井出草平の研究ノート RSSフィード

2006-04-22

論文情報ナビゲータCiNii(サイニィ)


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エドワード・サイード OUT OF PLACE』上映会&シンポジウム


2006年5月1日(月) 上映 一回目 13:00〜15:20 
関連シンポジウム 16:00〜18:00 
上映 二回目 18:30〜20:50 
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食事代わりにお菓子 大学生協売り上げ、3年で1.5倍


食事代わりにお菓子 大学生協売り上げ、3年で1.5倍 【大阪朝日新聞1993年10月18日 朝刊

一方、神戸女学院大の生野照子教授(心身医学)は「今の若い人は、豊かな環境に甘えて『成熟拒否』の傾向が強い。でも、大人の『よい子にしていなさい』という要求にこたえ続けるストレスも大きい。リラックスできない分、お菓子を食べることでくつろぎを得ているのではないでしょうか」と話している。


「よい子にしなさい」のストレスをお菓子で発散している説。



食事代わりにお菓子 大学生協売り上げ、3年で1.5倍 【大阪】

 大学で「お菓子」が売れている。大学生協の菓子売り場は広がる一方で、ガムやアメを口にして授業を受ける学生も多い。ここ三年間で売り上げが一・五倍になった大学もある。「主食」感覚なのか、菓子で栄養を取ろうとする学生も多く、「栄養表示をして欲しい」という要望も増えている。

 

 東大阪市近畿大本部にある大学生協。昼過ぎ、ポテトチップスやアメ、ガムを並べた棚の前が、昼食を終えた学生でにぎやかになる。「それ甘過ぎるわ。こっちにしとこ」。ノートやフロッピーを買うついでにアメを取って行く学生もいる。レジに並ぶ学生の大半が菓子を手にしていた。

 「ちょっと口寂しいんで、その辺をブラブラしながら食べようと思って。買うのは週二回くらい」とラムネ菓子を手にした商経学部三回生の男子。「お金がないので、今日は食事代わり」と二回生の女子は「カロリーメイト」のフルーツ味を買った。

 この生協では今年、菓子用の棚を二列から三列に増やした。二百種類以上の菓子が並び、一日千個も売れる。「男の子も甘いものをどんどん買う。最初は不思議やったんですが」と峰垣多喜子副店長。

 昨春、大学の移転に伴って売り場を一新した大阪教育大生協(柏原市)では、菓子の棚を五倍に増やした。文房具の棚は一・四倍にしか増えていない。

 学生が菓子を食べながら授業を受ける風景も珍しくない。今春、関西学院大に入学した女子(一九)は「隣に座っている友だちからアメやガムをもらって食べる。入学したころはジュースやお菓子を堂々と食べている人に驚いたけれど、今は罪悪感もありません」。

 大学生協京都事業連合の統計によると、京都、滋賀奈良にまたがる同事業連合加盟の十二大学で、菓子の売り上げは八九年の一億四千三百万円から九二年には二億一千七百万円に一・五倍以上に増えた。

 栄養補給を売りものにした「カロリーメイト」「ポケメシ」「ザ・カルシウム」などがよく売れ、同事業連合が設置している投書箱には「菓子の栄養表示をして欲しい」との要望が多くなっている。「CMの影響もあるのか、菓子で食生活の偏りを正そうとする傾向も見られる」と菓子の仕入れを担当している吉井規子課長代理は話す。

 女子栄養大の足立己幸教授(食生態学)は「ここ十年ほど、子供の間では『食事』と『おやつ』の垣根がなくなっている。その世代が大人になり始めた。食事は本来、いろいろな世代の人と交わる場だったはずだが、このような食生活では同世代の狭い人間関係しか持てなくなる」と指摘する。

 一方、神戸女学院大の生野照子教授(心身医学)は「今の若い人は、豊かな環境に甘えて『成熟拒否』の傾向が強い。でも、大人の『よい子にしていなさい』という要求にこたえ続けるストレスも大きい。リラックスできない分、お菓子を食べることでくつろぎを得ているのではないでしょうか」と話している。

