平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-12-04

[][]フィリップ・マクドナルド『Xに対する逮捕状』(国書刊行会 世界探偵小説全集3) 22:10 フィリップ・マクドナルド『Xに対する逮捕状』(国書刊行会 世界探偵小説全集3)を含むブックマーク

シェルドン・ギャレットはふと立ち寄った喫茶店で、二人連れの女の奇妙な会話を耳にした。どこかで、何か恐るべき犯罪計画されているらしい。この雲をつかむような事件を持ち込まれたゲスリン大佐は、残されたわずかな手がかりをもとに推理と探索を積み重ね、知られざる犯罪者を一歩一歩追いつめていく。しかしゲスリンの懸命の努力を嘲笑うかのように、関係者は次々と姿を消し、あるいは殺され、やがてギャレットにも魔の手が迫った。はたしてゲスリンは事件を未然に防ぐことが出来るのか?

サスペンスにとんだ発端、中盤の論理的な展開と緊迫のクライマックスエラリー・クイーンら多くの評者が推賞した、幻の本格派マクドナルドの代表作。(粗筋紹介より引用

1938年、発表。1963年、浪花書房より翻訳発売。1994年12月、新訳発売。


幻の本格派、フィリップ・マクドナルドの代表作の一つ。マクドナルドと言えば、やはり『鑢』が本格ミステリとして面白かった。だから期待していたんだけどなあ。

二人連れの女の会話と、バス切符と買い物メモの切れ端から犯罪集団を暴き立てるまでの展開は、本格ミステリとして読んでいても実に面白く、これはと期待させたのだが、だんだんと展開がスピーディーになり、主人公であるギャレットの言動がどことなくコメディチックで、それでいてサスペンス風味が強くなり、めまぐるしい展開が待ち構えている。気が付いたら、前章まで語られていた謎はどこへ行ったんだ、と言いたくなるぐらいどんどんスピードが速くなっていき、最後事件は解決するのだが、どことなく曖昧な部分を残し……。どう考えても、続編期待のサスペンスドラマと一緒じゃないか、と言いたくなった。マクドナルドは1931年からアメリカにわたり、ハリウッドでスクリプトライターとして活動していたとのことだから、この映画のような展開は作者のお得意といったところだったのだろうか。

クイーンにどこが良かったのか、尋ねたくなってくる。まあ、本格ミステリとして読んだら、大きな期待外れであると言っておこう。

[]今年はM-1を見れなかった 22:10 今年はM-1を見れなかったを含むブックマーク

出張の移動中だったりする。銀シャリが取っていたようだが、もう実力派中堅の域だろ。もう少し若手に出てほしいところだが。

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2016-11-30

[][]A.E.W. メイスン『薔薇荘にて』(国書刊行会 世界探偵小説全集1) 23:09 A.E.W. メイスン『薔薇荘にて』(国書刊行会 世界探偵小説全集1)を含むブックマーク

薔薇荘にて 世界探偵小説全集 1

薔薇荘にて 世界探偵小説全集 1

南フランスの避暑地エクス・レ・バンで、宝石の収集家として知られる<薔薇荘>の富裕な女主人が惨殺された。室内は荒らされ、同居人若い女性が姿を消していた。事件の状況は一見明白に見えた。しかし、少女恋人の求めに応じて立ち上がったパリ警視庁の名探偵アノーの活躍によって、捜査は意外な展開を見せ始める。少女の秘められた過去、降霊会の実験、消えた自動車足跡の謎。事件の夜、一体何が<薔薇荘>に起こったのか? 素晴らしいプロット人物造型の妙、古き良き時代のロマン香り漂うメイスンの古典的名作、待望の完訳。(粗筋紹介より引用

