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開かれた私立図書館の事業可能性調査 RSSフィード

2010-05-10

ロンドン図書館(ロンドン市)

今回は、蔵書約100万冊を誇り、世界最大の私立図書館の1つと言われているロンドン図書館を紹介します。ディケンズコナン・ドイルダーウィンバーナード・ショーチャーチルなど、そうそうたる人物が会員として名を連ねた由緒正しき図書館です。会員制を採用していますが、非会員の方も利用料(1日10ポンド)を支払えば入館できるそうです。

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図書館の設立は1841年で、1845年から現在地で活動をしているそうです。図書館内部はロンドン中心部のピカデリーサーカスから徒歩数分の場所にあるとは思えないほど、静寂と荘厳な雰囲気に包まれています。歴史の重みを体感できるこの雰囲気を味わうことを目的に会員になる人たちも多数いるとのことでした。

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もちろん、蔵書も人文系を中心に充実しています。古くは16世紀の書物を収蔵しており、また、ほとんどの蔵書が貸し出し可能ということでした。政府系の機関も、ロンドン図書館を資料施設代わりに利用するために会員となっているそうです。私立図書館が様々な知的活動に貢献していることを実感できました。

もちろん、課題がないわけではありません。会員の高齢化と減少が続き、近年は会費を値上げせざるを得なかったということでした(現在の個人年会費は395ポンドですので、おおよそ5万5,000円ぐらいです)。一方で、若年層に会員になってもらおうと、若者向けの会費システムを導入するなど、経営体としての努力も行っています。

様々な苦労を経験しながらも、偉人たちが思いを巡らせたこのスペースが、新たな知的活動の創造の場として現在も活用されていること、そして、それが会員一人ひとりの協力により実現されているところに、私立図書館の原点を見たような気がしました。

2010-05-07

アイデアストア(ロンドン市タワーハムレッツ区)

アイデアストアは、ロンドン市内の東側にあるタワーハムレッツ区のホワイトチャペル駅前に立地する市立図書館です。

かつて、タワーハムレッツ区の市立図書館は、蔵書が少ない、IT対応が遅れている、地理的に不便といった問題があり、利用者は一部の市民に限られていました。そこで、利用者だけでなく、非利用者に対してもインタビュー調査を行い、新しい図書館のあり方を検討しました。その考えが体現した施設がアイデアストアです。1998年に同施設が建設されると、これまで利用しなかった住民も積極的に利用するようになり、利用者数はなんと4倍にも膨れ上がりました!なお、同地区には7つの図書館がありますが、このうち4施設は、既にアイデアストアのコンセプトに基づく施設となっており、残りの3施設についても2〜3年以内に、同じコンセプトの施設に建替える予定とのことです。

それでは、アイデアストアは、従来の図書館とどこが違うのでしょうか。

1つ目の特徴は、図書と生涯学習の統合です。アイデアストアでは、語学講座ヨガ教室など、800の生涯学習講座が設けられていますが、ラーニングルームの近くには、講義に関係する教材や参考図書が配架されています。それゆえ、例えば、語学講座の場合であれば、講義の終了時に講師が参考図書を紹介し、利用者は推薦された本を借りて自宅で読むといった形で図書が活用されています。

2つ目の特徴は、快適な空間の提供です。David Adjayeという著名な建築家(当日、偶然、施設でお会いしました!)によって設計されたこの施設は、利用者にモダンで快適な空間を提供しています。最上階のカフェでは、多くの人達が談笑していました。また、施設利用に関する特別な利用制限もなく、個々人のモラルに一任されている点も、自由度を高め、人々が主体的に図書館を利用するモチベーションとなっているようです。

図書館が新たな利用者を獲得するためには、図書館が有する蔵書を最大限活用できる「仕組み」を考えるのが重要なのではないか。アイデアストアの視察を通じて、このようなことを強く感じました。

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2010-02-23

プロビブリオ(オランダ・ホーフドルフ市)

今回は、オランダのプロビブリオという会社を紹介します。

プロビブリオは、ホーフドルフに立地する図書館運営支援会社です。職員数は、240人(フルタイム:163人、パートタイム:77人)。以前は、州立図書館センターでしたが、現在は、補助金と収益が約50%ずつを占める、半民間の会社となっています。

ここで、プロビブリオの歴史的経緯をお話しますと、プロビブリオは、元来、人口30,000万人以下の小さな町の図書館を支援する州立図書館として設置されました。サービスの提供範囲は、州立という名前からも分かるように、管轄する州に存在する図書館が対象となります。プロビブリオは、北ホラント州と南ホラント州をサービス対象地域としており、その他に州にも、プロビブリオと同様の州立図書館が存在するとのことです。設立当初は、費用の全てが補助金で賄われていましたが、2000年以降、図書館ネットワークの再編に伴い、半民間ベースの機関へと移り変わりました。

主なサービスは、地域の公共図書館への蔵書の配送や図書館システム等のデジタルサービスが挙げられます(デジタルサービスは、国レベルの対応に移行中とのこと)。また、地域図書館の職員のスキル向上なども主要サービスの1つと言えます。

