タイムスリップ・コンビナート、笙野頼子著、濫読日記風、その22
笙野頼子の作品を初めて読んだ。なにこれ、面白い。
マグロと恋愛をする夢を見て悩んでいたある日、主人公に当のマグロから電話がかかってきたところから話が始まる。ともかくどこかへ出掛けろとしつこく言われ、結局(JR鶴見線の終着駅の)海芝浦という駅に行かされる羽目になった。
あなたは海芝浦に行ったことがあるだろうか。私はある。駅の目の前が海で、改札の向こうが東芝の工場の入り口だ。社員以外は立ち入れない。外に出ようにも出られない、知る人ぞ知る奇妙な駅だ。
この世界観でグイグイ話を持っていくのが、タイムスリップ・コンビナートだ。短編だ。京浜工業地帯の工場群はSFチックなモチーフに満ちている。無機質。ブレードランナーの世界である。
第111回芥川賞受賞作。別に芥川賞はどうでもいいのだが、面白かったことは間違いない。
文庫本の「あとがきに変わる対話」も面白い。
タイムスリップ・コンビナートは笙野頼子三冠小説集 (河出文庫)にも採録されていて、こちらの方が入手しやすい。
濫読日記風
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