平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-02-23

[][]深水黎一郎『最後トリック』(河出文庫23:37 深水黎一郎『最後のトリック』(河出文庫)を含むブックマーク

最後のトリック (河出文庫)

最後のトリック (河出文庫)

「読者が犯人」というミステリー最後不可能トリックアイディアを、二億円で買ってほしい――スランプ中の作家のもとに、香坂誠一なる人物から届いた謎の手紙。不信感を拭えない作家に男は、これは「命と引き換えにしても惜しくない」ほどのものなのだと切々と訴えるのだが……ラスト驚愕必至! この本を閉じたとき、読者のあなたは必ず「犯人自分だ」と思うはず!?(粗筋紹介より引用

2007年4月、『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』で第36回メフィスト賞を受賞し、講談社ノベルスより刊行2014年10月、改題、全面加筆修正の上、河出文庫より発売。


本格ミステリで残された「最後トリック」とも言える「読者が犯人だ」に挑んだ作品ある意味、こういうやり方があったのか、とは思ったけれど、厳密に言えば読者が殺人の実行者、というわけでは無いので、肩すかしを食らった感が強い。さらに言えばこのトリックとある能力必要とされるので、ずるいと言われても文句は言えないだろう。そもそも、こんな経緯のある新聞連載、本にする出版社があるか? その時点で破綻していると思うのだが。

これで小説面白ければ、まだ救いがあったのだが、はっきり言ってつまらない。本筋ではない「超能力」の実験や説明のところが半分近くを占め、これがまた読んでいて退屈なのだ。よっぽど飛ばそうかと思ったぐらい。"謎の手紙"の内容もつまらないし、どこも面白いところがない。わずか一つのトリックを成立させるために、つまらないページを積み重ねたと言っていいだろう。

「読者が犯人だ」トリックに挑んだ、以外に何も言うことがない作品。このトリックにわくわくしてどんな内容でも許せる、という読者以外には何の面白みもない。まあ、話のネタにしたい人はどうぞ、程度のものであるメフィスト賞以外だったら、誰も見向きもしなかったはず。

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2017-02-17

[][]岡嶋二人『コンピュータの熱い罠』(光文社文庫23:22 岡嶋二人『コンピュータの熱い罠』(光文社文庫)を含むブックマーク

コンピュータの熱い罠 (光文社文庫)

コンピュータの熱い罠 (光文社文庫)

夏村絵里子はコンピュータ結婚相談所オペレータデータを見たいという女性の申し出を断った翌日、その女性が殺された! 疑問を抱いた絵里子データ調査システム上で何かが動いていることを知る。プログラムに隠された巨大な陰謀。そして次の犠牲者が……!?

情報化社会に警鐘を鳴らす、著者得意のハイテクサスペンス!(粗筋紹介より引用

1986年5月カッパノベルスより書き下ろし刊行1990年2月文庫化


久しぶりに手に取った岡嶋作品代表作はほぼ読んでいるが、それなりに好評だった作品はほとんど読んでいない。ということで、家にあった一冊を取り出してみた。

当時のハイテクを駆使した、井上泉色が濃厚な一冊。フロッピーディスクや音響カプラなどはさすがに時代を感じるが、取り扱われているデータ使用方法結婚問題現在でも十分通用する内容。逆に言えば、時代を先取りしすぎた作品だったかもしれない。

当時のコンピュータ技術がわからない人でも説明が過不足無く入っているのでわかりやすいし、物語の流れに沿った書き方になっているので、読者の興味を削ぐようなことが無いのもさすが。少しずつ謎が明かされると、さらに継の事件が起きて読者の興味を引き続ける書き方も、手慣れたもの。長さも手頃だし、一気に読み終えることができる。

問題は、ヒロインに魅力が無いことかな。ちょっと間抜けすぎるし、殺された人も含め、メモぐらい残さんのかい、とは言いたくなる。まあ、最後エピソードちょっと格好良かったが。

割と地に着いた題材のトリックを使っていたためか、今読むと古くさいところもあるのは仕方が無い岡嶋作品だが、中身を取ってみれば、今でも十分読み応えがある。当時は職人色が強かった岡嶋二人だが、ミステリブームの頃に出ていれば、もっと売れっ子になっていたのかもなあ、と当時考えていたことを思い出してしまった。

