは接眼部直前に【7842】M42ヘリコイドを入れる手もあったのですが、後述する理由のために後端の長さを抑えたかったのでこのような構成に。

またM57ヘリコイドについても、可動域が大きくストッパーの付いた【7758】M57ヘリコイドDXや【7861】M57ヘリコイドL IIIといった選択肢もありましたが、重量バランスが筒先に偏ってしまうこと、少しでも重量を減らしたいこと、価格が高いことなどからこの選択になっています。負荷のかかる位置ではないので、ストッパーはなくてもおそらく大丈夫でしょう。

今のところ、カメラとの接続パーツやレデューサーの類は買っていませんが、いずれ揃えていくことになるんじゃないかと思います。


いや、しかしなるほどこれは楽しい。さすがはおもちゃ屋、勘所をよく分かってます。合体・変形は男のロマンなのだなぁとつくづく…(^^;

*1:撮影目的だけならFS-60CBにIYHしてもよかったんですが(ぉぃ

ガイドシステム仮組

さて、ガイド鏡も新しくなったところで、ガイドシステムを仮組してみます。

絶対重量を軽減し、モーメントも低減させる組み方となればこれしかありません。


撮影鏡筒の下にガイド鏡をくっつける、いわゆる「コバンザメ方式」です。

ドブテイルバーが大型なだけにアリミゾも大きく、位置調整の余裕はほとんどなし。ガイド鏡後端と赤道儀とのクリアランスが本当にギリギリでしたが、なんとか収まってくれました。前後バランスもばっちりです。


でも、側面にガイドポートやUSB端子が出ているASI120MMだったからよかったものの、後方に端子があって縦長のLoadstarだと、この配置は難しそうです。


鏡筒を留めているアリミゾはいずれも「★COSMO工房」製。撮影鏡筒の方はダブルクランプタイプのワイドアリミゾ、ガイド鏡の方はワイドアリミゾの標準品をベースに、35mm間隔でM8のタップを切ってもらった特注のアリミゾで固定しています。

やや不安があるとすれば、ガイド鏡を留めているユニバーサル鏡筒バンド。ガイド鏡自体のバランスはトップヘビーである一方、鏡筒バンドの内側にはやや厚めのフェルトが貼られているため、ガイド鏡が「お辞儀」をしてしまう可能性があります。問題が出るようなら、フェルトをはがしてプラ板を貼りつけるなり、鏡筒バンドをもっとしっかりしたものに交換する必要が出てくるでしょう。

新ガイドシステム試運転

ここまでできたら後は試すだけ。早速持ち出して試運転をしてみました。

今回は、上記のように機材構成を変えるとともに、オートガイダーとしてASI120MMを初投入しています。ドライバのセットアップや接続方法は説明書の「WDM driver + ASICamera ST4 telescope ASCOM Driver」の通りにやればOK。私の環境では特に問題は発生しませんでした。

使ってみた感じ、カメラの感度としては確かにLoadstarに匹敵する高感度なのは間違いなさそう。チップ面積が小さいため写る星の数が減るかと思いましたが、そこはガイド鏡の焦点距離の短さとF値の明るさに助けられた印象です。


そして5分露出を基本に何ショットか撮ってみましたが、とりあえず以前見られたようなひどい「流れ」は発生しませんでした。ここは鏡筒の固定方法を強化した成果が出ているようです。

一方、ガイドについてもまずまず追尾できている印象。微妙に流れているコマもありましたが、それでも半分くらいはほぼ流れずに撮影できていました。足元が不整地であること、宵のうちの撮影だったので近くを走る電車の振動を拾ってしまうこと、極軸合わせを極軸望遠鏡だけで簡単に済ませたことなども考え合わせると、そう悪くない結果だったのではないかと思います。