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横浜国大 松田裕之 公開書簡

2016-07-15

6/10知床世界遺産クマWGでの松田発言

松田:【】確かに「対処法」で「捕獲対策」とだけ書かれているのは、ご指摘のとおりかもしれない。だが、一連のご意見・ご指摘を聞いていると、今の知床財団が第1 期の保護管理方針のとおりにやってきていなかったようにも聞こえかねず、それでは知床財団としても立つ瀬がなかろうと思料する。今の管理方針通りにやっているが解決がつかない、それどころか問題が増幅している、だからどうしたらいいか、ということだろう検証は必要だ、それは今後やったらよい。ここには確かに捕獲だけが書かれているように見えるが、今までどちらかと言えば捕獲は控えてきているわけで、それに対するオプションとしての記述と思われ、これ以外の提案があってよいわけである。【】

松田:少ないデータでよくここまで解析されたと思う。ただ、ここに書いてあるように、結局この5 年間で生息数の推定ができていないという点こそが、大きく重い問題だと言えるだろう。第1 期方針の「管理の目的」には、「ヒグマについて、その生活様式と個体群を現行水準で維持することを目的とする」と書かれている。つまり、個体数は減らささないということであり、ヒグマの生活様式も含めて(現状を)維持するという意味だ。ご説明では、(5 歳以上の雌ヒグマの)人為的死亡数は目標を超過する可能性がある、しかし個体数が減少したかどうかは不明であり、管理の目的が達成されたか否か検証できない状況にあるということだ

 【全道の生息数推定】の計算【】で知床と書かれているのは、我々が議論している保護管理方針の対象地域である3 町ではなく、5 町であるという点と、0 歳も含まれているという点かと思う。第1期の方針策定の際、雌(の個体数は)150 という数字を踏まえて、(5 歳以上の雌の人為的死亡が)5 年間で30 頭と決めたわけだが、それとの比較が直接はできないということだ。ただ、これは是非とも比較したいと考える。つまり、0 歳を除いたら何頭なのか、150 頭より多いと思われるのか少ないのか、そのくらいは分からないと次の議論が進まないと考える。

 もう一点、議論の進め方全体について、【】ここに書かれた選択肢以外は「できない」ということか、という点だ。私は、本当にここに示された選択肢でできないなら、それ以外の選択肢採用しうると考えている。行政的に非常に難しいのは理解するところだが、一例として先ほども話に出たように「道路では発砲できない」といったところで、知床では(エゾシカのシャープシューティングのように)前例があり、本当に必要なら色々な工夫をして実現してきている。本来、そういったことも含めて、今できる範囲のことで解決するのか否か、それを検討した上で、さらに別な選択肢検討するべきか否かに議論を進めるべきだと思う。この資料のままに検討を進めていくと、そういう議論ができぬまま、出来るだけのことはやった、けれどもうまくいくかどうか分からない、目標が達成できるかどうかも分からない、と言いつつ次の5 年間が過ぎていくのではないかという危惧を抱く

松田:30 頭という数字は、雌150 頭という前提で、ある程度予防的な観点から個体数を減らさないという趣旨で出した数字だ。絶滅はさせないが、減らしてもよいという前提に立てば、この数字は変わる。そういう議論で間違いないか。当然のことながら、全道計画としてはそういう議論はされているわけだが、知床は世界遺産なのであるから、絶滅させなければ減らしてもよいのだとは、私自身は言いたくないし、ここにいる誰もが同じだろう。問題個体さえいないならもっと増えてもいいぐらいだ。それができるかどうかが問われている。その意味で、問題個体の増減傾向すらきちんと把握できていない、どのくらいいるのかも分からない、そういう情報が書き込まれないということこそが問題であり、そのモニタリング体制が整わないと、進まない。知床は全道よりやりやすいはずで、そうした現状認識のためのモニタリングの必要性や体制についてご検討いただきたい。これは全道計画でもお願いしたい点だ。

松田観察できている個体のうちどの程度が問題個体かではなく、全個体の中で占める割合が必要である。しかし、全個体数が推定できていないので、割合も当然推定できない。むしろ、段階1 の個体数は見えているはずなので、ある意味では推定できるだろう。段階2 に関しては、調査から推測して上限下限を設定するということは渡島半島で前例もあるので可能と思う。行動段階1 の個体が増えていることにより(対応件数が)増加している、そのことが問題だと考えるので、行動段階1 の個体がどのくらいいるのか、それをどの程度コントロールできているのか、そういった情報が必要だ。

