表具師かっぱの「脱 三日坊主 宣言!」 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2002年08月15日(木) 今日の出来事

[]掛軸の作り方 (裏打ち編 Part1)

昨日、出品作品のデザインが決まったので、今日から制作に取り掛かります。

台紙の用意

まずは本紙を張る台紙を用意します*1

雲竜紙のように髭の入った紙を探してたら、襖紙ですが、鳥の子の民芸紙があったので、これに決めました。このままでは分厚いので薄くなるまでめくります*2

裂取り

普通は、次に、裂の取合せを決めるのですが、昨日のデザインの時点で決めていたので、裂取りをします。

まずは一文字*3から。一応、金襴*4ですから模様が揃って見えるように考えて必要な分だけ切ります。

次に、中廻*5です。中廻は薄紫の無地の裂です。切り取る量は、裂のほつれの余裕と、縮む分と糊代を考慮して少し大きめに取ります。模様のある裂は、模様が揃うように切りますが、無地の裂は糸目が揃うように切らなければいけません。そこで、切り取る場所を決めたら、裂の端に鋏を入れ、緯糸を1本取って引っ張り、ほつれさせます。そのほつれを目印に切れば糸目が真っ直ぐに通った裂が出来ます。

今回は佛表装(真の行)ですが、風帯は付けないので、続いて、上下(天地)と柱の裂を取ります。この部分は濃い紫の無地の裂です。中廻と同様に、糸目が揃うように切り取ります。

明朝の部分は七子織のテープを使うので、ここでは用意しません。

縮み

裂取りが済んだら裂に縮みをかけます。

表具裂は衣服に使う布と違い糸に縒りがかかっていないので濡らして縮めてやらなければなりません。昔は水刷毛を使っていましたが、今は噴霧器を使います。

濡らす前に、裂の耳*6に切込みを入れます。これは、縮んだ時にそこで攣れてしまわないようにする為です。通常は、1寸(約3cm)間隔で切込みを入れるのですが、僕は面倒なので、いつも耳を切り落としています*7

縮みをかけたらちょっと休憩。

裏打紙の用意

次に、肌裏打ち用の紙を用意します。今回、一文字は極薄、その他は薄口の美濃紙にしました*8

仮張り*9への張手を考えて、裂よりも少し大きめに取ります。裂の肌裏ですから、紙の方向は縦です。今回は巻き取りの美濃紙を使いましたので途中で継ぐ必要はありませんが、継ぐ時は肌裏ですので棒継ぎにします。

この時、本紙、台紙とも、裂と同様に裏打紙を取っておきます。今回は両方とも薄口にしました。ちなみに、裏打紙の継ぎ方は本紙の場合は喰い裂きになります。

糊の用意(裂の裏打用)

紙取りが終わったら糊を作ります。僕が子供の頃は生麩糊を使っていましたが、今は片岡糊という化学糊が主流です*10

裂の裏打ちですから、濃い目に溶きます。ダマが出来ないように、少し水を加えながら刷毛で丁寧に溶きます。

糊も準備できましたので、いよいよ裏打ちにかかります。

裂の肌裏打

まず、作業台を丁寧に拭いて、裏打ちする裂を裏向きに置きます。もう一度噴霧器で湿り気を与え、裂の模様(糸目)を直線定規と三角定規を使って真っ直ぐにならします。裂の糸目が曲がっていると、仕上がりが悪くなるので、ここは気合を入れて頑張ります。

糸目が揃ったら、今回は送り打ちをしますから、裏打紙を裂に重ねます。端を決めたら、作業台に糊をつけて裏打紙を固定します。固定した所から折り返して、裏打紙に糊をつけます。この時、かすれや糊溜まりが出来ないように、気をつけましょう*11

糊付けが終わったら、取棒を使って持ち上げ、裂の上に持って行き、棕櫚刷毛で押さえ裂の端に固定します。そのまま、ゆっくりと取棒をおろして行き、裂の上に裏打ち紙をのせてしまいます*12

裂の周りから刷毛で押さえて動かないように固定し、次に5寸(約15cm)間隔で裏打ち紙を裂に固定して行きます。方眼に固定したら、残りの部分を一つずつ刷毛でそっと撫で付けて全体を固定します。固定できたら糸目が歪む事もなくなるので、しっかりと撫で付けて紙と裂を固定します。

撫で終ったら、表向きにひっくり返すのですが、その時に作業台に張り手が引っ付いてしまって破れないように、水刷毛で張り手を濡らしてから剥がします。

糊が表に回っていないかを確認したら、箆挿しの紙をつけて、仮張りに張り込んで乾かします。作業台についた糊をしっかりと拭き取ったら次の裂を裏打ちします。

この作業の繰り返しで全ての裂を打ち終えたら、本紙の裏打ちに移ります。

糊の用意(本紙の裏打用)

次に、糊を作ります。紙の裏打ちですから、糊は飲むヨーグルトくらいの濃さまで薄くします。裂を打った糊に水を少しずつ加えながら溶いて薄くしました。

本紙の肌裏打

糊が出来たら、いよいよ裏打ちです。作業台を丁寧に拭いて、本紙を裏向きに置きます。噴霧器で全体を濡らし、皺が出来ないように軟らかい刷毛で撫でて伸ばします。本紙も送り打ちにしますので、裂と同様の手順で裏打紙を置き、糊をつけ、取棒で持ち上げます。棕櫚刷毛で撫ぜながら、裏打紙を本紙の上におろして行き固定します*13

しっかり撫ぜ込んで固定したら、表に向けて、張り手に少し濃い目の糊をつけて、箆挿しの紙をつけ、仮張りに張り込みます。この時、本紙と仮張りが密着すると、張り付いてしまう恐れがあるので、箆挿しから息を吹き込んで浮かせるようにして張り込みます。作業台を拭いたら、台紙も同様に裏打をします。

これで肌裏が打ち終わりました。乾くまでは次の作業は出来ません。

天気が良いので、すぐに乾くから今日中に増裏も打てるけど、夏休みだし、慌てる事も無いので、今日の作業はおしまい。(笑)

*1:台貼表具のみの工程です

*2:めくる方法はまたの機会に解説しますね。

*3:本紙を貼った台紙の上下に付く裂

*4:と言っても本金ではないけど……

*5:一文字の付いた台紙を囲む裂

*6:織る時に糸を折り返す端の部分

*7:こうすると、ほつれ易くなるので扱いが少し難しくなります。

*8:次に打つ増裏を考慮しました。理由は明日、明らかになります。(謎)

*9:裏打ちした裂を貼って乾かす所

*10:古い掛軸の修復には、場合によっては生麩糊や生麩糊を長期間寝かせた古糊を使います

*11:なんか、カルチャーセンターの表具講座みたいですね。(笑)

*12:このあたりの方法はお店によって違うと思います

*13:裂の場合とはかなり違うでしょ。