変動する資源における漁獲割当とその取引制度の検討

【古いものですが、2009年3月水産学会春季大会講演要旨を転載します】
○松田裕之(横浜国大環境情報)
【目的】異なる漁業が同じ資源を利用する場合の漁獲枠の配分方法を考える。特に、大きく年変動する資源について、魚価が高く、漁具効率が低く、努力費用の低い漁業1と、その逆の漁業2の間での漁獲枠の配分を考える。個別の漁業者の振る舞いではなく、二つの漁業種間での配分方法を検討する。
【方法】加入量の年変動を仮定して100倍程度変動する架空の資源を考える。漁獲枠の定率配分制度とその上で漁獲枠を取引する制度、魚価の高い漁業1への漁獲枠を維持して余剰分を漁業2に配分する制度を考える。漁獲可能量は【】生物学的許容漁獲量によって決まり、資源量は正確に推定できるとし、漁獲枠の譲渡価格は全体の純利益が最大になるよう定めると仮定する。
【結果】
(1)最適な漁獲枠の配分は、漁業1にほぼ一定の漁獲枠を割当て、余剰分を漁業2に割当てる方策である。
(2)各漁業への割り当て配分比を前年の実績にかかわらず固定する場合、漁業1の配分比が少ないほど、純利益の総和も少なくなる。
(3)漁業種間での取引があるとき、各漁業の純利益を最大にする取引量は、漁獲枠の配分や譲渡額によらない。各漁業の得る利益は漁獲枠の配分方法に依存するが、譲渡額を適当に選べば、純利益の総和は最適配分に一致する。
これらの結果から、異なる漁業間での漁獲枠配分は純利益を最大にする上で必ずしも効率的な制度とは言えないが、漁獲枠の取引を認めれば、効率的な配分が実現することが示された。また、漁獲枠の配分を前年の実績から定める場合、豊漁期には漁業1が漁獲割当量を消化できずに漁業2に無償で譲渡し、不漁期には有償で買い戻すことになる。