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2006-07-13

[][][] 「なぜ“メタル”は嫌われ、非難されるのか」

メタルヘッドバンガーズジャーニー」を見た。

ヘヴィ・メタルの歴史は長く、かなり多くのコアファンを擁しているわけだけど、スポットを浴びることの少ない音楽ジャンルでもあり、メタルファン以外には全体像をつかみにくいジャンルだと思う。

この映画のジャンル分けで「メタルに属すバンド」の中には個人的に好きなアーティストもいたけれど、ジャンルとしてのメタルに興味を持ったことがなかったので、この映画はとても面白かったし参考になった。とはいえ、筋金入りのメタルファンである監督の「ファン」としてのスタンスが強く全面に出ているので、1意見におさまっているという感触は否めないけれど、その視野の狭さもなんだか好印象。

「あの夏はSLAYERを聴いてたなー、なんてことはない(ロブ・ゾンビ)」

映画はメタルの歴史、音楽、ファン、ファッション、男性的であること、歌詞など、様々な部分にスポットをあてながら進む。

いろいろと興味深い発言をしていたのが元ホワイトゾンビのロブ・ゾンビ。メタルファンの息の長さと、そのファッションにも現れているコミュニティ性をとても冷静に語っていた。映画中に見せられるチャート式のジャンル分布図を見て、メタルに含まれるジャンルが多いことを意外に思ったのだけど(グランジやミクスチャーも入ってたような/そうなの?)、映画を見ている限り、アーティスト同士、ファン同士、その広い分布図の中に属しているものに対する「仲間意識」のようなものが感じられ、さらに意外に思う。実際どうかはわからないけど、しかしそのような団結力が、逆に排他性を生み保守的になる一因なのではないかとも思ったりした。ではその団結力とは何か。

『スミスやリプレイスメンツを聴く奴は「俺は人とは違う」と思う。孤独を愛する。しかしメタルファンは「俺たちはおかしくない」と言う』というようなことをインタビューで答えている人が(誰か失念したが)いた。これはもっともだなーと思ったのだけど(そして私はどちらかというと前者に属する音楽を聴いてきた)メタルというのはどうやら「俺たち/我々」の音楽であるようだ。「あの夏はSLAYERを聴いてたなー」なんてことがなく、半永久的にファンであり続ける、というのはファンとしてもミュージシャンとしても幸福なことかもしれない(ちなみに私のレコード店時代の上司にもアイアン・メイデンファンがいたが、その好きさはまるで「生まれつき」で、たぶんファンをやめることはないだろうと思われた。)。しかしだ。監督は「メタルがなぜ嫌われるのか」ということをテーマに映画を撮っているし、たぶんメタルファンとしてメタルの素晴らしさを伝えたいという思いがあるのだろうが、例えば、メタルがヒットチャートの上位を独占し広く受け入れられるということは同時に「あの夏はメタルだったなー」というファンを増やし、消費されていくということだろう。だとしたら、むしろメタルは今までそうならないで「生き延びてこられた」ということを喜んでもいいんじゃないか、と思ったりした。

メタルにはダサさが必要

メタルファンの人に喧嘩を売るわけではないのですけど、メタルは意図的にマイノリティであり続けようとしているジャンルなんじゃないかと思う。だからむしろ、「おしゃれになったら負けだと思ってる」んじゃないか。「抑圧されている」という状況が(実際はどうかわからないが)むしろ求心力を生んでいるんじゃないか? キャッチーでポップで商業主義的な音楽は、うまくいけば広いがどうしても薄まる。コアな人気のクオリティを保つためには、常にカウンターであり続けるのが理想だと思うけど、それはなかなか意図してできることではないだろう。しかし、たぶん、プロモーション事情なども絡み、音楽ジャンルとしてのメタルは「(スタイルとして)保守的な/ダサさ」の残るものだけがメタルと呼ばれ、他ジャンルに属すことのできるもの(グランジ、ミクスチャー、ハードコア、サイコビリー、etc)を切り離してきたと思う。それが逆にジャンルを生き延ばす原因になったんじゃないか、と思った。

