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Tポイントカードの問題点

追記(平成31年1月22日):

Tカード情報提供問題、武雄市図書館など問い合わせ

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が「Tカード」会員の情報を裁判所の令状なしに捜査当局に提供していた問題で、佐賀県内では戸惑いの声が上がり、取り扱い方を巡る問い合わせがあった。

 Tカードが本の貸出カードとして利用できる武雄市図書館には21日、問い合わせが数件あり、CCC広報が対応した。図書館は「個人情報や貸出履歴がCCCに提供されることはない」とし、捜査当局への提供もないと説明した。貸出履歴などの管理はCCCのレンタルや買い物情報の管理システムとは別で、提供はないという。カードと貸し出しは関連づけているが「ポイントを付与するためで、名前などの個人情報は含まれていない」とする。

 カードを扱う佐賀市の自動車販売店社長は、顧客からの問い合わせはないものの「(CCCから)説明が何もなく大丈夫なのか」と不安がった。県東部の不動産会社社長は「無断で情報を流すなんて信じられない」と驚いていた。

Tカード情報提供問題、武雄市図書館など問い合わせ|行政・社会|佐賀新聞ニュース|佐賀新聞LiVE


武雄市モデル図書館」の大きな特徴である「Tポイントカード」の利用とその問題点について述べます。


「Tポイントカード」をご存知の方は多いと思います。

 元々はCDやDVDなどをレンタルするお店である「TUTAYA(ツタヤ)」「TSUTAYA(ツタヤ)」のレンタル会員証であったものですが、今ではコンビニをはじめとする様々なお店で、お買い物をするたびに「Tポイントカードはお持ちですか」と確認されます。

 すでに「Tポイントカード」をお持ちの方も多いのではと思います。

 色々なお店で精算の際に「Tポイントカード」を提示するとお買い物商品や金額に合わせて、「限定クーポン」や「Tポイント」がもらえ、この「Tポイント」は代金の代わりに支払いに使う事ができるので、実質的に値引きをしてもらう事ができます。


 そんなにお得なカードなら、私も使おう。と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、世の中はそんなに甘くはありません。お店がこうした「限定クーポン」や「Tポイント」(値引き)をするにはお店にとってそれ以上の価値があるからです。

 「Tポイントカード」を利用可能な店舗は、Tポイントを持つ誰が、いつ、どこで、どんな商品を、どれぐらい買ったか。または、どんなサービスを受けたか。すべて把握可能です。

 例えばレンタルDVDのお店であれば、どのような映画(DVD)が、どういった時間帯に、どの辺の地域で、どのような年齢層の男性、女性に借り出されているか把握することが来出ます。これを把握すればDVDの在庫を最適にすることができ、無駄な在庫を省けます。

 または、メーカーなどから見れば、例えばコンビニでは冬でもアイスクリームが一定程度購入されます。一日の内の何時ごろ、どのような年齢層の男性、女性がアイスクリームを購入しているのか調べる事ができれば、例えば「オフィス街の昼休みに、OLさんと思しき年齢層の女性が購入している」という傾向が掴めれば、オフィス街のコンビニで、昼食時にデザートとして食べられるアイスクリームの新商品を売り出すことができるかもしれません。


 こうした商品の購入履歴、利用履歴はお店や商品を提供するメーカーには便利ですが、利用者にとっては個人情報となります。「Tポイントカード」とはこういった個人情報を加工してお店やメーカーに販売し、利益を得ているわけです。そして「Tポイントカード」を運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)はこうした個人情報に対して独特な解釈を持っており、様々な場面で個人情報の利用に問題を起こしています。

 「Tポイントサービスに関する要望書」を提出 / 回答書受領 | 薬害オンブズパースン会議 Medwatcher Japan

 一例として、「薬害オンブズパースン会議」がCCC、医薬品販売業者、Tポイント加盟店など5社、及び所管官庁に提出した「Tポイントサービスに関する要望書」とその回答書をお示しします。

