平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-09-24

[][]柚月裕子『検事の本懐』(宝島社文庫18:49 柚月裕子『検事の本懐』(宝島社文庫)を含むブックマーク

検事の本懐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

検事の本懐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

骨太人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が見事に融合した連作短編集。県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を歪める「樹を見る」。東京地検特捜部を舞台に"検察正義"と"己の信義"の狭間でもがく「拳を握る」。横領弁護士の汚名を着てまで、恩義を守り抜いて死んだ男の真情を描く「本懐を知る」など、全五話。第25回山本周五郎賞ノミネート作品、待望の文庫化。(粗筋紹介より引用

別冊宝島掲載の2作品に書下ろしを加え、2011年11月宝島社より単行本刊行2012年11月文庫化2013年、第15回大藪春彦賞受賞。


佐方貞人シリーズの第2作目。第1作目の『最後証人』がひどかったので読む気は無かったのだが、本作品が大藪賞受賞ということで仕方なく手に取った。思っていたほどひどくはない。

米崎東警察署長の南場は、1年近く発生した連続放火事件容疑者として、新井を別件でようやく捕まえる。しかし同期で南場のことをよく思っていない県警本部刑事部長の佐野が、今回の別件逮捕に不満を覚えており、横槍を入れる可能性は高い。米崎地検刑事部副部長筒井は、南場の相談を受け、三年目の佐方定人を担当とする。ガサ入れで証拠が見つかり、新井犯行を自供するも、使者が出た1件だけ否認した。「第一話 機を見る」。連続事件の1件だけを否定するというのは、昔からあるネタ。結末も見えており、面白さはない。

筒井が3年前に窃盗住居侵入起訴した小野二郎が再び送致された。出所当日、ディスカウントショップの貴金属売り場で腕時計を盗んだ罪で逮捕されたのだ。小野を見て怒りがこみ上げた筒井だったが、2年目の佐方に取り調べを任せた。自供、目撃証言、盗んだ腕時計を持っていたこと。簡単事件かと思われたが、佐方は拘留期限まで小野を拘置し、不起訴にすると宣言した。「第二話 罪を押す」。これも既視感のある題材といえる。まあそれでも、人間を見る、という佐方の特徴をピックアップさせるには、お手頃の題材であった。

佐方の勤める検察庁に、高校時代の同級生である天根弥生から電話が入った。12年ぶりに再会した弥生は佐方に相談する。弥生はもうすぐ結婚するのだが、昔撮られたビデオのことで呉原西署の生活安全課に勤務する現職警官の勝野から100万円を強請られていた。佐方は12年前の約束を果たすため、弥生を助ける。「第三話 恩を返す」。佐方の過去の一端を見せた作品。佐方にもここまでの熱い感情があったのかと思わせる。まあ、人情ものとして読んだ方がいいだろう。

与党の大臣や参議院議員が絡む中経事業団疑獄で、東京地検特捜部から各地検に応援要請が出た。山口地検の加東は先輩の先崎とともに選ばれる。加東は押収物を分析する物読みを担当するが、証拠は見つからず、捜査の方も進展せず膠着状態となった。そのうち、逃亡中である経理事務の葛巻の行方を探すため、加東は葛巻の伯父の取り調べを担当することとなった。相棒は佐方だった。「第四話 拳を握る」。上の言う言葉は白でも黒と言わなければならない検察社会で、事実のみを指摘しようとする佐方の本領を書いた短編。佐方退場後がずるずると長いのは難点。もう少し書きようがあったかと思う。

ネタに困っていた週刊誌専属ライターの兼先は、10年以上も前に広島で弁護士が業務上横領で実刑になった事件を思い出す。金を返せば示談、悪くても執行猶予になったのに、なぜ横領した事実以外は黙秘したのか。ネタになると思った兼先は、亡くなった弁護士の息子である佐方を尋ねた。「第五話 本懐を知る」。佐方の過去、そして父親過去が語られる短編人情ものとしては、よくできているかな。本短編集のベスト

佐方という存在を映し出すにはよくできている短編集だが、既視感のある題材が多く、佐方というキャラクター物語を作り出している感は否めない。キャラクターではなく、事件の方でもう少し新味を出してほしい。正直言って、これがなぜ大藪賞なのかわからなかった。