1993年10月18日 朝刊 2社 024 01177文字

拒食や過食、患者同士がグループで治療 セルフ・ヘルプの試み広がる


拒食や過食、患者同士がグループで治療 セルフ・ヘルプの試み広がる
朝日新聞 1994年4月22日 夕刊

94年の朝日新聞の記事。これから自助グループが盛んになるという趣旨。確かに盛んになってはいるのだろう。


これに対し、生野さんは「摂食障害に悩む人は増えており、専門家が一層足りなくなる。今後はグループ治療の役割も大きくなるだろう」。斎藤さんも「専門家に十分に理解されていないのは確かだが、いずれ盛んになる」とみている。


拒食や過食、患者同士がグループで治療 セルフ・ヘルプの試み広がる

 食べ物をほとんど食べなくなる「拒食症」や、大量に食べる「過食症」。ダイエット願望や心理的ストレスが原因で起こる摂食障害の治療に、悩みを抱える人どうしが励まし合う「セルフ・ヘルプ・グループ」を採り入れる試みが出てきた。ただ、理解の輪はまだ小さい。

  

 ダイエットがきっかけの拒食症(神経性食思不振症)。「カーペンターズ」の歌手カレン・カーペンターさんが、これで亡くなったのは有名だ。逆に、一度に大量に食べたり、食べ物がないと不安になる過食症(神経性多食症)では、「食べては吐き、また食べる」という悪循環に陥ることもある。対人関係や仕事上のストレスも原因といわれている。

 治療には、時間をかけて心を開くようにしなければならないが、一人の患者にかかりきりではいられない。そこで、患者らでつくる「セルフ・ヘルプ・グループ」の活動が採り入れられるようになった。「悩んでいるのは自分だけではない」と感じることが支えになるという。

 大阪市立大医学部付属病院で治療に当たる生野照子さん(小児心身医学)は、数年前から専門家の治療とグループ治療を両立させている。臨床心理士栄養士、ソシアルワーカーら十人のスタッフが栄養指導やカウンセリングで心身両方を治療する一方、家族や患者のグループも側面から応援する。

 月に一回ほどの学習会で専門家や経験者の話を聞いたり、日ごろの悩みや体験を自由に話し合ったりする。「親の価値観で子供を縛っていた」と振り返る人もいれば、「家族はもっと私の気持ちを分かってほしかった」と打ち明ける元患者も。

 「支え合うことで患者の心が解放されれば、専門家の治療にも役立つ」と生野さん。

 患者のグループ「NABA」を主宰する東京都精神医学総合研究所斎藤学さん(精神医学)は、グループ治療が第一と考えている。「食事をきちんととりなさい」「食べた後に吐くのをやめなさい」といった専門家の指導が、患者に新たな拘束感を与えかねないからだ。

 「自分を見つめ直すことが治療に欠かせないが、一人では難しい」と斎藤さん。患者らは週一回集まり、「男性経験のないことがストレスになっていた」「男の人に美しく見られたかった」と打ち明け合う。会話を通じて、異常な食行動をとるようになった原因に気付くという。

 とはいえ、いまの治療の主流は、専門家の指導で食べ方や生活習慣を改める「行動療法」やカウンセリングだ。東京大医学部付属病院分院の末松弘行教授(心療内科)は「きちんと専門家が治療し、傷ついた心と体の状態を回復させてあげなければ」という。「回復後の社会復帰に役立つかもしれないが、治療上の効果は期待できない」(国立精神科教授)という声もある。「保険診療として認められない」「指導法が分からない」と、ためらう専門家もいる。

 これに対し、生野さんは「摂食障害に悩む人は増えており、専門家が一層足りなくなる。今後はグループ治療の役割も大きくなるだろう」。斎藤さんも「専門家に十分に理解されていないのは確かだが、いずれ盛んになる」とみている。

1994年4月22日 夕刊 科学 009 01258文字

拒食症の子が映す日本社会のひずみ 10歳前後に自殺を思う


拒食症の子が映す日本社会のひずみ 10歳前後に自殺を思う
朝日新聞1994年12月16日 夕刊

 この外来で診察に当たっている生野照子さん(神戸女学院大教授)は「拒食症になった子供は自殺を望みやすいと考えるのは間違い。たまたま摂食障害という窓を通して、子供たちの苦しみが表に出ていると考えるべきです」と説明する。

