森絵都「いつかパラソルの下で」
いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5) (角川文庫 も 16-5)posted with amazlet at 08.09.05
いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5) (角川文庫 も 16-5)
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「いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)」を読了した。僕もこの本に登場する兄妹の父親と同じように故郷を離れて生きている。佐渡島と違って陸続きだし、電車でも何とか一本で到達できる場所なので、兄妹の父親のような暗く深刻なものは背負っていないけれども、無意味な課題や軽い業のようなものを自分に課すような性質はあるような気がする。そうしないと、自分を保てないのだ。
僕にも親が居て妹が居るのだけど、その親が亡くなる瞬間が来たら妹と何を話すのかなと読みながら考えていた。あまり考えない事柄をぼんやりと考えているのは、いい時間だった。死が連れてくるものの大きさや感触を、僕は想像しないようにしていることも分かった。
そしてとても楽しい本だった。本を読みながら声を出してしまったり、ため息をついたり、微笑んだり、と、忙しく反応する僕自身に笑える。一人で生きているつもりの僕には、耳が痛いような部分もないではないけど、物語だから大丈夫。
海の描写に嬉しくなる。海が好きだから。海に行きたいな。海に行くと「海だ」って言ってしまう。海で泳ぐのは嫌い。
この本を「気楽に読めた」と言える人は、幸せなのだと思う。