Hatena::ブログ(Diary)

抱きしめたくなる本棚を創ろう。

2012-09-19 プロフェッショナルインタビュー・前編

プロフェッショナルインタビュー・前編

「大学生は、とにかく本を読みなさい。」

という波頭亮さんの講演会に行ったのは去年の10月。
私が「とにかく本を読もう!」と思ったきっかけのひとつが波頭さんの講演会でした。

そんな波頭さんのインタビューからしっかりと伝わってきたメッセージは、


「君は、一流になりたいか。」





「プロ×読書」インタビュー第一弾です!




f:id:iamchicory:20120918085748j:image:w360

波頭亮さん

経営コンサルタント



■プロフィール
1980年 東京大学経済学部経済学科卒業。1983年 東京大学経済学部経営学科卒業。
1983年 マッキンゼー&Co入社。1988年 経営コンサルティング会社(株)XEEDを設立
戦略系コンサルティング分野の第一人者として幅広い分野活躍を続ける一方、明快で斬新なヴィジョンを提起する論客としても注目されている。

■役職/活動
社会資本整備審議会 基本政策部会 委員(2002年〜2009年)
日本構想フォーラム 代表幹事(2007年〜)
ENJIN01 文化戦略会議 幹事(2001年〜)


■著書
「リーダーシップ構造論―リーダーシップ発現のしくみと開発施策の体系」(産業能率大学出版部刊)〈2008年〉
「思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践」(産業能率大学出版部刊)〈2004年〉
「組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)〈1999年〉
「戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)〈1995年〉

「成熟日本への進路」(筑摩書房刊)〈2010年〉
プロフェッショナル原論」(筑摩書房刊)〈2006年〉
「若者のリアル」(日本実業出版社刊)〈2003年〉
「幸福の経済学」(PHP研究所刊)〈1999年〉
「ネオ クライテリア」(ダイアモンド社刊)〈1993年
他、多数
<共著>
「突き抜ける人材」(茂木健一郎氏との共著 PHP研究所刊)〈2012年〉
プロフェッショナルコンサルティング」(冨山和彦氏との共著 東洋経済新報社)〈2011年
知識人の裏切り」(西部 邁氏との共著 筑摩書房刊)〈2010年〉
「日本人の精神と資本主義倫理」(茂木健一郎氏との共著 幻冬舎刊)〈2007年〉







君は、一流になりたいか。












ブログ、毎日書いてるの?」

この一言から始まったインタビュー。

「・・・ブログ、どうでしょうか?」
おそるおそる聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

私のブログ評からはじまる、一流になるための条件とは。





・一流=努力の総量×質である。 〜どんな練習をした人が一流になれるのか?〜

波頭:
ジョフ=コルバンという人の本で『究極の鍛錬』という本があります。
その中の、アンダース=エリクソンという研究者が行った『西ベルリン音楽学校でのバイオリニストの調査』の話をしましょう。

究極の鍛錬

究極の鍛錬




その西ベルリン音楽学校というのは、日本で言うと藝大みたいなところです。
その調査ではバイオリン学科の学生を能力レベルによってA、B、Cに分けて、どんな練習をしているのかについて綿密に調べました。


Aクラスは、ソリストになったり、世界的にも一流のオーケストラの団員に入れるくらい、まさに一流のプロ。

Bクラスは、ソリストになるほどじゃないけど、なんとか町のオーケストラの団員になれて、一応バイオリニストで食べていけるようなレベルの人。

Cクラスは、プロのバイオリニストとして生きていくっていうのは技術が足りなくて、学校の先生、音楽の先生というレベル。


何がA、B、Cの差を生むのか。
どんな練習をすれば、一流になれるのか。
アンダース=エリクソンは、それを調査したんです。

学校以外での練習時間は、AもBもCも一週間当り51時間で同じでした。
面白いですよね、みんな51時間。


しかし、実はA、BとCの間には大きな違いがありました。
AとBは、辛くて単調な孤独な練習を51時間中24時間やっていたのです。

しかし、Cクラスは、辛くて単調で孤独な、ひとりきりで繰り返し繰り返しやる練習は9時間しかやっていませんでした。
多分お友達と一緒に集まって、アンサンブルで曲を弾いたり、自分が得意な曲を弾いて、気分よくやってたんでしょう。

その結果が、A,BとCとの違いとなりました。

つまり、一流になるためには辛くて孤独な練習が必要であるというのが、まず第一のメッセージです。



じゃあ次は、AとBの違い。
これは音楽学校に入学するまでのプロセスにありました。

AもBもCもだいたい8歳でバイオリンをはじめているので、入学するまでに約みんなそれぞれ10年やっています。年数は同じなんです。

しかし、同じ10年でも、Aはその10年間で、7400時間練習していました。
Bは5300時間。
Cは3400時間。

だから、そもそもCクラスの人は入学以前にめいっぱい頑張ってないし、入ってからもラクしているから永遠に追いつけない、一流のプロにはなれない。

学校に入ってから、辛くて単調な孤独な練習をやっている人だけがプロになれるのですが、その中でももともと努力の総量が多いAの人達と、入るまでの努力の総量がAに負けていたBの人達っていうのは一生差が埋まらないのです。



