2007-06-11
■[本][感想]石持浅海『人柱はミイラと出会う』(新潮社) 
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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交換留学生としてポートランドから札幌に来たリリー・メイスは、ステイ先の一木慶子と一緒に歩いているとき、不思議な風習を目にした。建築物を造る際、安全を祈念して人間を生きたまま閉じこめるというのだ。彼ら「人柱」は、工事が終わるまで中でじっと過ごし、終われば出てきてまた別の場所にこもる。リリーは、慶子の従兄である東郷直海と知り合った。東郷もまた人柱職人だった。3人は、郊外にあるマンションの人柱帰還式を見学した。しかし8ヶ月ぶりに開かれた個室に人柱はいなかった。代わりにあったのは、寝袋に入ったミイラだった。しかもナイフで腹を刺されていた。個室は外からしか開くことができない。中でなにがあったのか。「人柱はミイラと出会う」。(一部帯より引用)
北海道議会の中継でリリーは不思議な人物を見た。議員の後ろに経っている黒いスーツ、黒いネクタイ、黒いベールの男性。アシスタントとプロンプターを合わせたようなその人物、「
慶子とリリーが、慶子の母である好江を連れて東郷のところへ車を返す途中、不思議な光景を目にした。スポーツカーの中で、若い女性が黒い歯の上に筆で黒い液体を塗っているのだ。既婚女性の印である「お歯黒」を塗り直す行為は珍しくないが、その女性は慶子の研究室にいる大学院生で、しかも独身なのだ。さらに運転席にいるのは、好江が通っている歯医者の若い医師だった。「お歯黒は独身に似合わない」。
厄年休暇に入った慶子の研究室の助教授の溝呂木と、助手の綱島が、大学で続けて怪我をした。仕事熱心とはいえ、厄年休暇を疎かにした自業自得だと思っていた東郷と慶子であったが、大学に来た理由を知った東郷の表情が変わった。「厄年は怪我に注意」。
慶子とリリーが買い物途中、路上で慶子のバッグがひったくりに盗まれた。しかし、ひったくりの男は、たまたまパトロールに出ていた鷹匠の警察鷹によって捕まえられた。その夜、大麻の密売組織の強制捜査で、バイクで逃げ出そうとしたリーダーを、警察鷹が襲って殺した。鷹匠が警察に協力するようになって40年、鷹による死者が出たのは初めてのことだった。「鷹は大空に舞う」。
好江が轢き逃げ事故を目撃した夜、夕飯のみそ汁の具にミョウガが入っていた。嫌なことを早く忘れることができるようにと、ミョウガを食べる習慣が日本にはある。後日、人柱から帰ってきた東郷を囲んでの団欒中、一木家に心当たりのない高知の農園からダンボールが宅配で送られてきた。道議会議員である慶子の父である三郎は、時々嫌がらせを受けることがある。東郷が慎重に開けたそのダンボールには、ミョウガがいっぱい詰まっていた。「ミョウガは心に効くクスリ」。
北海道知事に当選した一木三郎と好江は、住むことになる知事公邸に行った。そこで見つけたのは、ベッドのマットレスの下に、一万円札が大量に敷き詰められていた。「参勤交代は知事の務め」。
留学生のリリーが日本で出会う奇怪な風習。その風習にまつわる不思議な事件。真相を解くのは、人柱職人の東郷。「小説新潮」に2004年〜2007年に年2本ずつ掲載された連作短編集。
「独特な題材の選び方と、それに密接に結びついた論理性の高い作風」の作者の新作は、パラレルワールドの日本を舞台にした連作短編集。昔の風習がそのまま現代まで残っていたら、という設定の日本というのが面白い。日本人には馴染みのある風習を現代に残すことで、特異な設定を読者にわかりやすく説明することができる、というのはありそうでなかなかなかった設定であり、面白い。西澤保彦のように特異な設定を無理矢理創りあげるよりも、作者と読者が同じ世界観を容易に共有することができる。着想は素晴らしいが、問題はそれに見合うだけの謎と解決を提示することができるか。短編ということもあってか、論理性の高い推理、というよりは連想ゲームのような推理に近いものが多く、探偵役自身の東郷すら「当てずっぽう」と言ってしまうようなものもあるが、舞台が特異な分救われている。最初の3作品は、設定と謎がうまく絡み合い、推理の展開も含めて面白かった。
ただ、その高いレベルを維持するのが難しいのか、徐々に質が落ちていったのが残念。最後の2作は、無理矢理に謎と結末を創りあげた感がある。結局作者は、自分の創りあげた設定に縛られていくんだな、という想いが広がる。技巧派は、こうして自分の首を徐々に絞めていく。佐野洋が、シリーズキャラクターを作らなかったという気持ちがよく分かる。特に短編集では、高いレベルを一定に保つことが難しい。
■[更新]犯罪の世界を漂う 
浜川邦彦被告の最終弁論が7日にあったはずなのだが、どこにも記事がない。そういえば4月24日には薛松被告の最終弁論があったはずなのだが、こちらもどこにも記事がなかった。そろそろ判決期日が決まってもいいはずなのだが、それも記事がない。有名ではない(こういう書き方、嫌いだけど他に書きようがない)事件は、一・二審死刑判決の最終弁論程度では記事にならない、と言うことかな。
那須野亮被告、村山美智子被告への無期懲役求刑の記事も見つからず。かたや殺人+強姦致死、かたやホームヘルパーによる強盗殺人と、逮捕当時はそれなりに騒がれた事件だったと思ったのだが。
気のせいか、最近は二審以降の無期懲役判決記事がほとんど見つからない。無期懲役求刑の記事なども、地方版で終わってしまうことが多い。記事としての価値がない、ということですか、これは。
王震被告の最高裁判決記事を発見。うーむ、「上告せず確定」マークを付けていたのだったが、見事に失敗。朝日新聞で王被告の記事(名前は出ていなかったが)を見たときは、すでに確定していたと思ったのだったが、それはただの思いこみだった。やはり確定記事を見るまでは、簡単に決定できない、ということか。
■[更新]「推理クイズ」の世界を漂う 
「このクイズの元ネタを探せ」に推理クイズを1問追加。判明した元ネタを追記。
中原、死刑確定です。
それにしても、最近上告棄却が早いですね。私としては、無罪主張の場合、もう少し時間をかけてもいいのでは、と思えますが。それにしても、弁論も全く報道されませんでしたね。ヤクザであり、全く騒がれなかった事件だからでしょうか。
無罪主張と言っても本事件の場合は「言った」「言わない」の世界なので、時間をかけてもどうにもならない気もしますね。一度認定されれば、覆すのは難しいと思います。それだけで死刑になる、と言うのも恐ろしい気もしますが……。ただ本事件の場合は、死刑になっても仕方がない事件だと思います。認定された事実が本当であれば。
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