十八年ぶり二十五年ぶり

三月十八日(土)晴後陰
午後高校時代の友人O氏来庵。薄茶、聞香、尺八の後懐石。滅多に会うことはないのだが、会えばしっくりと色々な話の出来る得難い友人である。十八年前に花火を見にたくさんの友人とともに当時藤沢にあつた拙宅に来てくれたのは覚えているが、その前の二十五年前にはひとりで保土ヶ谷の社宅を訪ねて来たことがあるという。私はすっかりそのことを忘れていたが、言われればそんなこともあったかも知れないと思う。そうすると、その時々すべて妻が違うことになり、三人の妻に会っている数少ない友人のひとりということになる。高校時代にはお互いの自宅を訪ねているし、特に私が彼の家に行った時のことは拙著の序章で述べたことがある。さらに、高校卒業後彼が多摩湖のほとりに隠棲していた時にわざわざ会いに行ったこともある。携帯もeメールもなかった時代にどうやって連絡を取り合っていたのか、今となっては不思議な感じがする。そう言えば彼の結婚式にも私は出席しているのである。奥さんの実家がお寺だったので仏式の結婚式が印象的で、わりとよく覚えている。淡い交わりではあるが節目ごとには連絡を取り合う仲として長く続いて来たことになる。
去年の演奏会にも来てくれ、それがきっかけともなって数年越しに企図していた来庵が実現したという訳だ。それもあって私の吹く尺八も興味をもって聞いてくれたし、聞香体験はけっこう喜んでくれたのは幸いであった。絵の話とか、小説の一節とか、音楽の話などを独特の物静かな喋り方でぽつりぽつりと話す彼との会話は、自分も饒舌さが抑えられるのか、のんびりとした心地よいものである。八時半すぎ駅まで送る。楽しい一日であった。写真はこの日のために昨夜私が生けた花である。