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2007.04.20

ウェブ研究をはじめましょう

うちの研究室にも新4年生が入ってきました。初々しくていい感じです。こちらも新たな気持ちで研究をはじめようと、ウェブ研究をするとはどういうことなのか、彼らへのメッセージを込めて少し考えてみました。

ウェブ研究をするということ

ウェブが身近なものになるにつれ、ウェブ研究対象にしたいという学生さんも多くなってきています。人気があるのはとてもよいことだと思うのですが、こと研究の観点からすると、ウェブは他の対象と比べて事前に考えておかなければならないことが多々あります。

ウェブの何を研究すべきか

ひとくちにウェブ研究といっても、その内実は多種多様です。ウェブを構成しているのはハードウェアネットワークプロトコルソフトウェアサービスユーザー、その組み合わせとしての社会現象まで、数え上げるときりがありません。そのすべてをひとりで研究し尽くすことができない以上、ウェブのどういった要素について研究をしたいのかをまず考える必要があります。

ウェブ研究サイエンスなのかエンジニアリングなのか

そんなことを問うような時代ではないのかも知れませんが、やはり立場によってアプローチは変わってくるのではないかと思います。ものすごく乱暴に言えば、サイエンスとは自然の中から真理と呼べるような仮説を見出す作業で、エンジニアリングは人の役に立つものを提供する作業です。これをウェブに対応させると、ウェブという社会現象には何らかの本質があり、掘り下げていくことでそれを見つけようというのがサイエンス立場で、社会現象を生み出すにはどのようなしくみが必要なのかを考えるのがエンジニアリング立場と言えます。もちろん、研究の時々に応じて立場が入れ替わったり、複合的なアプローチを取ることは十分にあり得ます。

ウェブ研究社会学

ウェブが「もうひとつの社会」になりつつある現在ウェブ研究社会学と大きなつながりを持ちはじめています。これまでの社会学では、いまの社会がどうなっているのかを明らかにするために調査・分析が行われていましたが、ウェブ研究はそれに加えてシステムをつくり、ユーザーを巻き込むことで社会を変える力を持っています。これはすごいことだとは思いますが、当初の研究目的が分析であるのか構築であるのかの境界があいまいになる危険性をはらんでいます。研究者として、目的と手段を混同しないように強く意識する必要があります。

グーグルにできない理由は何か」

エンジニアリングとしてのウェブ研究のライバルは、他の研究者だけではありません。ウェブ舞台ビジネスをしている企業すべてがライバルと言っても過言ではありません。とくに、グーグルを筆頭とするテクノロジー企業の動向には目が離せません。フォーサイト2007年4月号の梅田望夫さんのコラムシリコンバレーからの手紙」では、「グーグルは大規模なデータベースマシンパワーを武器にして、科学者が持つ『シンプルかつエレガントに原理を解明したい』というロマンティックな研究姿勢に対して重大な問題提起をしている」といった論考がなされています。彼らが何十、何百、何千人の規模で研究開発を進めている一方で、自分たちが比較的少ない人数で研究をする意味は何なのか、自分の研究グーグルにできない理由は何かということは、答が出ないかも知れませんが、常に考え続ける必要があると思います。

結局のところ、ウェブ研究するということは、以上の問いを自分に対して繰り返し向けていくことなのかもしれません。そして、ものの見方を変え、誰も気づいていないような視点を見つけ出し、小さな力で大きな結果を出せるのがウェブ研究醍醐味です。一緒にがんばっていきましょう。

ウェブ研究スターターキット

ウェブ研究は新しい分野なので、研究をはじめるうえでの必読書というようなものはとくにありません。もちろん、論文をたくさん読む必要はあります。ただ、論文は個別具体的な研究について書かれたものですから、それだけでは十分ではありません。大局的なものの見方を提供してくれるような本にあたって、そこを起点にテーマを考えるのがよいと思います。また、他分野の良書を積極的に読みましょう。多くのヒントが得られると思います。

ウェブの基本

現在ウェブを知るためにも、とりあえず全部読むといいと思います。

ウェブの創始者であるティム・バーナーズ=リーの著書。本人が語るウェブの歴史は、読んでおいて損はありません。

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

自然界から社会に至るまで、あらゆるところに見られる複雑ネットワークの特性について述べられています。SNSもそのひとつでしょう。

「みんなの意見」は案外正しい

「みんなの意見」は案外正しい

集合知」の入門書。個人を超える知識のあり方について、さまざまな例が取り上げられています。

帯に書いてある「ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅」というのがすべて。話題は多種多様ですが、現状の把握のために。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

定番です。変わってしまった世界の見取り図と、変わらない人間の本質について。他の分野の人々とコミュニケーションをするためにも、読んでおきましょう。

他分野・関連分野の良書

個人的にものの見方が変わったような本のいくつかです。

利己的な遺伝子 (科学選書)

利己的な遺伝子 (科学選書)

「個体は遺伝子の乗り物である」。いま読み返しても新鮮です。後半のミームに関する議論はウェブを考えるうえでも重要です。

CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー

CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー

人に何かをしむける力=権力に関する考察と、それがウェブにおいてどうなるかという議論が圧巻です。

正しいことをしっかりとやる、という基本の基本が立ちゆかなくなる原因をビジネス立場から描いた本。目から鱗。

システムの科学

システムの科学

人によって設計されたものすべてに適用できる科学的アプローチ。読み直さないと…。

ジンメル・つながりの哲学 (NHKブックス)

ジンメル・つながりの哲学 (NHKブックス)

個人と社会との「つながり」について考えていた哲学者社会科学ジンメルの解説書。取り扱われている問題は極めて現代的です。

前掲のCODEとも関係あり。本質的な問題提起がたくさん。気軽に読めます。

そのうち続きます。

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