1910年発表。1995年5月、新訳刊行


メイスンと言えば『矢の家』。というか、それしか読めなかった。戦前にはいくつか邦訳されていたが、そのうちの一つ、アノー探偵もので『薔薇の別荘』という作品1924年抄訳で連載され、1925年出版されていた。本作はその幻の作品の完全版。クラシックミステリファンにはたまらないだろう。本作は、アノー探偵の初登場作品とのこと。

このアノー探偵というのが実に嫌味な男で、みんなが焦っているのに優雅に食事を楽しみ、自分が知らないことを突っ込まれるとむきになって否定する、自分の知っていることは解決まで隠す、とまあ、名探偵ありがちなタイプ。少しいらいらしながら読んでいたが、展開はめまぐるしく変わり、いつしか失踪していた女性悲劇のヒロインであることが分かるなど、どちらかと言えば謎解きではなく、警察小説の追跡ものといった感がある。

それにしても中盤過ぎで犯人が捕まるし、ここからどんでん返しがあるのかと思ったら、後半から事件再現ドラマが始まってしまう。ガボリオとかドイルなどが長編で書いていたやり方。うーん、ここで時を戻されると、せっかくの盛り上がりが萎んでしまったなあ、というのが本当のところ。こういうやり方が受ける作品もあるだろうけれど、基本的には好きになれない。とはいえ、戦前抄訳はここをバッサリ落としていたとのことだから、そりゃ評価されないのも仕方がない。

読みやすいのは事実なので、古き良き探偵小説というよりも、当時の大衆小説だなあ、と思って読めばそれなりに楽しめる。少なくとも、読んでいて退屈はしない。そんな作品である

それにしても、『矢の家』って新訳出ているんですかね。とても読みにくかったことしか覚えていないから、新訳で出してほしいところ。

[]犯罪の世界を漂う 23:09 犯罪の世界を漂うを含むブックマーク

無期懲役判決リスト 2016年度」に1件追加。

矢野死刑囚供述通り2人目の遺体が発見された。何故今更告白したかについて、死刑執行逃れと言う意見も多い。確かにそれもあると思うけれど、執行逃れだったら1件ずつ告白していたんじゃないかと思う。今回の場合、1件の殺人でも起訴から最高裁の判決確定まで3年以上はかかるだろう。それだったら、順に告白した方がより長く生き延びることができるんじゃないかと思う。とはいえ、「そんなタマじゃない」という話の記事もあったし、そもそもこの2人で終わるとも限らない。

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2016-11-28

[][]叶紙器『伽羅の橋』(光文社22:42 叶紙器『伽羅の橋』(光文社)を含むブックマーク

伽羅の橋

伽羅の橋

介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという――穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?

典座調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩……様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の街を未曽有の災害阪神大震災が襲う――!!

時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味あふれる本格ミステリー!(帯より引用

2009年、第2回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。応募時筆名、糸冬了。加筆改稿の上、2010年3月単行本発売。


ばらのまち福山ミステリー文学新人賞は、広島県福山主催ミステリ新人賞。同市出身島田荘司が一人で選んでいるという時点で、作品に期待が持てないのだが、偶々手に入ったので読んでみた。予想通り、島田荘司しか選ばないような中身だった。

戦時下の冤罪を解き晴らそうと若い女性事件関係者を駆けずり回るのだが、そもそも50年以上も昔の事件関係者が存命で、さらに言えば当時の状況をくわしく話してくれるという時点であまりにも嘘くさく、その展開がただ会話が続くだけという、話の盛り上がりも何もないので、読んでいて退屈で眠くなってくる。選評で島田荘司が「前半は退屈し、読みながら何度も舟をこぐありさまだった」と書くぐらいだからわかるわあ、などと思っていたら、修正して問題点クリアしたと最後に書いてあったからびっくり。修正してこの退屈さなら、修正前はどんなにひどかったのだろうと目の前が真っ暗になった。前半は半分に整理出来るだろう。それに介護施設職員って、こんなに時間の余裕があるのか?