 大阪市立大の診療チームは、家族内外の問題についても分析している。四割が友人とのトラブルを経験、六割が学業の問題に悩んでおり、不登校を経験したケースも四割ある。家庭内についても、六割が母子関係に、五割が父子関係に、六割が兄弟姉妹関係に、それぞれ問題を抱えていた。

 十歳前後の子供たちが「生きているのはしんどいなあ」と考える――そんな社会に生きていることを、そろそろ大人も考えた方がいい、と専門家は指摘している。


その通り。ひきこもりや摂食障害になった人がおかしかったのではない。むしろ、一定の確立でそのような人々を生み出す土壌がこの社会にあると考えるべきなのだ。



拒食症の子が映す日本社会のひずみ 10歳前後に自殺を思う大阪

 「子供たちは社会の鏡」と言われる。では、各地で相次ぐ「いじめ自殺」に見られるように、子供が自殺を考える社会というと、どんなものが想像できるだろうか? 実は今、私たちの社会が、そんな状態に近づきつつあるのかもしれないと、懸念されている。子供にかかわる医師や学者は、特に敏感な鏡―食べ物が食べられなくなる拒食症の子供たち―をのぞいて見れば、それが分かる、という。(村山知博)

  

 《小学校六年生のA子ちゃん。五年生になったころから、食べ物を受け付けなくなった。「あまり食べていたら太る」。そんな思いがきっかけだった。今では体重が四割も減ってしまい、面影もまったく変わってしまった。

 A子ちゃんはもうすぐ中学生になる。しかし最近、「このまま何も食べずに消えてしまいたい」と思うようになった。消極的とはいえ、自殺を意識し始めたのである》

  ◇  ◇

 実は、このA子ちゃん、実在の人物ではない。といっても、筆者が勝手につくった「お話」でもない。拒食症に悩む小学生の女の子の一典型、なのだ。

 「拒食症や過食症といった摂食障害(食行動異常)の患者の一部は自殺を考えることがある」と専門家たちは指摘してきた。ただ、小学生のように低年齢の患者たちの場合、これまではそうした実態ははっきりしていなかった。

 最近、摂食障害の子供たちの自殺を考える割合が高いことが分かってきた。摂食障害児の治療をする大阪市立大医学部の小児科診療外来チームが、診察した子供たち三十二人(八―十五歳)の相談結果を集計してみたら、四分の一以上が自殺を考えていたのだ。中には、十歳で「死のう」と思いつめた少女もいる。

 たいていはA子ちゃんのように消極的な自殺願望や自殺企図で、家族でさえ気付かないケースが多い。ただ、手首に「ためらい傷」がある子や、精神安定剤睡眠薬を大量に飲んでしまったケースもある。

 この外来で診察に当たっている生野照子さん(神戸女学院大教授)は「拒食症になった子供は自殺を望みやすいと考えるのは間違い。たまたま摂食障害という窓を通して、子供たちの苦しみが表に出ていると考えるべきです」と説明する。

  ◇  ◇

 では、何が子供たちを苦しめているのか?

 大阪市立大の診療チームは、家族内外の問題についても分析している。四割が友人とのトラブルを経験、六割が学業の問題に悩んでおり、不登校を経験したケースも四割ある。家庭内についても、六割が母子関係に、五割が父子関係に、六割が兄弟姉妹関係に、それぞれ問題を抱えていた。

 例えば、ある女子高校生のケース。彼女は、ほ乳瓶のミルクしか口にしない。しかも、母親が与えた場合だけ。彼女の存在が母親の存在証明になっており、彼女も知らず知らずのうち、その役割から離れられないでいるようだ、と診断された。

 こうした子供たちは、まじめな性格であることが多い。学業や友達づきあいに関して特定のイメージを持ち、それから逸脱できないと考えがちで、精神的にがんじがらめになってしまうのだ。

 一方、息抜きの場となるはずの家庭も、多くの場合、親は子育てに一生懸命。こちらも「我が子」に対して特定のイメージを持っていて融通がきかない。結局、まじめな子供たちは、学校にいても家庭に帰っても緊張し続け、疲れ果ててしまうというのだ。

