平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-11-17

[][]麻耶雄高『貴族探偵対女探偵』(集英社文庫00:22 麻耶雄高『貴族探偵対女探偵』(集英社文庫)を含むブックマーク

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

新米探偵・愛香は、親友の別荘で発生した殺人事件現場で「貴族探偵」と遭遇。地道に捜査をする愛香などどこ吹く風で、貴族探偵執事メイド使用人たちに推理披露させる。愛香は探偵としての誇りをかけて、全てにおいて型破りの貴族探偵に果敢に挑む! 事件を解決できるのはどちらか。精緻トリックどんでん返しに満ちた5編を収録したディテクティブ・ミステリの傑作。(粗筋紹介より引用


大学一年中退し、名探偵と名高い師匠の元で4年半、弟子として勤めた高徳愛香は、癌で45歳の師匠を亡くしてから半年、探偵として必死に全国を駆けずり回った。疲れた愛香は、大学時代親友である平野紗知に誘われ、彼女山荘「ガスコン荘」へやってきた。ここの地下には、死体を投げ込むと浮かばないため隠滅できるという“鬼殺しの井戸”がある。大学院生である紗知のゼミの後輩たちも来ていたが、到着当日、紗知の一つ下の院生、笹部恭介が頭を殴られ殺されていた。別荘までの唯一の道である橋が事故で炎上しており、警察はしばらく来られない。愛香は現場に残された証拠から事件推理する。犯人として名指ししたのは、今年ゼミに入った三年生の妙見千明の恋人で、愛香を“女探偵”と揶揄する髭面男だった。彼の名は別名、貴族探偵。「白きを見れば」。

華族で、大手製薬会社の会長、玉村規明の長女・依子は複数恋人と付き合っている。安房の人里離れた別荘に来たのは、依子の恋人、中妻尚樹と稲戸井遼一、遅れてやってきた長身で口髭の男、すなわち貴族探偵。そして依子の兄である豊、父・規明と後妻の示津子。そして赤ん坊の礼人と、ベビーシッター寺原真由。真由は10ヶ月前に尚樹と別れた元恋人だった。その夜、稲戸井が首吊り死体発見されるが、警察は簡単偽装と見破った。そして稲戸井が余興の占いで使って手帳が無くなっていた。稲戸井が殺害された時刻に席を外していたのは、尚樹だけだった。依子は三年前の事件で知り合った高徳愛香を呼び出す。「色に出でにけり」。

時間前、教授会の内部データが盗まれた事件を解いた高徳愛香は、学内貴族探偵に呼び止められる。彼はガールフレンド准教授の韮山瞳が栽培に成功した、黄色く発光するキノコを見に来たのだ。ところがゼミ室で、博士課程一年生の大場和則が殺害された。色分けされたティーカップから事件の謎を解く。「むべ山風を」

親友平野紗知に誘われ、新潟の山間にある温泉旅館「浜梨館」に誘われた愛香。離れにある別館には、願い事をかなえるという座敷童子いづな様がいるのだが、湯が乏しいため、月に一度しか開かれない。インターネットでは隠れパワースポットとして知られている。ところが大手商社の役員の娘、下北香苗の恋人として貴族探偵も来ていた。そして、フラれて自殺した人気HPの管理者の女性恋人としてインターネット上でたたかれた同じ名前もあった。そして儀式が行われた翌朝、客の一人が殺害されていた。「幣もとりあへず」。

高知県の宿毛港から十数キロ離れたところにある、ウミガメが産卵のために大量に上陸する亀来島がある。愛香は、名無しの依頼人から通常の倍額の前金と切符が入った依頼書により、この島に来た。島の持ち主は、元伯爵重工業関係の門閥として名高い具同家の当主、政次。具同家の別荘には玉村依子と貴族探偵もいた。到着から三日後、使用人の平田が殺害された。嵐で警察は来ることができない。「なほあまりある」。

