井出草平の研究ノート RSSフィード

2009-09-21

[][]ロストジェネレーションは計量的に支持されない

ロストジェネレーションというのは1973〜1982年生まれの世代のことを指す*1。景気の悪かった、いわゆる「失われた十年」に就職をしなければならなかった世代である。彼らは不景気により、正規雇用を得ることができず、割を食ったということである。2005年に景気回復があり、これ以降の世代は就職状況が良かったという認識から、狭間の世代がロストジェネレーション(ロスジェネ)と呼ばれている。


ロスジェネのうち先頭の1973年生まれの人は高卒で1992年、短大卒で1994年、大卒で1996年に就職している。一番後ろの1982年生まれの人は高卒で2001年、短大卒で2003年、大卒で2005年(就活は2004年)に就職した人である。


Wikipediaにはこのような解説がある。


この氷河期世代には、安定した職に就けず、派遣労働やフリーターといった社会保険の無い不安定労働者プレカリアート)である者が非常に多い。『反貧困』の著者である湯浅誠によると、負傷で解雇された氷河期世代の派遣労働者は、「夢は自爆テロ」と言い放ったという[2]。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%B1%E8%81%B7%E6%B0%B7%E6%B2%B3%E6%9C%9F

このように危機感を煽る言論が多々見られる。『ロスジェネ 創刊号』という雑誌も創刊されているし、「ロスジェネ論壇」というのもあるらしい。ロスジェネ仮説は当たり前のように(特に左よりの言論人から)支持されているが、この仮説を支持することというのは、どういうことかを少し考えてみなければいけないのではないかと思う。





大卒新卒求人率倍率をみると、景気が良くなれば新規採用の雇用は改善されているように思える。このような見方ができることからもわかるように、ロスジェネ仮説を支持するということは、景気循環仮説を支持することを意味している。つまり、景気の悪い「失われた十年」に学校卒業をしたから、正規雇用を得られなかったので、景気が良くなれば、正規雇用につけるということである。ロスジェネ仮説の背後には、景気循環仮説がある。そこから導き出される処方箋は雇用回復のためには、景気回復を最優先にすることになる。はたして、これは真実なのだろうか?



若年非正規雇用の社会学‐階層・ジェンダー・グローバル化 (大阪大学新世紀レクチャー)

若年非正規雇用の社会学‐階層・ジェンダー・グローバル化 (大阪大学新世紀レクチャー)


太郎丸博の本では、下記の2つをロスジェネ仮説としている。

(仮説1)性別と年齢をコントロールしたとき、「失われた世代」の非正規雇用率は、「ポスト失われた世代」よりも高い。

(仮説2)性別をコントロールしたとき、2004年以降「失われ た世代」では非正規雇用率は減少していないが、「ポスト失われた世代」では減少している。


つまり、景気循環仮説が正しければ、ロスジェネ世代より、そのあとの「ポスト・ロスジェネ世代」(1983年生まれ〜)の方が、非正規雇用が少ないはずである。しかし、実態はそうはなっていない。




上に行くほど非正規雇用率が高い。男性・女性ともロスジェネ世代より、ポスト・ロスジェネ世代の方が非正規雇用率が高いことが示されている*2


15〜24歳時点に関しては、「失われた世代」よりも「ポスト失われた世代」のほうが非正規雇用率が高いのである。要するに、若い世代ほど非正規雇用率は高まる傾向があるのであり、そのような傾向は、単純に就職した時期の景気動向に還元できないのである。(pp144)


景気回復によってもたらされた雇用状況の好転は大学新卒者に限ってのことなのだ。ロスジェネ仮説が大学新卒にしか焦点を当てていない視野の狭い議論(高卒者のことなどは考慮されていない)ことがわかるのである。


そして最も重要なことは「若い世代ほど非正規雇用率は高まる傾向がある」ということである。年齢の高い世代ほど非正規雇用が少ない=正規雇用についていることがはっきりとグラフから確認されることである。


若年者の正規雇用率が高まっていくのは、1980年くらいから始まる長期トレンドであるが、景気回復によって、この傾向が変化したことはない。変化したのは、大卒ホワイトカラーという恵まれた立場の人間たちの就職率(正規雇用率)が高まった程度である。景気回復による正規雇用の椅子は新卒の大卒ホワイトカラーに吸い取られて、就職の難しい高卒者や労働市場全体にまでは波及しない。現在の若年非正規雇用問題というのは、景気回復では決して解決しないのである。