  ◇  ◇

 十歳前後の子供たちが「生きているのはしんどいなあ」と考える――そんな社会に生きていることを、そろそろ大人も考えた方がいい、と専門家は指摘している。

1994年12月16日 夕刊 2総 002 01436文字

完璧や頑張りが危ない 拒食症小六男子が自殺


完璧や頑張りが危ない 拒食症小六男子が自殺
週刊アエラ 1998年12月7日 062  

 生野さんの印象では、低年齢の場合、男子の割合が相対的に増えてきて、思春期以降では女と男の比が十対一なのが低年齢では七対一くらいになるという。

 ただ、女子の動機が「やせて美しく」というのに対し、男子の場合はただやせるのではなく、無駄なところをそぎ落とし、筋肉質のひきしまった体になりたいという願望になっている。

 だから、食べるのを減らすだけでなく、運動もよくする。過剰な運動が減食と一緒に起きる。


思春期以前の男性の摂食障害についての記述。



完璧や頑張りが危ない 拒食症小六男子が自殺

 やせて卓球がうまくなりたい。富山県で拒食症の少年が校舎から飛び降り自殺した。

 女性に多い摂食障害は、低年齢化とともに男性にも広まってきている。

 自殺した小学六年生は、熱心に取り組んでいた卓球で、ラケットの振りを鋭くしようとダイエットを始めたという。短期間に体重が十キロほども減ったらしい。

 神戸女学院大学教授(小児心身症)で大阪市立大学病院の小児科で多くの子どもたちを診てきた生野照子さんは、「拒食症の低年齢化はいろいろなところで言われている。低年齢層だけでなく、上の年代にも広がり、全体に増えている」

 とし、低年齢に増えている理由についてこう指摘する。「今は大人社会と同じようなストレスが子どもにも起こる。その一つは『やせ礼賛』です。スリムな女性が美しいというのは、今まで思春期以上の女性だった。今は小学生の接する雑誌や情報が『太っていてはダメだ』というものばかり。情報の低年齢化が大きな原因でしょう」

 生野さんの印象では、低年齢の場合、男子の割合が相対的に増えてきて、思春期以降では女と男の比が十対一なのが低年齢では七対一くらいになるという。

 ○同時に過剰運動と減食

 ただ、女子の動機が「やせて美しく」というのに対し、男子の場合はただやせるのではなく、無駄なところをそぎ落とし、筋肉質のひきしまった体になりたいという願望になっている。

 だから、食べるのを減らすだけでなく、運動もよくする。過剰な運動が減食と一緒に起きる。

 さらに男の子の場合はもう一つのタイプがあり、低年齢の場合の女子も同様だが、「赤ちゃんに戻りたい」「母親の胸にだっこしてもらいたい」と願うタイプだという。

 「十年前は、子どもの場合は成長拒否の方が多かったが、いまはやせ願望がぐっと増えた」

 小学校高学年は「筋肉質」が目立つが、中低学年は「赤ちゃん」が多いという。

 「スポーツをしている子はハイリスクです。体重調節をすることがきっかけになりやすい。しかも、最初はスポーツの成績を上げるためのダイエットが、だんだんと低栄養を招き、イライラを募らせたりする。体の変化が心の変化を招くのです。こだわりの傾向も強くなり、固執的になる。すると、なおさらカロリー数値ばかり気にし、ますます体重の数値が気になって病気が進みやすい」

 精神面とからだの低栄養がからみあいながら、拒食に落ち込んでいく。

 福島県立医大神精神科講師(児童青年精神医学)の星野仁彦さんは、

 「前思春期のケースは、まだ絶対数は少ないが、最近増えている」

 と話す。

 摂食障害になりやすい子どものタイプは、強迫的、完全主義、まじめ、頑張り屋、几帳面。自分や周りをコントロールすることが好きな子どもが多いという。

 生野さんも、一途で、周囲に気を使う「けなげなタイプ」が多いとする。期待を担って頑張る。スポーツでも成績を上げなければみんなを失望させると考える。もともとのめりこみやすいタイプだけに、打ち込めばスポーツや勉強もよくできる。「まあいいか、失敗してもいいや」と考えられるタイプは少ないのだという。

 「世の中が、いい子でいなさい、頑張りなさい、という画一的なメッセージを子どもに押し付けている。よく親が悪いと言われるが、それは反対。親も一生懸命、子どもも一生懸命。なのに、そうしたことが起きる。社会的なメッセージが家族を苦しめているのです」