松田:以前伺ったときは【段階1個体数は】もっと多かったような気がするが、それはよいとして、現場では問題個体ではあるが野に放たれた状況にあり、それゆえに始終追い払っていなければならない、という点に苦慮しているのだと思う。むしろ生け捕りにしたほうが楽だという考え方も、ひょっとしたらあるかもしれない。何も殺すか放置するかの2 つだけが解決方法ではないだろう。色々な解決策があると思う。

松田:【】先ほどの説明で、段階1 の個体を追い払い続けて、結局救えていないという現実が明らかになった。これは非常に重要なことで、それならば別なやり方をすべきだという議論になると考える。

 先ほど、年に数頭であれば生け捕りという選択肢があってもよいのではないかなどと、【】軽々しく発言したが、追い払いをし続けるということは、段階1 の個体がずっと野に放たれている状況を指しているわけで、それがいつ人身事故につながるかも分からないという状況を生み出しているならば、同じ労力をかける中でもう少し選択肢の自由度を上げてもよいのではないか。【】

松田:まずこの保護管理方針だが、順応的管理という言葉が見当たらない。ヒグマの保護管理マニュアルには、個体数に応じて対応を変えると書かれているが、そういうことはこの保護管理方針には書かれていない。今の状況から個体数が増減するということではなく、問題個体数の増減【に応じた方針変更】こそが重要だが、その代わりにゾーニングと行動段階が書かれていて、それごとに対応を変えるとしている。本来は、知床のヒグマの生息個体数あるいは問題個体数に応じて、ゾーンあるいは地域ごとに対応を変えるというのが筋だろう。今はそうなっていない。モニタリングすべきこととして、全体の個体数の増減とともに、問題個体数の増減があり、それによってやり方を変えるべきである。

 今の【】委員の意見は、クマだけではなく人の側の問題もあるだろうというご指摘だ。先般、問題カメラマンその1、その2 のような資料を目にしたが、人間モニタリングも必要だと考える。なにも人間制御することだけとは限らない。こんな人が大勢いるようでは、クマの側に対してこういう対応は取れないということもあり得る。つまり、人間の側の対応次第ではクマへの対応を変えるということもあってよい。そういう意味で、人間側のモニタリングも行ったほうがよい。

2016-07-04

日本のEEZ内には生態学的に重要な海域がない?

10:31 - 2016年7月4日

EBSA(生態学的生物学的重要地域)の地図はこれです。日本近海にもNorth Pacific Transition ZoneとEastern Shelf of Sakhalin Islandが指定されています。

日本の排他的経済水域(EEZ)はたとえばこれです。 残念ながら、日本のEEZを避けるようにEBSAが設定されている。ロシアなど他国はそうではない。EBSAは保護区ではないので指定しても規制されないのに。

要するに、日本のEEZ内には生態学的生物学的に重要な海域はないとしてしまった。他方でCoMLでは日本は海洋生物多様性の世界有数の宝庫とされている。重要性を自ら否定しては守ることも自慢することもできない。

 【おそらく、国際的に新たな動きがあったときに、得か損かわからないことは判断せず、何もしない、何もしてくれるなということなのでしょう。これでは先延ばしにすることはできても、結局は世界から取り残されるだけでしょう。日本のEEZ内の生物多様性を懸命に調べた研究者の成果が生かされないのは残念ですね。】

2016-06-30

クロマグロ「初期資源量」の2%まで減ったという根拠は?

Date: Thu, 30 Jun 2016 14:47:19 +0900

クロマグロの国際管理機関最新の資源評価の概要8頁1行目から6行目にかけて、クロマグロの現在の資源量がSSB at F=0【漁業をしていないときの産卵親魚量】 の2%というのが上記のISC報告書の表現ですよね。しかし、これが初期資源量だとどこに書いてあるのでしょうか?