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2017-02-14

[][]藤原伊織シリウスの道』上下(文春文庫22:57 藤原伊織『シリウスの道』上下(文春文庫)を含むブックマーク

シリウスの道〈上〉 (文春文庫)

シリウスの道〈上〉 (文春文庫)

シリウスの道〈下〉 (文春文庫)

シリウスの道〈下〉 (文春文庫)

大手広告代理店東邦広告に勤める辰村祐介には、明子、勝哉という2人の幼馴染がいた。この3人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。その過去が25年の月日を経た今、何者かによって察知された……。緊迫した18億円の広告コンペの内幕を主軸に展開するビジネスハードボイルドの決定版ここに登場。(上巻粗筋紹介より引用

新規クライアント広告コンペに向け、辰村や戸塚らは全力を傾注する。そんな中、3通目の脅迫状が明子の夫の許に届いた。そして勝哉らしき人物上野近辺にいることを突き止めた辰村は、ついに行動を起こす! 広告業界の熾烈な競争と、男たちの矜持を描くビジネスハードボイルドの結末は?(下巻粗筋紹介より引用

週刊文春2003年11月6日号〜2004年11月23日号連載。2005年6月文藝春秋より単行本刊行2006年12月文庫化


電通社員だった藤原伊織にとっては、まさに自分のフィールドでの作品ということもあり、広告をめぐる争いについてはリアリティがある。下手な作家ならここで専門的な内容をずらずら並べそうなところだが、さすがにそんな無様なまねはしないばかりか、スピード感にあふれるから、読んでいて目が離せない。一方では過去秘密に絡む脅迫事件が出てきて、昔惚れた女と久しぶりの再会。酔っぱらいヘビースモーカーな無頼の主人公なのに、やっぱり人間として魅力があるから、そばにいると惚れるんだろうね。ずるいというしかない。どんなに損なことでも己の美学に誠実だし、頭も切れるし、部下のこともしっかりと見ているから、男でも惚れてしまうよ、これは。

『テロリストパラソル』と世界共通しており、ある登場人物が作中に登場。読者サービスの部分があるのは否定しないだろうが、こればっかりはこの人物必要判断してのことだろう。

それにしても、タイトルもいい。「シリウス」の意味を知ったら、泣けてきた。エンディングまでの流れも巧いとしか言いようがない。下種な人物をここまでリアルに描いてしまうところも流石だ。

他の登場人物も魅力的だし、セリフの言い回しなどの世界観も、まさにハードボイルド。やはりすごい作家だと改めて認識してしま作品。ただ、女性が読んだらどう思うのだろう、という気もする。

けいけい 2017/02/16 20:07 新井正吾被告は2月8日付で上告棄却決定が出ました(第二小法廷 山本庸幸裁判長)。

奥深山幸男被告が亡くなりましたね(一審の求刑は無期懲役でした)。
数年前に病状が回復して公判再開かと報道があったので待ち続けていたのですが。
逃走中に大坂正明容疑者の時効成立を阻止するために公判を中断していたという説は本当なのでしょうか…
だとしたら殺人罪の時効が撤廃された時点で公判を再開してもよかったはずですが…
事件番号、昭和55年(う)第392号。本当に長い裁判でした。

xxxxxx 2017/02/17 21:54 >逃走中に大坂正明容疑者の時効成立を阻止するために公判を中断していたという説
奥深山は本当に精神疾患だったと思いますよ。
確かに、精神疾患にならなければ1990年代前半には判決が確定し、
大坂正明の公訴時効が成立してたと思いますが。
そういや、大坂正明の放火・凶器準備集合・公務執行妨害は奥深山の死亡に伴って公訴時効が進行することになりますね。殺人の公訴時効が撤廃されたので、大坂は(生きてたとしても)永遠に逃げるしかないのでしょうが。

hyouhakuhyouhaku 2017/02/17 23:32 >けい様
新井被告のご指摘、ありがとうございます。朝日に載っていたのですね。
そういえば、再開するかみたいな報道がありましたね。

>xxx様
ダブりは削除しました。
私も、本当に病気だったと思います。支援者も居ましたから、意図的に中断していたら、さすがに騒ぎ立てたでしょう。
大坂とか逃げ続けて、今の世の中をどう思っているのか、気になります。今でも後悔していなければ、それはそれですごい話ですが。

