2009-03-22
老人施設火災、死者10人に 「消防訓練1回もなし」希薄な危機意識浮き彫り
「消防訓練は1回もなかった」「認知症の入所者の部屋には外からカギをかけていた」−。19日深夜、群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」で起きた火災で、お年寄りが暮らす施設としてはあまりにお粗末な実態が次々に明らかになった。21日夜までに新たに3人が亡くなり、死者・行方不明者は10人となった。群馬県警はたばこの火の不始末の可能性があるとみて現場の状況を詳しく調べている。
たまゆらでヘルパーとして平成19年夏まで勤務していた女性(60)は産経新聞の取材に「消防訓練は1回も行われなかった。災害発生時の対応マニュアルや、緊急連絡網もなかった」と話した。
また渋川広域消防本部によると、15年と18年の立ち入り検査時に、防災設備の点検報告を怠っていたり、通路にソファを置くなど、避難経路の管理面で問題点を指摘されていたことも分かった。
施設を運営する特定非営利活動法人(NPO法人)「彩経会」が施設を増改築する際、建築基準法で義務付けられた建築確認申請をしていなかった疑いがあることも分かった。
県建築住宅課によると、施設の建築確認申請は平成9〜16年にかけて、彩経会や高桑五郎理事長の名前で3度出された。
しかし、施設関係者や近所の人の話では、施設は増改築を頻繁に繰り返し、高桑理事長らが自分たちで工事することもあった。21日に現場を訪れた前橋土木事務所の担当者は「ぱっと見ただけでも(出された)配置図と違う」と話した。
こうした現状に危機感をおぼえた近隣住民が18年、「介護状況に問題が多い」と、入所者の紹介をやめるよう東京都墨田区に求めたこともあった。
今回の火災で亡くなった10人のうち6人は墨田区の紹介。住民側は食事や介護面で問題が多い施設なのに、区が入所者を派遣していると指摘し、施設の閉鎖を求めたという。
墨田区福祉事務所の横山信雄所長は現場に献花に訪れた際、住民からの要請について「報告を受けていない。確認したい」と答えた。
同じ建物に入居する男性(79)は「認知症の入所者の部屋には、外側からカギをかけている部屋もあった」と指摘、施設内ではたばこが吸えたといい、「別の入所者に頼まれ、たばこをあげていた」と打ち明けた。
群馬県警は7人の遺体が見つかった別館・赤城の西側にある元介護職員室が激しく燃えていたことから、たばこの火の不始末の可能性があるとみて、調べている。また見つかった7遺体のうち4遺体の性別を男性3人、女性1人と確認。死因は男女2人が焼死、男性2人が一酸化炭素中毒と判明した。
また県警は、新たに3人が死亡したと発表した。死亡したのは、相沢英男さん(88)と山田ヒデさん(72)、深井隆次さん(77)。3人は病院に運ばれたが、21日未明までに相沢さんと山田さんが、21日夜、深井さんが死亡した。
群馬県渋川市で起きた高齢者施設(「静養ホーム まゆら」)の火災です。すでに、この火災で多くの問題点*1がマスコミ等で指摘されています。
この事件の問題の本質は、この施設の利用者は生活保護受給者であり低所得者に提供される介護サービスの劣悪性を浮き彫りにしたということです。1990年高齢者保健福祉10ヵ年戦略から介護保険法の制定に至るまで、国の要介護高齢者対策の方針は、「1)高齢者の社会的入院を減少させること、2)そのために在宅ケアを充実させ、3)特別養護老人ホームなど介護施設は在宅介護を補完する程度に増やす」というものであったといえるでしょう。
しかし、今回の火災事件は上記の方針が根本的に無理があることを証明して見せたように思います。
介護保険制度以降、「契約利用」を梃子に「個室・ユニット」施設の登場や「保険外負担」(食費、居住費など)の増加等、低所得者にとって介護保険施設の利用が困難になる条件が出てきたように思われます。つまり、事実上生活保護を受給するなど所得の低い高齢者は介護保険施設が利用しづらくなっており、そこに一人暮らしで認知症などの要介護状態になった場合、在宅介護が不可能となり行き場を失うことになる。
