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上野千鶴子の「平等に貧しくなろう」について

中日新聞に載った上野千鶴子の「平等に貧しくなろう」という論考が話題になっている。

東京新聞:この国のかたち 3人の論者に聞く:考える広場(TOKYO Web)

論点は移民問題にも及び、公開質問状が出されたりもしているようだ。

『中日新聞』『東京新聞』(2017年2月11日)「考える広場 この国のかたち 3人の論者に聞く」における上野千鶴子氏の発言にかんする公開質問状 | 移住連 |Solidarity Network with Migrants Japan -SMJ

上野の論考は典型的な縮小均衡論であり、国家財政を家計や企業会計と混同した経済学的無知の産物だ。

しかしこの経済学的な無知を、財務省や(渡辺美智雄や)竹中平蔵などの構造改革派は利用しもし、日本国内の多くの意見となっている。

国家の赤字を国民の人口や世帯で割ることはナンセンスな行為であり、
企業が赤字を出した場合、その責が経営者や社員に求められるのとは異なり、国家や地方自治体が「赤字」だからと、その責任は政権や首長、公務員に在るものではない。

国家や地方自治体の赤字/黒字というのは、制度の結果でしか無い。

その国のお金を(流動性を)どこに置こうとしたのかという制度の結果でしか無い。

それは固定的な問題でもない。

 本日、同じ中日新聞を見ていると、以前当ブログでも紹介した中公新書の「人口と日本経済」が週間ダイヤモンドのベスト経済書に選ばれ新書大賞にもなっているようだ。こうした賞のことはよくわからないが、この書が読まれることは、上のような錯誤を解消する上では必要なことだろう。

2016-09-19 豊洲の空洞とアジア大会の200億円

こうした縮小均衡論は、成立しない。それはこの国の閉塞状況を見れば十分わかるはずだ。

2015-01-03 「ゼロ成長」の意味するもの


ローマクラブの「成長の限界」論に見られるような縮小均衡論は、人間性の否定でしか無い。そして、こうした考え方は恐ろしい結果をも生み出す。

2016-08-07 植松聖を生み出したもの

力強く、経済を前へと進めていくべきだ。
その勇気のないものは、おとなしく後ろをついてくればいい。

前で進めようとするものを、後ろから撃つような真似はすべきではない。


追記:
私は、今の「バランス」を肯定しない。
国や地方自治体を赤字に追い込み、企業の内部留保を、つまりはキャピタルゲインを増やそうという経済政策の歪みには反対する。

アベノミクスが成功しないのは、内需が活発にならないからで、
内需が活発にならないのは、企業が投資をしない、消費者が消費をしないからだ。

企業が投資をしないのは、法人税率が低くなったために、課税対象利益を圧迫する必要がなくなり、課税前に投資をしようというモチベーションが上がらないからだ。

消費者が消費をしないのは、上と同様に企業会計において人件費を引き上げて、課税対象利益を圧迫しようというインセンティブが減少し、人件費が圧縮され、消費の原資(人件費)が圧縮されているからだ。

法人税率という「制度」が、過剰流動性内需から企業の内部留保というストックに移転している。そして、企業の内部留保が積み上がれば、公的セクタの赤字は増大する。

法人税の減少が、この歪みを生んでいるにも関わらず、更に法人税を下げようとする今の政権の経済政策は誤っている。