[]「推理クイズ」の世界を漂う 18:49 「推理クイズ」の世界を漂うを含むブックマーク

「このクイズの元ネタを探せ」に推理クイズを1問追加。

[]今日仕事 18:49 今日も仕事を含むブックマーク

なんとなくの記録。まあ、先週は飲んでばかりだったから仕方がないか。

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2017-09-23

[][]樋口有介『捨て猫という名前の猫』(創元推理文庫19:52 樋口有介『捨て猫という名前の猫』(創元推理文庫)を含むブックマーク

捨て猫という名前の猫 (創元推理文庫)

捨て猫という名前の猫 (創元推理文庫)

秋川瑠璃自殺じゃない。そのことを柚木草平に調べさせろ」月刊EYES編集部の小高直海が受けた一本の電話。その事件とは、女子中学生が三軒茶屋の雑居ビルから飛び降りものだった。街を歩けば芸能スカウトが群がるような、人も羨む絶世の美少女は、なぜ場末の雑居ビル屋上へ向かったのか? 柚木草平は鋭い推理を巡らせる。柚木を事件調査へと導く“野良猫”の存在。そして亡くなった少女母親彼女の通っていたアクセサリーショップ経営者……柚木が訪ねる事件関係者美女ばかり。“永遠の38歳”の青春を描く長編ミステリ。(粗筋紹介より引用

2009年3月東京創元社、創元クライムクラブより書き下ろし刊行。柚木草平シリーズ第9作、長編第6作。2012年3月文庫化


なぜか美女ばかりに囲まれる私立探偵、“柚木草平”シリーズの(当時)最新作。作者によると、正統柚木もの1997年の『誰もわたしを愛さない』以来12年ぶりとのこと。2000年に番外編『刺青白書』は出たが、注文は無くて執筆されなかったとのこと。それが創元推理文庫シリーズ旧作が収録され、そこそこの売れ行きを見せたことから、気を良くして書いたと作者は書いている。確かに間に他作品を柚木シリーズに書き直した作品短編集が入っているものの、正統なシリーズとしては久しぶりだから、力の入った一作となったのだろう。娘の加奈子担当編集者の小高直海、不倫相手の吉島冴子、荒木町のバーのママ貴子オカマバーのマスター武藤健太郎、警視庁の山川六助刑事といったレギュラーが総出演。別居中の妻・知子が電話だけで出てくるのはいものことである。

小説構成はいつもと同様で、美女が多い事件関係者に話を聞いていくうちに、柚木の頭の中で少しずつ事件全体の概要が見えてくるといったもの。柚木の言動にやや軟派なものがあるとはいえ、実際の行動は正調ハードボイルドと変わらない。事件の全体が見えてくる後半まで読者の興味を引っ張るし、事件そのものはいつも悲哀が隠されているし、それを静かに表に浮かび上がらせる柚木の言葉が読者の胸に染み入ってくる。今回はいつもよりやや長いが、久しぶりの長編ということでかなり肩の力が入ったのかもしれない。そのせいか、被害者となった二人に救いがあまり見られなかったことが少々残念である。だが、面白さは天下一品。本作だけでも十分面白し、本作で柚木シリーズに興味をもったのなら、第一から読み返してもらいたい。

それにしても、シリーズの依頼がしばらくなかった、というのは編集者も見る目がない。東京創元社も、よく復刊してくれたものだ。それにしても樋口有介は、デビュー当初は直木賞に最も近い位置にいる作家と言われながらも、今一つブレイクしないままここまで来てしまったのは、なぜなのだろうか。本シリーズ以外にもいい作品はいっぱいある。なぜ売れないのか、ミステリ界七不思議の一つといったら大袈裟だろうか。

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2017-09-17

[][]朱雀門出『今昔奇怪録』(角川ホラー文庫21:25 朱雀門出『今昔奇怪録』(角川ホラー文庫)を含むブックマーク

今昔奇怪録 (角川ホラー文庫)

今昔奇怪録 (角川ホラー文庫)

