2012-02-08
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
これはだいぶ有名になった本で今更僕などがオススメする必要はないのだけどせっかく読んだから何か書いておこう。本書にはタイトルとして「経済学」とついているが経済的な知識はほとんど出てこない。たとえばデフレがどうしたとか日本経済の行方とか大恐慌の原因はなんだったのか株の上がり下がりの話などなどは特に。
本書で扱われる問題はたとえば『麻薬の売人がそんなに設けているのなら、彼らがいつまでも母親と住んでいるのはなぜ?』だとか『銃とプール、危ないのはどっち?』というような一見意味がよくわからないものや『相撲界は腐敗している?』(余談だけど相撲界で八百長がスキャンダルになるずっと前に本書は相撲界の八百長を分析していた。それで話題になったのもあるのかな)といった、
まあ、一言で言えばくだらないというか、あんまり意味があるのか無いのかわからないような分析が多い。経済なんてものではなくただただ人間の動きを分析しているだけなので行動分析学の本だといっても違和感はない。むしろ経済学と付いている方が違和感があるぐらいだけど名称なんか結局のところどうだっていい。
すごいのは「社会の中での人間の動き方について、誰も想像もしなかったような新しい見方を提示し、筋の通った考え方」をしている点だろう。本書で最大かつ一番面白いと思われるテーマに『アメリカの犯罪率はなぜ下がったのか?』という疑問がある。
1995年、犯罪学者ジェイムズ・アラン・フォックスはアメリカ司法長官にティーンエイジャーによる殺人が急増すると予測してみせた。楽観的観測では10年の間にティーンエイジャーの犯罪は15%増加し、悲観的観測では100%増加するといったそうだ。
これは何もこの人だけがそういう恐怖を持っていたわけではなくて、当時のアメリカ社会では大勢がそういう考え方をしていたという。つまり犯罪は確実に今よりも増えて、アメリカは犯罪大国になり道を安心して歩く暇はなくなるだろうと考えていたようだ。予想もそういった恐怖を反映したものになっている。
しかし実際、犯罪率は100%どころか15%も増えず、5年間で50%減少した。これについて多くの理由が専門家からよせられた(銃規制が広まったから。取締戦略がきいたから。)。本書ではその説を嘘っぱちと否定する。その代わりに提示される理由は『中絶の合法化』が1973年に合法になったということだという。
なぜ『中絶の合法化』が犯罪の減少の理由になるのか? 数十年にわたる研究によると家庭環境の悪い子供はそうでない子供に比べて犯罪を犯す可能性がずっと高い。中絶を合法化することによって中絶が禁止されていた状態ならば生まれていたはずの「貧しい家庭環境の悪い家」から子供が生まれなくなった結果、犯罪源が消滅したのである。
いやあ凄い視点だと思う。本書が凄いところはいくつがあるが、まず1.スタートの疑問点が凄い。2.その疑問点を検証する為に、必要なデータのとり方を考えることが出来るのが凄い。3.検証していく過程で扱うデータ量が凄い。
3つのうち特に重要なのは2かな。どんなに優れた着想を得てもそれをどうやって検証すればいいのかわからなかったら宝の持ち腐れ、陽の目を浴びることなく頭の中ですごいアイデアだけが眠り続けることになる。本書は『何をどうやって測るべきかを知っていれば込み入った世界もずっとわかりやすくなる*1』ことを教えてくれる。
各テーマも面白かったけれど、違った視点の作り方、みたいな方法論を学べたところが大きかった。
- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: 単行本
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