未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

オープンイノベーションとオープンソース

オープンイノベーションというのはカリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ教授が提唱した用語である。従来の閉鎖的イノベーションが、企業の研究機関内で研究開発されたのに対し、オープンイノベーションは、社外の知識、研究などを積極的にとりこもうというのが特徴である。垂直統合型研究開発モデルではなく水平分業型研究開発モデルというのが特徴になる。

イノベーションをビジネスにするためにビジネスモデルを必要とするが、オープンイノベーションの場合、ビジネスモデルと対になって議論される。

近年オープンイノベーションというモデルの成功事例としてオープンソースがよくひきあいにだされる。社外にR&Dと価値の源泉を見いだすという意味でオープンソースはオープンイノベーションに他ならない。しかし投資に見合うリターンをどのように確保するかという確固たるビジネスモデルを確立しているとはいいがたい。

Linuxなどを共同開発するのは、自社でプロプライエタリなOSを開発し続けることが経済的なメリットがなく、コストにしかならないという企業にとっては、理にかなった選択である。例えば、家電メーカーが自社の白物家電のOSにLinuxを利用するというのは、そのような選択である。あるいは、PCサーバという消費財を販売する企業にとってLinuxを採用するのは、OSだけでは差別化要因にならないし、そこに多大な研究開発コストをかけられない場合、これも理にかなった選択である。Web 2.0系サービスを提供する企業にとってオープンソースを利用するというのは、コスト削減のみならず、ソフトウェアをブラックボックス化しないためにも理にかなった選択である。

このようにオープンイノベーション(社外にイノベーションの源泉を見いだす)戦略を取るのが理にかなった選択であるという事例があって、それを有効に利用することによって競争力を付けている企業も少なからず存在する。

さらにオープンイノベーションオープンソースというのは、その定義上非常に相性がいい概念である。

日本という地域においてオープンイノベーションが根付くのか、それとも目新しいMBA用語で終るのか。いくつかの課題を指摘したい。

オープンイノベーションは、自社開発ではなく、他社開発をイノベーションの中心におく。積極的に他社が開発したものを自社の製品にとりこもうとする。そのような事が日本の大企業の得意とするところか?大企業の中央研究所のエンジニアないし組織のプライドを損わず行なうことができるのか。他社開発どころか他部門の技術を謙虚に利用できるか。これは企業文化的な問題である。

オープンイノベーションは自社で製品化することが難しい技術を社外へ排出(spinoff)する。自社技術をスピンオフすることに積極的な企業、社内制度としてそのようなものを持っている企業がどれほどあるのか。あるいはそのような成功事例がどれだけこの日本にあるのか。自社技術を死蔵していないか。

オープンイノベーションをドライブするのは人である。制度をどのように整備しても結局は人である。そのような人をどのように発掘し育成し成功体験を醸造するのか。そのためには健全な人材流動性が求められる。

この3つの課題にどのように取り組み解決していくか。

オープンイノベーションというマーケティング用語をもちだすまでもなくオープンソースは、社外の叡智をどのように活用しビジネスにするべきかという先行事例であった。それが米国のMBAケーススタディになり米国大手企業の中間管理職ないしは経営者がそのプログラムで学び知識、ベストプラクティスを共有している。そのテキストが翻訳され日本語で読めるという時点で、既に二周遅れくらいの感覚である。いまごろ、それを勉強している時点でフォロワーの謗りをまぬがれえない。

嗅覚の鋭い経営者ならオープンイノベーションなどという用語が発明される前から、R&Dの方法論が180度転換していることに本能的に気がつき、そちらの舵を取っているはづである。

日本の大手企業がタンカーのように急に舵を切りかえられないのならば、われわれベンチャーが何がしかの価値を創造するしかないと考える。オープンイノベーションを推進するエンジンとして勉強会というものを考えてみたいと思った。

オープンイノベーション 組織を越えたネットワークが成長を加速する

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