市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋城天守木造化事業の現状について

追記:
2月8日(木)
18時30分 
から
名古屋市民会館 第2会議室
で、

特別史跡名古屋城跡保存活用計画(案)」と
そのパブリック・コメントの勉強会を開催いたします。

参加費は無料(会場+資料代として、実費程度のカンパは歓迎)

勿論、天守木造化賛成の方で、何が問題とされているのか知りたい。
と思われているような方の参加も大歓迎です。

前回に続いて、名古屋城の話題を書く。
ここのところ、当ブログは月刊化や季刊化していたが、ここで連続して投稿させていただく。

今回は、現在の名古屋城天守木造化事業の現状についての私の認識について書く。
次回は(運が良ければ明日)「保存活用計画(案)」の問題点について書く。

その前に、重大な事実誤認について訂正しておかなければならない。
私は法律の条文を読み誤っていた。

去年の5月、名古屋城天守木造化事業は、建築基準法違反であり、建築基準法第3条で謳われた除外規定には当てはまらないのではないかと「疑義」を述べた。

2017-05-12 名古屋城天守閣木造化契約についての疑義

疑義の主旨は、この法律は「現に存在する文化財建造物に対して、建築基準法を適用するような事はしませんよ」というものであり、現に今は無く、これから作る建造物に対しては当てはまらないのではというものだった。建築物にすべて現代の建築基準を当てはめて、安全や意匠の変更を求めるならば、それでは歴史的建造物の価値が損なわれてしまうという主旨は良く理解できる。奈良時代や江戸時代に、現代の建築基準などないのだから、法を後から当てはめるという事も乱暴な話だ。

法的事実に照らしてみても、「名古屋城天守(焼失したオリジナルも、現天守も)」は1号、2号に適合しない事は明白だ。

私が読み落としていたのは4号の次の部分だ。「保存建築物であつたものの原形を再現する建築物」

この「保存建築物」とは、3号の規定に当たる建造物だ。

「3.文化財保護法第百八十二条第二項 の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物(次号において「保存建築物」という。)であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの」

文化財保護法第百八十二条第二項も押さえておこう。
「第一八二条 2 地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財重要無形文化財、重要有形民俗文化財重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる。」

つまり、「国において重文などに指定された建築物以外について、地方公共団体は条例を定めて保存活用などを講ずることができる」としている。

この条文と、先の建築基準法3条1項3号、および4号をつなげるとこういう事になる。

「国において重文などに指定された建築物以外について、地方公共団体は条例を定めて保存活用などを講ずるか、別途条例を定めた建築物(「保存建築物」)について、特定行政庁(その地方公共団体)が建築審査会の同意を得て指定した建築物については、その保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁(地方公共団体)が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの」について、建築基準法の適応除外とする」

私は現に無い建造物に対してはこの法律は当てはまらないものだと理解していた。
予め「指定した建築物」があって、「原形を再現する建築物」について語られているものだと。

指定するには、現に建築物が必要だろうと解釈していたが、違うようだ。

先に建ててしまって、後から「保存建築物」として指定する。または、まだ現物は無い内に「保存建築物」として予め指定する事も可能だという事らしい。

勿論、ここには「建築審査会」の同意が得られるだけの「安全性」と「再現の必然性」が必要なのだろう。
しかし、現にある建造物以外を除外できる法律とはなっていない。

つまりいくつかの条件をクリアできれば、木造化天守建築基準法の適応を除外できる。

先の文書を読まれた方には、素直に謝罪して、見解の変更をご報告する。

追記:
書き漏らしていた。
この誤りは、ある方からの指摘によって確認できた。
私の反論に根気よくお付き合い頂き、誤りをご指摘いただいた事に感謝申し上げる。
また、その方の見解では、
愛媛県大洲城の再建はこの法律が適応された例だが、大洲城の前例を名古屋城に当てはめるには無理がある。
1.規模が違いすぎる。法同等の安全を図るためには、竹中工務店の当初設計のようにハイテクハイブリットの木造風建築物にする以外ないだろう。それでも外階段は設置しなければならないし、ケーソンを抜いて、確実に地盤に到達する杭を新たに打つ必要があり、その為には文化庁の許可が必要となる。また、小天守については石垣に乗ったままの構造のはずで、こちらは石垣に工作しなければ建て替えは不能。どうしても文化庁の許可がいるが、出るとは思えない。
2.大洲城では、既存建築物はなかった。既存の櫓があることで、一体として復元をする利点が有った。しかし、名古屋城にはすでに文化財としての価値がある現在の天守閣が有り、これを壊してまで危険で高コストの再建を行うメリットは考えられない。ましてや500億円を超える公費負担で再建するというのは、正気を疑う。
との事だった。

