宮本大人のミヤモメモ このページをアンテナに追加

2008-03-25 長いけど、読んでください

[]大阪府立国際児童文学館存続運動に賛同します。 18:21 大阪府立国際児童文学館存続運動に賛同します。を含むブックマーク

 橋下知事、児童文学館にはマンガもあるんです!


 ああ、もう、直談判してえ。


 橋下徹氏の大阪府知事就任時から、恐れていたことが現実になりつつあります。

 就任早々、府立の83施設について、「図書館以外、不要」として、府立中央図書館、同中之島図書館以外の81施設の見直しを宣言していた橋下知事は、以来、上方演芸資料館ワッハ上方)や府立大型児童館ビッグバンなどを次々と視察していましたが、今月20日、大阪府立国際児童文学館の視察を行い、中央図書館、または中之島図書館への併合を示唆する発言を行いました。

 以下、時系列に沿って、関連報道にリンクしておきます。


【府立施設見直しの方針を伝える報道】

http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80205b.htm

http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80215a.htm?from=tokusyu


【上方演芸資料館視察時の報道】

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/123448/


【大型児童館ビッグバン視察時の報道】

http://mfeed.asahi.com/politics/update/0224/OSK200802230094.html


【国際児童文学館視察を伝える報道】

朝日

http://www.asahi.com/national/update/0320/OSK200803200049.html

産経

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/localpolicy/131342/

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/localpolicy/131387/

日経

http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news003271.html


 2月4日に考え方を明らかにし、3月20日に小一時間程度の視察をしただけで、6月末までに結論を出す、というのはあまりに拙速ではないかと思います。

 こうした橋下知事の考え・動きに対して、児童文学館の存続を求める運動が始まっています。

 ご存知の方もおられると思いますが、児童文学館は、前知事の太田房江氏が知事に就任した際も、上方演芸資料館などとともに、「廃止も含めた検討」の対象とされています。

 その際も、日本児童文学学会などが反対の声明を出すなどの運動が起こり、結果的に、館は存続することになったのですが、その反対運動を、一時的なものに終わらせず、官の活動をより有意義なものにし、またその活動を広く知ってもらうための支援をする目的で、「大阪国際児童文学館を育てる会」が結成されました。

 今回、この「育てる会」が拠点となり、署名と知事へのメールの形で運動が展開され始めています。「育てる会」は独自のホームページを持っていないようなのですが、ひこ・田中氏の運営するサイト「児童文学書評」に、「お願い」が掲載されています。


大阪国際児童文学館存続のためのお願い。

大阪府立国際児童文学館が存続できるよう、ぜひご協力をお願いします

 3月20日、大阪府の橋下知事が大阪府立国際児童文学館を視察し、同館を府立中央図書館または府立中之島図書館に統合する方向を示唆しました。

 大阪府立国際児童文学館は1984年の開館以来、図書館としてだけでなく、児童文学資料・情報・研究センターとして、児童文学の発展に多方面から貢献してきました。府立図書館に統合されれば、そのユニークさは失われ、貴重な資料も死蔵されてしまうのではないか……。全国の児童文学関係者は、今、そのことを大変心配しています。

 そこでお願いです。大阪府知事室の「知事への提言」宛に大阪府立国際児童文学館の存続を願うメールを送ってください。

 メールの内容としては、次のようなことが考えられます。1)は必須です。

1)大阪府立国際児童文学館を現状のままで存続させてほしい

2)貴重な資料が豊富にあり、全国に誇れる施設である

3)職員には児童文学や子どもの読書に関する深い見識があり、他所では得られないような適切なアドヴァイスを受けられる

4)不便な場所にあるが、子どもが読書に親しむ環境として素晴らしい

5)実際に訪れたときの感想

 以上、よろしくお願いいたします。

参考:3月20日のasahi.com より

橋下知事 国際児童文学館「府立図書館などに集約化を」2008年03月20日

 大阪府の橋下徹知事は20日、見直しを進める府立27施設のうち、吹田市千里万博公園の国際児童文学館を視察し、「同じような機能の所に統合した方がいい」と話し、府立中央図書館(東大阪市)や中之島図書館(大阪市)などと集約化していく方向を示唆した。

 同館は84年に開館。子どもの本や資料70万点を所蔵し、子どもが本に親しむための支援・研究などの活動をしている。

 視察後、橋下知事は「通常の図書館となぜ分離しているのかわからない。児童文学を子どもに広める機能は必要。例えば府立図書館に入るとしても、そこで特徴を出せばいい」と話した。蔵書の保管などハード面の課題については「いい案はないか知恵を借りたい」とした。

