平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

加藤元浩『Q.E.D. iff−証明終了−』第4巻(講談社 マガジンコミックス)

伊豆諸島の南にある小さな島で、リゾート計画を推進している会社の測量士が殺害された。水利権を持つ島の巫女が死体の場所を言い当てたため、警察は疑惑の目を向ける。計画推進派と反対派が争う中、推進派の人間が不思議な状況下で次々と殺害される。不思議な力を持つという巫女が犯人なのか。「碧の巫女」。巫女が不思議な力を持つという言い伝えのある小さな島での連続不可能殺人事件。トリック自体は大したことは無いが、島を統治する方法が面白い。非情な部分を持つ燈馬だからこそ、わかった「原理」だろう。
HPを落とされたくなければ10万ドルを支払えという脅迫状を出し、世界的なオンラインカジノのサーバーを襲うハッカーからの攻撃を撃退したのが、ネットセキュリティー会社の代表、マット・ブラウン。ところが撃退後、車を爆破された。そして届く脅迫状。友人である燈馬の許へ避難するマット。可菜からの懇願を受け、燈馬はハッカーを捕まえるためのわなを仕掛ける。「H.N.」。犯人に罠を仕掛けるものだが、真犯人への推理はかなり飛躍したもの。意外性はあったが。それにしても、これだけ酷使され海外にまで足を運ばされる可菜って、学校の出席日数は大丈夫なのだろうか(苦笑)。それにしても、世界中の言葉が喋れるな、これでは。
2016年10月に、講談社ノベルスから初の書き下ろし小説が出るらしいが、楽しみだ。それも、全く新しい主人公で。

加藤元浩『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』第32巻(講談社 マガジンコミックス)

イラン北東部でネアンデルタール人の化石が発掘された。契約では金を出したイギリスの研究者のものだが、イランの政府関係者は外国人による重要な遺物の持出しは禁止するという。最低のために森羅が呼ばれたが、頭蓋骨が保管されたはずの研究室から消失した。「灯火」。金庫からの消失トリックは小さいものだが、考古学に関する考え方が複雑に絡み合って興味深い。
クリスマスプレゼントでトランシーバを買ってもらった男の子。早速弟と公園で遊んでいたが、混信し、違法取引グループの一人の男と話し合うようになる。そんなある日、男が暴力をうけ、男の子は偶然知り合った森羅に助けを求める。「混信」。これもトリックとしては軽いが、内容は何ともいえず哀しいもの。友達は選ばないとだめだね、本当に。
新宿の洋品店のオートロックがかかった事務室で、店長が殺害された。開店前で、店の中にいたのは暗証番号を知るバイト店員の3名のみ。店長がいつもつけていた、量産品の邪視除けの首飾りが無くなっていた。「邪視除け」。証言から犯人を突き止める推理物。矛盾した発言から犯人がわかるというのは少々安易。
マウが大金持ちから依頼され、一緒に魔道書を探すことになった森羅と立樹。ところがマウの依頼人は実はマフィアで、内部抗争に巻き込まれるのを嫌がった森羅は早々に離脱。森羅の知り合いの本屋・トマスと一緒に手がかりに記されていた人物の廃城へ魔道書を探しに来たマウと立樹だったが。「魔道の書」。本巻ではベスト。ちょっと軽めだが、魔道書が隠されていた場所は面白い。

犯罪の世界を漂う

「求刑無期懲役、判決有期懲役 2016年度」に1件追加。
山野輝之被告への一審無罪判決破棄にはちょっと驚き。殺人罪に対する裁判員裁判での無罪判決破棄は初めてらしい。心証だけなら明らかにクロだったので、一審無罪判決自体にも驚いたものだったが。被告側は上告するらしいが、差し戻しが確定すると、裁判員は難しい判断を迫られるだろうなあ。
そういえば、似たような経緯なれど二審でも無罪判決だった羽鳥浩一被告には検察側が上告していた。こっちの方も弁護側からの反発や議論がありそうな話なのだが、全くと言っていいほど騒がれなかったな。