まあ異論まあ異論 2017/02/18 03:16 >大坂正明容疑者の時効成立を阻止するために公判を中断していたという説

ちょっと考えにくいですね。
公判停止は検察官、弁護人の双方の意見を聴いて裁判官による決定なので
(刑事訴訟法314条1項、404条)、何らかの利害関係が働くとはちょっと
考えにくいです。

公判の停止にしても再開にしても、通常、精神科医の鑑定書が作成される
ので、京都府立医科大学での疑惑のような医師の不正でもないとありえません。

検察官がもしそのような目的で不正な公判停止に暗躍していたとしたら、
憲法37条1項、99条違反でとんでもないスキャンダルになると思います。
よって、ちょっと考えにくいですね。

>今でも後悔していなければ

過激派の死刑囚のほとんどは反省していませんが、外部社会と接点が
あるよど号メンバーのほとんどは後悔しているようですから、
後悔しているのかもしれませんね。死刑囚の面々はそのような強弁でも
ないと長期の拘置生活に耐えられないのかもしれませんが。

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2017-02-13

[][]リチャード・ニーリィ『殺人症候群』(角川文庫21:30 リチャード・ニーリィ『殺人症候群』(角川文庫)を含むブックマーク

生来内気で、仕事にも女にも引っ込み思案のランバート。すべてにおいて積極的で自信に満ち溢れたチャールズ対照的な二人の男を結びつけたのは凄まじいまでの女性への憎悪だった。ランバートを愚弄した女性殺害したチャールズは、やがて"死刑執行人"と名乗る残虐で大胆な連続殺人犯へと変貌していく――。殺人犯の歪な心理リアル描写と衝撃の結末。鬼才ニーリィによるサイコサスペンスの傑作。(粗筋紹介より引用

1970年、発表。1982年2月角川書店より邦訳刊行1998年9月文庫化


評論家瀬戸川猛資が名著『夜明けの睡魔』で絶賛していたニーリィ。『ミステリマガジン』で読んだ時は購入することができず、買おうと思った時にはすでに絶版になっていたのでどうしようもなかった。解説千街晶之も同じようなことを書いていたが、そのような読者も多かったのではないか。角川文庫から出たときはすぐに買ったのだが、読むのは今頃。まあ、買っただけで満足してしまうということだ。

折原一が大好きといっている時点でどのような作風かだいたい予想がつくというものだが、本作品サイコサスペンスに仕掛けを施したもの。そういう意味では、日本でこのような作品が出てくるよりかなり早く、はっきり言えば先駆者である。もし綾辻行人出版されてすぐに本作が訳されていたら、大絶賛されていたのではないだろうか。日本の読者から見ると、早すぎた作家である

本作は1938年チャールズウォーターが犯した連続殺人を綴ったもので、なぜ作者がそんな古い事件を取り上げているかは、最後まで読めばわかるようになっている。『ニューヨーク・ジャーナル広告勧誘員家具付き部屋担当ランバートポストと、中途入社で同居するようになる同じ家具付き部屋担当チャールズ・ウォルターの視点が交互に語られる。それと同時に、事件を追う同じ『ニューヨーク・ジャーナル』の事件記者、モーリー・ライアンの視点が挟まれる。

ランバートは内気で臆病、ウォルターは派手な自信家。女性にバカにされたランバートの代わりにウォルターは復讐するため悪戯を仕掛け、遂には手にかけてしまう。そしてウォルターは次々と殺人に手を染めるようになっていく。このランバートがバカにされる描写や、ウォルターの殺人描写が妙にエグイ。この辺が当時の日本の読者に受け入れられなかった点ではないだろうか。

事件真相は、ちょっと勘のいい人ならすぐにわかってしまうだろう。それでも読んでいて引き込まれてしまう展開の巧みさはなかなかのものだし、エンディングまでの流れは洒落ている。なぜ当時、もっと評判にならなかったのか、不思議で仕方がない。もし『このミス』があったなら、もっと売れていたんじゃないだろうか。単行本で出たという点も、あまり読者が手に取らなかった原因かもしれない。何とももったいない作家だった。

insectinsect 2017/02/14 10:13 久保田正一被告の求刑は「え?」って一瞬思いましたが、2人目の被害者が共犯で
あったことも影響しているかもしれません。
何よりも中尾夫妻(夫のほうはまだ確定してないですが無期はない)の量刑には全く納得がいきません。