 ○詳しい医師が少ない

 関西福祉大学教授で心理社会療法研究所を主宰する黒川昭登さんも、「達成意欲」の強い子は摂食障害になりやすい、とする。

 黒川さんが診た例では、全国模試で五十番以内に入っているような成績優秀な高校生もいた。

 しかし、その背景には「恥ずかしい」という強い気持ちがある。

 「勉強でもスポーツでも、上手になりたい、恥をかきたくないという気持ちが強い。テストで何点とっても満足できない。完全癖。勉強も前の晩に予習しないと気がすまない。教室で恥をかきたくないからです」

 そういう子どもは、自分が抱える寂しさや恥ずかしさ、イライラ、不安といった苦しさを、空腹という苦痛で紛らわすのだという。

 では、子どもの変化に気づいたら、どうしたらいいか。

 こども心身医療研究所所長の冨田和巳さんは、専門的に診断できる機関の少なさを指摘し、

 「体重が減ると親はびっくりして病院へ連れていくが、拒食症について詳しく知っている医師は少ない。表面的な現象に注目するだけでなく、裏にある一番大事なところに注意する必要がある」

 と指摘する。そして、とくに低年齢の場合は、拒食症の診断が難しいという。

 「背景に病理的なものがある場合と、ただの反抗で食べない例もあり、小児の場合はあいまいになる。とくに男子は、本当の意味の拒食症は少ない。拒食というより、強迫的に思い込んで食べなくなる例もある。スリムになってスポーツがうまくなりたい、というのと本当の『やせ願望』とは少し違う」

 福島県立医大の星野さんも、

 「小学生の場合は、やせ願望、肥満恐怖ははっきりしない。診断が難しい。高校生くらいになると、治療で信頼関係をつくると、話してくれるが、小学生はそういうことを言ってくれない」

 と難しさを説明する。

 ○低栄養が鬱を強める

 だが、拒食症は自殺にまで至る割合が高い。生野さんは、

 「死亡率は七、八%だが、そのうち一%が自殺です」

 と話す。

 「まず、自殺するほど大きな問題だということ。そして、低栄養自体が心の鬱を非常に強める。それが自殺の大きな理由です。体さえしっかりしていれば……、というケースもある」

 しかも、自殺をほのめかすサインがなく発作的にという例も多い。

 「本人が進んで受診することはない。周囲がどうするかが大事。親が気づいたところで、治療にもっていくのがなかなか難しい」

 そのうち自然に治るか、食べさえすればいい、と考えて、専門医に連れていくのが遅れる。

 「やせが目立つようになると治療が難しい。早期治療をきちんとすれば若い子は治りが早い。しかし、せっかく早く受診に動き出したのに、専門医が少なくて適切な治療を受けられず、とても悔しい思いをしたという例もあります」

 と専門機関の充実を訴える。

 (編集部・蝶名林薫)

 【写真説明】

 11月19日朝、富山県福光町の小学校で、「もう疲れた」と小学6年の男児(12)が飛び降り自殺しているのが見つかった

 男児は児童会委員も務め、活発だった。スポーツ少年団では卓球を続けていた。拒食症と診断され、治療を受ける矢先だった

1998年12月7日 週刊 アエラ 062 02663文字

働く女性に広がる「鬱」 落ち込む、眠れない、自殺願望…


働く女性に広がる「鬱」 落ち込む、眠れない、自殺願望… 
朝日新聞 2001年3月22日 朝刊 1家庭  

 「泣きたいと思ったことはない?」。昨年九月、医師からそう問われ、こみあげてくる涙を抑えられなかった。うつの診断は、だれより自分を驚かせた。

 決算が過去最悪に陥り、売り上げ目標値は高くなるばかり。上司と部下との板ばさみ頭痛の種だった。そして二人の子どもの世話。朝六時半に家を出て夕方早めに帰宅するスケジュールをやり繰りし、夫と姑(しゅうと)の協力のもと、明るく乗り切ってきたつもりだったが、「どこかで我慢してたのかな……」。


職場の鬱+摂食障害はある意味のセットのようなもの。負荷のかかる環境ではひきこもりも起こる。就労現場からのひきこもりだ。


ただ、ひきこもりという行為は「○○さんが調子を崩して仕事を辞めた」というような形で見える。ひきこもってしまうと不可視だが、ひきこもる時には可視的になる。しかし、摂食障害を抱えつつ仕事を続行するという場合は、不可視になりがちだ。なぜなら、過食嘔吐というような行為は誰にも見られないように隠れて行われることが多いからだ。一見、何も問題を抱えていない人に見えても、実は鬱であり摂食障害でありということはある。もしかしたら、摂食障害は、ひきこもり以上に不可視な存在なのかもしれない。