非正規雇用と正規雇用という「身分」の差というのは、景気回復でどうにかなるものではない。ロスジェネ仮説というのは、弱者擁護(ロスジェネの当事者が不利益話被っているというアピール)と意図されて主張されているのだと思う。ロスジェネ仮説を主張する人たちはいくつかの重要なことに気づいていない。


第一に、ロスジェネ仮説は間接的に景気循環仮説を支持していることになる。

第二に、ロスジェネ仮説を主張することは80年代から既に始まる「若い世代ほど非正規雇用率は高まる」という日本の労働力市場の構造を隠蔽することになる。


若年非正規を擁護するためにロスジェネという論点を使うことはおそらく有害である。

なぜならば、第一に、景気回復によって非正規雇用問題が解決するような俗説を広めることになるからだ。景気回復によって非正規雇用問題ができないことは、日本だけではなく、イギリスの若年非正規雇用研究Ashton et al.(1990)*3などでも実証されている。

第二に、非正規と正規の待遇差をなくして、所得移転をするという本来されるべき議論がどこかへ飛んでいってしまうからである。


私たちは非正規雇用を議論する時に、ロスジェネという言葉がどのような「効果」と「意図せざる結果」を招くかということを考えていかなければいけないのではなかろうか。

*1朝日新聞が2007年の年始にロストジェネレーションという特集を組んだことからこの用語が定着した

*2:グラフは太郎丸博『若年非正規雇用の社会学‐階層・ジェンダー・グローバル化 (大阪大学新世紀レクチャー)』145ページより

*3http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0333451708/

ロスジェネくんロスジェネくん 2009/09/22 10:41 大卒求人倍率が 1.0%-2.5% というのは、どういうことでしょうか?

osomatsuosomatsu 2009/09/22 10:42 > ロスジェネのうち先頭の1973年生まれの人は高卒で1992年、短大卒で1995年、大卒で1996年に就職している。

細かくてすみませんが、「短大卒で1994年」ですね。

興味深く読ませていただきました。マスコミが「ロスジェネ」をとりあげるのは本質から目をそらせるためなのかと邪推してしまいます。

渡邊渡邊 2009/09/22 12:46 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/
日本一有名なブログに取り上げられていますよ。

iDESiDES 2009/09/22 14:05 >osomatsuさま
ご指摘ありがとうございます。なおしました。

> ロスジェネくん
仕事が欲しい人の数=仕事の数→1.0%。2%というと仕事の数の方が多くて、働きたい人より2倍仕事の口があるということですね。ざっくり言うと。

>渡邊さま
池田信夫さんのところですね。自然失業率と同じなどと書かれてありますが、たぶん違うと思いますよ。あと、所得移転という言葉を見て、雇用調整助成金だと思いこまれているようですが、非正規と正規の待遇差をなくすことが所得移転をおこすと書いているだけです。所得移転という言葉を助成金だと思われているみたいですが、この言葉は別に助成金を意味しませんし、「後半は誤りである」と書かれるのは何だかなぁと思います。

ななしななし 2009/09/22 15:23 厚労省の統計によると、80年生まれが18歳時の高卒求人数・求人倍率共に、84年生まれのそれより高かったようです。また76年、80年生まれの高卒求人数・求人倍率はさらに高い水準です。もし高卒段階の雇用状況がその後も引き続くのであれば、景気循環仮説の妥当性は否定しきれないのではないかと。ひょっとしたら紹介された書籍で既に論じられているのかも知れませんが。

それと確か経済学者の大竹文雄さんの研究だったと思うんですが、日本の生涯賃金は新卒時の景気で概ね決定されるそうなので、そうした状況を変えたいのだと言う規範的な議論はともかく、景気循環の多大な影響を否定するのは、直感的な部分を除いてもちょっと困難じゃないかと思います。

ちなみに景気循環と「非正規の正規化」の接点については結構面白い記事がありますよ。

戦争よりもバブル──フリーターの数を減少させるもうひとつの方法 - ラスカルの備忘録
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20090218/1234970909

ななしななし 2009/09/22 15:37 あと中卒求人も高卒求人と同じような状況みたいです。76年生まれが中学新卒を迎えたバブル期は中卒求人が何と10万人!バブルって凄い時代だったんですねえ。それから少し下がって80年生まれでは概ね2-3万人。丁度10年前から1万人を切るようになって、そのままずっと低迷しているみたいです。