町会館の清掃中に本棚で見つけた『今昔奇怪録』という2冊の本。地域の怪異を集めた本のようだが、暇を持て余した私は何気なくそれを手に取り読んでしまう。その帰り、妙につるんとした、顔の殆どが黒目になっている奇怪な子供に遭遇する。そして気がつくと、記憶の一部が抜け落ちているのだった――。第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作を含む5編を収録。新たな怪談の名手が紡ぎだす、珠玉怪異短編集。(粗筋紹介より引用

2009年、「寅淡語怪録」で第16回日本ホラー小説大賞短編賞受賞。「今昔奇怪録」と改題、改稿。他に書下ろし4編を加え、2009年10月刊行


ホラーというより怪談という言葉がふさわしい表題作じわじわと恐怖にまきこまれていく筆致が美しい。ただ、結末の弱さを感じた。ここでスパッと切れれば、大賞も可能性があった。

流行が過ぎ去った疱瘡で三人の娘を失った摂津屋。さらに娘の一人の墓も荒らされた。死体を食いたいがために疱瘡をまき散らす、疱瘡婆の仕業か。「疱瘡婆」。こちらは江戸時代を舞台とした正統派怪談。ただ、新味はない。

超大型力士、釋迦ヶ嶽は贔屓の男・藤兵衛に25歳で殺された。ところが男藤兵衛は自分が殺したことを認めず、町の者のせいにして多数殺害。獄門となった。入れ込み過ぎることの戒めとして、「釈迦狂い」という言葉が生まれた。その事件をモチーフにしたお化け屋敷に入った男の災難。「釋迦狂い」。釋迦ヶ嶽のエピソードの方が迫力があり、肝心のお化け屋敷に入ってからの展開は定型過ぎて楽しめない。

培養用恒温器に「Yamaki HepG2」と書かれた、見慣れないプラスチックシャーレが入っていた。HepG2は幹細胞だが、Yamakiという名前については指導教員も先輩も教えてくれなかった。シャーレは捨てたが、翌日、別のシャーレが入っていた。そして先輩が死亡した。「きも」。一気に現代的な内容となったが、研究の部分の話が長すぎて恐怖の割合が薄れている。

被験者干渉者、観察者、統括者。何かの実験についての4人の記録が書かれる「狂覚(ポンドゥス・アニマエ)」。実験的な作品であることは認めるが、正直言ってわかりにくい。

5つとも毛色の違う内容の作品を用意することは、作者の守備範囲の広さを物語っているかのようである。出来不出来はあるが、恐怖を提供するという点については、どれも考えられた作品だ。ただ、これだけ振り幅が広い作品を並べるのは、印象が散漫になってしまい、作者にとってもあまりプラスにならないと思う。やはり、第1話路線を並べたような作品集にすべきじゃなかっただろうか。

とはいえ、作者には可能性を感じさせる何かがある。まだまだ隠し玉がありそうだ。

名無し名無し 2017/09/17 23:23 今年はなんだか死刑囚の獄死が多いような気がします。
関根元、大道寺将司、浜田武重、そして今回の畠山鐡男。
畠山は死刑執行を受け入れようとしていましたが、共犯の守田克実が再審請求中のため、執行されなかったのでしょう。

それにしても、持田孝の最終弁論の際に「被害者が警察に通報したのが悪い」なんて…
この弁護人は石川弘という弁護士だそうですが(D1-Law.com判決文及び週刊実話より)、いくらなんでも性犯罪の被害者の、それも故人の名誉を傷つけるような発言なんてあっちゃダメでしょう。
…と思ったら、「故人の名誉を傷つけるようだが」という言葉から始めてますし、さもなれば公然と確信犯でセカンドレイプを働いたことになります。
光市の弁護団よりよっぽど質が悪いでしょう。よく当時の世論は懲戒請求を起こさなかったものだと思います。

insectinsect 2017/09/19 06:59 余罪検挙の川崎竜弥被告(浜名湖)や田口義高被告(工藤会)は罪名だけで凄いことになりそうですね。(両名とも死刑求刑が見込まれる)

それと三原賢志被告(北九州市営団地遺体)&須川泰伸被告(対馬父娘放火)&松井広志被告(名古屋老夫婦強殺)&岩嵜竜也被告(秦野姉妹遺棄)の4名は求刑がどうなるか気になります。

