2011-09-10
シシュフォスの神話
これは山頂まで岩を押し上げると、岩が転げ落ち、それをまた山頂まで押し上げるという永劫の罰を受けたギリシャ神話のシシュフォスの労役に似ています。アルベール・カミュは、谷底へ転がり落ちた岩を押し上げるために山頂から再び谷底へ戻ってゆくときのシシュフォスの一瞬の休息のうちに人間の尊厳を見出しました。
「坂を下っている、このわずかな休息の時のシシュフォスが私を惹きつける。(・・・)重く、しかし確かな足どりで、終わりを知らない苦役に向かって山を下る男の姿が見える。息継ぎのように、そして彼の不幸と同じように確実に回帰してくるこの時間は覚醒の時間でもある。山頂を離れ、ゆっくりと神々の巣穴に向けて下ってゆくこの一瞬一瞬において、彼は彼の運命に優越している。彼は彼の岩よりも強い。(・・・)彼が山を下りながら考えているのは彼自身の状況についてである。彼の苦しみを増すはずのその明察が同時に彼の勝利を成就する。どのような運命もそれを俯瞰するまなざしには打ち勝つことができないからだ。」
[内田樹『日本辺境論』p.7]
人生にある種の肯定的な諦めがつくと、己のそれを引き受けて立つ気持ちが形を取り始めると、上記のような言葉がジーンと染み込んでくるようになる(はず)。
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