働く女性に広がる「鬱」 落ち込む、眠れない、自殺願望…

 気分が落ち込み、仕事が手につかない。眠れない、物が食べられない。時に襲ってくる自殺願望……。こんな症状のうつ病と女性の社会進出との関連が、専門家の間で注目されている。責任ある仕事に就く働き盛りの女性たちにとって、昇進に伴う上司の期待や家事・育児との両立などがからみあい、ストレスになる傾向があるようだ。三十代の三女性の例を紹介する。

 

 ○焦り、頑張っても 化学メーカー社員39歳

 「ようやく喪が明けまして」。最近、病気について語れるようになった。二年前まで足かけ八年間、うつに苦しんでいた。

 最初に変調に気づいたのは二十九歳のとき。東京都内の会社に勤め、花形職場とされる商品開発のチームで活躍していただけに、会社を休み自宅療養を始めてすぐ、無力感に襲われた。新婚の夫の両親とのつきあいでもつまずき、思い詰めて手首を切った。その後、会社に復帰し、人事異動や出産など環境は変わったものの、自殺未遂と入院を繰り返す。

 一番ひどかった三年前には、買い物中に子どもから欲しい物をせがまれたことに恐怖心を覚えた。台所に立てなくなり、ビルから飛び降りかけた。ちょうど宣伝関係の仕事で忙しかった。

 再発するたび、何とかしなければと焦る。頑張る。深夜に公園を走ったこともある。

 「悪循環でしたね」

 人に甘えられない性格だったと振り返る。出産後も仕事のペースを落とさなかった。子どもがいる人というイメージを持たれ、大きな仕事から外されるのがこわかった。家でもだらしないのは嫌い。ぱりっとした格好をし、こまめに掃除を欠かさなかった。

 「長いトンネル」から抜け出せたのは、首つり自殺をしかけて浮かんだ家族の顔。医者から自殺も癖になるぞとしかられ、癖ならつきあえばいいと思い、気が抜けた。

 その後始めたバンド活動で、価値観の違う仲間たちと出会い、上司の顔をうかがうのがばかばかしくなった。

 

 ○泣けなかった私 マーケティング会社課長39歳

 「泣きたいと思ったことはない?」。昨年九月、医師からそう問われ、こみあげてくる涙を抑えられなかった。うつの診断は、だれより自分を驚かせた。

 決算が過去最悪に陥り、売り上げ目標値は高くなるばかり。上司と部下との板ばさみも頭痛の種だった。そして二人の子どもの世話。朝六時半に家を出て夕方早めに帰宅するスケジュールをやり繰りし、夫と姑(しゅうと)の協力のもと、明るく乗り切ってきたつもりだったが、「どこかで我慢してたのかな……」。

 二年前に女性として初めて管理職に抜てきされた。地位に関心はなかった。しかし、「上司の期待にこたえなければ。後輩のためにもがんばろう。今思うと金縛りにあったようでした」。

 発病後は早朝出社をやめ、家事も手抜きを心がける。出張を申し出て一人の時間を作った。通院は続けているが快方に向かっている。

 この間、部下たちが責任感を持つようになり、急成長。自分が自分が、との思いこみもちょっぴり反省した。

 

 ○「強い私」演じる アクセサリー店経営33歳

 不眠、食欲不振などの症状を感じ始めたのは一昨年の夏。恋人との別れをきっかけに、仕事への覇気がなくなった。自信家のはずなのに、先の不安だけが募った。でも従業員に弱いところは見せられない。しゃきっとした態度を通しつつ、書類を書くフリばかりしていた。

 精神科を無性に訪ねたくなった。いつも「強い私」を演じ、人を警戒してきて、悩みをうち明ける相手などいないことに初めて気づいた。

 ストレスを酒で解消してきたという知り合いの女性経営者(三二)と二人、口をそろえる。「年々、『男らしく』なってくるんですよね」

 