名無し名無し 2017/09/21 00:36 >>insect さん
それに加えて、現段階で起訴されている中で、死刑求刑が確実と思われるのが
・関西連続不審死事件の筧千佐子(公判中、10月に求刑)
・熊谷6人殺害事件のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン(公判前整理手続中。来年早々に初公判予定とのこと)
・川崎市老人ホーム連続殺人事件の今井隼人(初公判日程未定)
・相模原障害者施設殺傷事件の植松聖(公判前整理手続中。初公判日程未定)
といったところでしょうか?
あと、寝屋川中1連続殺人事件の山田浩二も動向が気になります。

最高裁上告中の6人は鈴木勝明の弁論が11月に行われることが決まっていますが、林振華以下5人は来年以降に持ち越しでしょうかね。

insectinsect 2017/09/22 05:21 >名無しさん
おそらく鈴木勝明で11月なら、報道が出ていない&控訴棄却日に照らして来年に持ち越しでしょう。

それに加えて確実視されているのは姫路連続監禁殺人の2名ですかね。(公判前整理手続き中)
三原ら4名はそれに比べて「落ちる」イメージがあるので。

hyouhakuhyouhaku 2017/09/23 19:56 >名無し様
 弁護士が(周囲から見たら)理不尽な弁護をするのは当たり前なことです、残念だけど。強姦事件の裁判なんて、恋人だった、相手側から誘った、相手が扇情的な服(単なるミニスカート)を着ているのが悪いなど、信じられないような弁護が出てきます。弁護士は被告を守るためなら、どんなことでもします。被告の「人権」を守るためなら、被害者の「人権」など平気で無視します。
 林振華被告以降は来年に持ち越しでしょう。

>insect様
 工藤会絡みは、どれだけ起訴されているのかわからない被告が多すぎます。亡くなった方0名で求刑無期懲役が出るとは思いませんでした。
 松井広志被告は強殺2名ですので、さすがに求刑死刑でしょう。判決はどうなるか微妙なところですが。あとの被告は動機と犯行内容次第ですかね、過去の「慣例」だけから推測すると。

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2017-09-16

[][]丸山天寿『琅邪の鬼』(講談社ノベルス22:22 丸山天寿『琅邪の鬼』(講談社ノベルス)を含むブックマーク

琅邪の鬼 (講談社ノベルス)

琅邪の鬼 (講談社ノベルス)

始皇帝時代の中国、商家の家宝盗難をきっかけに、港町・琅邪で奇妙な事件が続発する! 「甦って走る死体」、「美少女の怪死」、「連続する不可解な自死」、「一夜にして消失する屋敷」、「棺の中で成長する美女」―琅邪に跳梁する正体不明の鬼たち!治安を取り戻すべく、伝説方士・徐福の弟子たちが、医術、易占、剣術推理……各々の能力を駆使して真相に迫る。多彩な登場人物、手に汗握る攻防、緻密な謎解き、そして情報力! 面白さ極めた、圧倒的興奮の痛快歴史ミステリー! 第44回メフィスト賞受賞作。(「BOOK」データベースより引用

2010年、第44回メフィスト賞受賞。同年6月講談社ノベルスより刊行


著者は陸上自衛隊勤務を経て、古書店経営ライフワークである邪馬台国研究を進めるうち、本書を着想し、執筆。56歳の受賞は、同賞最高齢である田中芳樹が推薦文を書いている。

舞台はなんと始皇帝時代の中国。琅邪は、中国大陸の東端・山東半島にある「あやかしの町」と呼ばれた小さな港町である。琅邪のはるかな海上には、煌びやかな高楼や屋敷が立ち並ぶ「浮島」が時に出現し、誰も辿り着くことができない。人々は仙薬を飲む「神仙」たちが住む島であると信じていた。主人公の希人は、琅邪の求盗(警察官)である

新興商家・西王家の家宝・壁の盗難。古くから商家である王家で、美人姉妹の妹が婚儀直前で失踪。姉の部屋の長持ちから出てきた妹の死体。さらに葬儀中に妹が甦って失踪連続自死に謎の死体。有り得ない懐妊。西王家人間財産家財道具が一夜で消滅。成長する死体