YuichirouYuichirou 2009/09/22 15:50 ロスジェネくんじゃないけどツッコまずにはいられなかった。
> 仕事が欲しい人の数=仕事の数→1.0%。2%というと仕事の数の方が多くて、働きたい人より2倍仕事の口があるということですね。
それってパーセントの意味間違えてませんか? 倍率1倍=100%、2倍=200%ですよね?

iDESiDES 2009/09/22 15:52 %が余分なんですよね。訂正しておきます。

iDESiDES 2009/09/22 15:52 >ななしさん
求人倍率の話ではなくて、現職どの雇用形態かということでかんがえなくてはならないかと思います。1985年から現在まで非正規雇用は右肩上がりで上がっています。バブルの時点で多少下がったりするということはあると思いますが、景気循環でこの右肩上がりを説明することは不可能です。景気循環で説明できるならば、何らかの相関関係(景気が良くなれば少し遅れて非正規雇用率が下がる等)がなければ実証できません。あなたの直感を否定して申し訳ありませんが、統計からは景気循環仮説は支持できません。

ななしななし 2009/09/22 16:02 >iDESさん

大学進学率を見ると、丁度1985年(昭和60年)頃から急上昇しています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/03090201/003/002.pdf

もしかしたら学生のアルバイトは含めない統計かも知れないんですが、そうでなければこの変化の影響は結構大きいと思います。そもそも85年はプラザ合意に始まる円高不況元年(であり、日本のマクロ経済政策の迷走が始まった元年)ですから、景気循環仮説を否定するにはちょっと弱いんじゃないでしょうか。

それと自営業者も趨勢的に数を減らしていますから、その分もひょっとしたら影響しているかも知れませんね。
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaa200301/img/fb2.2.2.10.gif

アマチュアアマチュア 2009/09/22 18:11 赤木さんはしりませんが、雨宮さんはイス取りゲームの例えをよくされてい
るので、景気回復による若年雇用問題の解決を拒絶されたり否定はされてい
ないと思いますよ。

もうご記憶の外にあるのかもしれませんが、05年からは景気の回復と団塊
世代の退職もあり「第二新卒」という何らかの理由で就職で失敗し、
それまでであれば求人市場から締め出されていた層も「再チャレンジ」でき
るようになっていたんですが… あと製造業では企業の非正規社員の
正社員登用なんかも盛んに行われていたんですがこちらのデータでフォロー
はされているんでしょうか。

正規と非正規で格差が出るのはおかしいと主張されているとお見受けしま
すが、個人の生産性の差で所得に差が出るのは当たり前であって、要は
低い生産しかできなくても、人間的な生活が保障される社会を
実現することを考えられたほうがいいんじゃないでしょうか。望んでフリーな
生活を選択される方もいらっしゃることですし。そのためには
今の日本であれば景気対策が一番手っ取り早いと思うんですが。
なんで調整コストが高い上、副作用が大きい選択が「本当の解決」で
わざわざ「選択しなければいけない」のかさっぱり理解できません。

iDESiDES 2009/09/22 19:01 >アマチュアさん
景気回復によって非正規雇用と正規雇用の差がなくなる訳ではないので、雨宮さんの文章のところは、まったく逆の意味にとられているのではないかとおもいます。個人の生産性の差で所得に差が出るのは当たり前ならば、正規と非正規の格差の撤廃が結論となるはずです。自由競争にしましょうというのが筋ではないでしょうか。
生産性の低いものが非正規で、高いものが正規雇用されているのではなく、同じような仕事をたとえしても給料が全く異なるというのが実態です。ですので、これは自由競争による経済格差ではなく、社会的に決定された「身分」によって生み出されている格差と言った方が妥当なのです。
また、景気対策で非正規雇用問題が片付くとおっしゃるならば、エビデンスを出していただきたいですね。

アマチュアアマチュア 2009/09/22 19:44 雨宮さんは「経済のパイが一定の中で椅子取りゲームをしている状況だから、
パイを増やすか椅子を細かくするしかない」と主張しており近著でも
経済学者の方とそうした点で議論されているので、「雨宮は正規雇用と
非正規雇用の差をなくすことを目標としているのに景気回復で
解決すると言っている。けしかんらん」というあなたの批評は、
的外れだと言ってるんです。