また、その反社会、反宗教的な歌詞について、メタルが青少年に悪影響を与えるとされ、非難を受けている場面も出てきたが、私はここでつい「ゲーム脳」のことを考えてしまった。どちらも暴力的表現が多い(とされている)ところで共通点があるかもと思ったがそれはまあおいとく。ただ「叩かれる」ということがよりファンの団結力を強めるということも、あるのではないかとも思う。

ただ、ここでさらに意外だったのが、ブラック・メタル(ノルウェー)の人たちはとりあえず除き、意外と歌詞に重きを置いていないような発言をしているアーティストが多かったことだ。重きを置いてない、というのはちょっと違うけど「俺の意見」というよりは「メタルの意見」を歌詞として選択しているような印象を受ける人もいて(これも誰か忘れた)、それもまた「我々/俺たち」の音楽だからなのかなと思う。

なぜメタルファンはコアなのか

しかし「カウンターであること」や「排他的であること」が保たれているように感じるのは、その歌詞にある反宗教的な部分云々やファッションの特異性なんかよりも、それが劇場型の音楽だからなんじゃないかと思った。

映画の中に、いくつかライブシーンが出てくるのだけど、これがまあ、とにかく楽しそうなんだよな。アイアン・メイデンのブルース・ディッキンソンが、メタルのヴォーカルとして、会場の一番奥にいるファンにまで届くように歌う、というようなことを話していて「ライブがうまくいくと、会場が縮むような気がする」と言っていたんだけど、これはすごいことだと思った。そしてちらっと映った映像だけで、そのヴォーカルは全く好みではないけども、ライブ会場にいたら鳥肌がたつだろうと思った。

エモーショナルなヴォーカルというのは、その曲の好悪を越えて胸をうつところがある。ブルース・ディッキンソンのようなハイトーンでオペラ的なヴォーカルが特徴的なメタル(それがメタルだと思ってた)が好みじゃない私も、例えばレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンSystem of a Downロブ・ゾンビがかっこいいと思うのは、そのパフォーマンスの熱によるところが大きい。サマソニで見たマリリン・マンソンは恐かったけどすごいライブだと思ってその後アルバム買ってしまったし。ちなみにハイトーンだけどもJUDAS PRIESTもかっこいいと思う。サバスやZEPはもちろんのこと。

たぶんきっと、ライブ会場で音に参加することに意義がある音楽というのは、長生きするのだと思う。

メタルといっても、まあきっといろいろだ

メタルを通らないできた音楽ファンとしては、この映画でその魅力の一端でも知ることができてよかったと思う。楽しかった。しかし音に関する掘り下げ方は、ちょっと物足りなかったかもしれない。チャート出すなら、それらのスタイルにどんな違いがあるのかちゃんと説明して欲しかった。

私がなぜメタルをたぶん意図的に遠ざけてきたのかといえば、まずはジャケットのイメージと(これはホラー映画が好きとかそういうのとつながるのかなぁ?)、そのイメージがテクニック重視に思えた点だったと思う。この映画を見る限りでは、その原因はエディ・ヴァンヘイレンにあったというようなニュアンスだった。あの速く/高音の/長いギターソロ。特にクラッシックの旋律のあれが苦手なんだけど(それはオルガン苦手にも通じてます)、メタルファンの中で、特にヘヴィ・ロックを好む人たちにとってテクニック系(ヴァン・ヘイレンをその括りに入れていいのかはわからないけど)ってどう受け取られてるんだろうとか、そういうとこもっと見たかった。インギ様とか、北欧メタルとか、そういやノータッチだったけど、どうなんだろ。「あれはメタルじゃない」とかっていがみ合うメタルファンも見たかったなぁ。唯一異端ぽく紹介されたのが、グラム・メタルだったけども、これもさらっと流してたしなぁ。