 ●完ぺき主義は禁物 専門家助言

 うつ症状を訴える働く女性たちが、カウンセリングに訪れる東京メンタルヘルス・アカデミーの村上章子・東京センター長は、「目立つのは『いい子』度の高い人」と指摘する。

 きまじめで、トラブルが起こると自分を責める。常に周囲に配慮する。企業社会でがんじがらめな男性に比べると、これまで女性はうつになりにくいと言われてきたが、社会進出が進み、女性もうつになりやすい土壌ができてきた。男性以上に、人間関係のこじれが引き金になって支障をきたす場合が多い、という。

 村上さんは「完ぺき主義は禁物。他人にうまく甘えることも大切」と助言する。

 心療内科医の生野照子・神戸女学院大教授は、治りたい一方で仕事への復帰を渋る患者の多さを通して、「自己分裂」した現代女性の一つの姿をみている。女性の社会進出が進み、責任あるポストに就く機会が増えたとはいえ、活躍の場が限られているのも現実だ。女だからという甘えと、男性と同等に働きたいという気負いとのはざまで、常に揺れている。「うつは心の風邪ひき。ちょっと腰掛けて、逆に利用してみて」と話す。

 

 【写真説明】

 カウンセリングをする村上章子さん(右)。家族にもいえない悩みに耳を傾ける=東京都豊島区の東京メンタルヘルス・アカデミー東京センターで

摂食障害の悩み、どう解消 斎藤学さん(ゴ問ゴ答)


摂食障害の悩み、どう解消 斎藤学さん(ゴ問ゴ答)
朝日新聞 1991年10月22日 朝刊

91年の朝日新聞から。NABAについての紹介。ちなみにNABAの会報誌は「いいかげんに生きよう新聞」という名前。玄田有史が「ちゃんといいかげんに生きよう」と言っていたのを思い出す。


摂食障害というのは、医者とかキャリアガール志願者に多いんですが、彼女たちは、社会的に偉くならきゃいけないけど、男の人からはかわいく見られなきゃいけない、という2つの理想の間で苦しんでいる。


私は、過食や拒食といった行動そのものを治療しようとは考えていません。NABAに顔を出しても、話を聞くだけのことが多い。私が治療者という立場で臨めば、親の目、世間の目、という彼女たちを縛る基準に、新たな拘束が加わるだけだからです。



摂食障害の悩み、どう解消 斎藤学さん(ゴ問ゴ答)

 NABA主宰の精神科医(さいとう・さとる)

 過食症や拒食症など摂食障害に悩む人が、若い女性に増えている。最近は大食と嘔吐(おうと)を繰り返す過食症が目立つ。1人で苦しむことも多い、こうした人たちの自助グループ「日本アノレキシア・ブリミア協会(NABA)」を主宰する、東京都精神医学総合研究所研究員で精神科医の斎藤学さん(50)に、病気の背景などを聞いた。

 <1>NABAがどういう活動をしているのか、教えてください。

 毎週1回、夕方の2時間ミーティングを開き、会員の人たちが話をするのが主な活動です。今まで隠してきたこと、過食や嘔吐のことはもちろん、万引きや性体験、たとえば30歳になって男性経験がない、という悩みなども、ここでは普通に語られます。原則として、言いっぱなしで聞きっぱなし。説教めいたことや、議論はしません。ありのままの自分を出しても大丈夫、という安心感を得てほしいからです。

 今年で6年目ですが、87年以降どんどん人が増えて、のべ1000人近くが利用しました。半年ぐらいで顔ぶれががらっと変わり、1回のミーティングに来るのは20人ぐらいです。このほか、会員の投稿をもとに「いいかげんに生きよう新聞」というのを月に1回発行しています。



 <2>なぜ、摂食障害は若い女性に多いのでしょう。男性の患者はいないのですか。

 ひとつには、女性の方が体に対する感覚が鋭敏だからだと思います。スリムであることが美しい、という画一化された価値観が世間にあるので、自分もやせて称賛されたい、と思う。摂食障害というのは、医者とかキャリアガール志願者に多いんですが、彼女たちは、社会的に偉くならきゃいけないけど、男の人からはかわいく見られなきゃいけない、という2つの理想の間で苦しんでいる。これらの理想は、往々にして彼女たちの母親が自分の夢を凝縮して、与えたものなんだけど。