同じような仕事をしても、給料が異なるのはおかしいという主張は
僕は賛同しません。正社員と非正規社員とでは将来を含めた会社の
期待役割がまったく異なるので。将来的に会社の基盤的役割を担う人でも
マネジメントの道かプロフェッショナルの道か社内での
出世する方向でまったく待遇が異なりそれこそ百花繚乱するんですが、
そういうのも是正しないといけないんでしょうか。

現状の労働市場の解決地点は、失業率の改善と非正規層の待遇が上昇するこ
とだと思っているので、そうであればいくらでも書籍を紹介しますが、
あなたのおっしゃる最終目標の、「正規・非正規の差が無くなること」
のエビデンスを持っているのかと言われれば、そんなエビデンスは
持ち合わせていません。ちょうど旧共産国がそれを目指したと聞いてい
るので戦後の旧ソ連や文革〜解放政策の間の中国の例でも調べて
おきましょうか?

本当は自由競争によって市場が皆が望むように機能すればいいと
思うんですが価格の決定速度は市場によって異なるし、情報の非対称性やら
寡占・独占の問題があるので、100%委ねるのはどうかと思うんですけどね。
男女差別はその典型だと思うし、親の収入で進路左右されたり、病気・障害
抱えた人があぶれたりと。だからこそ国には社会保障の整備や
安定した景気を生み出してほしいんですけどね。

iDESiDES 2009/09/22 21:01 エビデンスを持ってないならなんで自信満々コメントできたのやら

ななしななし 2009/09/22 21:13 「身分制」なら、どうして上の世代は大卒年齢以後に正規と非正規の割合が上下に変動してるんでしょう?しかも各世代が軌を一にして。

レス飛ばされたんですが、なんだかコメント欄が変な空気になってきたので、僭越ながらここまで勝手にまとめますと、

・高卒中卒の求人状況を見ると、かえって景気循環仮説を否定し切れない
・景気循環以外のトレンドがあったとしても、それは雇用環境の悪化を意味しているとは限らない

正社員への需要は「長期で囲んで安く使い倒す」という動機が主因。であれば、90年代後半一時小康を保っていた非正規雇用率が、再び増大し始めたのと軌を一にして進行した、デフレの影響を避けて語る事は出来ないでしょう。人件費が固定費に機能すればするほど、インフレ環境とデフレ環境ではその経済的有用性が逆転します。売り上げが落ち、それに連れて固定費用の負担が徐々に重くなるデフレ環境においては、正社員を雇用するのは賢明な選択と言えそうもありません。

そして言うまでもないですが、解雇規制の緩和や税制・社会保証状の正社員優遇是正と、景気重視の姿勢は両立します。というか普通に両方主張した方が良いんじゃないでしょうか?アマチュアさんの仰るように、実施の容易さから言って、後者に力点を置くべきだという考えも十分ありでしょう。というか、景気が良い方が、多数派も安心して解雇規制緩和に賛同出来るはずです。

あと本来どうでもいいんですが、以下の一節がちょっと気になりました。

「景気回復によって非正規雇用問題が解決するような俗説を広めることになるからだ」

そういう『俗説』って本当に新聞やテレビで目や耳にします?どちらかと言うと非正規労働者って蔑視込みの「身分」扱いされてるように思うんですけど。だから派遣規制強化なんて話がマニフェストになったりしています。むしろ数年前までは「景気回復すると改革出来なくなってしまう」と宣った方が高支持率で総理やっていた国ですよね。

iDESiDES 2009/09/22 21:59 > ななしさん
中高の求人倍率が瞬間的に良かったとしても現状の雇用形態はグラフの通りなので、反証にはなりませんね。反証の要件を満たしておりません。長期トレンドの方は特に男性に顕著ですが、年長世代の方が非正規雇用率が低いことを景気循環でどうやって説明できるのでしょうか?普通に読めば、若年の方がより非正規雇用率が高い、年齢の要因話加味してもその傾向は変わらないと読むべきグラフです。
賃金の下方硬直性の話らしき説明をされている所から下のはつながりがよくわかりません。
景気回復なり、継続成長で達成できるものと、それだけでは不十分なものがあります。景気回復を実現した数年前のテレビ番組や雑誌で就職戦線は好調だ、売り手市場だ見聞きしたの私の空耳だったのでしょうか。その裏でこれだけ非正規雇用が増えたこと、景気が回復したとしても改善されず、ますます若年の非正規雇用率が高まったのは事実でしょう。