hyouhakuhyouhaku 2017/02/14 23:03 >insect様
 久保田被告の求刑は、2人目が共犯者であることもあるでしょうが、自首が大きく影響していると思います。
 正直、この事件の時間軸が今ひとつわからない点があるので推測も交じりますが、共犯者のK被告はN殺害前に出頭しています。また久保田被告も、N殺害前に警察に出頭している可能性があります(ここがよくわからない)。その点を考えると、警察は証拠固めをしている間に、共犯のNが殺害されたことになります。今までの記事をまとめると、どうもそうなりそうです。
 時間軸に誤りがあるかもしれませんが、久保田被告がフィリピンに逃げようとすればできたのに、日本に帰国したこと、特にN殺害について積極的に話したことが、無期懲役求刑になった大きな原因だと思われます。さらに肝心の主犯・岩間被告がいるという点も大きいでしょう。岩間被告は多分今でも無罪を主張しているでしょうから、求刑死刑は免れないと思います。
 中尾夫妻、特に中尾妻被告については、誰でもそう思っているでしょう。

insectinsect 2017/02/15 04:25 丁寧な解説ありがとうございます。
この事件はあまり自分では調べていなくて、そう考えると納得です。
おそらくその推察が真実でしょう。

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2017-02-12

[][]柳広司ジョーカー・ゲーム』(角川文庫23:33 柳広司『ジョーカー・ゲーム』(角川文庫)を含むブックマーク

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく……。

吉川英治文学新人賞日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー。(粗筋紹介より引用

野性時代掲載作品に書下ろしを加え、2008年8月角川書店より単行本刊行2009年、第30回吉川英治文学新人賞受賞。同年、第62回日本推理作家協会賞長編及び連作短編部門受賞。2011年6月文庫化


佐久間陸軍中尉は参謀本部武藤大佐命令により、結城中佐の発案で昭和12年秋に極秘に設置されたスパイ養成学校“D機関”へ連絡係として出向させられた。1年後、D機関には12人の学生が残った。佐久間は参謀本部から、スパイの容疑がかかったアメリカ人、ジョン・ゴードン証拠をD機関のメンバーとともに見つけろと命令される。佐久間たちは憲兵隊に化け、ゴードンの家に踏み込むが、証拠は何も見つからない。「ジョーカー・ゲーム」。D機関設立が描かれた短編陸軍中尉を出すことによって陸軍とD機関のメンバーとの違いを明確に浮き彫りにする設定は見事である証拠となるマイクロフィルムの隠し場所についても、確かに盲点。タイトルもまた意味深だし、結末までの流れも面白い。傑作と言ってよい出来である。それにしても、当時の陸軍、というか軍隊って本当に馬鹿だったと思うし、新興宗教と何ら変わらないと思うのだが、今でもそれを認めない人はいっぱいいるのだろうな……。

横浜憲兵隊が捕らえた支那人の取り調べより、皇紀二千六百年の記念式典で、爆弾による要人暗殺計画が進んでいることが発覚。しかし具体的なことが分からないまま、拷問支那人を死なせてしまった。捜査の結果、全ての監視場所に立ち入った人物がいた。それが駐横浜英国総領事アーネスト・グラハム。国際問題になることを恐れた陸軍参謀本部憲兵隊の動きを押さえ、D機関調査を依頼した。公邸に出入りしている洋服屋の店員蒲生次郎と入れ替わり、グラハムとチェスをする間柄になったが、蒲生の判断は、心証的にシロだった。ただし、0%ではなかった。「幽霊(ゴースト)」。状況はクロで心証はシロというねじれた現象の解明はなるほどと思わせる物であったが、いきなり蒲生がスーパースパイのような動きを見せるものから、少々戸惑ってしまう。なにも、ここまで完璧でなくても。それにしても、当時でも情報合戦は恐ろしい、と思ってしまうが、考えてみれば戦国時代でも似たようなことをやっていたかと思いだした。当時の戦国武将たちは徹底したリアリストだったのに、なぜ日本の軍隊ロマンチストになったのだろうか。武士に対するアンチテーゼか。

前田倫敦写真館の甥としてロンドンに入った伊沢和男だったが、かれはD機関所属のスパイだった。しかし、ロンドン駐在になったばかりの外交官、外村均が英国のセックス・スパイに引っかかり、簡単に伊沢の正体をしゃべってしまったため、伊沢は英国諜報機関に捕まってしまう。取り調べに当たったのは、英国諜報機関の元締めの一人であり、結城中佐を知る、ハワード・マークス中佐。もちろん伊沢は、D機関で敵に捕まった場合対処方法を学んでいた。「ロビンソン」。伊沢が如何にして相手をだまし、逃げることが出来るかどうかという話だが、もちろんそれにも裏があった。それはともかく、ここまで対処できるスパイって、本当に化物だと思うのだが、そう思わせないのがスパイなんだろうなと思ってしまう。まあ、本当に出来るのかどうかなんて知らないが、さすがにそれぐらいは作者も調べているだろう。

