セレブ人気は「やらせ」

2012-11-15

神話や複雑な親族関係を語るアボリジニーの言語

昔ながらの暮らしが伝わるとはいっても、実際に狩猟採集を続けているのは数万人、ほんの一握りの人々にすぎない。大多数は都市部で、白人やアジア系、アフリカ系の移民にまじって住んでいる。混血は早くから進んでいるので、外見だけではアボリジニーと思われない人も多い。都市部のアボリジニーは社会的に不安定な状況に置かれているが、全体としては白人社会に同化する方向にある。以下、都市のアボリジニーではなく、伝統的生活を営む人々について記す。

アボリジニーは宗教生活を大切にする。というより、生き方すべてが神話、あるいは祖先の知恵を集成した口承の説話(トリーミンクストーリー)によっている。天地創造の時代(ドリームタイム)にはじまる大地をめぐるさまざまな物語のなかで、彼らは大地の恵みを得て、大地を守り続ける方法を学ぶという。英語でいうトリーミンクは、彼らの宇宙観であるとか、彼らをとりまくすべてを定義するとか説明されるが、アボリジニーの母語以外にはちょっと訳しようがない。

神話や複雑な親族関係を語るアボリジニーの言語は、白人とはじめて接触した頃は二五〇種類もあったといわれる。その多くは消滅したが、地域によってはバイリンガル教育やローカル放送によって、英語やピジン語、クレオール語と併存する固有の言語もある。

アボリジニーの感覚では神話的時代と現代とのあいだにへだたりはない。実際、つい百年前まで、「文明人」からいわせれば石器時代そのままの暮らしをしていたのである。この「未開人」が蓄えてきた知恵は、しかし、自然保護ひとつとってもたいへん理にかなったものが多い。たとえば彼らは、雨期の終わりに草原や林に火を放つが、これは白人が考えていたような自然破壊行為ではなく、植生を保つのに役立っている。野焼きをしないと落ち葉がたまって、乾期に手の付けられない大規模な火事が引き起こされる可能性があるし、背の高い草や木が茂って、アボリジニーの食糧であるカンガルーなど中型の動物の生存圏を狭めてしまう。

かつて入植者はアボリジニーを虐殺し、ついで労働力として搾取した。その後、善意のキリスト教徒は保護区にアボリジニーを定住させ、白人社会に同化させる教育をおこなった。アボリジニーからすれば、虐待は論外、保護はお節介である。アボリジニーの文化は白人文化に押しつぶされ、アイデンティティを失った世代が酒に溺れる。

伝統をもぎ取られた人々の悲哀は、たとえばアメリカーインディアンのそれともよく似ている。アボリジニーにとっていくらか幸いしたのは、白人には利用価値が低いとみなされた広大な地域(ノーザンテリトリー)が彼らの伝統的生活のために残されたことである。だが、ひとたびそこに地下資源が見つかるや、結局は移住を強いられてしまう。

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