阪神大震災が起きて、過去事件シンクロさせる手法はなかなかだと思ったが、やはり筆が追い付いていない。この緊急事態に呑気に事件の謎を解き明かしているのだが、この会話中にばあちゃん、着いちゃうんじゃないか。というかこのばあちゃん、どれだけスーパーウーマンなんだよ、と言いたくなる。最初の認知症という設定と、かけ離れすぎ。一応症状が改善されたとは書かれているが、あまりにも違いすぎて首をひねるばかり。それに謎の解き明かしだが、クランクとかあったらどうしていたのだろうと首をひねりたくなる。

社会派的なテーマに、奇想天外トリックが絡みつくという、島田荘司が好きそうなテーマ作品だが、まあ突っ込みどころ満載。出版するにはまだ早い、と言いたくなる作品だった。

[]体調不良につき 22:42 体調不良につきを含むブックマーク

レスは後日。

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2016-11-24

[][]東野圭吾『聖女の救済』(文藝春秋23:58 東野圭吾『聖女の救済』(文藝春秋)を含むブックマーク

聖女の救済

聖女の救済

IT関連会社の社長である真柴義孝は、鍵のかかった自宅で亜ヒ酸の入ったコーヒーを飲んで死亡した。自殺する原因はないが、どこに亜ヒ酸が入っていたのかが不明。義孝は、パッチワーク作家として有名な妻の三田綾音に、1年以内に子供ができなかったから、と離婚を継げていた。そして、自らの子供を妊娠した、綾音の弟子の若山宏美と結婚するつもりだった。動機は十分だが、綾音に魅かれた草薙刑事は犯人説を否定。さらに綾音には実家のある札幌にいた鉄壁アリバイがあった。そして、毒物の入手先も混入方法不明だった。内海薫刑事は些細な言動から綾音が犯人ではないかと疑り、草薙対立する。内海相談した“ガリレオ”こと物理学者・湯川が出した答えは「虚数解」。これは完全犯罪なのか。

ガリレオシリーズ第5作、第2長編。『オール讀物2006年11月号〜2008年4月号連載。2008年10月発売。


今頃手に取るかと言われそうだが、興味が湧いたので家にあったのを読んでみた。

事件そのものはシンプル犯人はわかっており、どうやって毒を飲ますことが出来たのか、という一点に事件の謎はかかっている。ちょっとした引っ掛かりがあったとはいえ、まさに「女の勘」で綾音を追いかける内海刑事。一方綾音に魅かれてしまい、綾音の無実を証明するかのように「男の意地」で被害者の周辺を追いかける草薙刑事。女と男の闘いみたいな状況になっているが、事件そのものも女と男の考え方の違いから発生している。はっきり言って男の我儘というような事件ではあるが、それにしても綾音の心情が悲しすぎる。「毒の混入」だけだったら予想は付くかもしれないが、現場の状況がそれを否定している。その「トリック」には、泣けてくるといってよい。

なんだかんだ言っても、やはり東野圭吾は読ませるだけのミステリを書いてくれる。さすがとしか言いようがない。

[]犯罪の世界を漂う 23:58 犯罪の世界を漂うを含むブックマーク

「高裁係属中の死刑事件リスト」「死刑執行判決推移」を更新

状況証拠しかなかったが、さすがにこれだけ条件がそろうとアウトだろうとは思っていた。

最近トラブルで忙しく、眠いのでこれだけ。

神崎和幸神崎和幸 2016/11/25 22:15 こんばんは。

自分も『聖女の救済』読みましたよ。
読みやすいしストーリーも秀作だと思いました。
そのうえ犯人の執念深いトリックを知った時は衝撃を受けましたよ。
確かに綾音の心情が悲しすぎますよね。

insectinsect 2016/11/30 06:20 八木茂死刑囚と同様、小川和弘死刑囚の確定後の状況が報道されました。
http://mainichi.jp/articles/20161129/k00/00e/040/233000c

hyouhakuhyouhaku 2016/11/30 23:25 >神崎様
初めてでしょうか。コメント、ありがとうございました。

hyouhakuhyouhaku 2016/11/30 23:28 >insect様
小川死刑囚の再審なんて、どういうルートで知ったのかが気になります。大体のパターンだと死刑囚か弁護士側からの報道になるのでしょうが、それだったら再審請求を提出した時点で記事になっていてもおかしくはない。記者の方が探り出したにしても、地裁ならまだしも、高裁の段階で判明と言うのにも違和感があります。まあ、他の死刑囚についても記事にしてほしいんですけれどね。

