結城浩のはてなブログ

ふと思いついたことをパタパタと書いてます。

人狼

人狼は誰か、次は誰を襲うのか――これが人狼BBS全体を支配するサスペンスです。投票による処刑はみなの議論によって左右されますが、人狼の動きは予想できません。夜が明けると(更新時刻が過ぎると)誰かが一人、人狼のえじきとなるのです。
人狼同士は表面に出ない「ささやき」という経路で通信を行うことができます。ゲーム進行中は他の人には見えませんが、過去ログでは人狼のささやきは赤い背景になります。そのためささやきのことは赤ログと呼ばれることもあります。
人狼が通信し合えることは、ちょっと考えると人狼に有利のように思えます。しかし、実はそんなことはありません。他の参加者は基本的に個人で考え個人で行動するのに対し、人狼は通信しながら行動します。そのため、人狼たちの行動が妙に協調しているように感じられたりする場合があるのです。このゲームのどの要素も、人狼・村人のどちらか一方に有利とはいえないようです。
人狼たちは孤独です。通信はできるけれど、行動を協調できないからです。
人狼の制約は厳しいです。人狼は占い師に見つけ出されます。ですから占い師を食べたい。でも占い師は狩人に守られるかもしれません。だから狩人を食べたい。でも狩人はあまり目立たないようにする。そこで狩人の意向を探りたい。でもあまり極端に動くと、自分が人狼であることを暴露してしまう…。そのような制約の中で人狼は動くことになります。
人狼は占い師が出てきたらすぐ狙えるか?いいえ。その占い師は狂人(人狼の味方をする人間)かもしれないからです。終盤では狂人の存在が人狼に益しますので、やみくもに占い師を食べるわけにはいきません。

占い師

人狼の最大の敵、それが占い師です。占い師だけが生きている人狼を見つけ出すことができるからです。
占い師は怪しい人物を占って人狼・人間の判定を行います。人間判定だからといって村人側とは限りません。狂人も人間だからです。占い師は、人狼を見つけたら、そのことを公にしてみんなに投票してもらおうとします。しかしそうすると、自分が占い師であることをCOしなければなりません。COしたとたん、人狼に目をつけられてしまうことになります。でも占い師COしなければ、自分が見つけた人狼に投票してほしいという主張は説得力を持ちません。さらに、自分が本物の占い師であることを狩人に伝え、守ってもらわなければなりません。守ってもらうためには危険に身をさらす必要がある。なかなか、つらいところです。
実は、占い師にとって最もつらいのは、人狼側に先に占い師CO(つまり偽のCO)をされてしまうことです。1つの村で、占い師は1人しか存在しませんので、2人の占い師がCOしたら絶対に片方は偽者になります。本物の占い師がいくら自分の無実を主張しても、他の村人に信じてもらえる保証はありません。かえって、多くの弁解が疑惑を生むことも多いのです。
人狼は人間が誰であり、人狼が誰であるかを前もって知っています。つまり、人狼は占い師を完全にシミュレートできることになります。では、占い師の真偽判定は不可能なのでしょうか。そこで重要になるのが霊能者の存在です。

霊能者

占い師が生きている参加者の人狼/人間を判定するのに対し、霊能者は突然死・処刑にあって死亡した参加者の人狼/人間判定を行います。占い師が人狼判定していた参加者が、霊能者によって死後人間判定された場合、占い師と霊能者のどちらかが偽者であることになります。人狼にとって占い師が直接的な脅威なのに対し、霊能者は間接的な脅威――つまり占い師を騙った場合の脅威――といえるでしょう。
もちろん、占い師のときと同様に、偽者の霊能者がCOしてくる場合もあります。人狼は霊能者も完全にシミュレートできるので、判別は極めて難しいといえるでしょう。

共有者

共有者は、必ずペアになり、互いにパートナーとなる共有者の名前を知ります。しかし人狼のように通信ができるわけではありません。共有者の存在意義は、パートナーが「確実に村人側の人間である」といえる点にあります。隠れたままで、共有者同士が村人としての主張をすることもできますし、「私は共有者です」と表に出て、議論をリードすることもできるでしょう。
共有者も偽者に注意する必要があります。ただし、共有者が二人とも生きている場合に騙りを行うのは難しいものです。人狼人狼で共有者を騙ると、失敗したときに二匹が危険にさらされます。人狼・狂人で共有者を騙るほうがよいですが、人狼と狂人は通信できませんので、これもまた困難です。
共有者は、両方とも隠れたまま(ステルス)、一人だけCO、二人ともCOという戦術を選ぶことができます。

狩人

村人側の最強のディフェンス、それが狩人です。狩人が守っている参加者は、たとえ人狼が襲っても死ぬことはありません。狩人は、目立たないけれど重要な存在と言えるでしょう。
狩人の仕事は、人狼が次に襲う参加者を推理し、それを守ることです。序盤で占い師を守るのは重要ですが、占い師がCOしていない場合もありますし、もしかしたらその占い師は偽者なのかもしれません(やれやれ)。
表には出てこないけれど、人狼が狙った相手を確実に守ってくれる狩人。その狩人の存在は、人狼の襲撃失敗によって公になります(狩人が誰かは公になりません)。人狼の襲撃失敗は、村人にとってどれほど大きな励ましでしょう。村人が誰しも「狩人GJ!(Good Jobの意)」と叫び、人狼が舌打ちをする瞬間です。
狩人は綿密に推理を行い、人狼次の一手を確実に読まなければなりません。そのためには、人狼の視点に立って推理しなければなりませんが、それが裏目にでて、「こいつは人狼ではないか?」と誤解される可能性もあります。

狂人

このゲームのトリックスター、それが狂人です。狂人は人間でありながら、人狼側に立ち、人狼側の勝利を目指して混乱を引き起こします。占い師の占いでも、霊能者の霊視でも、狂人は「人間」と判定されます。つまり、狂人が存在するために、占い師や霊能者の判定はグレー味を帯びざるを得ないことになります。たとえ「人間」と判定されても「村人側」とはいえないからです。
新米の狂人は、議論を乱そうとします。妙な推理を開示して他の人を混乱させようとします。しかし、あからさまにそんなことをすれば狂人疑いがかかるのは必至。最終局面では投票の対象となるでしょう。一方、熟練した狂人はあくまで冷静です。議論の流れを見極め、自分が協力すべき人狼を的確に見つけ出し、さらにさりげなく自分が狂人であることを人狼側に伝えます。占い師を装えばあくまでも占い師のように、霊能者を装えばあくまでも霊能者のように振る舞うのが、最強の狂人です。
狂人は孤独です。人狼たちは互いに通信することができます。仲間の処刑を嘆き、作戦を練ることができます。しかし、狂人は人狼と語り合うことはできません。時には人狼側から喰われてしまうことすらあります。そんな中でも冷静に事態を見極め、人狼側に尽くすのが狂人の役目です。

村人

ゲームにはじめて参加するユーザは、自分の「希望」を出すことはできず、村人希望でスタートします(しかし村人になるとは限りません)。村人は占い師や霊能者のように判定はできず、狩人のように他の人を守ることもできません。また共有者のように、みなから信頼されて議論をリードすることも難しいでしょう。しかし、村人は想像以上に重要です。あるときには存在自体が狩人のステルスを助け、またあるときには論理によって人狼のうっかりミスを見抜きます。ときには自ら人狼に喰われることで、村人側に重要な情報を与えることすらあるのです。
人狼に喰われることだけが、人間であることの直接的な証明です。何だか、ちょっともの悲しいですね。