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遥香の日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-10-10

虐待問題の主因(貧困)―文献3)

02:33 | 虐待問題の主因(貧困)―文献3)を含むブックマーク 虐待問題の主因(貧困)―文献3)のブックマークコメント

 上記テーマについては、今回で終りです。高齢者虐待について考えた時、その根っこに「貧困問題」が存在するのではと考え、そのことに踏み込んだ文献(私が知っている限りですが・・・)をいくつか紹介してきました。いつの間にか児童虐待にスリ替わってしまったような気がしますが、老人虐待児童虐待家族という単位で考えれば、「家庭内暴力」、「家庭内虐待」ということで家族力学的に言えば、勢力の弱いところが被虐待状態に置かれていると考えられます。したがって、「家庭内の虐待」というレベルで捉えれば児童虐待であれ高齢者虐待であれ配偶者(多くは女性)に対する暴力であれ、本質は同じといえるでしょう。そして、その本質に関わるものとして貧困が少なからず関わっているのではないか。そのような考えのもと「虐待」をテーマとした文献を取り上げ、たまたま児童関係が多くなったというところでしょうか。

 最後に、湯浅誠『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書)を取り上げましょう。本書は児童虐待の原因についてリーロイ・H・ペルトン氏を引用しながら貧困にあると述べている。

 

 「20年以上にわたる調査や研究を経ても、児童虐待ネグレクト[筆者注・育児放棄]が強く貧困や低収入に結びついているという事実を超える、児童虐待ネグレクトに関する真実はひとつもない」

 雇用ネットで支えられずに「働いて食べていける」状態にもなっていないにもかかわらず、社会的サポートが得られない。そのために家族内部にストレスが増幅し、誰も望まない結果をもたらす。

 「どんな理由があろうと、児童虐待は許されない」というのは正論である。しかし本当に必要なことは、子ども虐待をなくすことであって、親の治療や処罰はそれに必要な限りで行えばいい。・・・真剣に考えなければならないことのは、「悪いことをしたから罰する」という短絡的な応報主義・厳罰主義ではなく、「被害をなくすために本当に必要なことは何か」ということのはずだ。

                 (中略)

 児童虐待を本気でなくそうとするならば、まっすぐに原因に向かわねばならない。それは「児童虐待ネグレクトを減らすためには、少なくとも貧困ラインの上まで家族の収入を増やす」(ペルトン)ことだ。

                                           (50-51頁)


 上記では、虐待と貧困の関係を明確に語りさらにその解決策まで言及しています。

 虐待倫理的情緒的に虐待者の人間性を非難して終わる方向に流されがちであるけれども、虐待本質はそのようなところにあるのではなく最低限度の生活さえも困難な状況から心が荒み「誰も望まない結果」すなわち虐待をもたらすのではないか。「貧困→心の荒み→虐待」―これが基本的な図式でしょう。言い換えれば、「物質が概念を規定する」―社会科学的真理はこの虐待問題にも適用できそうです。


 虐待問題は児童が先行し、続いて高齢者虐待クローズアップされてきています。高齢者虐待もその本質抽出するためには児童のそれと同様、高齢者を取り巻く環境の貧困状態の存在を理解する必要があるように思います。

 先日の日記にも1990年代中ごろの不況の時代に安定した職業を得られなかった若者たちが中高年に達した時に、アルバイト程度の仕事からも排除され経済的な理由で親との同居を余儀なくされていくケースが増えてくるのではないか。経済的な基礎を親の年金に頼らざるを得ないような元就職氷河期若者―とりわけ独身男性虐待者となるのではないかという気がします。その中でも、親が死んでも届出をせず死体を遺棄し年金不正受給しているケース(すでに事件になってますが・・・)も今後多発しそうな気配を感じます。

さて、明日(厳密には今日)は、入試です。この辺で筆を止めます。

 窓の外は雨です。

bonbokorinbonbokorin 2008/10/11 17:40 貧困→虐待、うーむ、これも重いテーマですね・・個人的には、「貧困」とは何なんだろうか?という部分もわかったような、わからないような感じもあります。経済的には日本などよりもっと困窮していて貧困が蔓延している国々も多いと思いますが、そうした国々との比較においても、貧困と虐待は比例関係にあるだろうかと考えると、どうなんでしょうか?むしろ「貧困」そのものと言うより、そこから感じられる「絶望感」「閉塞感」こそが本質のような気がしなくもないのですが。だとすると、お金のやり取りという「経済活動」を離れた価値観、世界観をより多く人々が持てるような社会、というのもひとつのあり方として大事なんじゃないかな、という気もします。
湯浅誠氏、すっかりメジャーになってきましたね。彼とは実は高校の同級生で同期の中でもいまや一番の有名人です。彼の一番すごいところは、そういう「経済活動」とは無縁の世界に飛び込んで頑張っているところですね。東大法学部まで出て、そんなことをできる人間はそうはいませんから。

bonn1979bonn1979 2008/10/11 21:08 bonbokorin さんのコメントを拝見して、「お金のやりとりを離れた価値観をより多くの人が持てるような社会」とのお話は大事なことだと思いました。
お金があまりなくても前途に希望のある人・家・町だと虐待や自殺などへは話が進まない思われます。「世界金融恐慌」らしき今こそ「金融工学」とやらで資産を増やそうとした国々やエリートに鉄槌が降りてほしいですね。