小説すばる』2011〜2012年掲載された4編に書下ろしを加え、2013年10月集英社より単行本刊行2016年9月文庫化


あの『貴族探偵』の続編だが、今回は女探偵高徳愛香が全編で登場。貴族探偵推理合戦を繰り広げる。もっとも、実際に推理するのは貴族探偵使用であることは、今回も変わらない。

全編貴族探偵対女探偵、しかも愛香が貴族探偵犯人と名指しし、貴族探偵(の使用人)が愛香の推理の見落とした部分と真犯人を指摘する。悉く愛香が貴族探偵に敗れるため、読んでいてだんだんつまらなくなってくるのは事実。多重解決ものだが、愛香の推理ちょっと抜けているのが読者にもわかってしまい、推理合戦としての面白さが削がれている。「白きを見れば」「色に出でにけり」あたりは、なぜ途中まで解決に辿り着きながら、最後最後で真の解決に至る推理ができないのか、不思議なくらいである

ちょっと毛色が変わるのは「幣もとりあへず」。最初誤植かと思ったが、複数の個所に亘っているため、誤植ではなかった。つまり、作者のある狙いがどうどうと示されているのだが、なぜこのトリックを使うのか、さっぱりわからないし、面白くもない。

最後は書下ろし「なほあまりある」。まあ、読者のだれもが思っていた、ある意味予定調和な終わり方。

最初の方は面白かったが、先に書いた通り、だんだん退屈になっていった。といって、このキャラクターだと長編は非常に難しい。正直言ってこのシリーズ、正体暴き以外はもう読まなくてもいいのではないかと思ってしまう。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/hyouhaku/20171117

2017-11-11

[][]石持浅海『賛美せよ、と成功は言った』(祥伝社 ノン・ノベル) 00:40 石持浅海『賛美せよ、と成功は言った』(祥伝社 ノン・ノベル)を含むブックマーク

武田小春は、十五年ぶりに再会したかつての親友・碓氷優佳とともに、予備校時代の仲良しグループが催した祝賀会に参加した。仲間の一人・湯村勝治が、ロボット開発事業名誉ある賞を受賞したことを祝うためだった。出席者は恩師の真鍋宏典を筆頭に、主賓の湯村、湯村の妻の桜子を始め教え子が九名、総勢十名で宴は和やかに進行する。そんな中、出席者の一人・神山裕樹が突如ワインボトルで真鍋を殴り殺してしまう。旧友の蛮行に皆が動揺する中、優佳は神山の行動に“ある人物”の意志を感じ取る。小春が見守る中、優佳とその人物との息詰まる心理戦が始まった……。(粗筋紹介より引用

2017年10月書き下ろし刊行


碓氷優佳シリーズ最新刊は、『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』から4年ぶり。『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』から15年後という設定であり、当時の登場人物が年齢を重ねて再登場する。ほとんどの登場人物結婚しており、それは碓氷優佳も同様。色々と面倒なので、基本的には旧姓で通しているという設定である

当時の親友である上杉小春、現姓武田小春が語り手。今までの長編では犯人が語り手だったので、珍しい。作者によると、「仕掛ける側と切り崩す側の、穏やかで息詰まる駆け引き。それを立会人目線で描くと、どのように見えるのか」とのこと。なるほど、立会人目線では二人のやり取りがこう見えるのか、と思わせるものはあった。ただ、そのためには立会人が両者の思惑を知っている必要があるため、結局小春事件真相をある程度見抜いている、という結果になっている。その分、他の人物間抜けさ、勘の悪さというのが際立ってしまい、読んでいて少々苛立ってしまった。事件の構図は中途でわかってしまものであり、登場人物たちがいつ結論に辿り着くのか、イライラしながら読む結果となっているのは、作品に没頭することができず、興醒めしてしまう。これ以上長くするとダラダラしたものとなってしまうことから仕方がないだろうが、作品の短さも併せ、物足りなさを覚えたまま読み終わってしまったのは残念な事であった。

