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草と、花と。

September 15(Wed), 2010

猫に比較的安全な精油はあるのか―天然香料の毒性

私はいつもアロマセラピーサロンにお世話になっていて、精油の香りを楽しませてもらっている。その延長で、このところ自宅でも精油を使いたいと思い始めた。理由は、心地良さの観点と経済的理由から化粧水などスキンケア・ヘアケア用品を手作りして、その中に精油を入れるため。既製品の化粧水(現在はMARKS&WEB製品を使用)も十分気に入っているけど、よく切らしてしまう時の予備として、材料さえあればすぐ作れる化粧水があればいいなという思いもあり。

ところが、ふと何気なく「精油 猫」で検索したところ、猫に対する精油の危険性に言及した記事が出てくる出てくる…。精油の芳香成分の一部を分解する酵素を、猫が持ち合わせていないために毒性が引き起こされてしまうらしい。我が家にも猫がいるので、これは由々しき事態。以下、調べたことをまとめてみる。

まず、アロマセラピーのプロに聞いてみた

普段通っているサロンのセラピストさんに、「精油を化粧品に混ぜたいだけ」という前提で猫と精油の関連について質問したところ、以下の回答を得た。

精油に関するデータを持つスクールに問い合わせたところ、部屋での芳香浴や化粧品での使用程度で猫に差し障りがあった、という例はない。基本的には問題ないといったところ。ただ、猫も人間と同じように好きな香りもあればそうでないのもあるし、その日によっても違うかもしれない。猫によっても違うかもしれない。猫が香りにどのような反応をするのか、注意深く観察すること。

こう言ってもらえて少しだけ安心、でも少ししか安心できない。精油について詳しくない私がいろいろ言う資格はないのかもしれないけど、どうしても気になってしまう。現に、中毒の報告はあるのだ。

今度は、獣医学のプロに聞いてみた

気になって仕方ないので、今度はかかりつけの動物病院に電話して獣医師さんに「自宅で精油を使う場合、猫に有害でしょうか」と聞いたところ、以下の回答が得られた。

新しい分野なので分からない。インターネットで信頼性のある情報があればそちらを参考にしてほしい。精油にもいろいろあるだろうし、猫によっても感じ方が違うと思う。

この回答にはさすがに呆れた。前述のアロマセラピストさんは猫と精油について騒がれていることを知っていたが、獣医師さんはそれすら初耳の様子。猫と精油に関して、私の身近の専門家(アロマセラピストさんと獣医師さん)は情報が遅いのではないかと疑っても良さそう。

ネットで散見される報告

猫のノミ駆除対策として、希釈したティートゥリーを使用した際の中毒症状などが問題になっているらしい。また、室内でディフューザーを使用して、猫の肝機能数値が上がった例もある。私はつい先日まで全く知らなかった。

毒性の問題以前に、猫の体に香りの強いものを与えること自体が信じられない。常に体についた匂いをなめ取らないと落ち着かない猫に対して、直接アロマを施すなんて…仮に精油が無害だったとしても、心にストレスが溜まってしまう。子供でも分かるレベルの猫の性質(嗅覚の鋭さ)を、無視している。

ネコ遺伝子に異常があり、精油成分のような脂溶性の化学物質を解毒するための大変重要なグルクロン酸転移酵素という代謝酵素が十分に肝臓で生合成されないことが判明したのは、本当に近年の研究の結果です。

猫と精油の危険な関係 - もふもふパラダイス〜三毛猫ももの楽園

UDP-グルクロン酸転移酵素というのは、猫、フェレット以外の動物では基本的に肝臓で合成されるらしい。しかし、遺伝子の異常だったら文句を言うわけにも行かない。

猫から避けるべき芳香成分

特にフェノール類(ペパーミント、タイム、シナモンクローブユーカリ、ティーツリー、オレガノ・・・)やケトン類(柑橘系、松の油、ラベンダー、シトロネラ、カモミールローズマリー、レモン、オレンジ、グレープフルーツ・・・)などは要注意です。また、モノテルペン炭化水素類の「ピネン」と「リモネン」には、最も有害作用を引き起こすことが発見されています。この成分は「シトラス系の精油(レモン、オレンジ、タンジェリン、マンダリングレープフルーツ、ライム、ベルガモット・・・)」と「パインの精油」に最も一般的に含まれています。*1

猫のアロマセラピー◆猫に精油は有毒です◆
  • モノテルペン炭化水素類「ピネン」「リモネン」
  • フェノール類
  • ケトン類
    • ケトン類には 神経毒性がある物質が多く、ケトン類を8%以上含むエッセンシャル・オイルの皮膚への直接添付は禁物
  • 芳香族アルデヒド

