ヴァン・モリソン『アストラル・ウィークス』

アストラル・ウィークス

アストラル・ウィークス

最初はわかったようなわからないような気持ちだったけど、何度か聴きかえしているうちに突然「素晴らしい!」と思えるようになった、という点で私にとってビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』と双璧をなすアルバム。ピーター・バラカンが1968年に発表された3つの“ヘン”なアルバムとして、ザ・バンド『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』、ドクター・ジョン『グリグリ』と本作を挙げているのですが、それも納得です。ジャズ・ミュージシャンを多数起用し、ジャム・セッションに近いやりかたによって2日間で録音されたこのアルバムは、ロックとよぶにはリズムがはっきりしなくて曲の構成が不定形。かといってジャズともいいがたい摩訶不思議な立ち位置にある音楽です。しかし一度その魅力に気づくと汲めども尽きぬ歓びを与えてくれることも確かで、当時まだ23歳だったヴァンのヴォーカルはどこかミック・ジャガーを思わせるところもあるのですが、ミックのような華や妖しさは無い変わりに、ミックからは感じることのできないミスティックな雰囲気があります。こうした音楽は狙ってつくれるものではないでしょう。アルバムという形になって残ったこと自体が奇跡ともいえる名盤です。