そうした行き場を失った所得の低い高齢者を入所させる施設として今回火災にあった介護保険適用外施設が貧困ビジネスまがいに低所得高齢者を劣悪な処遇のもとにおくことになる。介護給付を得られない施設が利用者の生活保護費をあてにして運営するわけだからそうなるのも当然のことですね。そして、国の在宅介護中心路線も独居で要介護高齢者を支えられず、このような施設でも入所させざるを得ない実態が明らかになったわけです。言い換えれば、在宅介護では、独居の要介護高齢者を支えられず、ゴールドプラン以降推し進められてきた在宅介護中心路線は非現実的な対応であることが明らかになったわけです。
将来、格差・貧困社会を反映して低所得で単身者はますます増えてくるでしょう。こうした独居・低所得者層は施設入所で対応する必要があり、緊急に高齢者の介護施設の整備が望まれます。ゴールドプラン21が終了したあと、国の介護施設整備補助は廃止されましたが、21日の『読売新聞』では、「3年間の時限措置として」国の補助金を復活させることも検討されているようです。出来れば新ゴールドプラン21として5〜10ヵ年の計画で取り組んでほしいように思います。そこには、個室・ユニットでなくても良いから、低所得で独居の高齢者の受け皿となる施設*2を中心に整備してほしいところです。

でも、近所や知人の家の要介護高齢者をぱっと考えただけでも、
在宅介護というのは家族のものすごい努力あるいは我慢の上にようやく成り立っています。
ヘルパーに来てもらえず、オムツの交換も満足にできない状況のうちもあります。
近所で噂になってます。
それを考えると、今回の施設みたいな状況が改善されて、
ぎりぎりの年金生活よりも生活保護を受けるほうが良い施設に入れて満足な介護を受けられる・・・
となったら、それはそれで世の中の仕組みとしてどうなのかなぁ?と疑問です。
コメントありがとうございます。
>在宅介護というのは家族のものすごい努力あるいは我慢の上にようやく成り立っています。
まったくその通りだと思います。在宅介護といっても日本の場合は、家族介護を前提にそれを補助する水準にとどまってますね。
介護保険導入後、必要なサービスより負担できる金額を利用者が先に介護支援専門員に告げて、その範囲内でサービスの量と種類を提示してもらっているようなこともあるようですね。「ニーズ」にもとづくのではなく「マネー」にもとづいた居宅サービスプランになっているのが実態かもしれません。
>ぎりぎりの年金生活よりも生活保護を受けるほうが良い施設に入れて満足な介護を受けられる・・・
年金の水準が生活保護を下回っていること自体問題といえるでしょう。生活保護のルールとして働いても生活保護基準より収入が低ければその足りない分生活保護を受けられるのですが、生活保護費の増大を望まない国・地方自治体はそのようなことを国民に周知していません。年金を受給し家族と同居している人でも施設入所が必要である、あるいは施設入所の方がQOLが高くなるとニーズに照らして判断されるのなら施設入所が望ましいと思います。だから、「新ゴールドプラン21」という介護老人福祉施設緊急整備5カ年計画をたてて実行して欲しいと思う次第です。
<又佐さん。
コメントありがとうございます。
>契約利用の介護保険では網からおっこってしまう人はいっぱいいます。社会福祉の領域としての介護保険制度であってほしいと思いま すし、仕組みと流れをつくっていく必要があるような気がします。
「介護保険制度は社会保険であって社会福祉ではない」という人もいますが、詭弁ですよね。介護保険は、本質的には生存権と人権を守る社会福祉であり政策技術として介護保険を採用しているだけですから・・。社会保険で問題があるなら所得税や法人税を財源に税方式でやればいいわけです。介護保障は人権を具体的に守る活動であるという認識を行政も政治も国民も持つべきですね。