いやはや、事件が起きるにしても多すぎるだろう、と言いたくなる。秦を舞台にした伝奇ミステリかと思わせたら、なぜか剣の戦いが挟まれ、徐福の弟子、無心が最後一気呵成に謎を解く。ここで初めて、本書が本格ミステリであることに気づかされた。

それにしてもサービス旺盛な作品。これだけ謎と活劇がてんこ盛りになった作品も珍しい。それでいて、この重みの無さは何だろう。この軽さは読みやすさにつながっているとは思うが、それにしても時代性があるとはいえ、大事なことがどんどんスルーされて物語が進むというのもどうかと思わせるが、活劇なら仕方のないことか。

謎解き自体は一応整合性が取れていると思われるが、正直そこまで吟味する気力は無い。事件の数が多すぎて、そこまで見切れないというのが本音。しかも解決が最後の方でやや強引に行われるものだから一気呵成に流されてしまった感がある。正直言って、かなり苦しい感もあるが。

最後に無心の正体が暴かれ、読者はアッということになるのだが、これは少々見え見えだった。

作者が言うようにサービス旺盛な作品。旺盛すぎて、逆に軽くなってしまった感があるが、娯楽と徹して読む分にはこの軽さも悪くない。秦時代の中国の描き方も悪くないし(もうちょっと圧政だったイメージがあるのに、そこが書かれていないのはやや不満だが)、この時代の作品好きな人にはお勧めできるかも。

[]『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う 22:22 『お笑いスター誕生!!』の世界を漂うを含むブックマーク

「お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。小ネタですが、酒井くにお・とおる。くにおが入院中らしいですが、早い復帰を望みます

[]台風接近中 22:22 台風接近中を含むブックマーク

呼ばれる可能性があるので、待機中です。

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2017-09-13

[][]宮部みゆき『小暮写眞館』(講談社23:37 宮部みゆき『小暮写眞館』(講談社)を含むブックマーク

小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

三雲高校1年の花菱英一の両親、秀夫・京子夫妻は、結婚に十周年を機にマイホームを購入した。ところがその家は、築33年の木造二階建て、一部タイル張り。そこはかつて「小暮写真館」という写真館だった。八歳年下の弟・光、小学校からの友人・店子力、家を紹介したST不動産の須藤社長や女性事務員の垣本順子などとの付き合いの中、不思議事件を解く。

英一が心霊写真の謎を解く「第一話 小暮写真館」。

バレー部OGの家の一枚の写真で、一方では笑ったOG、両親、後輩が、その後ろではOGと両親が泣いていた。写真の謎の解決を依頼される英一。「第二話 世界の縁側」。

不登校状態の子供たちが学ぶフリースクール「三つ葉会」の7人の写真で、1人が持っていた謎のぬいぐるみを、本人はカモメといった。「第三話 カモメの名前」。

祖父危篤から端を発した花菱夫妻の離婚騒動。6年前に4歳で亡くなった妹・風子。光が会いたがっている相手は。そして英一と順子の関係は。「第四話 鉄路の春」。

2010年5月書き下ろし刊行


執筆1年半、3年ぶりの現代作品となった本作。すでに潰れた「小暮写真館」を舞台に、英一たちの苦しみや悩み、そして成長を描いた作品となった。

それにしても宮部みゆきは、少年主人公とした作品を描くのが、本当に巧い。ショタコンじゃないのか、などと余計なツッコミをしたくなるのは置いておき、どうしてこの人は少年の心情をこれだけうまく描けるのだろうと、不思議になってくる。

一応日常の謎はあるものの、主題あくまで英一たちの心情と成長。第一話の伏線最終話でしっかりと回収され、物語主題であることがわかり、読者の感動を巻き起こす。

正直言って700頁は長い。当代一の人気作家がよくぞここまで書下ろしで書けるな、と不思議に思ったが、読み終わってみると納得。登場人物の心情を丁寧に描くと、どうしてもこれぐらいになってしまうなと思わせる内容だった。まあ、途中、読んでいて苦しい部分があったのも事実だが。第二話あたりは、もうちょっと何とかならなかったか。

久しぶりに宮部みゆきを読んだが、やっぱり何を読んでも面白い作家だと思った。ここの所ご無沙汰だったが、また手に取ってみようと思う。大作もいろいろあることだし。

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