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2008-05-31

[]アスペルガー症候群薬物療法


山田佐登留,2007,
「薬物療法 (特集 アスペルガー症候群--病因と臨床研究)----Pharmacologic treatment of Aspereer syndrome」
『日本臨床』65(3)(通号 910),522〜526

アスペルガー症候群への薬物療法についての論文。大筋では、これと言って有効な薬物は無いということになる。


 これに対してアスペルガー障害の生物学的研究はどうなっているだろうか.本誌別稿にみられるように各種画像研究や遺伝子研究は盛んに行われているが,神経伝達物質の質的あるいは量的異常などといった薬物療法のきっかけとなるようなアスペルガー障害に想定される本質的な異常は見いだされていない.また動物モデルの確立も非常に困難である.現在まで人に対してアスペルガー障害の症状を来すような薬物やストレスは見つかっておらず,またアスペルガー障害の症状を改善する薬物も見つかっていないのが現状である.そのためアスペルガー障害の動物モデルは確立されるに至っていない.またアスペルガー障害の各種の症状は動物モデルの行動として評価することが困難で,AD/HDの動物モデルが多動や学習の障害など比較的動物でも評価しやすい行動を症状の指標とすることができるのとは対照的である.


AD/HDは例えば落ち着きがないということに対しては、落ち着きを与える薬というのは可能である。しかし、アスペルガー症候群は、言語・想像力・社会性の発達の遅れなので、薬理作用で何とかするのは非常に難しいように思える。AD/HDが動物モデルの適用がしやすいが、アスペルガー症候群は難しいという点は、この2つを同じ「発達障害」というものに包括していいのか?という問題にも繋がる。また、AD/HDではメチルフェニデートの早期投薬で、離薬後も効果が残ることが確かめられていたり、「治療」の可能性も見えてきている。


以下は自閉症の薬物療法について。


現在まで自閉症のコミュニケーションの障害や認知障害など本来の症状を改善する目的で様々な薬物が試みられてきたが,残念ながら適応症に自閉症がある薬物は現在のところない.我が国でも自閉症の幾つかの症状に対し改善傾向がみられるのではないかという期待から,セロトニン系の補酵素であるテトラハイドロキシバイオプテリンなどをはじめ,幾つかの薬物の臨床治験が行われたことがある.結局どの薬物もプラセボ(偽薬)に対して明らかな有用性を示すことができず,自閉症に対して適応となっている薬物はない。


効く薬はない。適応という意味であれば、米国ではリスペリドンが自閉症の適応を受けていたように思う。これは、下記にもあるように、突然の不穏興奮,攻撃行動や自傷行為,強いこだわり行動に対して処方されるもので、自閉症を治療できるという意味では無いと思われる。


以下、アスペルガー症候群によって引き起こされる精神症状への有効な薬物療法について。


 メチルフェニデートはAD/HDの症例に対して約2/3に効果があるのに比し,アスペルガー障害や高機能自閉症の多動や集中困難に対する有効性は約1/3程度という印象である.

 固執や変化への抵抗などの強いこだわり,強迫症状に対してはフルボキサミンパロキセチン,サートラリンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬3)(SSRI)や古典的な抗うつ薬クロミプラミンが投与される.

 突然の不穏興奮,攻撃行動や自傷行為,強いこだわり行動に対して抗精神病薬が処方される.ハロペリドールやフェノチアジン系の以前からある抗精神病薬に加えリスペリドンが効果的な症例が多くみられ,近年ではリスペリドンを第1選択とする場合が多いようである.いずれの薬物も鎮静系の副作用が出現して,いつもと違う自分に対しかえってイテイラする場合もあるので,投与後の状況を確認する必要がある.クエチアピン,アリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬についても自閉症に対する投与が少数例で報告されており,ペロスピロンについてはまだ報告が見られないが,今後非定型抗精神病薬の自閉症やアスペルガー障害への使用経験が増えてくると考えられる.前述したピモジドの各種症状に対する効果は限定的な印象があり,現在では症状の軽い例でのみ用いられているようである.アスペルガー障害患者は成長過程で対人関係上のトラブルから被害的となりやすく,ときに統合失調様症状を呈したり,統合失調症を併発したりすることがある.この場合には,上記抗精神病薬をはじめとする一般的な抗精神病薬による薬物療法が必要となる.

 情動調節薬であるカルバマゼピン,バルプロ酸リチウム躁状態抑うつ状態を伴う場合には用いられる.またこれらの薬物は突然の不穏興奮,攻撃行動や自傷行為,強いこだわり行動に対して有効な場合もある.特に抗けいれん作用を有するカルバマゼピンとバルプロ酸はてんかんや脳波異常を合併するアスペルガー障害の各種の行動上の問題については第1選択薬または第2選択薬となる.ジアゼパムなどの抗不安薬は一部症例に対して有効だが,一部症例では逸脱行動や不穏を増強してしまう場合もある.不眠やチック症状を併発する場合の薬物の選択はその症状に対する一般的な治療に準じる.

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