特高刑事で、上海派遣された本間英司憲兵軍曹は、陸軍参謀本部からも高く評価されている及川政幸憲兵大尉より、憲兵隊の中にいる敵の内通者を調べろを命令を受けた。前任者は三日前、巡回中に背後から銃撃を受け殺されていた。その命令を受けている途中、及川の家が爆破された。各国が複雑に絡み合う上海の租界警察から派遣されたジェームズ警部は、まともに捜査する気がない。翌日、知り合いの上海日本人記者より、D機関に入った大学時代同級生草薙行人が地元中国人服装をしているところを見かけたと聞かされ、さらにD機関は中国国内の民間秘密結社青幇(チンパン)と手を組み、偽造紙幣を上海に持ち込んで中国全土に流通させ経済崩壊を企んでいると知らされた。「魔都」。いくら憲兵隊とはきえ、D機関存在を知られてしかも人物まで特定されてどうするのかと思ったが、そういう真相があったのかと読み終わって納得。D機関人物主人公にするより、こうやって事件の裏側に位置する立場にある方が、その存在感がより強まると思う。

3年前、ドイツ有名新聞の海外特派員として来日したカール・シュナイダーは、連日酒宴と乱痴気騒ぎのパーティーを開いていたが、実は独ソの二重スパイだった。取扱いに困った各組織は、D機関に後始末を押し付けた。陸軍所属の飛崎弘行少尉は、大隊長に逆らって逆らって謹慎していたところを結城中佐にスカウトされ、卒業試験としてシュナイダー調査を任された。飛崎は調査の結果、シュナイダーがドイツのスパイを演じながらも、実はソ連のスパイであった事を突き止め、日本国内のスパイ網を押さえた。あとはシュナイダーの身柄を確保するだけだったが、シュナイダーは死亡した。遺書が残っていたこから憲兵隊自殺結論付けたが、飛崎は自殺でなく、殺人可能性があると指摘。D機関の面々は、調査を開始した。「XX(ダブルクロス)」。形的には密室殺人のように見えるのだが、それはさておいて、スパイとなる人物にも弱さ、盲点があったというのは、それはそれで面白い


今まで歴史上の人物を扱ったミステリを書いてきた柳広司が、初めてオリジナル人物主人公に据えた連作短編集。どちらかと言えば知る人ぞ知るといった作者が世に知られるきっかけとなったヒットシリーズである。スパイと探偵とは似て非なるものであるが、スパイ小説本格ミステリは通じるところがある。手がかりや言動をきっかけに事件真相に気づく点は、どちらも同じだ。そういう意味では、スパイ機関を連作短編集の主人公に据えるという設定は、ありそうであまりなかったものであり、よくぞ見つけてきたものだと思う。登場するD機械のスパイの面々が超人すぎるところがやや気にかかるものの、当時の不安定世界情勢を基に活躍する姿は、読んでいて実に痛快。協会賞などの受賞も当然であろう。

とはいえ、日本が戦争で負けたのは事実だし、諜報合戦ではお話にならなかったぐらいレベルが低かったのは歴史的事実。そことの整合性をどうとるかが、今後の課題だろう。そうしないと、ファンタジーの方向に流れてしまう。

[]『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う 23:33 『お笑いスター誕生!!』の世界を漂うを含むブックマーク

「お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。【「お笑いスター誕生!!」用語事件】に用語新規追加。

エド山口のネタ。なんでこの人、お笑いやろうと思ったんだろう。

用語事件の方は、何と7年ぶりに用語新規追加しました。古いファイルを整理していたら、まだ書いていないやというのがいくつか出てきたもので、整理ついでに書いてみました。

[]まだ疲れが取れない 23:33 まだ疲れが取れないを含むブックマーク

身体はもう年だなあ。それでも、読みかけの本、何冊か読めた。複数の本を並行して読むことが時々あるけれど、それほどこんがらがることが無いということは、頭の方はまだ何とかなっているか

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