この調査からのメッセージは2つあります。
ひとつは、一流の人材、プロになろうと思ったら、どの分野でもまず大事なのは努力の総量。(AとBの差)
あともうひとつは、同じ努力でも、孤独で辛い練習をどれだけ積み上げるか。努力の質を、磨けるかということです。(ABとCの差)



ブログの感想を聞いたら音楽学校の話が出てきた。

努力の総量は、つまり努力を続ける、ということ。
まずは2000時間っていうけど、1日6時間×365日=2190時間。 


努力の質を上げる・・・
でも、努力の質を上げるって、何でもがむしゃらに頑張ればいいってこと?
人を育てる、孤独で辛い練習というのはどんなものなんだろう。








・ただ頑張るのではなく“ラーニングゾーン”での練習を積む。

波頭:
鍛錬には、パニックゾーンラーニングゾーンコンフォートゾーンの3種類があります。

コンフォートゾーンっていうのは字のごとく、やってて楽しい練習で、いくらやったって伸びないゾーン。

パニックゾーンは、実力をはるかにこえた練習で、これも伸びない。
例えば僕が、おすもうさんになろうと思って、横綱にぶつかってったって、パンってはたかれて、多分100回はたかれたても全然上手くなれない。

だから、自分のその時点の実力に併せて、その実力の限界をちょっと超えるくらいのラーニングゾーンの練習っていうのが辛くて単調で孤独な訓練で、実力が伸びるゾーンです。

つらいんだよね。自分を延ばそうとするのって。
でも、グレードがあきらかに変わるようなところにあがっていきたいなら、コンフォートゾーンの中での練習をやっていてもダメ。
コンフォートゾーンで、勉強やトレーニングをすることって本人は楽しいし、しかもやってる感があるんだけど、能力的には、あるいはスキル的には、グレードステイ(grade stay)でしかないです。

西ベルリン音楽学校の教訓は、
・努力の総量
ラーニングゾーンの辛い練習をどれくらい積み上げられるか

っていうのが一流になるために大事な要件だっていうメッセージだと思います。


どうしてこの話を冒頭にしたかっていうと、
ブログの感想は、前半の方が頑張ってた感があるなってことです。

後半ちょっとコンフォートゾーンに入ってきちゃいましたよね。
だから、あなたがまだ、小学生で、文字を読むこと自体、あるいは読書の楽しさを知ること事態にすごく意味があるフェーズにいるのであれば、この後半のようなけっこう楽しくてどんどん読める本で良いのだと思いますが、それでは、あなたの実力は伸びない。

最初やっぱり「よし、まとめて本を読もう」って思った時の方が、なんか本のリスト見ても結構意欲的だったし、その上めんどくさくても読んだ本の内容をまとめるのをコツコツやってるじゃない。
だから、ああいう時に、実は力が伸びる。

読んだ中での最大の感想はそれ。




むむむ・・・そういうことか。のっけから全て見通されていたことにショック(と動揺)を隠せない私。

うーん、振り返れば、私は大学に入ってから“コンフォートゾーン”でぬくぬくしてきた感がある。
なんとなくめんどくさい授業、朝起きれない・・・一生懸命やることだってあるけど、実際は楽しいこと・好きなことばかりしてきて、大学3年目、正直こんな生活にすごく焦っている自分もいる・・・。

うーマズい。
本気の人には一瞬でバレんだ。
波頭さん・・・「コンフォートゾーン」から抜け出すためには、どうしたらいいんですか?



・自分で自分を律するself-discipline

波頭:
その本にも出ていましたが、ラーニングゾーンに居続けるのに、大事なのは「コーチ」だと書いてありました。
オリンピックの浅田真央ちゃんにしても安藤美姫さんにしても、一流のコーチについたら急にメダルとったりするじゃない。

ただし、つきっきりのコーチっていうのは、世界で一番レベルを目指すなら不可欠かもしれませんが、ある程度のところまで、さっきの西ベルリン音楽学校の話だったら、大学に入るとか入らないまでは、一般論的な、やらなきゃいけないってことは一流を目指す人だったら分かると思います。
本当は、コーチがいて、「お前そんなのコンフォートゾーンだよ、もっとレベルあげろ」って言ってくれればやりやすいだろうけど、みんなが今すぐ世界一流のコーチについてもらえる訳ではないですよね。

学生さんのときは、自分自身で身を律すること、セルフディスプリンが大事です。
「これじゃコンフォートゾーンだ、もっと頑張ろう」っていう自分自身で叱咤激励していれば大丈夫じゃないかな。

それこそ、読書だったら、明らかにぺらぺらしたペーパーバックよりかは、ちょっとしっかりした学術書を読もうとする気持ち。
学生さんのレベルだったら、とにかく安易にラクしない、ってことを自分にあてはめればいいと思う。

ただ、さっき言ったように、Aクラスの人達だって、51時間中つらい練習は24時間です。
ツライのばかりだったら人間また持たないのも現実だから、自分自身がモチベーションをなんどかつないでいられる範囲で、どれだけ辛い方へ自分を追い込めるかが、ラーニングゾーンに居続けるために大事ですね。



Self-discipline 。やっぱり一番大事なのは自分の気持ち、自律心!