 SSB at F=0の計算方法は上記に脚注があって、「The unfished SSB is estimated based upon equilibrium assumptions of no environmental or density-dependent effects」とあります。要するに昔の資源量を調べたわけではなく、何らかの再生産関係を仮定して(密度効果も入れていないということはあり得ないので、この点はよくわかりませんが)、それも環境(変動)の効果を無視して(おそらく、決定論モデルを使ってという意味だと思います)、平衡状態を計算し、それと比較しているのだと思います。当然ながら、このような推定方法は極めて不確実性が高く、まさに櫻本さんが批判している密度効果を仮定した決定論的手法に該当するでしょう。これは、資源学の専門家でなくても、上記の英文をたどれば想像できると思います。逆に言えば、専門家でなければ、この文書からだけでは、「SSB at F=0が決定論的密度依存性を仮定したときには初期資源量を意味する」とは読み取れないと私は思います。

 1950年代からの資源量の減少は同じ資料P14の図4に載っていますが、せいぜい数分の1程度【1/10*1】です。ということは、初期資源量から1950年代までに20分の1数分の1*2程度に減り、そのあと強烈な乱獲によって数分の1【さらに10分の1】に減ったことになるでしょう。1950年代までの累積漁獲量を知りませんが、どうなのでしょうか。

 

 以前、大西洋クロマグロの時も以下のように書きました

大西洋クロマグロ提案書を読むと、昔の資源量がきわめて多いと評価され、減少分が当時からの累積漁獲量よりも多くなっている。それが事実ならば、マグロ減少の理由は乱獲ではないことになるだろう。日本政府が主張したのはその点であり、この点に対する反論を私は知らない。

 今回も同じことでしょう。

Date: Fri, 1 Jul 2016 05:41:28 +0900

 精度を上げるのはかまいませんが、決定論モデルで密度依存性を仮定した平衡状態を【計算】していることに変わりはありません。つまり、櫻本さんの批判がそのまま当てはまるということです。

 もちろん、その批判は当たらないという意見はあり得ますが、誤解に基づく的外れ批判ではないということです。

 今回の議論を通じて、クロマグロ漁業管理機関自体は2%という数字を「初期資源量」とは表現していないらしいということになりました。誰かがそう解釈したのでしょう。つまり、櫻本さんの批判は漁業管理団体にではなく、自然保護団体に向けられている。今回の議論を通じて、そのことが全く理解されていないということがわかりました。

 リスクの科学でも、しばしば未実証の前提を用いて外挿します。だからといって、不確実性の極めて高い非線形関係を仮定した数字をはじき出すわけではない。太平洋クロマグロの場合、1950年代から9割も減少しているということが重要なのであり、一層の資源管理が必要だという点に全く異論がありません。

 2003年の故Ransom Myersらのマグロ9割減少説、2006年のBoris Wormらの2048年資源壊滅説(2009年論文で本人が事実上撤回)、2010年ワシントン条約での「大西洋クロマグロ資源はあと数年で枯渇」など、極端な意見は枚挙にいとまがない。しかし、全く進歩していないと思います。

 もちろん、極論を宣伝するほうが政治的効果があるのか、科学的に冷静な議論をするほうが結局は力になるかは、私にもわかりません。しかし、科学者なら間違いなく後者を選択するはずです。

*1:P5の表1を見ると1/10というほうが妥当ですね

*2:ごめんなさい

2016-06-25

クマ管理計画への意見

Date: Fri, 24 Jun 2016 05:56:21 +0000

Blogの続きです】(FaceBook)。

私の意見は二つあります。

  1. 個体管理というなら問題熊数の増減のモニタリングとそれに応じたフィードバック管理が必要だが、検討すらされていない。保護管理マニュアルが個体管理としてもともと不備である。
  2. クマの個体数が各地で増えているという見解があります。それならば個体数管理も含めた方針に移行してもよいと思いますが、その準備が進んでいるように見えません。

 順番に説明させてください。

1.個体管理として不備である

 個体管理をするなら、問題個体の数をモニタリングすべきであり、それが減ったかどうかで評価見直しを行うべきです。現在の手引きでは取り組む内容は示されていますが、成否がわからない。クマの保護管理マニュアルには、そもそも、「フィードバック」「順応的」という用語が登場しないようです。(こちらは2006年で最新でしょうか?)*1