MHCMHC 2009/09/22 22:02 図4.12を見る限り、各世代とも非正規雇用率のピーク年代は
恐らく2004年になりますね
以後どの世代においても下降しており
大卒求人倍率の推移(景気?)と同調しているようにも見えますが
いかがなものでしょうか

ただし
正規、非正規雇用問題は
単純に考えても
景気と年齢の交互作用によって生まれるでしょうから
一方の否定がもう一方の肯定にはならないのは明らかでしょう
ですので分散分析にでもかけないと
はっきりしたことは云えないだろうと私は思います

ロスジェネ問題をことさらクローズアップする論者は
ポリティカリーコレクトとして確信犯的に取り上げている
と私は思っています
エビデンスは重要ですが
それを待っているとロスジェネ世代は全く救われない
危険もあるでしょう
要するにロスジェネ支援がポストロスジェネ支援にもなり
若者支援の総体なりうるのかと・・・

蛇足ですが
私は某精神保健福祉センターで
ひきこもり支援に携わっており
井出さんのエントリーは興味深いものばかりです

ななしななし 2009/09/22 22:46 >iDESさん

> 中高の求人倍率が瞬間的に良かったとしても現状の雇用形態はグラフの通りなので、反証にはなりませんね。

何の反証でしょう?過去の中卒高卒の求人倍率(景気循環の代理変数)でむしろグラフの結果が説明されるという話ですよ。無論デフレ期待定着の影響もあるでしょう。景気回復自体が潜在GDP水準と比べて大したことがなさそうな点も大きいですね(デフレですから、フィリップス曲線はまだまだ水平なはずです)。

よって、グラフはむしろ景気循環仮説の反証には足りないというわけです。

>前のテレビ番組や雑誌で就職戦線は好調だ、売り手市場だ見聞きしたの私の空耳だったのでしょうか。

ええ、それは84年生まれの大卒者(だけでなく実は上の世代も)にとっての事実レベルのお話ですから。しかし世間ではそれが非正規労働者の状況を改善するものだとは理解されていないんじゃないでしょうか。派遣切りに規制強化(規制緩和を言う人もいますが)という処方箋の組み合わせは、そういう意識の反映だと思いますね。

一つ確認しますが、景気循環以外のトレンドが存在するとしても、景気の好転が正規雇用を増やす(というか労働条件を改善する)一助になる事はお認めになりますよね?この点がマイナーだとするには、かえって強力なエビデンスが必要だと思いますね。まだ足りないように思います。

ななしななし 2009/09/22 23:05 もちょっと補足します。各世代のグラフの縦軸切片を同じ高さに合わせると、大卒時点で非正規率が低下したのは、ここ10年だと84年世代だけですよね(それ以前はデフレ不況が悪化する前の世代です)。高卒時点の数字をもっと詳細に突き詰める方が良いんじゃないでしょうか。

マジレス赤字マジレス赤字 2009/09/23 00:28 大学進学率の変動を考慮に入れてもう一度再考してみる余地はあるかもしんない。
大学はとっくに「高等教育を受ける資格のある人」の場では無いので、大学だけを見てもそれなりに説得力のあるデータが得られるんじゃないでしょうか。

赤木智弘赤木智弘 2009/09/23 15:42 こんにちは、記事に名前の出ている赤木本人ですけど、
その「ロスジェネ仮説」ってなんですかね?
まぁ、ロスジェネ論壇みたいなものに、くくられることはありますし、
同じ世代として総称されることは嫌ではありませんが、
少なくとも私はその「ロスジェネ世代だけが不幸である」とか「景気回復のみで問題が解決する」なんていうロスジェネ仮説を言った覚えはありませんし、その考え方に同調もしません。なんか、労働系労組あたりの主張と混ざって、混乱されてるんじゃないでしょうか。
そもそもロスジェネ論壇としてくくられているからといって、その主張までもをひとくくりに考えるべきではないし、その差異が分からないのであれば人の名前なんて記事の中に書くべきではないですね。
少なくとも、私は、あなたのおっしゃるレベルの主張なんか、していませんよ。

