hyorohyoroの嘘日記

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2006-10-12

[]沈黙は金、雄弁は銀 00:13

今日、自分の周りでこの言葉の起源がちょっと話題になったんですよ。

そのときには、軽くググってみて、

『「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉は西洋の昔の格言であり、

その時代の西洋では、銀本位制だったので、実は銀のほうが価値があった。

従って、この格言の本当の意味は現代で使われている意味と逆であり、

「雄弁の方が沈黙より偉い」である』

というような論調のサイトがいくつか見つかったので

ほーなるほど、と納得しました。


特にいくつかのサイトでは、古代ギリシア時代の雄弁家デモステネスの言葉が起源だ。

と、あったのでなおさら「なるほど」と納得したのですが



その直後に「待てよ」と思ったのでした。

というのもつい先日

最近の若者は本当にいたか、とカントは言った、皆が本を書いている - 吹風日記

というエントリを読みまして

「すこしググって、調べた気になってしまうことの危険性」

が頭の隅に残っていたからです。


というわけで、調べてみた。

とりあえず、英語中心で調べてみたよ。

すると、この格言は英語では

Speech is silver, (but) silence is gold(golden).

というらしい。と分かった。

んで、Demosthenesとsilence is goldを調べてみると

どうも、関係するようなページは無い。

うーん、どうも嘘臭い。

つーわけで、今度はsilence is goldだけを調べてみると

いくつかサイトが引っかかった。

元々はドイツの格言である。というような記述のあるサイトが多いですね。


で、ついに見つけましたよ

1995年に開かれたthe Conference on European Phraseology (EUROPHRAS '95)

という学会http://www.europhras.org/english/index.html)での発表内容を

webに公開しているページを

no title

これを、(部分的に)読むと以下のようになります。

この研究者Gyula Paczolay博士曰く

Speech is silver, silence is goldという格言は

オリエンタルな(つまり日本も含む東の方)言語にも似たような格言がみられるので

ひょっとして何か関連があるかもしれない(起源がはっきりしない)のだ。

しかし、そのオリエンタルな言語における格言についての文書が参照できないので

ようわかりません。

さらに、この格言は

(参照可能な文書の中で)初出は、1830年ドイツである(非常に遅いのだ)。

以上。

というわけで、起源はやっぱしようワカランらしい。

言語学者がようわからんというのだから、きっとようワカランのだろう。

で、文書中での初出は1830年ドイツであると。


ここまできたら、この初出がなんという本なのか知りたいのだが、どーもわからん。

で、飽きてきてここで日本語ページをまたつらつらと調べなおすと…

見つけたーーーー

沈黙は金 (雄弁は銀、沈黙は金 ”カーライルの衣服哲学”) 沈黙とは?

トーマス・カーライルの「衣装哲学」が上で出てきた「初出」に違いない。

このサイトから張ってあるリンクをたどるとプロジェクトグーテンベルク

本文が参照できる。

で、原文はドイツ語のようだ。

「雄弁であることはすごいけど、一番すごいわけじゃねえ。

スイスの銘にこうある。「沈黙は金、雄弁は銀」と」

というようなことが書いてある。

で、さらに確認のためにwikiで出版年調べる。

Sartor Resartus - Wikipedia, the free encyclopedia

出版年はもっと後だが、トーマス・カーライルが執筆したのは1831年であるそうな。


つーわけで一年の誤差が謎だが、おそらくコレが初出と断定していいでしょ。

さらに上の日本語サイトさんによると、

この言葉が「スイスの銘である」というのはトーマスカーライルの創作かもしれない

ということが書いてありますね。

この本が、Gyula Paczolayのいう初出であるとするならば、

創作というのは、確かにありえそうだと思います。


この1831年時点で、金と銀どっちが価値があったか?

ということも上のサイトにちゃんと触れられています。

ずーーーっと昔から金のほうが価値があったと。

もちろん古代ギリシア時代でも。

ちなみに当時欧州経済の中心であったイギリスは(1816年より)

既に金本位制を取っています。

で、その後、他のヨーロッパ各国も続々と金本位制に移行していますね。

じゃあ、その前はというと欧州のほとんどの国は金銀複本位制でした。

ところが19世紀頃に銀が大量に取れるようになってきたために

以前よりもさらに銀の価値が大幅に下落してきたと。んで、金本位制移行へ。


結論:沈黙は金、雄弁は銀という格言の初出は

1831年ドイツ語で執筆されたトーマス・カーライルの「衣装哲学」である。

しかし、似たような格言は色々な国で見出すことが出来るので

その起源については現在(少なくとも1995年)までのところ不明である。

そして初出の時点から、「沈黙は雄弁よりエライ」という意味であった。

さらにさらに、大昔から金のほうが銀よりも価値がありました。


おまけ。

時は金なり、はtime is moneyの直訳。

ベンジャミンフランクリンの言葉が起源。


このエントリには間違いが含まれるかもしれません。

皆さん、納得いかない場合には自分で調べましょうね


ところで、上のサイトの追記の年月日が2006/10/12になってるのだが……。

俺の知り合いですか? という疑問が。

どんな偶然やねん。


追記:2006/10/13/0:33

海外の掲示板

http://www.phrases.org.uk/bulletin_board/21/messages/660.htmlにて

midrashに 'If speech is silvern, then silence is golden.'がある

と、書かれているのを発見。

midrashのレビ記(Vayyiqra Rabba, Leviticus Rabba)にあるらしい

Midrash - Wikipedia, the free encyclopedia

七世紀中ごろに書かれたものだそうな。

たしかに確認できます。

Leviticus Rabba

If speech is silver, then silence is gold.--Levit. Rabba 16.

レビ記の原典にあたるのはさすがに無理なので

ここでギブアップします……。

むかーしからあったのは確かなようだ

GOGO 2006/10/19 23:50 どうもはじめまして。

日本での知名度は低いかもしれませんが、ケルト神話にも「沈黙は雄弁よりエライ」と云った趣旨の言葉があります。
それはオガム文字を発明した(といわれている)、言語・雄弁の神オグマについて。
彼の舌先には黄金の鎖が繋がれ、そのもう一端は耳たぶに繋がっています。
ケルト神話の語り部ツアン曰く「言葉には銀(メノウ説もアリ)の価値がある。だがオグマを見よ。雄弁の神は沈黙をして言葉を金に変える」
ケルト神話は口頭伝承の色合いが強いため「沈黙は金、雄弁は銀」の初出とは言えませんが参考までに。

hyorohyorohyorohyoro 2007/01/08 22:11 情報ありがとうございます。
返答が遅れたことをお詫びします。

非常に昔から世界各地で使われている表現なのでしょうかね。
普遍的な概念ということの証なのかもしれません。

ステファノステファノ 2007/04/08 00:06 はじめまして。
評判の良い調べ物ですね。
それにしても、「沈黙は金」はデモステネスのセリフであるというのは、
多く見かけます。
捏造であるのは間違いないようですね。
テレビの世界では、捏造によって関西テレビが民放連を除名されました。
インターネットでは野放しというのはおかしな話です。
多分、カーライルも怒っているのではないでしょうか。

どうぞ、これからも根拠に基づいて書いてくださいますように。

hyorohyorohyorohyoro 2007/04/11 00:35 どうもはじめまして。
このエントリーを皆さん見にきてくれるようです。
紹介してくださった方々に感謝感謝。

大山国男大山国男 2008/04/08 18:27 カーライルの「衣服哲学」を私訳しましたので、見て下さい。
http://www.h3.dion.ne.jp/~e.d.e.n/です。