 「Tポイントカード」で医薬品を購入した際の履歴*1をCCCが収集、利用しようとしていた事を止めるように求め、さらにそれは法律違反*2 *3ではないかといった指摘です。

 これに対してCCCから寄せられた回答は不十分なままで、結局違法状態である疑いはぬぐえません。


 「武雄市図書館」において、CCCがその運営に参画すると発表された際に、図書館の貸し出しカードをこの「Tポイントカード」に置き換えるという提案がされました。

 図書館の貸し出しカードを「Tポイントカード」に置き換えるという事は、その利用履歴を取得しようと思えば、技術的には幾らでも可能となります。

 しかし、公共図書館では利用者の読書履歴はプライバシーであり、「図書館活動に従事するすべての人々はこの秘密を守らなければならない(「図書館の自由に関する宣言 第3条」)」としてきました。

 図書館の自由に関する宣言


 ところが「武雄市図書館」ではその利用履歴を民間企業であるCCCが収集するとしてしまったのです。

 武雄市の樋渡市長は「本の貸出履歴は個人情報ではない」とまで主張していました。

 武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の武雄市立図書館の企画・運営に関する提携基本合意について(41分ごろからの発言)

 「図書館で本を借りたらTポイント」TSUTAYAが公立図書館運営へ――Facebook市長「本の貸出履歴は個人情報ではない」 | ガジェット通信 GetNews

 その後、主張を整理してご自分のブログでも同様の主張を掲載しています。
 図書館貸出情報の扱い、ご安心ください! : 樋渡啓祐物語(2005年5月ー2015年2月)


 CCCの増田社長は次のようにも述べています。(ここでは図書館事業ではなく、書店事業を対象として語っておられます)

「私が興味があるのはデータベース。購買履歴を蓄積し、いかにリコメンド*4に変えていけるか。本のポイントビジネスを始めたのは、本の売り上げを伸ばしたいのではなく、本の購買履歴からその人の消費ニーズを察知したいから」(略)
 「転職マガジンを買っているのが誰か分かれば、その人は転職したい(ことが分かる)。消費の前に顧客は情報を集める。そのことが見えれば的確なリコメンドができると思っている」

世界経営者会議2006

 世界経営者会議2006(キャッシュ)

 「転職マガジン」を書店で購入する際に、「Tポイントカード」を提示すると、「Tポイント」をもらえる代わりに、どこに住んでいる誰が、いつ「転職マガジン」を買ったかが判ってしまう。「胃がんに良い食べ物」という本を読もうとする履歴や、「離婚の進め方」といったような本を図書館で借りた履歴が残り、それを民間企業が持っているとすると。

 ・・・ちょっと、嫌な感じがするのは私だけでしょうか?

 武雄図書館開設時に、こうした批判が巻き起こり

 「武雄市図書館では貸出しカードとして「Tポントカード」と従来の図書利用カードの併用とする」という方針と、「Tポイントカード」による「個人情報」の収集は行わない。としてきました。


 このイメージは「武雄市図書館 よくある質問」の一部です。
 武雄市図書館

 「Tポイントカード」と従来の図書利用カードを選択できるとしながら「Tポイントカード」の利点を列挙して、公共図書館というよりは「ツタヤ・レンタルショップ」のようです。

 また、「個人情報」の収集は行わない。とされていますが、本当に個人が特定されないのか、少々怪しげな状態でもあります。

 武雄市図書館のTカード番号で「本人が特定されない」のは本当か - デクノスティック

追記(11月2日):
次のような分析があった。

 昨年改装前に市議会において“教育部長”はTカードの番号が図書館よりCCCに渡る,と答弁しています。すなわち,武雄市図書館内において個人情報に紐付く容易に個人照合可能である図書館利用者番号一意に紐付けられるTカード番号が,利用日時等とともにCCCに提供される,と明言されているに他ならないのです。

タイトルなど単なる識別子・・・ — 【図書館でTカードをご利用いただいている皆様へ】 - 武雄市図書館 #たけお問題...