iDESiDES 2009/09/23 15:45 フィリップス曲線は失業者についてのものなので関係ありません。非正規雇用とは働いている人で、失業者というのは働いていない人です。専門用語を並べられていますが、何について検討しているか理解されていないのではないでしょうか。学生に関しては、総務省の『労働力調査』は学籍を持つ者、持たない者で別々に集計を行っており、太郎丸先生が出されているグラフは学籍を持たない者に関しての推定グラフです。その他もあまり関係ないことばかりですね。関係ないことを書かれても返信に困ります。景気循環仮説というのは、景気の好転が正規雇用を増やすか/増やさないかという話ではありません。根本的な認識ミスをされているコメントが多い気がします。景気回復で正規雇用が増えると言ってもくの字に波打っている程度の効果です(曲線推計なので多少大きく出ているはずですが)。グラフはコーホートによって非正規雇用率が異なること、若年の非正規雇用率が高く、年齢によっては説明できないこと、景気循環でトレンドが変化しないということを意味しています。

iDESiDES 2009/09/23 16:19 >赤木智弘さん
記事でお名前をお書きしましたが、ご本人がこのようなことは言ってらっしゃらないということなので、削除させていただきますと共に、失礼をお詫びさせていただきます。

ななしななし 2009/09/23 21:04 > iDESさん

> フィリップス曲線は失業者についてのものなので関係ありません。

いいえ、失業率が下がれば徐々に人手不足になります。企業は人手不足になれば、良い労働条件を提示して労働者を確保しようとするでしょう。そして「良い労働条件」の中には正社員採用も入って来ます。84年生まれ大卒者の新卒シーズンに非正規雇用の比率が下がったのはその為です。

ただ、長さだけは「いざなぎ超え」と言われた前回の景気好転局面ですが、デフレトレンドは十分には改善せず、失業率は自然失業率水準には程遠い状況だったと考えられます。つまり、労働市場全体ではまだまだ人余りだったわけで、正規雇用がさほど増えなくても当然でしょう。

ちなみにデフレで失業率が上がるのは、企業内部の労働者へ企業外部の労働者から所得移転が起きる為です。有業者の(実質)賃金が引き上がれば、外部から新規採用する余裕がなくなりますよね。

> 太郎丸先生が出されているグラフは学籍を持たない者に関しての推定グラフです。

やはり学籍者は除外していたのですね。失礼しました。すると残る要因は、円高不況と自営廃業による流入と86年の一部専門職派遣解禁ですかね。

> 景気回復で正規雇用が増えると言ってもくの字に波打っている程度の効果です

では景気好転で正社員採用が増える事はお認めになったわけですか。よかった。バブル崩壊後、さほど景気の良い時期が続いたわけではないので(どちらかというとささやかな好況と酷い不況を繰り返している)くの字に波打つ程度だとかえって説明に十分でしょう。本当に人手不足になれば、もっと賃上げが頻発してインフレになっていたはずですが、実際はデフレ気味でした。非正規雇用が増えたのは、単に景気が不十分だったからです。

> コーホートによって非正規雇用率が異なること、若年の非正規雇用率が高く、年齢によっては説明できないこと、景気循環でトレンドが変化しないということを意味しています。

いいえ。同年の生まれでも中卒・高卒・大卒と新卒採用の時期が異なる集団があり、世代毎の非正規雇用率の違いは、中卒高卒段階の求人状況(景気)が若い世代ほど酷かったという事実とむしろ整合的なはずです。「売り手市場」以前に非正規率が高く、その後に非正規率が低下したのは、景気循環によって説明可能でしょう。

まあいずれにせよ、十分な好景気があれば非正規雇用率が低下する事はお認めになったようなので、ここまでにします。恐らく「世代ではなく新卒時の年次でロスジェネを括り出す方が合理的だ」と言った程度で済む話でしょう。どうも景気の回復だけで十分だと主張している人も見当たらないようですし。

そして既出の通り、解雇規制緩和や税制や社会保障での正社員優遇を、多数派の同意を得て是正する意味でも、十分な好景気は追い風になるはずですから、制度改定と好景気の追求はむしろ両方必要で、順序から言ってどちらかといえば後者に重点を置くべきという考えにも一定の合理性があるでしょう。ではここまでということで。

iDESiDES 2009/09/24 00:37 非正規雇用について書いたエントリについて失業の話しかコメントできないというのは、残念としかいいようがありません。非正規雇用についての研究かなにかを1本でも読まれれば、非正規雇用問題に対して失業のコメントをしているおかしさに気づかれるのではないかと思います。現在の日本の労働人口の1/3は非正規雇用であって、景気循環などでどうにかなるものではなくなっています。景気回復でなんとかなると考えている人が一定数いる限り、研究者としては構造的問題の根深さを指摘し続けていかなければならないのだと思いました。