「なぜ“メタル”は嫌われ、非難されるのか」

この映画での、この問いに対する答えは、正直凡庸に感じた。

今まで遠巻きに見ていたメタルというジャンルと「なぜ“メタル”は嫌われ、非難されるのか」というテーマを比べてみたとき、思い付くのはやはり、「嫌われ、非難される」ことが求心力のひとつになっているからなのではないかと思う。

「メタルなんて聴いちゃって、気取ってる」とは言われないこと。好きだからこれを選んだと言えること。それが団結力を生むのか。どうか。もうちょっと見聞きしてみたい。

参考

Dirk_Digglerさんの、こちらの感想(http://d.hatena.ne.jp/./Dirk_Diggler/20060630#p1)がわかりやすくとても面白かったです。上で疑問だったグランジ周辺のこともきちんとフォローされていた。

森の民森の民 2012/05/31 20:15 イチニクスさん、はじめまして。
メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニーの感想を探していてたどり着きました。
私はここで言われている昔「コアなファン」でしたが、しばらく間が空きいろんなロックを聴いてきて年甲斐も無く最近メタルに還ってきました。
やっぱりかっこいいです。ギターも始めました。
そんななかで「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」を知り、こういうのってハズすと後が辛いので内容が知りたかったのですが、イチニクスさんの幅広い見聞と感性でのレポートは非常にわかりやすくて、買う気満々になってしまいました。今からわくわくしています。
確かにメタル好きな人たちは偏ってるので団結力はピカイチだけど、外の事をあまり知らない事があります(←注:そんな人ばかりではありません)。
というかメタルだけで満足させてくれるのでよそに目が(耳が)行かないのかもしれません。
そんななかでイチニクスさんの客観的な目で観た、知ったメタルの世界をこれだけの文章で表現していただき嬉しいです。
確かに「私、メタルが好き」って言いづらい時期もありました。
世間的にかっこわるいとかきもちわるいとかやかましいとかそんな評価ですから。
でも今は胸を張って言えますしカラオケもガンガン歌いますし、ダサいと思われても平気です、だってかっこいいから。
メタリカのライヴレポートも読ませていただきましたが、なにげなく観に行ったメタリカがイチニクスさんのアタマにドッカ〜ンと入ってきたのはやっぱりかっこいいからですよね。
そんな出会いでも素敵です。
ハッピーな気分にさせていただきありがとうございました☆

ichinicsichinics 2012/06/02 12:42 森の民さん、コメントありがとうございます。
自分の書いた感想を久しぶりに読み返して見ると、映画を見たあとの勢いのせいか語弊もありそうな言い回しが多いのですが、
いただいたコメントでは、言いたいと思っていた部分を汲み取っていただき、とても嬉しく思っています。
この感想を書いた直後に初めてサマソニでメタリカのライブを見る機会があり、その後SSAでの単独公演にも行くことが出来たのですが、それはほんとご指摘のとおり、単純に第一印象で「かっこいい!」と思ったからなんですよね。
この感想ではいろいろこむずかしく考えていますけど、音を聞いたときに、無条件でわくわくするし楽しい、っていう身体的な求心力も、メタルファンの息の長さの所以なのかなと考えています。
「メタルヘッドバンガーズ・ジャーニー」を見た時の感想はほんとにメタルを聞いたことがほとんどない状態でのものなので、長年のメタルファンの方がどう感じるのか、いまひとつ自信がありません。
もし機会があれば、見られた感想などお知らせいただければ嬉しいです。
自分も改めて見直して見ようと思いました。
ほんとに丁寧なコメントをいただき、ありがとうございました。