せっかくのシリーズだけど、正直言って終わりにすべきじゃないかな、などと思ってしまったが、優佳の旦那の再登場だけは期待したい。

[]犯罪の世界を漂う 00:40 犯罪の世界を漂うを含むブックマーク

「高裁係属中の死刑事件リスト」「死刑執行判決推移」を更新

無期懲役判決リスト 2017年度」に1件追加。

求刑無期懲役判決有期懲役 2017年度」に1件追加。

[]毎日午前様 00:40 毎日が午前様を含むブックマーク

仕事の都合で、全然更新できませんでした。権力をもったバカほど、手に負えないものはない。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/hyouhaku/20171111

2017-11-06

[][]多島斗志之『症例A』(角川文庫00:55 多島斗志之『症例A』(角川文庫)を含むブックマーク

症例A (角川文庫)

症例A (角川文庫)

精神科医の榊は美貌の十七歳の少女・亜左美を患者として持つことになった。亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフ心理をズタズタに振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢対処しようと決めた。しかし、女性臨床心理である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。一歩先も見えない暗闇の中、広瀬を通して衝撃の事実が知らされる……。正常と異常の境界とは、「治す」ということとはどういうことなのか? 七年の歳月をかけて、かつてない繊細さで描き出す、魂たちのささやき。(粗筋紹介より引用

2000年10月角川書店より単行本刊行2003年1月文庫化


多島斗志之といえば冒険小説側の作家だったが、本作は多重人格を扱った心理サスペンス。二つの話が展開され、一つは精神科医の榊による亜左美を通したストーリー、そしてもう一つは首都国立博物館に勤める江馬遥子が、平安時代につくられたとして重要文化財に指定されている青銅の狛犬を贋作と指摘した父の友人である五十嵐潤吉を探す話である

亜左美の話には前任の沢村博士自殺した謎、江馬の話には贋作なのかどうかといった謎などがあるものの、亜左美の障害ストーリーの重点に置かれており、基本的に会話と症状の解説が中心で進むものだから、地味といえば地味。もちろん素人にもわかりやすいように書かれているし、書き方自体も巧みだから惹きこまれるのは事実だが、内容が重すぎて、読むのに疲れる。そんな欠点さえ除けば、非常に優れたサスペンスである

さまざまな精神障害を描き切り、さらにどう付き合うべきか、と難題に真摯に付き合っているのは見事。最後はやや尻切れトンボになっている感もあるが、逆にこれもまた一つの物語の終わらせ方だろう、とも思う。下手なことを書いては蛇足に見えてくる。

逆に江馬の話については、正直言って不要だったと思う。これがなくても、真相に辿り着かせる方法はいくらでもあったかと思う。誠実に書こうと江馬側の話にもページ数を費やしているため、亜左美の話がややぼけてしまったのは非常に残念である

解説カウンセラーが「精神医療の現実がたんねんに調べられている」と書くぐらいだし、参考文献の数からみても、細かいところまで調べて物語を作り上げたのだろうと思う。思い入れが強すぎたのか、もう少し話を整理整頓できれば、と思ってしまう。傑作だが惜しい作品であった。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/hyouhaku/20171106

2017-11-03

[][]米澤穂信『追想五断章』(集英社文庫22:38 米澤穂信『追想五断章』(集英社文庫)を含むブックマーク

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

大学を休学し、伯父の古書店居候する菅生芳光は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの結末のない物語(リドルストーリー)」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり――。五つの物語に秘められた真実とは? 春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ。(粗筋紹介より引用

小説すばる2008年6月号〜12月掲載2009年8月集英社より単行本刊行2012年4月文庫化


休学中の青年が、女性から父が昔書いた5本のリドル・ストーリー短編を探す話。途中、そのリドル・ストーリーが挟まれ、父親過去の未解決事件の最重要容疑者であったことを知り、リドル・ストーリーを探しあてて読むうちに過去事件真相を知るという話。リドル・ストーリーが、父親別に残していた最後の一行を加えることで新しい角度に光を向けた格好になるという設定は巧い。この人はこういう作品も書けるのだと、改めて技巧派だと感じてしまった。過去事件ロス疑惑っぽい事件にしなくてもとは思ったが。