モノテルペンアルコール類は比較的安全。エステル類は、サリチル酸化合物(サリチル酸メチル、サリチル酸ベンジル)以外は非毒性。テルペン系アルデヒド類(シトロネラール、シトラール)やラクトン類(ベルカプテン、クマリン)やオキサイド類(1.8-シネオール)は、猫に対する毒性を指摘されているわけではないが、人間にとっても刺激性が強い。更には、溶剤抽出法で得られるアブソリュートも溶剤残留があるため、肌への使用には注意。

こうして調べていくと、精油というものは人間に対してさえ、正しく(=適切に)扱うのが難しいのではないか。例えば自分の大切な子供、体の弱い人などに、医師免許のない者が医療行為を施すと考えてみればいい。精油を学んでいない素人が扱うというのは、そんな恐ろしさを孕んでいるように思えてならない。

端的に言えば、アルコール類(特にモノテルペンアルコール類)、エステル類(サリチル酸化合物を除く)、セスキテルペン炭化水素類の3種類以外を含む精油は人間であっても要注意であり、体の小さい猫と暮らす空間で使うのはありえない。

生活の木・成分分析表から精油を調べる

生活の木 - Tree Of Life Co.,Ltd.では、各精油ごとのページに成分分析表がリンクされている。上記の芳香成分を含まない穏やかな精油があれば、猫を飼う自宅での使用に希望が見出せるかもしれない。そう思ってオンラインショップで販売されている精油すべての成分分析表をチェック。更に、ネットに数多くある精油リファレンスサイトも参考にしたところ、ごく一部の精油にしぼられた。

モノテルペン炭化水素類のピネンとリモネン、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類をあまり含まず、アルコール類またはエステル類の割合が多い精油は以下の通り。

大量の成分表をくまなく眺めて、何とか選び出せたのはこれだけだった。条件に見合う精油は本当に少なくて、逆に言えば、一般の精油はピネンやリモネンなどが大量に含まれているのが当たり前なのだと、ようやく学んだ。それに、各分析表の成分合計は100%に満たないものばかりで、表示されないごく微量のピネンなどが含まれている可能性は十分にある。例えばサンダルウッドにサンテノンというケトン類が含まれていることは、多くのサイトに記載されていることだもの。

次点で、プチグレイン(酢酸リナリルが多くて魅力的なのに、モノテルペン炭化水素類も多くて残念)など。

精油の主成分以外にも微量の有害成分が含まれている可能性は非常に高いので、成分分析表をどんなに甘く見ても、安全な精油はひとつも見当たらない。

のるかそるか、のまとめ

私は飼っている猫に長生きしてほしいし、香りも楽しみたい。でもそんなことは猫にとっては本当にどうでもいいことで、人間様が室内に閉じ込めて飼い続けたり許可なく避妊手術をしたりするのと同じくらい、勝手なこと。「そんな勝手続きなら、もう開き直って精油使ったっていいんじゃないか?」と悪魔がささやくかと思えば、「だめよ!あなたは自分の手で飼い猫を殺したいの?」と天使がささやいたり。

猫と精油について、大事なのは専門家の指導を仰ぐことだと思う。その専門家(かかりつけのアロマセラピストさん)が、飼い主自身の芳香浴や化粧品での使用ならOKを出した。それでも、もしペットに害があった場合の責任は飼い主にある。

猫にアロマセラピーを利用したい場合は、安全性の高い”良質 “のハイドロゾルの使用が推奨されています。(中略)ハイドロゾル中の成分(主成分はモノテルペンアルコール)は猫やフェレットでも充分に解毒することができ、ハイドロゾルで有害反応が起きたという報告はまったくありません。成分が良く分らないエッセンシャルオイルの使用は避け、出きるだけハイドロゾルを代用して下さい。

「猫とアロマセラピー」を特捜せよ!?驚愕の事実がついに明らかに!?|はぐれ獣医 純情派?異論!ワン論!Objection!?

ハイドロゾル(フローラルウォーター、芳香蒸留水)も調べたけど、もう何を信じたらいいか分からない。今言えることは、猫と生活する上でで明らかに安心して使えるものがどれくらいあるのか、非常に疑問であるということ。人工香料など、いかにも有害な匂いに満ちた環境を猫に押し付けていながら、何を今更神経質になっているのか?と自分に苦笑する。

むしろ、今まで散々勝手なことをして開き直ってきたから、免罪符として自分はこんな記事を書いているんですよと種明かしをしてみる。

猫とアロマセラピーに関して読みたい書籍

参考サイト

*1がんばる猫 : 今日の治療と食事〜オレンジオイルにご注意を!で引用されていた記事。出典サイトは閉鎖している模様。

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