西洋回帰

七月朔日(日)晴
千葉市美術館にて「岡本神草の時代」展を観る。甲斐庄楠音の作品も出展されていて、横櫛にも久しぶりの対面を果たした。作品数も多くなかなか楽しめた企画展であった。
最近、突然日本酒が飲めなくなった。旨いと思えなくなって、飲む気がしなくなったのである。あれほど好きだった日本酒も、口をつけなくなってもう一か月以上経つ。代わりに飲むようになったのがワインで、人に貰ったまま溜まっていた家のものを飲んだら皆結構美味しくて、今は自分で買って飲んでいる。もちろん、産地とか銘柄などにこだわりはない。ワインを飲むだけでなく、食事もステーキや魚のアクアパッツァなど、西洋料理が多くなった。会社でときにランチを外でとる時も、ちょっと前までは和食だけだったが、最近は西洋料理やイタリアンなどによく行くようになった。日本回帰して約十年、その間西洋的なものは極力排して来たが、ここに来てまた一気に西洋回帰した感じがある。食べ物だけでなく、先の音楽にしてもそうだし、映画も西欧のものが多くなっているし、美術も最近ちょっとルネサンスバロックの絵画など見たい気分が戻りつつある。突然それまで大好きだったものに一切関心がなくなったり、極端から極端に一気に振れるのは自分の常なので誰も驚きはしないと思うが、しかし、和のものはかなり日々の生活に根づいているので、いきなり全部西洋風にはならないだろうが、今までのよろず和風で暮らしていたのとは少し様相が変わる筈である。もっとも、着物を着てジャズもロックも楽しめばいいのだし、抹茶を点ててカラヴァッジオを鑑賞し、聞香しながらペットショップボーイズを聴くのも悪くはない。和の方に振れすぎたこだわりを捨てると、何だか毎日が楽しくなりそうな気がしている。美術でも文学でも音楽でも、素晴らしいものは素晴らしいのであって、和にこだわりすぎて窮屈にもなり、その結果酒なども厭きてしまったのだろう。