hyla’s blog

はてなふっかーつ!

「スペーススローブ」

スペースプローブ (ハヤカワ文庫JA)

スペースプローブ (ハヤカワ文庫JA)

 昨日買った本の二冊目。最近の日本のSF系はあんまり読んでいないのだけど、とりあえず「小松左京賞受賞」を著者ということで買ってみた。小松左京さんが認めた才能ならきっと…と思ったのだけど、正直読み終えて微妙。


 基本的には、ファーストコンタクトもので、その地球外知的生命が、生命であるのかそうでないのかさえもわからない、そんな謎に挑むお話なのだけど、壮大なテーマの割にはとても身近な人々が活動しているような親近感がある。その点をどのように評価するかによって、評価は大きく分かれるだろう。


 彗星探査に向かった探査機が謎のメッセージと共に消息を絶ち、その謎を明らかにするべく有人月着陸計画のパイロット達が本来の月へではなく彗星軌道上の謎の物体の探査を行うべく裏ミッションを企てて…。


 と言う話で、カラオケボックスで計画を立てるシーンが続いて、後半で実行していく。だけど、その中で主人公の思い込みが何だかうっとうしい。理系女子は、もうちょっとクールで無いと。てか、君は理系か?と言いたくなる。本来、そういう思い込みだけが強くて、協調性の低い人間は、宇宙飛行士として最も嫌われないかな〜。宇宙飛行士の適性として、狭い空間で長期間密接な人間関係に上手くやっていく能力って、最も重要なものじゃなかったけか?
 だのに、そういうぶっとなんだ性格で、それでもフォローしてもらえて、そのくせ一番大事な本番でほとんど勘でもって無謀に近い行動に出たりというあたりだめでしょ。その勘は馬鹿にできない幸運指数の高さを示しているなんて、納得できない。そういうキャラをパイロットの三人のうちの女性に振り、それをめんどくさいと思いつつそのフォローを行う同僚と良い感じに終わるのも何だかありがちなストーリー展開。読後感は悪くないけれど、それだけにそういう所が目について、肝心のファーストコンタクトの方が何だか中途半端な感じが否めなかった。
 そもそも、ニュートリノの信号でコミュニケーションをとるような相手に手話で話しかけって発想からしてなあ…。
 スターダンス (ハヤカワ文庫SF)ですか?ってつっこみたい。



 表紙は今時だけど、その中では清潔感のある絵でそれはそれで許す。


 けど、これなら、太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)の方ができはいいなあ…。

「一年で一番暗い夕暮れに」

一年でいちばん暗い夕暮れに (ハヤカワ文庫 NV ク 6-9) (ハヤカワ文庫NV)

一年でいちばん暗い夕暮れに (ハヤカワ文庫 NV ク 6-9) (ハヤカワ文庫NV)

 
 同じく、昨日買った一冊。寒いし、何となく出かける・活動する気力はなく、でも本を読む頭の動きは戻っていて、だから一日次々に読んでいた。

 
 で、これはディーン・クーンツで帯には「犬愛がほとばしる!」とある。クーンツの犬愛っぷりは、「ウォッチャーズ」でも十分わかるし、犬の書き方や犬に対するスタンスは好きだ。なので、買ってみた。


 これはラブ・サスペンスものに分類されるんだろう。クーンツ作品にありがちな通り、主人公は若い頃の経験で心に傷を負った男女で、危険に立ち向かいながらその過程でその傷を癒していく。ったく、アメリカ人の中年男女はみんな過去のトラウマをかかえてるくせに、そういう男女で好きあって立ち直っていくのはみごとっすね。と言いたくなるくらい、クーンツ節だ。気持ちいいけど、どっか素直に共感できるとは言い難い恥ずかしさみたいなものを濃厚に感じるのだな。

 
 で、ウォッチャーズは、そういう男女にアインシュタインという見事なレトリバーが出てきて、もうそれだけでほれぼれしちゃうのだ。こういうわんこが側にいれば…、とつい思っちゃうのね。そして、そういうわんこが良い味を出していて、それにウォッチャーズでは、アインシュタインと正反対の存在である怪物の存在が残虐であると同時に哀しくて、それが味わい深くて、あの作品は好きだ。


 けど、この作品は、準主人公であるニッキーという名のゴールデンレトリバーや、同じくエセル・フレッド達は可愛い。けど、ウォッチャーズではSF的なガジェットですり抜けたわんこの賢さが、今作では心霊現象に思いっきり頼っていて、そこがいささか鼻につく。全編にわたって、心霊的な現象をちりばめて、問題の解決、特にラストシーンで敵を倒したもののその敵に討たれた主人公達を治癒する霊的存在って何?それを使えば何でもありですよ。物語としては、禁じ手ではないのかな〜。


 と言うことで、特に悪役の主要人物達の造形のうまさや、最後の方に出てくる犬愛に満ちた主人公の台詞やがあるから許すけど、買うほどではなかったなと思う。でも、この本を買った利益が作者を通じて不幸なわんこを救うシェルターの活動につぎ込まれているなら、まあ良いかとも思う。

 
 にしても、作中に不幸な繁殖犬の話とかが出ていて、こういうのを読むと、無理してでももう1匹どっかの団体から引き取ってやろうかという気になってしまうなあ…。

 
 そしたら、どうするジョジョちゃん!