遅い紅葉

十二月二日(土)晴
午後江戸城に赴く。昨年から公開された富士見多聞櫓を見るためである。大手門は出る人でごった返しているが入る方は空いている。百人番所、大番所の横を通って本丸方面に登る。松の廊下跡脇を通って築山を上がると多聞櫓である。靴を脱いで中に入るが、何かがある訳ではない。ここに幕末期の幕府の文書が大量に所蔵されていて、それが国立文書館に収められていることを知っているので感慨深いというだけの話である。その文書のことを通信に書くので場所を確かめておきたかったということもある。ちょうど乾門からの通りが公開されているので、眼下の蓮池濠の先に人が歩いているのが見える。その先には徳川家からこの城を簒奪した京都の某家の建物がある。櫓から出て天守台には行かずに富士見櫓経由で二の丸庭園に行く。初めてであったが、遅い時期の紅葉が晴れた日光のもと思いの外綺麗であった。初冬の好日を紅葉や雑木林、庭の池や石と背後のビルとのコントラストを目にしながら散策するのは案外気持ちの良いものであった。幕末明治の歴史に関する書物を続けて読んでいるせいもあるが、やはり徳川様のお城は京都の御苑よりもよほど親しいものに感じる。天守閣再建の動きもあるようだが、それより本丸の再建こそが江戸から日本を知る上でどれだけ大切か知れない。一般受けを狙って、江戸期にもほとんど建っていたことのない天守閣を作る愚は何としても避けたいものだ。
平川門から出て一茶の後竹橋から中野に移動。五時から彼誰忘年会。今回は高校の文芸部の同級二人も参加して計八人の盛会。いつもながら橋本さんの博識に一同敬服。下手な本を読むよりこの会に出る方がよほど勉強になる。この日は映画の話題多し。九時半過ぎ散会。楽しい一日であった。
多聞櫓
二の丸紅葉

諏訪の茶屋