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2016-11-20

[][]ジェフリー・ディーヴァ―『ウォッチメイカー』上下(文春文庫23:41 ジェフリー・ディーヴァ―『ウォッチメイカー』上下(文春文庫)を含むブックマーク

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー”と名乗る殺人者あらわる! 手口は残忍で、いずれの現場にもアンティーク時計が残されていた。やがて犯人が同じ時計を10個買っていることが判明、被害者候補はあと8人いる――尋問天才ダンスとともに、ライムウォッチメイカー阻止に奔走する。2007年度のミステリ各賞を総なめにしたシリーズ第7弾。(上巻粗筋紹介より引用

サックスは別の事件を抱えていた。公認会計士自殺に擬装して殺された事件には、NY市警の腐敗警官が関わっているらしい。捜査を続けるサックスの身に危険が迫る。二つの事件はどう交差しているのか!? どんでん返しに次ぐどんでん返し。あまりに緻密な犯罪計画で、読者を驚愕の淵に叩き込んだ傑作ミステリ。(下巻粗筋紹介より引用

2006年発表。リンカーンライムシリーズ第7作目。2007年10月邦訳単行本発売。2010年11月文庫化


名前だけは知っていたが、ライムシリーズを読むのは初めて。シリーズ最高傑作と言われている本書を手に取ってみたが、こんなに面白いとは思わなかった。これは他のシリーズも読んでみたくなる。

ライムが追いかけるのは、残忍な殺人者で、アンティーク時計を残す“ウォッチメイカー”。かたやサックスが追いかけるのは、偽装自殺事件から浮かび上がったNY市警の腐敗捜査。どちらも意外な展開が待ち受けており、二つが意外なところでぶつかり、さらなるどんでん返しが待ち受けている。

スピードサスペンスは一級品。登場人物は魅力的。先の読めないプロットが最高。そして全く予想もできない展開に驚愕。まさに言うことなしの傑作である。上下巻の長さが全く苦にならない。いや、むしろ読み終わって、これで終わりなのかと残念な気持ちになるぐらい。まあ、最後は筆が滑りすぎたという気がしなくもないが。

シリーズものから最初から読んだ方が書く登場人物の背景がわかっただろうが、全く知らない自分でもほぼ登場人物の背景はつかめたし、問題ないだろう。これは下手に感想を書くよりも、いいから手に取れ、絶対後悔しない、と言った方がいい作品

[]『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う 23:41 『お笑いスター誕生!!』の世界を漂うを含むブックマーク

「お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。

グランプリ受賞後のとんねるずは、一時期迷走していたような気がする。

insectinsect 2016/11/24 22:07 台東区会社社長拉致事件、ようやく立件まで漕ぎ着けられましたか。

(1)半田2女性放火殺人
(2)相模原墓地遺棄の長男事件
(3)新発田残り2女性変死
(4)工藤会関与?の未解決事件

↑上の4つは年を越すことになりそうですが、注目しています。

hyouhakuhyouhaku 2016/11/25 00:03 ダブりは削除しました
一瞬、何の事件のことかわかりませんでしたが、介護サービスの社長が路上で拉致された事件ですね。逮捕された人物が本当に犯人だったら、あまりにも理不尽な理由のように見えます。
ところで、(3)は立件できるでしょうか。なかなか難しいようですが。

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