さて、ではその私の現状認識。(この見解の変更で、私の現状認識は<あまり>修正を受けない。もちろん、「そんな事の解釈を間違えていた者の認識なんぞ聞く気にはならない!」という方は、どうぞお引き取りください)

一般的なニュース、テレビや新聞の報道では、「名古屋城天守閣木造化については、一部反対や疑問を呈する市民はいるものの、より研究が進んでいる。史実に忠実な本物復元と、バリアフリー対策などについて、名古屋市はより検討を進めている」

ということだろう。

「保存活用計画」についてパブリックコメントを求めている事を記事にしたり、この「保存活用計画」が正式に採択されない限り、名古屋市には法的に「名古屋城天守木造化」をすすめる計画などない(法的に有効な筈の「全体整備計画(案)」には、「名古屋城天守木造化」は盛り込まれていない)事には触れられていない。


現在、「優秀提案者」とされている竹中工務店と、名古屋市の間では「基本設計」を作成するという契約しか存在せず、この基本設計段階で計画が頓挫しても名古屋市竹中工務店に責任追及は受けない。

この「基本設計」についてはこの2月末までに作成終了する必要があるが、竹中工務店の責任ではない理由で、「基本設計」は終了する事が出来ないだろう。(または、「基本設計ができた」としても、それが法的な「基本設計」の条件を満たしているか疑問だ (「基本設計」の条件は国土交通省告示第15号に整理されているそうだ。 http://www.mlit.go.jp/common/000048579.pdf )

その話の前に、名古屋市会は「基本設計」費用について議会で議決している。

中日新聞はこの議決を「名古屋城天守閣木造化決定」と書いたが、議会の付帯決議については無視をしている。

議会は「名古屋城天守閣木造化」に対して次のような付帯決議を付けており、それが満足されない限りは、それ以降の「実施設計」「施工」予算は承認しないだろう。(できないだろう。これが不思議だ。議会の中の経年議員(いわゆる「ボス」は、名古屋城天守木造化に賛成、推進の立場の者が多いが、市税投入となっても賛成するのだろうか?経年議員であれば、名古屋市が当初掲げていたような採算計画に実現性が無い事は明白であって、頓挫は織り込み済みだと思うのだが)

議会が求めている事は主に3つ

1.採算計画は実現性が乏しいが、それに近づける為の来場者拡大の試み
2.市の負担を軽減する県や国からの補助金要請、減税政策をはじめとする財政フレームの見直し
3.505億円の工費の圧縮

ところが現状はどうか。

1.3000人来場者があっても、1500人程度しか天守内部には入れない試算がある
2.県や国に補助金を要請した形跡はない。文化庁天守木造化に理解を示していない。というよりも、今に至るも、名古屋市文化庁に正式には「名古屋城を木造復元する」という方向性を示していない
3.工費の圧縮どころか、学識経験者の会議が紛糾して計画が遅延するなど、工期の延期も考えられる。また、エレベータを設置せず、介護スタッフを置くなど、今まで無かった運営経費が想定されるなど、費用負担は膨らむ傾向にある。

いままでも、名古屋市は議会の付帯決議を無視してきたので、今回も無視するのだろうが、無視されれば議会としても、これ以上の議決は必要ないのではないのだろうか。議会が予算を議決して見せれば、この基本設計予算のように「議会において決定」と中日新聞は書きたてるだろうし、当局も「議会において決定を受けている」と責任を議会に押し付けるだろう。


さて、基本設計そのものに話題を移そう。

基本設計とはその建物に盛り込むべき各種要望を具体的に検討し、盛り込んだ設計を示すこと。
らしい、施主から示された要望を盛り込み、(予算的制限や、法的制限によって)盛り込めなかった場合には、その旨を明記することが求められる。

つまり、この基本設計で施主と施工者の意思を共通化できなければならない。

当初、施主である名古屋市の意思は具体的であった、それは「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザル 業務要求水準書 平成 27 年 12 月 (平成 27 年 12 月 10 日更新)(以下では、「業務要求水準書」) 」に明記されていた。

名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザルを実施します。:名古屋城公式ウェブサイト

ところが、最近、この名古屋市の方針がブレている。

例えば、最近の報道によると、天守の屋根瓦の加工をどのようにするか、「有識者会議」で議論になったそうだ。それは今回行われた市民説明会でも示され、幾つかの案が示されていた。

しかし、「業務要求水準書」にはすでに次のように書かれていた。

「復元の設定年代は、大天守の宝暦大修理後(焼失前と同じ)とする」

また、「史実に忠実」という事で、全体の整合性を気にしているようだが、本丸御殿の設定年代は宝暦大修理後ではない。つまり、本丸御殿が完成し、天守も復元された時、それは史実には存在しない姿を「再現」することになる。

復元建築物を作成するのであれば、この「設定年代」は真っ先に決定すべき議論だろう。
それがこのブレ方。そして、このような事は、市民に同意を取っているのだろうか?

