平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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風森章羽『渦巻く回廊の鎮魂曲(レクイエム) 霊媒探偵アーネスト』(講談社ノベルス)

霊媒師・アーネストのもとに持ち込まれたのは、十六年前、画家・藤村透基の屋敷から消えた少女の捜索依頼。屋敷には渦巻き状の奇妙な回廊があり、最深部には「持ち主の運命を狂わせる」と噂される人形(ビスクドール)が飾られている。依頼を引き受けた友人のことが気にかかって、若き喫茶店店主の佐貴も藤村邸に同行することに。年に一度開かれる紫陽花観賞会に招かれた二人の前で、新たな殺人事件が発生してしまい――。(粗筋紹介より引用)

2014年、第49回メフィスト賞受賞。同年5月、講談社ノベルスより刊行。



ラノベファンにも訴えようとしている表紙。死んだ被害者に犯人の名前でも言わせるつもりなのかと言いたい、霊媒探偵というフレーズ。主人公は英国出身の21歳で、由緒正しき霊媒師一族の跡取り息子。一緒に行動するのは若き喫茶店店主ということで、売れたら二人の同人誌が作れますよと言いたくなるような設定。しかも、第二作の発売がすでに決まっている。うーん、作者が自分で考えたというよりも、編集者が売れるように売れるようにと色を付けていったような内容だ。もっとも、大して面白いとも思わなかったが。

霊媒探偵というわりに、それらしいところはほとんど見せず。なのに誰も疑いの目を向けないのはなぜだ。最後に被害者に語らせるのなら、最初の時点で語らせろよと言いたい。「渦巻き状の奇妙な回廊」という時点で、何かありますよと言っているような仕掛け。勾配はどうなっているのだと聞きたいぐらい、無茶な設定。もうここまで来ると、茶番ですかと作者に聞きたくなる。しかも主人公の過去に関わりありそうな人物が出てくるという、わざとらしい引き。

いや、読む価値ないです、これは。売れそうな要素をあちらこちらから引っ張ってきて、結局破綻しているという状況で、何を楽しめというのだろう。