 向川幹雄館長は視察後、資料のうち50万点が文学発展に貢献するとして寄贈を受けたものと説明し、「文学館だからこそ寄贈が受けられる。統合されたら受けられない」と話した。

http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200803200035.html

下記の方に一言、児童文学館の必要性を書き添えていただければ幸いです。開かれた施設であることを示すためには、府外の人の意見も大変貴重です。

大阪府庁ホームページ→ようこそ知事室へ→知事への提言


http://www.hico.jp/jidoubungakukan.htm

 このメール送信のほか、署名も行われています。「児童文学書評」のトップページから署名用紙がダウンロードできますので、これを印刷し、署名の上、署名用紙に記載されている「育てる会」の事務局まで郵送していただく形です。緊急を要するということで、4月10日までに、送っていただきたいようです。私も早速メールを送りました。署名も明日には発送したいと思います。


 さて、漫画史研究者の私が、なぜ「児童文学」館の存続を要望するのか、今回の「見直し」に反対するのか。三つに分けて述べたいと思います。


1.児童文学館は、「児童文学」に限らず、マンガも含めて子供向けの出版物は何でも受け入れている

 一番の理由は冒頭に書いたように、この館には実は大量のマンガ本・マンガ雑誌が所蔵されているからです。

 国際児童文学館という名称から、主に海外の児童文学書や絵本などを持っているところ、とイメージされることも多いようですが、実際には、明治以来、日本で子供向けに出版された雑誌や本は、原則として何でも所蔵する、というのがこの館の基本方針です。「児童」の範囲も広くて、未成年の読者を想定したものはみんな対象になります。

 ある時点の大人の目から見て、「文学的」、「芸術的」に価値の高いものだけを集めるのではなく、現に子供向けに出され、子供が読んでいるものは、すべて所蔵の対象となります。もちろん、実際には、予算と収蔵庫の問題であらゆる子供向け出版物が収集されているわけではありませんが、例えば、マンガやライトノベルの寄贈は受け付けない、といったことは一切ないわけです。

 これは、設立された80年代初頭においては、かなり画期的な方針だったと思います。収蔵品の核になっている12万点のコレクションを寄贈した、児童文学研究者の鳥越信氏の、大衆的なものでも、「俗悪」なものでも、とにかく子供が読んでいたものは何でも集める、そのことによって、実際に子供が何をどのように読んでいたのかを知る歴史的資料とする、という考え方は、マンガ業界・マンガ読者側からすると意外かもしれませんが、多くの児童文学研究者に共有されているものです。しかし、これは一般的な公立図書館では受け入れられにくい考え方でもあったと思われます。

 この基本方針のもと、現在では70万点を越える資料が、収蔵され、児童文学も、絵本も、マンガも、とにかく子供向けの出版物は同時並行的に閲覧できる、という児童文学館の特色が出来上がっています。その結果、『りぼん』でこういうマンガが連載されていた頃、『詩とメルヘン』はどんな誌面だったんだろう、とか、『少年倶楽部』で「のらくろ」が連載されてた頃、児童文学評論の載っている教育雑誌ではどんなマンガ批判が展開されていたんだろう、といった研究が、容易にできるようになっているのです。

 実際、私が漫画史研究者として、多少なりとも世の中的に評価をしてもらえているのは、この児童文学館のおかげだと言っても過言ではないですし、ここ数年、この館の資料を活用している研究者は着々と増えています。他の美術館・博物館でのマンガ関係の展覧会への資料の貸し出しも、盛んに行われています。

 私自身、このブログでも報告しましたように、昨年は、一昨年度、特別研究員として館の資料を利用させていただいた成果の還元として、「再発見!『講談社の絵本』の漫画世界」と題した展示を行い、講談社『少女クラブ』の編集長であった丸山昭さんとの対談を行ってもいます。

 報道されている限り、先日の視察では、この、児童文学館は実は「児童文学」だけのための施設ではなく、児童向け出版物の総合アーカイブなのだ、という点には、全く触れられていないようです。しかし、知事の言うように、府立図書館に統合というようなことになれば、ジャンプ、マガジンサンデーなかよし、りぼん、コロコロコミックといった、大量の少年少女雑誌のバックナンバーを中心とする、一般的な公立図書館には「不適合」な資料の扱いがたちまち問題になるでしょう。

