平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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高田侑『裂けた瞳』(幻冬舎)

裂けた瞳

裂けた瞳

神野亮司は幼い頃からある発作に悩まされていた。それは、身近にいる人の感情が爆発した時、その人間の見た光景が脳裏に浮かんでくるのだ。仕事上のミスをフォローしたのがきっかけで長谷川瞳と不倫関係になってしまった亮司は、ある日、得意先を訪れる途中で発作に襲われる。亮司が知覚したのはプレスマシンに挟まれて圧死する男が絶命する瞬間に見た光景だった。最後に見えた若い男の正体と現場近くに残されたカラスの死体の意味するものが結びついた時、亮司は身の危険を感じはじめる。すべては長谷川瞳との関係を清算することで終わるはずだったのだが……。(帯より引用)

2003年、第4回ホラーサスペンス大賞受賞。2004年1月、単行本刊行。



今一つ中途半端な感があったホラーサスペンス大賞であったが、本作は特に中途半端というか何というか。小さいころから意に沿わぬ能力のせいで虐められるというシーンが苦手なせいもあり、冒頭からページをめくる手がなかなか進まなかった。変に描写力がある分、読んでいてどんどん気が重くなっていった。特に長谷川瞳という存在が、とにかく重い。こういう女性と不倫をしてしまうと、大変だ。

ただ、途中から話が迷走し出す。結局作者が何をやりたかったのかわからなくなってくる。ホラーなのか、サスペンスなのか、超能力SFなのか、不倫メロドラマなのか、それとも犯人探しなのか。主となるテーマが絞り切れていないため、話が迷走しているのだ。そして最後は家族という存在がテーマになってしまうし、いやはや、ここまで来るともう何が何だか。もうちょっと内容を整理して、主眼を絞るべきだった。

テーマが重いだけならまだしも、全ての点について重い作品は読みづらい。作者がやりたいことを何もかも突っ込んでしまった、処女作にありがちの失敗作という気がする。認められるのは筆力だけだった。