2010-03-21
サラ・ヴォーン『センド・イン・ザ・クラウンズ』(1986年のライブから)
今日の一曲はサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)の『センド・イン・ザ・クラウンズ』("Send In The Clowns")。数多くあるヴォーンの代表曲のひとつである。
Sarah Vaughan - Send in the clowns - 1987
1989年の6月だったか、当時まだできて間もないBlue Note Tokyoにサラ・ヴォーンのライブを観に行った。チケット代だけで初任給の10分の1くらいしたはずが、「米国に聴きに行くと思えば...」と自己正当化し、それこそ清水の舞台から飛び降りるつもりで観に行った。思いっきり背伸びしていたわけだが、結果的には大正解だった(翌90年4月初頭にヴォーンは惜しくも鬼籍に入った)。
サラ・ヴォーンは学生のころから大好きな歌い手のひとりで、有名なアルバム『サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン』("Sarah Vaughan with Clifford Brown")
をはじめとして多くの曲を耳にしていたと思うが、大半は早い年代--60年代前半までのものだったのだろう。だから、オリジナルが74年のアルバム
に収められた『センド・イン・ザ・クラウンズ』については名前こそ見聞きしたことがあったけれど、それまでじっくりと聴いたことはなかった、と記憶している。
Wikipedia英語版によれば、冒頭にあげた映像は86年にニュー・オーリンズで収録されたものということだから、私の観に行ったライブとほぼ同じ(ヴォーンの)最晩年のものに分類できる。この頃にはまだ曲の途中から立ち上がって歌っていたヴォーンだが、その後足腰への負担がさらに大きくなっていったのか、東京ではステージの大半をストールに腰かけたまま務めていたような記憶もある。『センド・イン・ザ・クラウンズ』についても、アルバムに収められたオリジナルとはだいぶ異なるアレンジの、スローなメロディーで、それをヴォーンが--冒頭の映像とほぼ同じ感じ--ゆったりと歌い上げるものだった。
実はBlue Note Tokyoでのライブにはある女性と一緒に行った。遠くの街で暮らしていた彼女とは、月に何度か電話で話し、3ヶ月とか半年にいっぺんほど逢うだけだったから(気持ちの部分はさておき)実際には付き合っているとも言い難い間柄だった。そんな彼女の、その晩の表情--サラ・ヴォーンのステージを間近から、文字通り「目を輝かせて」観ていた彼女の、ふだんより何倍も美しくみえた横顔が、この映像をみていて思い出された。その後20年以上の時間が経過しあの晩の記憶もほとんど失われてしまったけれど、断片的な記憶--霧雨の舞う夜の青山骨董通りの景色とか--は不思議と消えずに残っていて、なかでも一番鮮やかなのは、この『センド・イン・ザ・クラウンズ』のメロディーやフレーズと一対で刷り込まれた彼女の瞳の輝きかもしれない。
Amazon.comにある説明書きをみると、このニュー・オーリンズでのライブでは、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock-ピアノ)、ロン・カーター(Ron Carter-ベース)、ビリー・ヒギンズ(Billy Higgins-ドラムス)という当時脂ののりきったミュージシャンたちがヴォーンをサポートし、さらにディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)、メイナード・ファーガソン(Maynard Ferguson)らの大御所もゲスト出演したという。
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