 もしかりに、こうした「大衆的」、「俗悪」な子供向け出版物が、どこか別の施設に寄贈・移管(最悪の場合、廃棄)ということになってしまえば、子供向けの出版物はなんでも並列に見られる、というこの館の他に類を見ない素晴らしい特色は失われてしまいます。


 では、資料さえどこかに一括で移管になって、継続的に利用可能であれば、館はなくなってもいいのでしょうか。次の理由で、この考えにも、くみすることはできません。


2.児童文学館の活動は「図書館」のそれには「類似」していない

 橋下知事には全くと言っていいほど理解されていないようですが、児童文学館は、あくまで「文学館」であって、「図書館」ではありません。子供向けの図書館機能も有してはいますが、館の活動の全体は、もっと多岐にわたるものです。

 日産と館の共催で行われている「ニッサン童話と絵本のグランプリ」は、創作活動の支援として、大きな役割を果たしていますし、「国際グリム賞」は、児童文学の研究・評論活動の支援として、これも国際的に重要な役割を果たしています。また、館のホームページにある、「本の海大冒険」などのように、子供の読書活動支援の新しい形を開発する活動にも目覚ましいものがあります。公立の図書館が、子供の読書活動支援の末端の現場だとすれば、児童文学館は、その基本的な考え方や新しい試みを生み出す先端的な実験場であり、リーダーの役割を果たしていると言えるでしょう。知事の言う「児童文学の普及」への貢献の仕方が、図書館と文学館でははっきり違うのです。

 これらの多岐にわたる事業を、わずか4名の研究員(この館では「専門員」という名称になっています)でこなせているのは、一つの施設・組織の中で、高度に専門的な知識と経験を持った研究員が日常的に緊密な連携を取りながらだからこそだと思います。

 府立図書館との統合によって、これらの専門員の方々が一般的な図書館業務にも今まで以上の力を注がなければならなくなったり、最悪の場合、統合先の図書館にはポストを得られなかったりした場合、こうした「文学館」ならではの事業は、不可能になるでしょう。

 児童文学館を、図書館と「類似」の施設とみなしている知事の認識は、その意味で全く不十分ですし、資料の寄贈の点からしか「児童文学館」であることの意義を主張できていないように報道されている館長の主張も、まさにこうした文学館としての「活動」あってこそ、図書館では受けられないような資料の寄贈も受けられるのだという点が十分説明できていない点で不十分だと言えます。

 知事はそもそも図書館以外は不要という考えなのだから、児童文学館の機能は図書館のそれに還元できないものだと主張しすぎるのは、かえって得策ではない、という考え方もあるかもしれません。しかし、図書館以外は不要という考え自体が暴論なのですから、まずはそこを主張しないわけにはいかない、と私は考えます。

 博物館系の文化施設は要らないが、図書館だけは必要だという知事の考え方には、さして明確な根拠があるようには見えません。図書館は知のセーフティネットだから、というのが、今報道されている限りで唯一の説明のようです。当然のごとく、他の施設からは、ウチだって知のセーフティネットだという声が上がっているようです。

 言うまでもなく、公的な文化施設に、それがなくなれば即、餓死者や病人やけが人が出たり、府の経済活動が著しく低下したり、といった性格はありません。しかし、人はパンのみにて生きるにあらずなわけで、衣食足りていても精神的に追い詰められて死んでしまうような人もいるわけです。文学や芸術、そしてマンガは、そうした局面で力を持ちうるわけですし、自分たちの身近な歴史を見直す、お父さんやおばあちゃんが読んでいた雑誌を見て驚く、といった、即座には何らの経済的利潤も生み出さないけれども、自分と自分を取り巻く世界を新鮮なものとして受け止めなおす経験を可能にする文化的「余裕」は、中長期的な視野の中では、その地域の活力の維持・増進にとって大きな意味を持ちます。だからこそ、文化行政というものがあるわけでしょう。その文化的「余裕」の形は、図書館だけに集約できるものではないのです。

 府の負債を考えたら、「余裕」なんて言ってる場合じゃないんだよという考えもあるでしょうが、逆に府の負債額の大きさを考えたら、児童文学館を統廃合してしまうことで浮かすことのできる金額で何ができるのか、そのお金を得るために失われてしまうものとは、本当に見合うバランスになっているのかを、冷静に考えなければならないように思います。

