432「国の政治のあり方は、あたらしく考案・構築可能なものだったのだ」   「明治史講義 【人物編】」(筒井清忠編、ちくま新書、2018年)

 1800年代半ば、鎖国の日本にも、諸外国が迫ってくる。見るからに強そうだ。これに打ち負かされないためにはどうしたらよいか。

 250年も経ちあちこち綻んできた徳川幕府では太刀打ちできない。どうするか。

 大久保利通は「朝廷の下での幕府と有力藩(雄藩)による国政運営」(p.51)を考えたが、やがて修正。幕府を倒して「朝廷と藩の二者による国内一致体制」(p.52)を目指す。けれども、藩体制も解体され、中央集権化へと進む。

 こうして、日本列島の政治がデザインされ、試行錯誤されていく。内閣制度ができ、大日本帝国憲法が制定され、帝国議会が開幕される。

 同時に、琉球処分アイヌモシリの「北海道化」、朝鮮半島、中国大陸侵略の政策が建てられ、実行されてしまう。

 これらは、むろん、ひとりや数人による歴史ではない。何千万人の歴史だ。けれども、名前を記録された者たちの生や思考、精神、葛藤を参照することは無意味ではないだろう。

 西郷、福澤、板垣、伊藤、大隈、榎本、小村、桂、明治天皇らとともに、福田英子、金玉均李鴻章らの名があげられている。

 一人物につき十数頁しか割り当てられていないので、その人の生涯が概観されているわけではなく、各執筆者の関心点に絞って書かれている。

 国の政治のあり方は決して不変なものではない。あたらしく考案、構築することが可能なのだ。明治史の場合と同様に、それが不完全、未熟、段階的なものであり、とんでもない害悪を含んでいたとしても。
 
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