また、近年は、ユニークなサービスにも積極に取り組んでいます。例えば、現在は、次のようなサービスを展開しています。

.咫璽ライブラリー

7月から8月にかけ、オランダの海岸沿いに、13個の簡易図書館を設置。図書館の本は、手続き無しに本を借りることができ、2ヶ月間で約20,000冊の貸出があったとのことでした。なお、盗難対策等はしていませんでしたが、図書の紛失は、ほとんど起きなかったとのことでした。

駅内図書館

現在、ハーレム駅の構内に図書館を設置することを予定しています。ハーレム駅は、外観が美しいと評判の駅であり、約150,000の市民が生活しています。ターゲットは、本に興味があるものの、図書館に訪れる時間のない人々。施設の広さは、150崢度を想定しており、利用者は、施設内でコーヒを飲みながら、本を閲覧できます。この図書館は、2010年5月に開館予定とのことでした。

お話をした担当者の方は、これからの図書館は、マーケティングが重要になるとおっしゃっていました。先ほど紹介した2つの事例も、消費者ニーズに基づいてターゲットを設定しています。日本においても、公共図書館の水準が総体的に高まり、サービスが画一化していく中で、他の図書館とどのように差別化を図るかが重要となってきます。こうした状況下においては、緻密なマーケティングに基づく、ユニークなサービスの提供というものが、1つの差別化要因として期待されるのではないでしょうか。

2010-02-01

DOK(オランダ・デルフト市)

今回は、海外図書館ヒアリング調査の第二弾として、DOK(オランダ)を紹介します。

DOKは、デルフト市の中心地に立地する市立図書館です。人口約10万人の小さなまちの公共図書館であり、日本ではあまり知られていませんが、アメリカのLibrary Journalの『図書館界を動かした人、揺るがせた人』として、DOKのマネージャーが国外で初めて選ばれるなど、欧米では先進的な図書館として、高い注目を集めています。

オランダ図書館の特徴は貸出などのサービスを受けるためには有料の会員になる必要があること。このため、一般的に市民の登録率が50%を越えることはないそうです。ところが、デルフト市民の図書館登録率は、なんと約80%とのこと!DOKは超人気図書館なんです。

DOKの人気の秘密は、とにかく楽しくてエキサイティングで、それでいて居心地がいいことです。

館内は最新のテクノロジーであふれています。例えば、利用者は、居住地付近の昔の写真などをICカードの会員証に取り込むとともに、その場所に関する自分自身の思いやストーリーを他の利用者に発信できるようになっています。最新のテクノロジーと図書資料が融合し、利用者自身が図書館を「本を読む場所」から「自分を表現する場所」、「他の人とコミュニケーションする場所」に変えていっているのです。

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DOKでは他にも多くのユニークなサービスを提供しています。例えば、館内には、Playstation2Xboxなどのゲーム機が設置されています(私たちが訪問したときにも、子どもたちが熱心にゲームをしていました)。また、スピーカーの付いた球型の椅子(利用者は、椅子に座りながら、迫力の音響で音楽を聴くことができる)など、目新しい機器が置いてあります。さらに、快適な椅子やカフェの設置、弱めの光を活用した落ち着きのある小空間なども、市民が図書館を使いたいという気持ちを引き起こす原動力になっているようです。

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こうした最新のテクノロジーを駆使した図書館を整備できるのは、企業と図書館協働で機器を企画・商品化できるような、両者にとってメリットのある場所を提供しているからとのことでした。利用者基点で新しいサービスを開発し、図書館を魅力的にしていくというモデルは、私立図書館の1つのビジネスモデルになるのではないかと思いました。

2010-01-11

海外視察報告その1(デルフト工科大図書館)

わが国の「開かれた私立図書館像」を探ることを目的に、海外で特色あるサービスを提供したり、ユニークな運営を行っている図書館(公立、私立を問わず)のヒアリング調査を行いました。まず第一弾として、デルフト工科大図書館オランダ)を紹介したいと思います。

デルフト工科大は人口約10万人のデルフト市の中心部に立地しています。図書館について、まず、驚かされるのは特徴的な外観です。屋根が芝生で覆いつくされ地表面からスロープ上に連なっているのです。晴れた日には学生が本を読んだり、くつろぎの時間を過ごせるようです(蛙が跳ねる姿も見られるとか!)。

外観だけでなく、運営面でも特色を出そうとしています。工科系の図書館というと地域住民との接点は少なそうなイメージですが、モットーとして「Centre of belonging」を掲げており、子どもからお年寄りまで誰もが立ち寄れるような環境やメニューづくりに取り組んでいるそうです(地元公共図書館との協力によるゲームに関するシンポジウムやゲームナイトの開催など)。

また、民間事業者を対象とした有料のサービスとしては、特許関連の文献検索なども行っています。以前は有料のドキュメント提供なども行っていましたが、著作権上の課題をクリアできず、中止したそうです。

国立の施設ということで収益事業への取り組みには限界がありますが、大学の枠を越えた人材育成や大学の知的資源等を活かした外部との連携を模索する姿がよくわかりました。f:id:i-009:20091123194834j:image

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