遥香遥香 2008/10/12 18:30 bonbokorinさん。
コメントありがとうございます。
「貧困とは何か」・・・確かに難しいですね。一言で定義しようとすると。外見的には「所得の低さ」がわかりやすいのですが、本質的にはそれで決定づけられないものであると言えそうです。アマルティア・センは貧困を「基本的な潜在能力の欠如」と定義し、湯浅誠氏はその「潜在能力」を「溜め」という言葉で言い換えて一見抽象的な概念で貧困を定義づけています。拡大解釈と言われるかもしれませんが、「お金のやり取りという『経済的活動』を離れた世界観、価値観」を持てるかどうかも「溜め」の大きさによるのではないかと私は思うのです。
 
 所得は貧困を決定づける有力な条件ですが、それだけに規定されるものではなく、ミクロ的には家族や地域社会のあり方、マクロ的には国の政策というような社会システムのあり方も個々人の潜在能力(溜め)に影響を与え、貧困というものを決定づけると考えられます。所得は絶対的に低くても経済社会システムのあり方(例えば、フォーマル的には社会保障や保健・公衆衛生など、インフォーマルには家族・地域社会など)によって個々人の生活を貧困から守ることはできると思います。
 かっての日本は家族、地域社会、企業がセーフティネットとして機能していましたが、1980年代以降の一連の規制緩和によって崩されてきました。本来ならそれら従来のセーフティネットが崩壊したところで社会保障の充実を図るべきところをそのようにはしていない。そこに「虐待」が頻発しているのではないでしょうか。

「日本より貧困が蔓延している国」の虐待の実態はわかりませんが、かっての日本であれば口減らしに間引かれたり、女工哀史、姥捨て山(これを「虐待」と言わないかもしれませんが・・・)等は貧しさゆえにあったものでしょう。今のような「虐待」が、かってはなかったとするなら、それはやはり社会システムに規定されるものだと言えそうです。現代の「児童虐待」、「高齢者虐待」は日本という先進国の貧困を基底におく社会病理現象と結論付けておこうと思います。

 bonbokorinさんと湯浅誠さんが同級生というのは驚きました。bonbokorinさんの年齢は39歳か40歳ですね。私とも大体同じ世代ですね。(笑)

遥香遥香 2008/10/12 20:43 bonn1979さん。
コメントありがとうございます。
「希望という感情は、努力が報われるという見通しがある時に生じ、絶望は、努力してもしなくても同じとしか思えない時に生じる」(社会心理学者 ランドルフ・ネッセ)(山田昌弘『希望格差社会』(193-194頁)後段の「絶望」の部分は、今の日本の社会を象徴している言葉ではないでしょうか。
 高度経済成長期は、その後様々な問題を産み落としましたが、日本人が将来に希望が持てた時代でもあったように思います。社会を豊かにすべく日本人は努力を積み重ねてきてその豊かさが飽和状態に達した時、階層の二極化という格差を拡大させ多くの人(特に若者)が希望をもてない社会になったのは不幸というよりほかないですね。強者が弱者を犠牲にして肥え太る時代。そんな状況に成り下がってますね今の日本は。弱者の目線に立った政策が必要とされています。

bonbokorinbonbokorin 2008/10/13 17:07 bonn1979さん、遥香さん、お返事ありがとうございます。お二人とも只者じゃないらしいことがわかってきました!(笑)論理的で緻密で丁寧な文章というのは本当に心地良いですね。遥香さん、やはり同世代ですか、90年頃大学にいらしたと前、書かれてましたもんね、あ同じ頃だ!と思ってしまいました(笑)。(自分はご賢察の通り39です)

遥香遥香 2008/10/13 17:47 bonbokorinさん。
コメントありがとうございます。
bonbokorinさんこそ、只者ではないようですね。鋭いつっこみで説得力があり回答するとき再度勉強しながらコメント書いてましたから。
今後ともご教示のほどお願いいたします。
bonbokorinさんは医療職でいらしゃるようですね。そちらの日記(ブログ)も見せていただきました。保健所にお勤めなのかな?と思いましたが、どうでしょう。(差し支えあれば無視してください。)

1月の恥ずかしい日記に★なんてつけないで下さいよ。(笑)

bonbokorinbonbokorin 2008/10/13 18:49 遥香さん、「降臨」されていたんですね!(笑)今、すっかり遥香さんのブログを読み耽っていたところだったのですが、ふと、早くもお返事をいただいてしまったことに気付きました。
うわ、僕の書いていた、はてなブログ、まことにお恥ずかしいもので、失礼しました。正直に申しますと、実はあれは人間向けに書いているものではありません〜googleのロボット(googlebot)様向けに実験的に書いてました(笑)で、僕の本職は開業医です。と書くとわかる人には名前までわかってしまうので、あまり恥ずかしいこともできませんね(笑)
1月の日記、「見られるだけで興奮」という内容でしたので、スターを付加することでさらにそれをenhanceできるかも、という意図でした(笑)

遥香遥香 2008/10/13 19:06 bonbokorinさん。
コメントありがとうございます。

「googleのロボット」って?よくわからないので教えてください。
「見られるだけで興奮」は少し意味が違うと思いますが・・・。(笑)

bonbokorinbonbokorin 2008/10/13 20:18 遥香さん、あちこちにコメントを入れてしまい、すみません(すっかりストーカーみたいになってますね(笑))
googlebotというのはgoogleの情報収集用のコンピュータのことです。文脈としては、いわゆるSEO(search engine optimization)ってやつです、次元が低くてすみません。

遥香遥香 2008/10/13 21:35 bonbokorinさん。
ご回答ありがとうございます。ITオンチの私には難しいみたいです。