漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

そうするしかない

■やっぱり怒髪天のことを書いておきたい。

■武道館のステージに吊るされた紅白の緞帳が上がり、ワーッと歓声があがった瞬間、妙な既視感にとらわれた。しかも客席じゃなく、ステージから見た景色に。もちろん俺は客席にいるんだけど、あの瞬間、視点はバンドメンバーのものになっていた。

■宿に着いてから分かった。映画「アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~ [DVD]」。そのラストシーンと怒髪天のステージが重なったんだ。そうか。怒髪天アンヴィルだったんだな。長く活動を続け、敬愛するミュージシャンも多くいて、なのに売れてない。でもバンドはやめない。自分たちの音楽を発信し続けている。

怒髪天には応援歌が多い。俺にはちょっと気恥ずかしすぎて素直に聴けなかった(女の人はどうなんだろう。男女差があるような気もする)。あの歌は不遇な時代に増子が自分を奮い立たせるためにつくった歌でもあるんだろう。ステージで増子は泣いていた。「涙は見せない」と歌いながら泣いていた。自分の歌に背中を押されて歌っていた。それを見てたら、照れた気持ちはどこかに消えて、拳を振り上げ一緒に歌っていた。

「雪割り桜」なんて、武道館に行く前の俺なら好きだなんて言えないよきっと。こんなにストレートじゃ照れくさいもん。

■彼らはちょっとメジャーになって、自分の背中を押す機会は減った。その間に震災だ原発事故だと世の中は大変なことになって、だからか最近の怒髪天は周りを励ます歌が多い。

「♪俺がやらなきゃ誰がやる」。いや、これも自分鼓舞かな。でも心優しいバンドだ。

アンヴィル怒髪天も、「あきらめなければ夢はいつか叶う」とか「努力は必ず報われる」とか、そんなきれいな話ではないんだろう。「どうしてもそうなっちゃう」「そうとしか生きられない」、そんな自分でもどうしようもないものに突き動かされてるように思う。そりゃ売れた方がいいんだろうけど、究極、売れても売れなくてもどっちでも構わないんじゃないかな。きっと、そうするしかないんだよ。

■俺はドライアイで、空気が乾燥してる上、雪の照り返しでまぶしいこの時期はいつもツラいんだけど、武道館以降、怒髪天のことを考えるだけで涙がにじむので、目の調子がすこぶるいいです。