※ここにいう「市議会」とは武雄市議会、「教育部長」とは「武雄市古賀教育部長」 平成25年3月13日 武雄市議会定例会における発言。

 参照:サーバ管理者日誌 シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(19) - やっぱりデタラメだった教育部長の答弁


 まだ論点はありますが。

 あと2点だけご指摘をします。

 1.小牧市は個人情報保護条例を改正せずにTポイントを導入できるか。

 この問題に当初からかかわっておられる高木浩光氏が、小牧市と同様「武雄モデル図書館」の導入を考えている「多賀城市図書館」における問題点を指摘しています。

 高木浩光@自宅の日記 - 多賀城市図書館は個人情報保護条例改正なしにTポイントを導入できるか


 この問題は小牧市にも同様にあてはまります。

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(略)
(2) 個人情報 生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

http://www.city.komaki.aichi.jp/reiki/reiki_honbun/t600RG00000573.html

 小牧市においては市営の新図書館を建設の際は、「Tポイントカード」の導入を諦めるか、個人情報保護条例の改正をしないと条例に違反する事になりそうです。



 2.条例に優越する規約

 武雄市図書館で貸出カードである「Tポイントカード」を作成すると、利用規約(Tカードでの武雄市図書館利用に関する規約)が渡されます。

 Tサイト[Tポイント/Tカード]

 上記の多賀城市小牧市でも、図書館での貸出しに「Tカード」を利用する事になれば同様の規約を作る事になるでしょう。

 ここに次のような条項が有ります。

Tカードでの武雄市図書館利用に関する規約

武雄市図書館・歴史資料館
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
株式会社Tポイント・ジャパン
2013年4月1日

第6条(規約の改訂)

CCC及び図書館は、(略 *5いつでも本規約の内容を変更することができるものとし、当該予告期間経過後は、変更後の本規約の内容が適用されるものとします。(略)

第7条(その他の事項)

本規約の定めと、CCCが定める「T会員規約」、TPJが定める「ポイントサービス利用規約」並びに武雄市が定める「武雄市図書館利用に関する規約」、「武雄市図書館・歴史資料館設置条例」(略)及び「武雄市図書館・歴史資料館設置条例施行規則」(略)(以下総称して「諸規約及び諸規則」といいます)の定めが異なる場合は、本規約が優先的に適用されるものとし、本規約に定めのない事項については、諸規約及び諸規則の規定が適用されるものとします。

Tサイト[Tポイント/Tカード]

 驚くのが武雄市の定める条例と「本規約」が異なる場合には、「本規約」が優先されるとしていることです。

 つまり、CCCが運営方針を変更すれば、それを武雄市は条例として制限することができないという事です。

 さらに、その規約の改正は(1日以上の予告期間をおいて周知すれば)いつでも改訂できてしまうのです。

 これでは武雄市は武雄図書館の貸出管理について、ガバナンス(責任と権限)を放棄したに等しいではありませんか。(平成26年10月27日)



 その他、参考になるサイトのご紹介:

 日本図書館協会の見解・意見・要望

 Tカード(TSUTAYAカード、Tポイントカード) - 図書館の自由と武雄市図書館と図書館戦争のようなもの #takeolibrary - アットウィキ

 Tポイントは何を改善しなかったか(2013年6月27日)高木浩光

 武雄新図書館構想 CCCの「どこか」と「マーケティング」 - Togetter

 https://archive.today/c4zqn#selection-1069.0-1075.43



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*1:センシティブ情報

*2:医薬品情報を扱う「薬剤師」や「医薬品販売業者」が業務上知った秘密(患者の医薬品情報等)を漏らしたとして、刑法(134条、秘密漏示罪)に抵触する可能性

*3:会員が十分に理解しないまま、会員の個人情報を第三者である加盟店との間で利用する行為は、個人情報保護法(23条1項)に抵触

*4:引用者注:recommend レコメンド 利用者の好みを分析し物品やサービスを推奨する販売手法 レコメンデーション

*5:1 日以上の予告期間をおいてそれぞれのホームページまたは関連サービスサイトにおいて変更後の本規約の内容を周知することにより