 食べるというのは、彼女たちにとって抑制してきたものであり、一種の自己解放なんです。「食べている間は頭がまっしろになって、何も考えずにすむ」と言いますね。食べれば食べるほど、もっと食べたくなる。でも太るのは嫌だから吐く。そうして自分の体をコントロールする快感を覚える。過食症というのは、アルコール依存などと同じメカニズムをもつ嗜癖(しへき)行動だと考えています。

 男性にないわけではなく、NABAにも、数は少ないですが顔を出しています。スポーツ選手とか歌手志望の子とか、減量の経験から食べることへの快感がインプットされていたり、体への感覚が普通より鋭い人です。


 <3>摂食障害を治療するカギは、何なのでしょうか。

 私は、過食や拒食といった行動そのものを治療しようとは考えていません。NABAに顔を出しても、話を聞くだけのことが多い。私が治療者という立場で臨めば、親の目、世間の目、という彼女たちを縛る基準に、新たな拘束が加わるだけだからです。

 彼女たちに共通するのは、極端に自分に厳しいこと。自分のことが嫌いだと言い、「バカ、ドジ、豚娘」とののしります。だから私は、あなたが今やっていることでむだなことは何もないんだ、と繰り返し言うんです。食べることも、吐くことも、やせたいと思うことも。自然な自分を受け入れなさい、今の自分を認めて自分に気持ちいいことをしなさい、と。彼女たちはね、自分で治りたいと思えば治るはずなんです。


 <4>しかし、治りたい、という気持ちだけならだれもがもっているはず。そう願ってもかなわないから苦しむのではないですか。

 そうでもないですよ。極端なやせ、というのは病気への似姿なんです。彼女たちはサクセス依存症というか、失敗やう回することができない。いったん社会に出ると、もう休めないのです。そんな状態で一番いいのは、病気になることでしょ。彼女たちが、そうなることを必要としていたんです。

 摂食障害は彼女たちの息切れの結果で、それはまた回復へのきっかけでもあります。



 <5>過食症や拒食症で悩む人が増える、というのは、何か社会に対する警告のような気もします。

 摂食障害というのは、60年代の終わりから70年代にかけてアメリカで言われるようになり、西ドイツフランス、そして日本で問題になってきた。アジアでは今のところ日本だけです。きわめて効率優先の考え方が通る社会で見られるものなのです。

 今の社会というのは、過労死が増えたり、男だって苦しいわけですよ。彼女たちは、とても感受性が鋭いから、炭鉱の坑道で酸欠を知らせるカナリアのように、時代の酸欠を先取りして鳴いているんだともいえます。

 そういうと、ひ弱だという意味だけにとられそうですが、今の男社会が要求する既存の枠組み、たとえば出世競争にはまりこんで生きることでも、男に依存して生きることでもない、第3の生き方ができる可能性をもった人たちだとも言えるんです。

 (聞き手・山脇文子 写真・上田頴人)


 ●記者メモ 簡単に消えぬ「スリム信仰

 私はどちらかといえばやせている方だが、それでも、あと2キロぐらい体重を落とせたら、とひそかに思っていた。体重を減らせば、減った2キロ分、気持ちも軽くなるような気がするのだ。トレンド雑誌がいくら「太めが流行」と書いても、一度染み付いた「スリム信仰」はそう簡単に消えるものではない。自分を顧みてそう思う。

 摂食障害についての全国的な調査はほとんど実施されておらず、その実数はなかなかつかめない。斎藤さんたちが昨年女子大生300人に聞いたところでは、3%弱に食べて吐く習慣があったそうだ。「食べ出すと止まらないのではないかと思い食べるのが怖い」が60%、「食べた後に後悔する」が50%をそれぞれ超えており、斎藤さんは「一部の女の子だけの奇怪な現象ではない」という。

 NABAの活動は東京中心だが、名古屋にも最近グループができた。親と離れて暮らす必要がある人のために、マンションを借り「NABAハウス」として開き、現在3人がそこで生活している。NABAの連絡先は、東京都世田谷区上北沢4の32の11の707(電話03−3329−0122)。自助グループはこのほか、大阪に「たんぽぽの会」があり、大阪市立大医学部付属病院の小児科が窓口になっている。

00036 1991年10月22日 朝刊 2家 018 02558文字

    
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