 そんなわけで、私としては、まずは、断固として、「図書館以外は不要」という暴論自体を批判する、という立場を選びたいと思うのです。

 最後に、この府の公的な施設を見直す、というときの手法の問題を指摘しておきたいと思います。


3.見直しの手法が拙速・強引すぎる

 初めの方で述べたように、知事は、2月4日に府立の施設全般に対する考え方を明らかにし、3月20日に小一時間程度の視察をしただけで、6月末までに結論を出す、と言っています。次々にいろいろな施設の視察に行っている知事の行動は、一見すると、自ら現場に足を運んで自分自身の目で確かめるという、評価に値するもののように見えます。

 しかし、私が上で述べてきたような児童文学館の活動の多様性、収蔵資料の多様性などは、なにも現場に足を運ばなくても、知事室にいながらにして情報を集めることができるはずです。現に館のホームページを閲覧し、所蔵資料検索で試しに検索してみれば、上で私が述べてきたことはすべてわかります。その程度の下調べもせずにいきなり視察に行くから、「通常の図書館となぜ分離しているのかわからない」などという発言が出てくるのです。

 そんな状態で小一時間、館内を視察して、館長と、何分話したのかわかりませんが、少し話して、それだけで6月末までに結論を出せるという判断をしてしまうのは、府議会での議論を経て、府民の税金を使って設立し、30年近い歴史を持つにいたった施設の見直しのやり方としては、あまりにも軽率ではないかと思います。

 向川館長は日本児童文学学会の会長でもありますが、限られた時間の中で、マスコミを引き連れてやってきた知事が何を言い出すかわからない状況で、的確な反論をし、説得するというのは、かなり難しいことでしょう。

 また、児童文学館は、館長だけでなく、理事長も置いており、福音館書店の編集者として、数々の名作・傑作絵本を手掛け、絵本の評論・研究でも日本を代表する一人である松居直氏が理事長を務めています。しかし、報道を見る限り、この視察の際には理事長は来ていないようです。

 太田知事時代、児童文学館は存続こそできましたが、館の運営は厳しく引き締められ、専門員のポストも、減らされたり、任期付きのものに変えられたりしています。外部からの経営評価も行われるようになっており、その評価もホームページ上で公開されています。こうした流れの中で、組織も見直され、理事長職が置かれたわけです。要するに、館の運営はすでに十分「見直し」がなされ、その中で最大限の努力が行われ一定の成果を上げ、評価もされているということなのです。

 したがって、本来なら、知事室にいながらできる下調べをきちんとした上で、理事長と館長がともに出席できるよう日程を調整した後に、更なる見直しが必要だとすればそれはどこなのかを確かめるべく視察を行うのが、本当の意味で「効率的」な見直しのはずなのに、知事がそういう手順を踏んでいないのは明らかです。今回の視察は、「俺はちゃんと現場を自分で見て判断してるよ」というマスコミ向けのパフォーマンスとしての性格が非常に強いと考えられるわけで、そうしたパフォーマンスの中で得られた断片的な印象だけで、一つの公共施設の見直しの期限を切るなどということは、あってはならないことだと思います。


 子だくさんで知られる橋下知事は、17の重点事業を導き出す基本政策として、「4つのトライ」というのも掲げています。そこには「社会を元気にする源は、子どもたちの笑顔です。だから、「子どもたちが笑う」ことに大阪府の資源を集中し、これに多くの投資を行います。」と明記されています。この考え方に即せば、児童文学館は、統廃合どころか、むしろ改めて強化の対象となってもよいはずです。知事には、どうか、館の活動の独自性と意義を、冷静に把握し、今の見直し方針自体を見直していただきたいと思っています。またそのために、少しでも多くの皆さんの声が集まり、知事への働き掛けが行われていけば、と思っています。 

 以下、関連リンクです。


【橋下とおるサイト】

4つのトライ

http://www.hashimoto-toru.com/osaka/try.html#try1

17の重点事業

http://www.hashimoto-toru.com/osaka/plan17.html#p17


【大阪府立国際児童文学館】

http://www.iiclo.or.jp/

業務及び財務等関係資料、事業報告書、収支決算書などはこちら。

http://www.iiclo.or.jp/outline/outline.htm

蔵書検索はこちら。

http://opac.iiclo.or.jp/iliswing/opac/index.html


【この問題に言及されているブログ】

http://igandou.txt-nifty.com/igandou/2008/03/post_672f.html

http://yoshikawa.cocolog-nifty.com/soushido/2008/03/post_b2fa.html

http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20080322

http://blog.goo.ne.jp/shuya1128/e/dab21395f5798a7264c145b89d0af6bf


【私が関わった「講談社の絵本」展関連】

http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20070801/1185981411

http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20070915/1189870915