一医師一医師 2009/09/24 15:42 横レス失礼します。
非正規の問題を考察するのに失業率は絶対に欠かせません。
景気と失業率を捨象して何が分かるというのでしょうか?

iDESiDES 2009/09/24 19:00 現象が起こるには多様な要因が想定できます。この場合は景気循環が非正規の分布の及ぼす影響よりも、長期構造的の方が強力であると言っているのです。景気と失業の問題を捨象しているのではありません。景気循環によって多少の雇用形態の変化が見られても、それ以上にコーホートによって雇用形態が決定されているということです。

ロスジェネくんロスジェネくん 2009/09/24 19:14 > 一医師 さん

景気と失業率の問題と、正規雇用/非正規雇用の割合変化および産業構造の変化の問題は分けて考えるべきです。
単に景気と失業率の問題であるならば、過去100年以上世界中で景気循環としてその度に顕在化しているはずです。今回の非正規雇用は過去10年間の、経済のグローバル化と、国の雇用流動政策によるものでしょう。結果として景気が悪くなり、失業率が下がり、それと同じタイミングで非正規雇用の問題が目に見える形で現れているだけで、「絶対に欠かせません」というほどの因果関係はないと思います。

絶対に欠かせないのであれば、どのような考察をされたのか具体的に書いていただいた方がよいかと。

(2005-2007年頃の好景気にも、非正規雇用の問題はリスクとしてありましたが、それは好景気ゆえに現れていなかっただけです。

一医師一医師 2009/09/24 19:47 構造問題と言いますか、身分は「正社員」「非正規」だけなのでしょうか。「正社員」「非正規」「非自発的失業者」「自発的失業者」と最低でも4つあると思います。需給が締まらない事によって非正規の待遇が悪くなってしまった事が「非正規問題」でしょう。なぜ需給がおかしくなるのか、失業率が大事なのかはななしさんの書き込みによく解説されていると思います。

雇用形態云々は本質なのかな? 完全雇用であり需給が締まり、選択の自由があればそれは問題とは言わないのではないかと思います。(ex 超過需要で正規よりも高給なバイト医師、バブル時代に高給を謳歌した非正規)

ここで議論をするつもりは無くただ私のような考えの人も居るということです。

一医師一医師 2009/09/24 20:15 要は「大胆な財政金融政策で、デフレーターをプラスにして、正社員の椅子をがっちり増やせ」という事につきます。景気回復は一番の処方箋と考えます。

ZanpanoZanpano 2009/09/26 04:31 > 一医師さん
井出さんは、景気と正規雇用率との間に、強い相関が見られなくなっていることを述べられています。OECDの調査結果が示すように、日本では解雇規制が強くため、企業側に正社員化のインセンティブが低く、景気の好転だけでは非正規雇用の問題は解決できません。従って景気が好転しても、非正規雇用の一つの形態である派遣を禁止したり正規雇用を強制したりすれば、労働力の流動性が更に低下し、失業率は更に上昇し、生産性の低い正社員が企業に居座り続けるという好ましくない結果を招きます。この意味で失業と非正規雇用の間に関係はありますが、景気の悪化と非正規雇用率の上昇には強い因果関係は認められないというのが主旨であろうかと思います。

ななしななし 2009/09/26 08:50 また過去コメントも読めないような人が現れたのでもう少し。労働市場の改革はいいんですが、そうした規範的な主張に引っ張られ過ぎると数字を誤解してしまうかも知れません。さて、

・非正規雇用は一度はまり込むと二度と正社員になれない
・企業の正社員需要の割合は低失業率下で増え、非正規需要の割合は高失業率下で増える
・高校進学率を95%、大学進学率は50%とみなす

このような条件を大雑把に考え、次に労働力調査から各年代の中卒時点・高卒時点・大卒時点の年間完全失業率を割出します。そして、

・中卒時点の失業率に0.1、高卒時点の失業率に0.9を乗じた数字を「大卒以前の各年代の非正規需要」とする
・中卒時点の失業率に0.05、高卒時点の失業率に0.45、大卒時点の失業率に0.50をそれぞれ乗じたものを「大卒時点の各年代の非正規需要」とする