 ニホンザルの管理マニュアルも加害群(加害個体)の増減を評価しろとは書いていないが、フィードバックという言葉はあります。また、神奈川県の特定計画では【加害群の】増減をモニタリングしています。野生の猿のほとんどが加害群であることに衝撃を受けましたが、これも、情報があって初めてわかることです。

2.個体数調整への転換について

 実証的なデータとまでは言えませんが、私は個体数が増えていると判断してもよいと思います(以前に認識過小評価だったということもあるだろうが、以前より増えているという認識もあると思います)(-北海道報道発表

 ゼニガタアザラシ管理計画は個体群管理と明記しています。そのうえで、加害個体の選択的採捕を検討しています。トドは保護から個体数管理へと転換しました。(ただし、どちらも、今後個体数が本当に減るかどうかはまだわかりません)

 【ゼニガタアザラシでは】そのうえで、「定置網に執着している亜成獣以上の個体を選択的に捕獲し、また、幼獣の混獲を回避する技術を開発」するとしています。つまり、個体管理は生きている。

 渡島のクマも、個体数を減らしてもよいという方針にはなっていると思いますが、シカのように減らすという計画とは言えません。【捕獲数の「上限」をきめているだけで、「下限」ではない。】問題個体を着実に減らしているならそれでも【個体数が減らなくても】良いですが、現状は問題個体が総個体数以上に顕著に増えていると思います。

Date: Wed, 29 Jun 2016 12:53:09 +0900

クマの【改定作業中の】ガイドライン、フィードバックの代わりにPDCAサイクルの言及はありますが【P19】、CAの部分がモニタリングと再検討と書いているだけで、状況がどう変わればどう方針を変えるという記述が一言もない。【典型的な似非順応的管理】ですね。

*1現在改定作業中のようですね。順応的はないが「PDCAサイクル」の記述18頁にありました。しかしCheck and Actionの部分がモニタリングと再検討と書いているだけで、状況がどう変われば同方針を変えるという記述が一言もない。順応的管理としては、典型的な似非順応的管理です

2016-06-24

櫻本和美氏の主張に意見する「TACと密度依存性は無関係」

Date: Fri, 24 Jun 2016 07:03:12 +0900

そもそも、加入率に年変動があるときにTACと入力規制とどちらが良いかは、密度依存性とは無関係な議論で、逆に言えばMSYに沿った文脈でも可能です。ある程度は資源動態モデルでも可能です。【私のサイトをご覧ください。】

こんな先行研究はどこかにあるように思います【】。


Date: Fri, 24 Jun 2016 10:08:16 +0900

 私はMSYをベースにしていません。【】さらに、私はTAC対象魚種を増やすべきだと言っています。(2008年8月のBlogの最後の部分【】)

【櫻本さんの主張が】TAC批判や入口管理批判でないなら、ただの彼の密度依存性の間違いで済む話です。しかし、【水産経済新聞記事TAC対象種を増やせとか、IQ、ITQを導入すべきとか言う人は、すべてMSYがベース」では、櫻本さんの密度依存性の理論をTAC拡大やIQ/ITQ批判と結び付けた発言と読めます】。

 TACを定めてMSYを維持するというのは国連海洋法条約の条文にあります。私は沿岸小規模漁業には自由度があってよいと思いますが、少なくとも沖合の巻き網や底引き網漁業はTACだけでなくIQなどを導入したほうが良いと思います(チリの漁業制度が一つのモデル)。

 ただでさえ、日本のTAC機能していないとたたかれている(京都ズワイガニMSC認証問題)【】。

 私が示したシミュレーションは、海洋法条約に背いてまでやる価値があるほどの違いではありません。出口規制でなく入口規制も活用すべきだという主張なら私も(おそらく一部のMSY派も)同じです。それは海洋法でも否定していないはずです。しかし、TACを全否定するのはやめたほうが良い。【】

 私は2006年に、UNCLOS非公式会議で生態系アプローチに関する議論をする場で、MSYを批判しました。 BLOGに書いた通り、参加者は熱心に聞いていただきました(BLOGの続き)。(その時はまだ最大持続生態系サービスのほうがましだとは言いませんでした。これはMSY批判の決め手になると思います)

 今春もUNCLOS関係のNYでの会議に出ましたが、日本の主張に全くユーモアがなく、完全に浮いているように思いました(FACEBOOK)。島国根性心配です。