銅板で再現された名古屋城天守は、今のように緑しょうが浮かぶまで、さぞや燦然と光り輝くだろう。
やがて、その輝きは失せるだろうが、さて、果たして新築なった名古屋城において「光害」は発生しないものだろうか?

最近では、屋根などに設置した太陽光パネルによる「光害」が問題となっており、パネルの撤去や損害賠償請求の一部が認容された判例も出ている(横浜地裁平成24年4月18日)


また現在の天守木造化問題で、大きな課題となっているのが「バリアフリー」の問題だ。

「業務要求水準書」では第2節の主な設計条件の7に
バリアフリー化」を盛り込んでいるし、続く第3節の施設計画においても「5.ユニバーサルデザイン」の項目を置いて、車いす利用者だけでなく、視覚障害者や高齢者、子ども連れ、外国人利用者に対するバリアフリーまで明記されている。

つまり、現在名古屋市が言っているエレベータ設置についての検討や、保存活用計画に記載されている「介護スタッフ」による対応。河村市長が言うような背負子やドローンによる対策などは、名古屋市自身が策定したこの「業務要求水準書」の条件を満たしていない事になる。

竹中工務店はこの「業務要求水準書」を元に、この2月末までに「基本設計」を作成しなければならないが、これほど施主側の要望にブレがあっては、基本設計など作成不能だろう。(要件定義ができなければ、基本設計などできない)

曲がりなりにも、天守木造事業として具体化した「業務要求水準書」の要件を、名古屋市自体が突き崩している。ちゃぶ台をひっくり返しているのは、名古屋市自身だ。

昨今の議論を、「3年前に巻き戻っている」と指摘する人も居る。

さて、最近。国際展示場計画がとん挫したという報道があった。
本来、国際展示場は、愛知県内には名古屋市だけに有った。

それを愛知県が、常滑沖の空港島に新設するという。
名古屋市においては、国際展示場があった金城埠頭には、レゴランド等が設置されたことから、金城埠頭を離れて、10万平米という巨大な施設にするために、新たな用地を含めて整備する方針だったようだ。ところが、こうした方針に水を差したのが河村市長で、独自に「稲永案」や「空見案」を打ち出し、遂には金城埠頭整備に戻って迷走している。

市議会から県との協議を求められた河村市長は、締め切りギリギリの今月になって、1月22日の月曜日に、自ら県の担当部局に質問書を提出したそうだ。回答期限は1月26日。週末までにということだ。町内会の話し合いでもあるまいに、通常の民間企業でも成立しない「協議」の仕方だろう。常識を疑う。

名古屋市にあった国際展示場は、ミスミス愛知県に奪われるかもしれない。

河村市長が打ち出した10万平米の国際展示場など、この無能には無理だったという事だ。

地域委員会も無理、減税も10%から3.75%へ縮小。地域政党も消滅寸前。
何をやらせても形にならない、形にできない。SLも無理なら、1000mタワーとやらは話にも出ない。

実は、この名古屋城天守木造化も、こうした「口だけ」の「毛ばり」であって、
文化庁の役人が反対する」だとか、「国交省が、わしを潰そうとしている」とか言う為の、プロレスをやっているのではないのだろうか?

住民説明会では「国宝になるのであれば、早く着工してほしい」という意見を述べたヒトも居た。
市民の中には、木造復元天守が国宝になると、今に至るも誤認しているヒトも居るだろう。

同じ住民説明会では「木造復元の為に行った寄付を返してほしい」というヒトも居た。

名古屋城天守が木造化されれば、国宝になると信じて寄付を寄せたヒトも居るだろう。
そういうヒトは、この計画がとん挫すれば、文化庁国交省、あるいは反対を述べていた私などを恨むだろう。しかし、本当に恨むべきは誰なのだろうか。

次回は「保存活用計画(案)」の問題点について書く予定だ。