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横浜国大 松田裕之 公開書簡

2005-05-16 石西礁湖オニヒトデ問題

地球環境研究総合推進費「サンゴ礁生物多様性保全地域の選定に関する研究」報告書

[要旨] サンゴ礁の被度が減少する要因の一つであるオニヒトデの個体数を推定した。オニヒトデ対策にとって重要な個体数推定ならびに駆除方法の検討、さらにオニヒトデ対策を採るべき場所(保護重点区)の選定方法について検討する。

 環境省自然環境局が実施している石西礁湖の広域モニタリング調査の発見個体数のデータから、ブートストラップ法により石西礁湖全体でのオニヒトデの個体数の95%信頼区間を2.1から21.8万個体(点推定値11.9万個体)と推定した。

 これに対して、2004年に4400個体を駆除した。それにもかかわらず、観察個体数は前年に比べて約1.5倍に増えていると見られる。このことから、個体数増加を抑えるためには、最も楽観的なシナリオで15,000個体、悲観的なシナリオでは113,700個体を1年間に駆除する必要がある。すなわち、駆除によってオニヒトデの大発生を防ぐことは、すでに困難な状況であり、今後もオニヒトデは増え続けると予想される。

 1980年代の石西礁湖のオニヒトデ対策の経験から、低密度のときには広域定点調査して最も高密度な場所に駆除圧を集中し,高密度になると保全したい場所に駆除圧を集中してその場所のサンゴを守る政策が有効とされる。保全したい場所は、さんご礁自体の生態学的価値だけでなく、保全しやすい場所を選ぶことが重要である。ただし、どこが保全しやすいかは不確実なため、3年ほど集中駆除し,駆除数が増えている場所はあきらめ,効果の上がる場所に駆除努力を集中する。駆除者の労働効率を考慮し、7.5haを最小単位とする保護区を選定する。ただし、現在の駆除努力量は、この方策を成功させるのにはきわめて不十分であることが示された。