ただ、これが何とも地味。読んでいて盛り上がりがあるわけでもなく、淡々と話が進んで終わってしまうだけ。これが編集者からリクエストだったというのだから仕方がない。おそらく、作者の技巧を楽しむ作品なのだろう。それでも、山場のない文章を読ませられるのは、非常に苦痛だった。

主人公も含め、複数家族の姿を描きたかったはず。私は渋めの作品も嫌いではないのだが、この人の作品はどうも肌に合わないというか。

[]今日は文化の日 22:38 今日は文化の日を含むブックマーク

祭日? 何それ? おいしいの?

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/hyouhaku/20171103

2017-11-01

[][]笹本稜平『孤軍 越境捜査』(双葉社23:57 笹本稜平『孤軍 越境捜査』(双葉社)を含むブックマーク

孤軍 越境捜査

孤軍 越境捜査

警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第二係の鷺沼友哉は帰り道、尾行されていることに気付いた。もしかして監察か。ここ最近は部下の井上拓海と、六年前に大田区で起きた強盗殺人事件を追っていた。独り暮らしの老人が殺され、財布や預金通帳等が盗まれた事件である。しかし鷺沼らが近所から聞いたのは、数億円の箪笥預金があったらしいということ。一人娘にはアリバイがあったが、怪しいところがある。一人娘は五年前に離婚し、幼馴染みだった村田政孝と再婚していた。村田は何と、今年の春に着任した首席監察官だった。六年前の捜査本部は、不自然な形で解散されていた。三好係長の指示の元、村田の周辺を追う鷺沼たちだったが、村田妨害の手が迫ってきた。金の臭いを嗅ぎつけた神奈川県警瀬谷警察署の不良刑事、宮野裕之や元ヤクザでイタリアンレストランのオーナー・福富、井上恋人である碑文谷署の山中彩花刑事も巻き込み、鷺沼たちは事件真相を追う。警察をやめさせられるかもしれないという時間との戦いの中で。

小説推理2016年1月号〜2017年2月号連載。加筆訂正のうえ、2017年9月刊行


越境捜査」シリーズ第6作。今回は首席監察官たちとの戦い。またまた警察官僚トップグループと向き合うという展開だが、相手側が妨害するわりには鷺沼の部屋を見張らないとか、何となく間が抜けていると思わせるのは毎度のこと。どこで彼らが集まり、どこで作戦を立てているかなんて、尾行すればわかることだし、こっそり鷺沼の部屋に盗聴器ぐらい仕掛けられないものかと思ってしまう。

今回は首席監察官とその周辺たちを追うことになるのだが、過去に色々便宜を図ってもらったとはいえ、強盗殺人事件についてここまで不自然に捜査を止めさせられることができるのかも疑問。自分とばっちりが来ないよう、何らかの対策ぐらい立てそうなものだが。

このシリーズは、鷺沼たちの相手側がどうも間抜けに見えるのが欠点。もちろん相手完璧だったら、吹けば飛ぶような鷺沼たちの立場だったらあっという間にどこかへ飛ばされたり消されたりするだろうから、作者としては仕方のないことなのだろうが、それにしてももう少しうまいやり方は無いのだろうか。

まあ、鷺沼と宮野のやり取りは読んでいて楽しいし、最後に一発大逆転というのもおなじみのパターンながら読者を満足させるやり方である。今回は最後にスッキリした終わりかったので、読後の感想としては満足。不満点は多々あるが、そういうものだと思ってあきらめて読めば、楽しめるというものだ。

[]土屋和也被告の控訴審が結審 23:57 土屋和也被告の控訴審が結審を含むブックマーク

あれ、判決来年ということは、これで2017年は高裁での死刑判決ゼロが確定か。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/hyouhaku/20171101