劇場とペペロンチーノ

先日、池袋は文芸坐ゴダールナイトへ行った。
http://www.shin-bungeiza.com/allnight.html

文芸坐は数年ぶりの再来である。前回は三島由紀夫ナイトだった。幕間に流れる館内放送の声が懐かしい。
人々が、思い思いの相手と、思い思いの格好で、無言の夜を共有する。薄靄の中でひっそりと共有する。

約八時間の睡眠学習が始まる前に、菊地成孔先生によるゴダール作品群への映画音楽的考察があった。
さながら名探偵ナントカのようなおはなしだった。
キューブリックナイト以来にお目にかかる彼は、変わらず沢山の煌びやかな指輪やピアスを身につけていた。
いったいどこであれらのアクセサリーを調達しているのだろう。

上映内容は以下
『東風』(1969・仏=伊=西独/IVC)監督:J=L・ゴダール、他 出演:A・ヴィアゼムスキー
『たのしい知識』(1969・仏/IVC)監督:J=L・ゴダール 出演:ジャン=ピエール・レオ
『ウラジミールとローザ』(1970・仏=独/IVC)監督:J=L・ゴダール、J=P・ゴラン
『万事快調』(1972・仏=伊/IVC)出演:イヴ・モンタンジェーン・フォンダ

写真や映像の合間にたびたび登場する手描きのタイポグラフィが大変美しい。
書体は何だろうか。ものすごくウエイトの小さいカンマが独特。
ゴダールの作品は、自分がいったいどこからこの風景を観ているのか混乱する。
ピントの合わない風景を、必死に追いかけているうちに夜が明けた。

帰宅後泥のように眠り、夕方ペペロンチーノを食べながら泣いた。恥ずかしい。
視界の隅に、知人の顔を発見しそそくさとパスタ屋を後にした。
赤く滲んだ目で、昨夜の感想を言い合ううちに時間になり解散した。