ところで、努力の話の次に、読書の話がでてきた。
波頭さんは、なぜ大学生に読書を勧めるのだろうか?



エントリーシート書くよりも、本を読んで賢くなる方が近道です。

波頭;
あれは、ふたつの意味があります。合理的に行動しろという意味と、とにかくもっと勉強して賢くなって欲しいという意味です。

学生さんっていい就職したいとかいい仕事に就きたいって思ってますよね。
だけど多くの人がエントリーシートを100社も200社も送るっていう信じられないことをやっています。
そういう目的に対して、「合理的な行動をとりなさい、賢くなった方が近道ですよ」って伝える意味です。

例えば、100冊の本を読んで、それぞれ1分ずつブリーフィングできて、タイトルと著者の名前を語れるだけの勉強をすれば、そのプロセスで身に付く教養とか知識っていう意味でもそうだし、その迫力で、たいていのところは受かるんじゃないかなって思います。
(嶋田注;ちなみに、波頭さんはいくつかの企業で採用のお手伝いをしています。)

僕、せめて100冊読めっていうことを、就活学生30人ぐらいに言ったかな、こういうface to faceに近い状態で。
いろんなご縁があって相談に来た人とかね。
でも今まで誰も読みませんでした。
だから、いい就活したい、例えばマッキンゼー入りたいとか三菱商事入りたいとかいうんだったら、まず勉強しろ、本読め、と。
だけどそれすらやらないのが、今の多くの学生の現実の姿。

だけど、エントリシートを100社も書いていると、なんだか一生懸命やってる気がして、そっちにはかなり熱心ですが、本当に大事なことをやらないように見えます。
だから、就活に対する目的合理性に対するアドバイスとして読書を勧めています。



・人生を組み立てる力は読書で養われる。

あともうひとつは、賢くならないと、いろんなことを賢く振る舞えない、人生を組み立てられない、生活を組み立てられないからです。
賢くなるためには本を読むことがとても有効です。必要不可欠と言ってもいい。

今時点のいい就活のためっていう目的合理性のためと、あと、そもそも就活のためという一時点だけの話ではなくて、生きていく上で賢くなるために、本を読むといいですよ。今の学生は圧倒的に勉強が足りないよ、と伝えたいんです。

アメリカに行くって書いてあったけど、行けば分かるよ、死ぬほど勉強しています、アメリカの学生は。
例えば、アメリカアイビーリーグって、アフタースクール平均7.5時間です。
毎日毎日7.5時間ってけっこう強烈だよ。




読書・・・確かに、賢くなるためには、読書は必要だ。
自分だけの経験、知見だけに頼っていては必ず限界がくる。

一方で、大学生は自由な時間がたくさん使える時代だ。
最近はそれを活かして、サークル、ボランティアなどを立ち上げたり、いろいろな人に会ったりする“行動派学生”もたくさんいる。
読書だけではなく、行動することも大学生では必要なことなんじゃないのでしょうか?






・行動している時間があったら、本を読めばいい。


波頭;
薄い行動をしている時間があったら、もっと本読めって僕は思います。
行動しているとか意識が高いって言われている学生って、子供っぽい人が多い気がします。
行動型の僕に会いにくる学生さん、毎年何人もいまsす。そういう子達ってあまりにも教養がなくて、あまりにも自分の思い込みとひとりよがりのロジックを振りかざすことが多い。

こんなことをやっている私ってカッコいいよねっていうその、非常に安っぽいナルシシズムとか、あるいは、自己顕示を動機でやっている人達って、会って話をしていても実のある会話が成立しない。
やっていること自体に関しても何一つ知らなかったり、あちこち走り回ってあれこれ人に会っているだけで何かやっている気になっていると思います。
要するに、ライトノベルだけ読んで、自分の趣味は読書です、教養を広げることですって言っているのが痛いのと一緒で、行動するっていうのも、薄っぺらい人が多いというのは思いますね。



おおお・・・勉強をおろそかにしてきた自分には耳が痛い話。

波頭さんは、常に一流の仕事を考えられている方だ。
プロフェッショナル原論」を読めば、分かる。

そして、そんな一流の方から聞く「行動の話」、耳が痛い。

でもすごく分かる気がする。
大学1年生のときに「やりたいことを全部やる」という目標を掲げた自分。
一通りやったあと残ったのは、しかし、行動すること自体に満足していた自分の姿。そんな自分がすごく薄っぺらいものに感じられた。
そしてそんな自分が嫌で、何かひとつを続けようと思い、「たくさん読書」を始めたっていうのを思い出した。

正直なところ、行動することで満足していたり、ドヤになっている学生の存在も分かる。(自分も含めて)


しかし、「行動することが大事」と多くの人が言うのも事実である。
波頭さんが思う、「真の行動」そして「一流の学生」ってどんなものなんだろう?

そんな思いを抱きつつ、後編にすすむ。

Connection: close