シカセミナー お世話になりました

Date: Sun, 2 Oct 2005 10:10:44 +1200
皆様
おかげさまで、200名近くの参加者が集まり、10.1シカ公開セミナーは大変に盛況でした。
 臨機応変に要旨増刷やパネル討論机の設置などに対応いただいた県博の皆様、丹沢の計画について丁寧に説明いただいた羽山さん、田村さん、村上さん、そして遠方より南北の世界遺産の紹介をしていただいた矢原さんと梶さん、全国の事例を短時間で紹介いただいた常田さん、ありがとうございました。
 後援団体にも大変お世話になりました。
 拙い司会ではありましたが、丹沢の調査研究の先進性、市民参加型の管理計画と合意形成の取り組みに触れたことはたいへん勉強になりました。今日は矢原さん、梶さんとともに、堂平に参る予定です。
 矢原さんが早速ブログ(電網日記)で書いているように、丹沢山地が神奈川県民にとって、きわめて重要な存在だということ、そのために全国でも早くから森林とシカの管理に取り組み、「丹沢大山保全計画」を立案し、講演管理から土地管理までを一元的に担当する「自然環境保全センター」を設立しました。私が知床や屋久島でこれから知りたい基礎情報が、すでに丹沢では十分に得られていることが良くわかりました。
 討論の中で、管理に成功する秘訣は何かというような質問が会場からありました。その場では私は特に意見を述べませんでしたので、この場で私見を述べます。当日述べたように、「重要なのは調査すること、対策を立てることでなく、問題を解決すること」です。そのためには、梶さんも答えていたように、科学者、市民(環境団体)、利害関係者、行政、政治家が主体性を持って取り組み、重要な決断を行い、それを担いきることが重要です。中でも、最も重要なのは行政の中に、そのような主体性と指導性を発揮する人物がいることです。北海道では、そのような人がいたからこそ、エゾシカ管理計画で大量捕獲が提案でき、合意でき、実施できたのだと思います。
 失敗したときの備えのある管理計画、現在の認識が間違っているかもしれないことを明示的に意識した管理計画とは、単に実施しながらモニタリングをして見直していくというものではありません。そこ*1には明確な作業仮説と、成否の判断が明確になる具体的な管理目標と、それを検証する体制が必要です。実現性が低いならそのようにきちんと説明するリスクコミュニケーションが必要です。
 わが横浜国大COEでは、そのような指針「リスクマネジメント手続きの基本」をとりまとめ、公開しています。
 これは、生態学会生態系管理専門委員会が提案した「自然再生事業指針」にも共通する考え方です。
 丹沢のように豊富なデータと、歴史と、人材と機関が備わっていれば、きっとよい方向に向かうだろうと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。

*1:2005.10.3誤字修正