こうして縦軸に非正規需要、横軸に大卒以前と大卒時という2時点を置きますと、出来上がったグラフは図4-12の左端部(20-25歳ぐらいまで)とほぼ同型になります。すなわち、年代が進む毎に非正規需要は増加し、84年世代では大卒時に非正規率が低下して、80年世代のそれに接近します。よっぽど暇だったら確かめてみて下さい。ま、所詮雑な仕事なんで。

ロスジェネくんロスジェネくん 2009/09/28 09:28 ななしさんの話は「十分な好景気」が「多くの非正規雇用者を正規雇用に転じさせるのに十分な好景気」というトートロジーにしか見えなんですよね。景気循環の話での好景気じゃなくて、80年代バブル相当の好景気という意味でしょ。

ななしななし 2009/09/28 22:32 > ロスジェネくんさん

バブル期に非正規が正規化したというようなリンクは提示しましたが、あなたのコメントの直上を見ればわかるように、こちらの議論には「ロスジェネ非正規は一生非正規か失業者のどっちか」でも全く支障が生じません。元々のお題も「ロスジェネ非正規の去就」ではなく「非正規率は景気循環で説明出来ない(一部破綻)」というものです。仮にバブルの強力な雇用改善効果の話だったとして、当時小学生である84年世代の後年の非正規率低下はどう説明されるんでしょうか?トートロジーって言いたかっただけとちゃうんか、と思わず愚痴をこぼしたくなりました。

とはいえ、非正規にも好景気の恩恵がないわけでもなく、近年の戦後稀に見る弱っちい好況下でも、非正規の賃金は名目GDP増加率以上に上昇していたみたいです。

求人情報サービス「an」調べ 2009年7月 アルバイト平均時給
http://www.inte.co.jp/corporate/library/wage/img/20090811_2.gif

さて、実はここまで女性の非正規率の高さについてはほとんど論じていません。元々女性は、日本型の雇用慣行において、長期雇用を前提に働くという事がそうなかった為、男性とは別の要因が絡んでいる事は大いに有り得ます。同時期の比較で上の世代ほど非正規率が高い点は、M字型就労と長期不況下でダグラス・有沢の法則が覿面に効いている結果のようにも見えますね。

ま、労働力人口は今後めっきり低下して行く模様ですから、移民を大規模に受け入れる事でもない限り、趨勢的には非正規雇用の比率が下がっていくんじゃないかという気もしますね。今の円高デフレ放置がずっと続くようなら、当面は全ての世代にまともな労働条件が訪れる事は考えにくいですが。

そういえば88年世代の高卒〜2008年時点の非正規率ってどうなってるんでしょうね?この数字が出れば「若い世代ほど非正規率が高くなる構造がある」という仮説は、どのような理屈立ても抜きにあっさり崩壊する可能性だってあります(もちろん逆に状況証拠を追加される可能性だってありますが)。まあ国の大規模な統計は概ね4年ごとの改訂のようなので、難しいかもしれませんけど。

ロスジェネくんロスジェネくん 2009/09/29 01:04 > 当時小学生である84年世代の後年の非正規率低下
うーん、なるほど。図4.12によると、80年世代でも76年世代でも、近年非正規率が低下しているので、それはここ数年の景気による変化ではないかとおっしゃるんですね?(誤解していたら指摘してください。)

でも、それって本当に低下してるんでしょうか?
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h21honpenpdf/pdf/b1_sho2_1.pdf
この青少年白書の図1-2-2によると、ここで示された図4.12と異なって84-88年世代の近年の非正規雇用率は上昇しています。コーホートの違いだけでは説明できない気がするんですけど、なぜこのような乖離が生じるんでしょう?(ななしさんへというわけではなく、一般的な疑問として。)

ロスジェネくんロスジェネくん 2009/09/29 01:12 あ、学籍者を含むか否かですね。すみません、コメント読めてないですね(笑)。
ということは、84年世代については、単に学籍者が新卒で正規雇用化したから、という説明ではダメでしょうか?

アマチュアアマチュア 2011/01/02 16:52 お久しぶりです。2年近く前にこちらのコメント欄でコメントさせていただいた者です。さて、民主党政権に代わってから、リーマンショック下でも景気対策はされず、見事失業率は戦後最高水準に達し、2年前とうってかわり就職氷河期が再来しましたが、ご自身の「景気対策は意味ない」もしくは「景気対策よりほかにやることがある」という主張は今でもご健在でしょうか?すてきなデータ分析をお待ちしています。

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