森の民森の民 2012/06/12 17:18 イチニクスさん、こんにちわ、観ました観ました!
今、1日空けて2回目を観終わって書いているところです。
私の弟が幸いなことに生涯のメタル仲間で「楽天で買ったから届いたら一緒に観よう」と約束していたのですが、なかなか時間が合わずとうとう先行上映してしまいました(笑
まず、一番感じた事は「メタルを好きな気持ちに国境や年齢や性別や肩書きは無い」ということです。
監督や出演者のミュージシャンらが言ってた事、学者さんたちが言ってた事、異国の1ファンが言ってた事…全て今まで私がメタルを好きになって30年の間に考えたり感じたり、弟や数少ないメタル仲間と語り合ったりしたことばかりでした。ビックリとか嬉しいとかじゃなく「これがメタルだ、これだから辞められない」とニヤつきながらうんうんうなづいて観てました。
私事ですが、思い返せば幼いころ余り家庭環境がよろしくなく、毎日辛く淋しい日々で、小学生で自殺も考えたこともありました。世間や親へのストレスもハンパなかったです。
しかし、中学1年のときに同級生の幼なじみ(♂)に「おい、これ聴いてみろ」と渡されたのが彼の好きなメタル曲で構成されたオムニバステープでした。
それを聴いて背筋に電流が走り全ての憂鬱から一気に解放され洗礼されました。メタル神の降臨です!
私にはメタルを受け入れる/メタルに受け入れられる「素質」があったのですね。
小さい頃から「バンドやってみたいな〜」と思っていた私ですから音楽的視点と精神的要素がバッチリだったのかもしれません。
それから私は取り憑かれたようにメタルを聴きバンドをやりました。
今でも思うけどメタルと会ってなかったら異な道に進んでいた事でしょう。
怒れる私をメタルが癒してくれ、代弁してくれ、眠りにつかせてくれました。
小学生からビートルズやイージーリスニングや80年代欧米ポップスなど聴いたり演奏したりしていて楽しかったけど、それらの音楽じゃこうはいかない。METALLICAを聴いてスッキリ、演奏してニンマリ。
ある時はグロテスクなジャケット、邪悪な歌詞、死霊が集まってきそうな演奏を聴いて、より気持ち悪いものを見つけると弟と自慢し合って楽しかったです、どうやら監督と同じ事してたみたいですね(笑
またある時は曲を聴き、英語わかんないので歌詞は読み、真剣に考え涙した時もありました。
ダークなイメージがつきまとうメタルだけど、真面目で正直で全力なだけなんです。
「メタルは男性的」というテーマも面白かったです。体力の要るライヴ、機材を操作できる知識、楽器を演奏できる器用さ…メタルにはこれがあるから憧れる☆
あ〜、書けば書くほど作品と同じ事しか言えなくなってきそうなのでこの辺で。
ひとつ、客観的にみると、「これが世界に配給された映画?」と疑ってしまうほど監督のプライベート感満載なのが否めませんが、メタルなのでそれでいいのかもしれません(←イチニクスさんと同じ事言ってますね(汗)
あと、ヘヴィメタル系譜図がかっこよかったのでじっくり観たかったです、ポスターあったら絶対に買うのに!
最後に、エンディングでMASTER OF PUPPETSをバックにいろんな人の一言が流れましたがたぶんあれは「メタルとは?」の問いかけへの答えでしょう。
あの辺から号泣でした(恥
イチニクスさん、いい作品に出会う事ができました、本当にありがとうございました。

ichinicsichinics 2012/06/18 21:24 森の民さんこんばんは、コメントありがとうございます!
コメントいただいてたのに気づくの遅くて申し訳ありませんでした。そしてとても楽しんで見られたようで、私まで嬉しくなってしまいました。ありがとうございます。
監督のスタンスもそうですが、とても個人的な思い出と結びついてメタルというジャンルごと好きになっている感じが、私がメタルをほぼ聞いたことがない初心者であるという「外側」から、メタルファンに憧れを抱いた理由のひとつかもしれません。
しかも森の民さんのように、映画をみて異国のファンの語ることに共感できるというのも素敵ですね。
エンディングのいろんな人の一言の場面は残念ながら思い出せないので、私も見返してみたら、改めて感想を書いてみたいと思います。
本当に、丁寧な感想をいただき、ありがとうございました!

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